アキリが あらわれた!
 アキリが あらわれた!
 アキリが あらわれた!


    アアシアスイアテシマアテイテアマイマイスシ:A to Z Theory:A to I


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「はいはい、アキリでーす。あ、アキリ? そうなの、モーター止まっちゃって。いつになったら動くか……」
「へえ、あんたもアキリっていうんだ。よろしくね、アキリちゃん」
「小芝居はやめて、復旧作業に集中してくれですうっ」
 地球から輸入された漫画文化のパロディで遊ぶアキリに、涙目でアキリは訴えかけている。
「べ、べつにアキリの為に手伝うんじゃないんだからねっ! 早く直らないと困るのはアキリなんだから、しょうがなくやるんだから!」
「アキリがそう頼むなら、アキリも手を貸そう」
 他方では、左右に一つずつ結ったツインテールの片方を指で巻きつけて弄りながらそっぽを向いて誰に言うでもなく喋っているアキリや、
真っ直ぐに伸びた長髪をなびかせて頷くアキリの姿もある。
「あ、アキリがそうするならアキリもやります」と周囲に流されやすい節目がちなアキリも正常運行に向かって手伝い始める。
「ではアキリは"静脈路"、アキリは濾過区のフィルター周り、アキリは浄水区をお願いします。さああと一息です。頑張りましょう」
 楕円形の(オーバル)フレームの眼鏡を掛けたアキリがテキパキと指示を飛ばす中、満足そうな笑みを浮かべて頬杖ついているアキリもいた。
「そうよお、わたくしの為に馬車馬の如く働きなさあい」
「うう……アキリさまもお願いですう、あいたっ、たたかないでくれですっ」

「うーん、どこがおかしいんでしょうか?」
「ディスプレイを見ても不具合が分からない。ということはどういった状況が考えられますか?」
「うーんと……"動脈路"にいるアキリに異常がある場合、と、正常稼動しているかどうかをチェックする機構が故障した場合。
 あ! あと、その情報を受け取って表示する中枢がおかしくなった、ですか?」
「その通り。それともう一つ、重箱の隅をつつくようではありますが、もちろんどこにも落ち度がない時、つまり正常運転中ということも考えられますね」
「なるほど……たしかにそうですね……」
 この近辺の下水道と純水を管理する大きな浄水装置のモニターの前では、教師アキリと生徒アキリの特別授業が行われている。

 なんという美しき自己/他者愛だろうか。一人(アキリ)は皆{アキリ}の為に、皆{アキリ}は一人(アキリ)の為に。アキリフォーアキリ。
 そんなバカなことを考えつつ、暢気にネコみたく丸くなって職務放棄をしているアキリと、こちらの腕を抱えてしな垂れかかっているアキリと一緒に、
機械の精査を続けるアキリを眺めていたら、隣にいるアキリの肩がとんとんと叩かれた。
 振り向くと、無表情で人形みたいなアキリが四角い眼鏡のフレームを指で上げつつ。
「働かない者食うべからず」
と一言呟いて、両腕と腰から下のなめらかな尾部を用いてアキリの元へ泳いでいき、こちらに名残惜しそうな顔を向けつつも慌ててアキリもその後を追った。
 一方アキリは気にせず「にゃあお」と欠伸をしてそのまま眠った。

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 常に暗く、採光の悪い施設内では分かりにくいことだが、真上に上っていた太陽も、機械が正常に戻った時には地平線と接していた。
 オイル汚れを石鹸を使って肉と爪の間まで丁寧に洗い落とす(サービス残業である)と、今度は全身の消毒だ。
 壁に掛かった丸時計の針が、縦一直線になったところを見計らって施設内全てにタイムカードを押す。
 施設内に録音されたアキリの声が業務連絡用スピーカーから鳴り渡り、ばしゃばしゃと水の跳ねる音(アキリがこちらに向かっている音だろう)も響いてくる。
「皆さん食事の時間です。希望の方は食堂に行って下さい。皆さん食事の時間です。希望の方は食堂に行ってください。皆さん――」
 扉を開け、均等な距離を置いて綺麗に並んだアキリを眺め、ようやく本日の業務の始まりを実感するのだった。
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「ふふふ……今日の一番汁をいららくのは、わらしなのれす!」
 ここからは混乱を避ける為、目の下に隈をつくり、なにやら変に凄みのある笑みを浮かべている先頭のアキリをアキリAと呼ぶことにして、
それ以降は並んだ順番通りにアルファベットを割り振っていこう。
(アキリという名前自体、お前らの声帯に合わせた通名なのに、更に通し番号を重ねるなんて地球人は本当に身勝手だなんだと何人かのアキリは怒るだろうし、
同じ数だけ受け入れるアキリも中立的な立場をとるアキリもいて色々とややこしくなるので、これはアキリの前では絶対に口に出さないようにしよう)

 アキリAは、こちらが腰掛けるや否や、すぐさま亀頭に齧(かぶ)りついてきた。
「ようやく回ってきた休暇を返上して、あぐっ、んぐっ、日が出(れ)る前から、待っれいましらからねっ、ぴちゃっ、いっぱいいっぱい、んん、出(ら)しれもらうんれすからね……」
 分化して日が浅いアキリAの"食事"は、育ち盛りというか、貪りつくような勢いだ。
 一日中食堂で待ち続けたアキリAの飢餓感はとてつもなく、ようやく獲物にありつけた虎のような気の持ちようで、水面から身を乗り出し、性器へと襲い掛かる。
 手も舌も上手に扱えないので技巧などあったものではない荒々しい"食事"なのだけど、目の隈や言葉なんて聞かなくてもこちらを
求めているのが海綿体を通じてひしひしと伝わってくるから、これはこれで好ましく思っている。わんぱくでもいい。たくましく育ってほしい。
「あうっ、ううっ、ちょうらいっ、はやく、えほっ、ごちそう、ちょうらいっ」
 自分の喉の奥を突いてしまって咽せかえる位いきおいよく頭を揺さぶり射精を促す激しい"食事"。
「ぬぽっ、じゅぽっ、んぐっ、カウふぁあっ、おいひいっ」
 寄り目がちな大きな瞳に涙を浮かべているのに、咥え込んだモノを咥内から出そうとは考えていないようだった。
「んぽっ、あぐっ、あうっ、ちょうらいっ、いちあんじるっ、ほひいのっ」
 毎日数十(場合によっては三桁に届くほどの)回をこなしているこちらも耐え切れず、白濁が咥内奥深くへと吐き出された。

「うーーー! うっうーーー!!」
 咽頭近辺の筋肉群が協調して口内の栄養物を食道へと運び込む通常の嚥下における動作が必要としないくらい深くから放たれた精液はそのまま食道へと流れ込む。
「えほっ、おおいっ、けほっ、うえっ、ちょ、まっへ、やめっ、うううっ」
 気管に入ったのか、何度も咳き込むものの、車と同じように射精も急には止まれない。アキリAの制止の声も精子は聞く耳なんて持ってないからそんなの関係ない。
 驚き、慌てるアキリAの尾部が水中で暴れ、時化た海のように無数の波が水面に広がる。
「うあ…………」
 ようやく萎えてアキリAの口から離された時には、最初の威勢はどこへやら、全身は弛緩し、水路に満たされた清水は落ち着きを取り戻しつつあった。
 鼻や口から黄色ばんだ白い液(ゼリーと言った方がいいかもしれない濃さだ)を垂れ流し、顔どころか凹凸の全く無い薄茶色の体にまで汚されている。
 白い絵の具でドリッピングを施された薄茶色のキャンバスといった感じだろうか。と比喩表現を考えている内に、ばちゃんと水面に倒れ込んだ。
 その顔はどこか幸せそうに微笑んでいて。倒れていく様は、ごちそうさまでした、と頭を下げていくようにも見えた。
 そういえばAから始まるAppreciateという単語には、味わうとか感謝するなんて意味もあったことを思い出す。
 いえいえ、こちらこそおそまつさまでした。そんな風に、萎えた陰茎が首をもたげた。
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 大昔のSFから取られたアキリという通称は、地球の科学者連中が犯した失敗の一つだろう。外見的にも生態的に適していない。
 その"大昔のSF"を書いた小説家の作品は、それはそれはウルトラスーパー・ハードな内容であったそうだ。
 そして、数々の技巧を凝らし射精を促し続ける、この媚びた目をこちらに向けているアキリBの舌技も、ウルトラスーパー・ハードと表現してよい気持ちよさで、
このアキリなら、アキリという名前は相応しいかもしれないなどと思う。
 睾丸と肛門の間、そこにアキリBの舌がつつーっと這っていく。俗に言う蟻の門渡りである。
 左手で竿をしごきながら、舌先が触れるか触れないかという微妙な(しかしこちらが最も快感を得られる)軌道を描いていく。
「んはぁっ……ふふ、舐められて……あなたのおちんちん、気持ちよさそうにひくひくしてる……」
 どこのクラブの譲か、という具合にウェーブした髪を、こちらを握っていない方の手で横にかき流して、ぷっくりと肉厚の唇が亀頭を舐(ねぶ)る様をわざと見せつける。

「んんっ、えろっ、なめなめするたんびに、ぺろっ」
 アキリAとそう見た目の年かさは変わらないように映るものの、分化してから月日が長いことを示す乳房から分かる通り、その技量は天と地ほどの差がついている。
「あん、声が漏れるから、ぺろ、どこがいいのか、あんっ、バレバレね」」
 雁首と竿の段差を器用に掃除されるみたいに一舐めされれば女のようなか細い声が自然と出てしまう。
「ほら、ここをなめなめしてあげると……あはっ」
 尿道口をなぞられては背筋にぞくぞくと電気が走り、そのまま電気は脳に行って信号として処理されて、発声の命令を下してしまう。
 端的に弄ばれ放題、されるがままだった。

「あむあむ……っはあ……タマタマもまだまだパンパンね……これなら、あの子に出した時よりも沢山の精子さんが出せるわよねえ?」
 陰嚢を手の平に包み、そして唇は袋の皺を伸ばすように歯を立てないようにハムハムと甘噛みしている。
 頬についたちぢれた陰毛も、まるでそこに位置しているのが計算されたかのようないやらしさだが、少し伏せられた瞳が更にそれを引き立たせていた。
 流し目の向かう先には、先ほど放心してそのまま水に浮かび小島と化したアキリA。あれだけべっとりと塗られた精液も、今はどこにも見当たらないが、
ぽっこりと妊婦のように膨らみ、たぷたぷと揺れる精液で出来た腹部の山がアキリAが"食事"を済ませた証拠として残っていた。
 列の後方に並んでしまって、満足いく"食事"を送れる見込みの少ないアキリや、せっかく並んだのに満足が出来なくなってしまったアキリがごちそう目掛けて群がり、
綺麗になめ尽くしてしまったためだ。

 こくりと頷くとアキリBは舌なめずりして「ふふふ……そうよねえ……わたしのほうがいいわよねえ……」と妖しげな笑みを浮かべた。
 やわやわと揉むような動きをしていた唇から、皺と皺の間の垢を取るように下が溝をなぞっていく。
 竿に添えられつづけている左手は、強すぎず弱すぎず射精しない程度の強さで、時折リズムを変えて刺激に慣れさせないようにしつつ、徐々に射精欲を煽っていく。
 住み慣れた地元の街路のように、陰嚢に刻まれた道を滑らかなに走る舌先。自然とこちらの顔もトロンと緩む。
 しかし、そういった時に限って、わざと袋に生えた陰毛を口に含んでは引っ張って、こちらの気を休ませてはくれない。こちらの反応を見て、より目がちな瞳が怪しく微笑む。
「っはあ、これでタマタマそうじはおしまい。……今度はようやく、このカリ高おちんぽを咥えて……メインディッシュの、トロトロ精子さんをいただきますからね?」
 右のふぐりの溝が走破され、今度は左のふぐりをほおばり、そちらの道にも全て足跡を残したアキリBの口はようやく陰嚢から離される。
 口による僅かな圧迫感と、陰嚢を覆う涎が気化して熱気が奪われていく感覚が心地よく、一休みをしていたところ。

 袋の裏側、精管がある辺りをちゅっと口付けされ、完全に気を抜いていたこちらに言いようもない快感が身体を満たす。
 意図せず射精を促してしまったアキリBの焦茶色の髪に、白濁が降り注ぐ。
 アキリBは口をぽかんと開け、顔に驚きを浮かべていたものの、そのまま開いた口を亀頭部分にくっつけ、どうにか損害を抑えることが出来た。
 しかしながら、精液シャワーを浴びたその顔は真っ白で、バケツいっぱいの水を上からかけられたようになってしまっている。
「まったく、せっかちなおちんぽね。いけない子。けどさっきよりも全然多いわあ」
 顔を拭いもせず、水面に浮かんだゼリー状の精液をすくい、その指を口に含んでぬぽぬぽと艶かしく前後させる。

「さあもう一発。いけるでしょ?」
 そう言ってアキリBはいやらしくて妖しい娼婦(Bitch)のような笑みを浮かべたのだった。

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 だれか「アキリたんは天使なんだ! 処女なんだ! セックスだってしないんだ!」
 アキリ「アキリは天使でも処女でもないですが、セックスはしません」


 ごくりと生唾を飲み、こくりと頷きそうになる。射精したばかりの陰茎はまた血が集まり、ぶるりと亀の頭は縦に揺れたが、只の頭はそうならなかった。
「供給課による配給は、一回の射精で交代が原則ですのでお引取り願います」
 舌なめずりするアキリBの後ろ、楕円形の眼鏡をくいっと上げて、アキリCが言う。
「あらあら、おカタイことねえアキリさん。ふふふ……供給課のこのおにいさんがなんて言うか次第だと思うけどねえ?」
「ですけど、まだこれだけ後ろに控えているのですから」
 余裕な表情のアキリBと、後ろに手を振りかざし静かに声を荒げるアキリC。
 施設で働くアキリの数を考えれば当然ながら、アキリCの後ろには長蛇の列が出来ている。顔の判別が出来る二十数人目から先の、
遠すぎて姿も不確かな領域にも沢山のアキリがいるのが確認できた。
 ヒトに似通っている姿をしているものの、生ける金太郎飴もしくはマトリョーシカであるプラナリアに属すアキリだからこそ、という光景でもある。
「それがなにか?」
「……」

 にらみ合う二人。アキリCも古参と分かる胸の張り具合であるから、なにか色々とあるのだろう。険悪な雰囲気だ。が、すぐにこの構図は崩れた。
 おこぼれを貰おうと、水面に浮かんだティッシュのような白濁や、顔にべっとりとこびり付いてそのままにしてあるアキリBに後列のアキリが泳いで行ったのだ。
「きゃっ、なによあんたたちっ、これは、わたしの精子さんなのよ分かってるっ!?」
 トビウオの様に水面から跳ね上がったアキリの群れがアキリBを倒しにかかる。……アキリBは程無くしてアキリAと同じ末路を辿ったのだった。

「と、いうことで"食事"再開です。今日もよろしくお願いします」
 こほんと一つ咳払いしてからアキリCが一礼する。いつも通りきっちりと四十五度腰を折り、一歩分近寄ってもう一礼。
 水面とのなす角三十度の位置で、亀頭がちょうど収まる程度に開けられた口に入る。
「う……」
 眉間に皺が寄り、顔をしかめたものの、数秒と経たない内に平然とした表情に戻る。
「んんんうっ、んんんうっ、んんんうっ」
 陰嚢を触れ、下腹部に手を当て、精液の残量を確認するとアキリCは二度、三度と、全く同じストロークで陰茎を咥えた頭を前後させた。
「あむ、かぷ、あむ……」
 そして竿の部分を両手でぐにぐにと握りながら、亀頭をきっちり三回甘噛みし、そして口から離してこう訊ねる。
「お加減はいかがでしょうか?」

「んんうっ、んんうっ、んんうっ」
 返答を聞いたアキリCは、先ほどよりも少し短いストロークで頭を振っていく。
「あんむっ、かぷっ、あんむっ……」
 そして竿の部分を両手でぐにぐにと強く(前回比)握りながら、亀頭をきっちりと三回甘噛みし、そしてまたこう言葉を発する。
「お加減はいかがでしょうか?」

 再三、修正を行いながらローテーションは繰り返されるが、不思議と快感は薄れない。
 とても似通ったこの反復は、大体がとても似ているからこそ、細部の違いが際立って感じられ、類型であるのにそうではないような錯覚に陥る。
 どれもこちらのツボを突いた動作で、様々な技巧を凝らし装飾過多のきらいがあったアキリBと、無駄を削いで素早く射精をさせることに特化したアキリC、
どちらも甲乙付けがたいものがある。

「ん……」
 アキリBはこちらが限界が近いのを察すると、それまでとは違う変則的な動きを急に入れる。
 今までのローテーションに適応してしまった陰茎に驚くほど効果的で、射精を容易に導いてしまう。
 今日は、蟻の門渡りからそのまま陰嚢の裏側を精管あたりを正確に刺激して、というアキリBの所作に改良を加えたものだった。
 三度目だというのに間欠泉のように噴き出した精液は、事前に動きは把握していたアキリCのだが、追いつくことができず、
またも粘りの強い山芋のような白濁をかぶることとなった。

「先ほど、気持ちよさそうにしていらっしゃったので試してみましたが、いかがでしたか?」
 楕円のレンズは真っ白でその奥の瞳を映さないが、口調は情事に及んだというのに熱は無く、どこまでも事務的な響きを持っていた。
 ついさっきのアレはアキリBに対抗心があったとか、そういう訳でもなくて、ただ効率の良い方法を選んだだけなのだ。
 こちらの感想を述べ、そしてアキリBが「そうですか。こちらもどうもありがとうございました」といつものようにキッチリ四十五度の礼をするのを眺めて。
 アキリにとってこの行為は、本当に只の食事であって、儀礼(Courtesy)でしかないのだと、いつものように再確認するのだった。

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 だれか「アキリはパンツはいてないですか?」
 アキリ「アキリはパンツはいてないですが?」


「ちょ、皆さん? これはあなたたちのものではありませんよ? "食事"における精子の所有権に関しては、規則の九項にしっかりと明記されている筈です。そこのところ、ご存知ですよね?」
 アキリのものはアキリのもの。アキリのものもアキリのもの。
 アキリCも事実確認や規則を持ち出して説得を試みるも、モンブランのように白雪をふり掛けられた頭は、昼間の的確な指示に付加された強制力を奪ってしまったようだ。
 アキリCも前二人と同じ展開が待っていた。

「んーしょ、んしょ、んーしょ」
 アキリDはその小鳥のような可愛らしい口を可能な限り開いているのだが、亀頭を咥えることはできない。
「んーしょ、んーしょ……ぷはー。おかしいなあ。きょうは、ちょっと、ちょーしが、わるいのかなあ? ちょっとまっててね、すぐね、ぱくってしちゃうからね」
 けれど、どれだけ試してみても進展を見せない状況に、アキリDは瞳に涙を潤ませ始めていた。
 調子が悪いも何も、アキリDの小さな口で陰茎を覆えたことはないのだけど、それはまあ置いといて。
 口と陰茎の大きさからして入る訳がないのだから、ほおばるのは諦めてみたらどうかと、出来る限りアキリDを傷つけないようにこちらが進言すると、
アキリDの小動物じみたより目がこちらを見上げてきた。
「そしたらね、そしたらね、アキリね」
 小さい子にそうするように、頭を低くしてアキリDと同じ視点になって話を聞く。
「あんまり、舌じょうずに動かせないから、おにいちゃんをね、ぜんぜん、きもちよくできないとね、思うの」
 なかなかかわいい事を言ってくれるじゃないのと思いつつ、心配せずとも大丈夫である旨を告げると、泣きだしそうだった顔が一変、ぱああっと晴れ晴れとした笑顔となった。
 だがその笑顔も束の間、こちらを胡乱げな目で見つめてくる。
「ほんと? ほんとにほんと?」
 ほんとにほんとですよ。
「よかったー。アキリね、はやくおっきくなりたいからね、まえのアキリたちよりも、いっぱいいっぱい飲まなちゃいけなかったのっ」
 音符マークが語尾についてそうなくらい、嬉しさを言葉尻からもにじませて再度破顔。
 そうなのだ。おねしょ離れも出来ていなそうな幼いアキリでも、可能な限り多くの食糧(こちらの精液)を確保することを考えている。
 こちらに快感を与えたいと考え行動するのは、より充実した食事をする為の合理的行動に他ならない。
「ミルクでるかなあ、いっぱいでるといいなあ」
 天使のような幼アキリDの唇が尿道口にキスをする。そして母乳を欲しがる仔猫のように、ちゅうちゅうと音を立てて吸いついた。
「ちゅううう、ぶふうぅぅぅ、ちゅうううぅぅぅ……っぷはあ、はあ、ふー」
 きちんと口と亀頭の間を閉じられなくて空気が漏れたり、息が持たなくなって顔を赤くしながらも、精液を得るために、大きく息を吸い込み、また吸いつく。

「ぺろ、ぺろ、まだでないの? きもちよくないの?」
 息も絶え絶えのアキリDが短い舌で亀頭を舐めながらそう聞いてきた。いくら快感だろうとそんなに簡単にでるものか。あなたが口にしているのはパピコではなくてチンコですよ。
 そんな戯言はともかく、もう一息だと答えるとアキリDは両手でぐっとファイティングポーズを作って、
「あとちょっとならね、アキリも、がんばる」
 そう意気込んでまたしゃぶりつく。「だから、きょーきゅーかのおにいちゃんもがんばっていっぱいミルクだしてねっ」と付け加えながら。


「ちゅううううぅぅぅっ、ちゅうううぅぅぅっ……、っぷはあ、はあ、はあ」
 真空状態が作られるたびに、腰が抜けそうな気持ちよさと、精液が無理矢理吸い出されていきそうな感覚がこちらを襲う。
 多分亀頭周りは鬱血しているんじゃないかとおもうのだが、そんなこと気にならないほどの快楽だ。
「ちゅううぅぅぅ、ぶぶぶっ、しっぱいしちゃった、えへへ、もういっかい。すううっ」
 ランドセルもまだ背負っていないような外見年齢の、天使のようなアキリDが頬をすぼませて一生懸命陰茎に吸い付いている視覚効果もその快感に相乗されていく。

「んんんっ! んんぅぅぅっ!」
 そして、高ぶりがそのまま臨界点を超え、ついに射精が開始されると、あれほどドロドロとゼリーのような精液が空気すら介在できない圧力によって
アキリDの胃まで瞬く間に流れ込み、すぐに胃を真っ白に染め上げ、しまいには逆流を起こしてしまったようだった。
 アキリAとは異なり、すぐに亀頭から離れることが出来たのだが、ぎりぎりまで"食事"をし、少しは零れてしまったものの、ひまわりの種を口一杯に溜め込んだ
ハムスターみたいな顔をしていたアキリDの頬がしぼんだ頃には、ほとんどの精液を体内に納め、ぱんぱんに膨れたお腹を慈愛に満ちた表情でなでていた。

 が、呼吸もままならず尿道口を精液欲しさに吸い続けるアキリDの所作はかなり負担の大きいものであったようで、酸欠なのか、そのままアキリDも水に沈んでしまった。
 眠るように横を流れていくその口元はちょうどDの字型に開いていて、アキリ達はどんな夢(Dream)を見るのだろうかとふと思った。

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 だれか「これは食べられるアキリですか?」
 アキリ「アキリは食べられません」


 四人のアキリの"食事"がそれぞれ違っていたように、"食事"における過程は各アキリによって異なり、変化に富んでいる。
 こちらが思い浮かべる印象と内容のギャップが一番無いのが、アキリEの"食事"だろう。
「もぐもぐもぐもぐ、もぐもぐもぐ」
 アキリによっては全く等号が見当たらない"食事"も、より早くてより多くの食糧を求めるという点で必ず繋がっており、
そのため、こちらの視点から見た"食事"は性的な刺激に満ち満ちたものであることが大半なのだが、アキリEはというと、
なかなかそういった要素が見当たらない珍しい"食事"方法をとっている。
「もぐもぐもぐもぐ、んぐんぐ、もぐもぐもぐもぐもぐ」
 もちろん精液の栄養はアキリEも望むところであるのだが、なによりアキリEは尿道球腺液(カウパー腺液)が好物なのだ。
 そんなアキリEの"食事"がなるべく射精を先延ばしにして、尿道口から滲み出るカウパー腺液を味わい続ける方法となるのも当然の成り行きといえるかもしれない。
「もぐもぐもぐ……ごっくん。もぐもぐもぐもぐ」
 少し渋い顔をして亀頭を口に含んだアキリEは、顎を上下させて、時間の許す限り口の中でモグモグと陰茎をやわやわと噛み続ける。
 もごもごと口を動かしている内に、水気の含んだ音が聞こえ始める(カウパー腺液が口内にいくらか溜まる)と喉を鳴らして、その味に至福の表情を浮かべる。
「もぐもぐもぐもぐもぐ、んっく、もぐもぐもぐもぐ」
 卑猥な言葉でこちらの情感を煽る事もなければ、アキリBのように視覚で訴えかけることもなく、ただただ"食事"する。黙々と。もぐもぐと。
 絶え間ない緩やかな快感は、生殺しされているような消化不良感と、射精に対する飢餓感を増幅させ続ける。
「もぐもぐもぐ」
 と、アキリEの動きが止まる。亀頭から口を離し、手首に巻いたセシウム原子腕時計で時間を確認しながら初めてこちらに言葉を投げ掛ける。
「射精したい?」
 いや、大丈夫ですよと答えると、また雁首をしっかり咥えて"食事"が再開される。

「もぐもぐもぐもぐ、んくっんくっ、もぐもぐもぐ」
 唇と唇の間から一滴もカウパー腺液を垂らすことなく嚥下し続けるその姿は、外見年齢的には七、八歳年下に見えるアキリDよりも赤子らしいかもしれない。
 知らず知らずに長い茶色い髪を撫でていて、少しアキリEはこちらにそのより目がちな瞳を向けたものの、何も言うことなく"食事"を続けた。

「もぐもぐもぐもぐもぐっ」
 時計を確認したアキリEが少しだけ強く噛んだ。痛みを感じる手前の心地よい快感で、その一撃により溜まり続けた欲求が射精という扉を押し開く。
 撫でていた手の平に力が入り、子供ながら大人びたアキリEの顔を腰元に引き寄せてしまう。
「んくっんくっ、んくっんぐっ、うううっ、うええっ」
 喉を叩く精液の勢いにアキリEは動揺しつつも、カウパー腺液を飲んでいた要領で精液も飲み下す。
 が、さきほどとは量も桁違いだし、サラサラとした腺液と比べると片栗粉の分量を間違えたみたいにドロドロと淀んだ精液は、あまりにも飲みにくすぎた。
「うええ、んぐっ、ごくっ、えええっ」
 口と陰茎の間から飲みきれなくなった精液を大量にこぼしつつも、アキリEは出された精子の半数を身体に収めた。
 ヒトでいう第二次性徴初期くらいの、少し膨らんできた胸部よりも遥かにふくよかなお腹と、白濁まみれの薄茶色の身体が、性的魅力の乏しいアキリEを淫らに彩っている。

 しかしながら、前述の跡も、亀頭に浅くついた歯形も、どれもこれも妖しい香りなどどこにもなく、アキリEが"食事"したという象徴(Emblem)に過ぎないのだった。

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 こちら「おいしいんですか?」
 アキリ「まずい! もう一杯!」


「うぅ、にがい、ナニこれ、超まずい」
 アキリEの身体(についた精液)に群がり、おこぼれを貰っているアキリとは正反対の反応を見せつつも陰茎を咥えたまま離さないアキリFに、
こちらが思ったままを伝えてみると顔を真っ赤にして左右のツインテールをぶんぶん振り回しながら否定された。
「あ、アキリがそうしてあげないとザーメンださないでしょう。このちんちんは!」
 口に含んだままで左右に振られたので、陰茎の付け根の部分が少し痛い。

「そんなことも分からないなんて、これだから地球人は……」
 もごもご文句を付けられる。
「あんたが出すものはザーメンだけでいいのに、いっつもいっつも減らず口を……」
 こうやって不満を陰茎を咥えながら垂れ続けるのが、アキリFの"食事"である。
「もうちょっとアキリにありがたみをかんじなさいよね、ほんともうっ」
 言葉を発する度に蠢く咥内や、陰茎を口に入れたまま綺麗に発音する舌による刺激は勿論のことだが、
「このちんちんから出るザーメンがなかったら」
 発せられた声による空気の振動が海綿体を震わせ、それが心地よい快感となる。
「ぶっさいくなあんたがこうやって超絶美人なアキリ達に相手してもらえる訳ないんだからねっ」

「あ、あれ? 前見た時は、え? え? ちんちんギンギンになってた、のに、ふえ?」
 少ししぼんでしまった陰茎を舌で転がして、訳が分からないといった表情をつくるも、気を取り直してもう一度罵声を飛ばす。
「ちょ、ちょっとっ、ザーメン出してもないのにちんちん小さくすんなっ」
 こちらの陰茎はなんら反応しないが、大きくでた姿勢をいきなり変えることは出来ない。
「ちんちん小さくしないでよねっ」
「ちんちん小さくしないで……」
「ちんちん……小さく……うええええん」
 どんどん語気が弱くなり、次第には泣き崩れてしまった。前列のアキリDよりもEよりも身体つきは立派な成人だというのに、もっと小さな子供に見えてしまうから涙は不思議だなあ。
「アキリ、が、ひっぐ、なんかわるいこどっ、したならっ、あやまるからあっ」
 しゃっくりが声の震えが、陰茎を通して伝わってくる。先ほどの気の強いアキリFが嘘のようにしおらしくなってしまった。
「おねがいだからあ、ちんちん、えぐっ、ちんちんっ、大きくしてくだしゃいっ」
 涙をぽろぽろと流しながらじゅぽじゅぽと頭を前後させ、そして懇願する。
「ちんちん、大きくしてえっ、ねっ? あなたがいないとっ、だめなのおっ、あなたのざーめんっ、ほしいのっ」
 水面が波打ち、鼓膜にビリビリと響くその声は、陰茎をぶるぶると振動させ、一度は霧散した血液もまた集まってくる。
「ああうっ! おっきくなっれひたっ、ちんちん、ぼっきしれきたあっ」
 歓喜の言葉もちゃんと発音できなくなるくらいに大きくなった陰茎にアキリFは今度は嬉し涙を流し始めた。
「あきりもっ、がんふぁるっ、がんふぁりまふからっ、ああたも、いっふぁい、ざーめん、あきりにくだしゃい!」
 陰茎をマイク代わりに使って喋っているかのような大きな声だ。息遣いも全て海綿体を通して体の芯に伝わり、音ではなく快感を増幅させていく。