「なんか産まれたらしいわよ」
「なんかって……何が?」
「くまさんちのお子さん。女の子ですって」
「ふーん」
 僕の気の無い返答が、どうやら彼女の癇に障ったようだった。
「……ふーんって、それだけ?」
「え、あ、いや……めでたいよね?」
「……めでたいって、それだけ?」
「ほ、他に、何か?」
「……ふーん、それだけ? 本当に?」
 彼女が、僕にしなだれかかってくる。
 わかってるんだ、彼女が……そういうつもりだって事は。
「……貴方はそう思ってはいないのかもしれないけど……ウチもそろそろよね?」
「………………」
「何で黙るの」
 確かに、彼女は器量良しの上に、料理もできる、これ以上無いくらい理想な奥さんで、
僕としても彼女との間には……そろそろ、欲しいかな、と思わないでもない。
 とはいえ、彼女とそういう事をするのには、少々覚悟が必要になる。
 何せ彼女は普通の人間ではないのだ。
「……だって、一昨日やったばかりだし、ね?」
「もう二日もやってないって事よね?」
「……そ、そうとも言うかな?」
「そうとしか言わないわ……んっ」
 彼女の二股にわかれた舌が、僕の首筋を這う。いつの間にか、彼女の手足は
僕の身体を包み込むように、がっちりと抱きしめていた。
「その気がないなら……その気にさせちゃうわよ?」
「……ごめん、今日は許してもらえない?」
 明日は仕事だ。大事な会議の予定があるし、遅刻はもちろん、欠勤するわけにはいかない。
「だーめ」
 語尾にハートマークが見えそうな可愛らしい口調での、残酷な宣告。
「君も、僕が明日仕事だってんむっ!?」
「ん……あ……んっ……」」
 彼女の二股に分かれた舌が、僕の口中を蹂躙し始める。二股に分かれているだけあって、
普通の舌では決して為しえない、二つの場所への刺激が行えるわけで、あっという間に
僕の背筋に寒気にも似た快感が走り始める。
「……私がその気になっちゃったんだから……明日はあなたはお・や・す・み・よ?」
 彼女は、普通の人間じゃない。二股に分かれた舌――そう、彼女は蛇の化身だ。
 そして、蛇は性欲の象徴。まあ……彼女もその例に漏れず、底なしだったりするわけで。
 覚悟が必要だというのは、つまり、そういう事だ。彼女が満足するまですると、僕の方は
丸一日は再起不能な状態になってしまう。だから、今日は勘弁して欲しかったんだけど……。
 そんな僕の内心はお構い無しに、彼女は僕の身体を、まるで蛇が獲物に身体で巻きつくかのように
両手で強く抱きしめたまま、ベッドへ組み敷いた。
「……やっとその気になったみたいね」
 僕のあそこは、もうすっかり固くなっていて、準備は万端だ。心の準備はともかくとして。
「勘弁してくれよぉ……」

「だーめ」
 最後のあがきが、一刀両断される。
 彼女の手が、僕のあそこをまさぐり……そして下着の隙間からまろび出る物。
「……わたしの方は大丈夫だし、入れるわね?」
「入れないでって言っても入れる癖に……」
「そりゃね……んっ!」
 彼女の前の穴が、僕の物を飲み込んでいく。
「今日は……そっちなん……だ……はぁ」
「特別、よっ……んっ……あっ、はぁっ!」
 彼女は蛇の化身だ。だから、蛇のそれと同じく、生殖用の穴が二つ存在する。
 つまり、人間の身となった彼女には、三つの穴があるわけだ。
 前の穴、中の穴、そして後ろの穴であるお尻。
「……はぁっ、くっ……やっぱり、ちょっと……いた……っ!」
「無理、するなよ」
 前の穴は、まるで処女のそれかのようにきつい。初めて僕らが結ばれた時から
変わらずに、今でも僕のそれを痛いくらいに締め付けてくる。
 彼女の方も、僅かではあるが痛みを感じるらしい。
「だいじょう、ぶ……んぁっ……無理言って、してもらってるん……だからっ」
 だからだろうか。彼女はそういう事をする時、自分から前の穴を使いたがる事は無い。
今日は、自分でも我侭を言っているという自覚があったからという事か。
「……まったく、仕方無いな、君は」
 不意に愛しさが湧き上がってくる。眉根にしわを刻みながら、懸命に僕の上で
腰を振る彼女の姿に、僕の顔には自然と笑みが浮かんでいた。
「いひぁ!?」
 下からの不意の突き上げに、彼女の表情が変わる。
 狭いそこを傷つけないように、ゆっくりと。だが彼女の快感のツボをつけるように、大胆に。
「……っ、ぁっ」
「んっ……あっあ……ふぁっ!」
 狭いが故に、お互いの限界はすぐに訪れる。
「わたし……きちゃ……ああっ!」
「僕も……出そう、だ……」
 彼女の背が、快感に反りあがっていく。
 だが、僕は少しでも彼女の身体を逃さまいと、その背に手を回し、抱きしめる。
 彼女もまた、同じように改めて僕の背に手を回し、僕らは抱きしめあった。
「いくっ……いくぅ……いっ、ひゃああぅぅぅう!」
「……くっ」
 湧き上がってきた愛しさを、そのまま彼女の最奥へと注ぎ込む。
「いっ……ひぁっ、ふっ……んっ……あくっ」
 腕の中でビクビクと震える彼女の身体を感じながら、僕は自分の幸せを噛み締めていた。
 ……まあ、一先ず明日以降の幸せの事は置いておいて、今日はこの幸せを味わい尽くすとしよう。
「……はぁ……ふぅ……すごかったぁ……」
 腕の中で、もう彼女は回復しようとしている。
 僕はその精力にいつものように呆れながら言った。
「くまさんに謝っとけよ」
「へ? なんで?」
「僕とこういう事するダシに使っておいてそりゃ無いだろ」
「ん……そうよね。ごめんなさい、くまさん」
「それから、おめでとうもだ」
「おめでとう、くまさん」
「……僕らの子供ができたら、見せてあげないとな」
「そうね……きっと可愛い子よ。わたしと貴方の子供だもの」
「君に似て美人だろうな」
「貴方に似て優しいでしょうね」
「……ははは」
「……ふふふ」
 僕らは笑いあい、そして口付けを交わし――
「じゃあ、第二ラウンド、いきましょ?」
「……ちょ、ちょっと休まない?」
「だーめ」
 ――そのまま第二ラウンドへとなだれ込んだというか込まされたとさ。
ちゃんちゃん。