ひとたび“つがい”が出来れば相手を貪り尽くす程に強く性欲を発揮してしまう、お鶴。
だが、罠から助けられた恩を返そうと、そこを抑えて「普通の」夫婦生活を送る事を決意し
恩人の男の許へ嫁ぎ行く。もちろん男も美しいお鶴を喜んで迎えた。

結ばれてしばらくは、幸せに日も夜も暮らすものの
否応なく溜まる欲求を抑え散らそうと、日々くりかえされる部屋に篭っての激しい慰み。
そんなある日、決して近づかず覗かないで欲しいと念を押したはずの夫が
襖の陰から自分の淫らな姿態を覗き、あまつさえ自涜しているのを目の端に獲らえたとき、
とうとうお鶴は、オスを限りなく求める強い本性に負けた。

「わたくしは我慢しようとしたのに。あなたが悪いのですよ」

飢え昂った淫心の前に現れたオス、飢餓の狼に鼠をぶらさげたも同然だ。
本能のままに、体の疼きを解き放って目の前のオスへと襲い掛かる。
あっという間に仰向けにすると騎馬に跨る格好で組み敷き
剛根を喰らうように自らの秘部へと捕らえようとする。
普段とはまるで違う、凄絶なほどに妖艶な妻の貌、体を押さえる強い力に
驚き、突然のことに抗うように身悶えさせる男。
しかし押し潰すように寄せられた豊かな胸が男の乳首を弄い、
まろやかな尻が腰周りを磨り潰し撫であげると、全身にぞくりと粟立つような快感が走り
途端にあっさり腑抜けた男の体中から、ゆるりと力が抜けて行った。
おとなしくなった隙に顔目掛けて熱いくちびるをあびせる、お鶴。
そしてお鶴のくちびるが、男の緩んだ口元から舌を吸い出し
咥えしゃぶる頃には、ぱっくりとぬれた下の唇にも男は咥え込まれていた。

そこはいつもとまるで違っていた。
常の交わりでさえ、それまで味わった事も無い途方もない心地よさであったはずなのに、
いま男自身を愛でる動きは、殆どこの世のものとは思えない
もはや責め苦となるほどの快楽を生んでくる。
亀頭に密着し包み込み、癒着したかとさえ感じられる柔らかな媚肉が、
女が腰を揺する度に、攣るような気持ちよさを思い知らせて、引きズリ剥がされて行く。
膣壁のすぼまりが、胴を滑らかに撫でたかと思えば
強く締まり、細やかな襞々がかり首をやすり削るように、ぬめっと通り過ぎる。
この淫らに重なり蠢き、快感を擦り付けるように送り込んでくる肉襞達に誘われれば、
男根は膣壷の奥の奥へと、まるで小水を漏らす如くに堪え性なく、絶え間なく
びくんびくんと白い精を吐き出し続けるしかなかった。

男の身体は既に快楽に従順にたゆみ、動こうとしない。
意識は、眩く脳裏に揺れる危険なまでの快美感を遠ざけようと、
身体との繋がりを断ち薄れ行こうとする。
だが今まで睦み合う中でも感じたことのない、ありえない程に
濃厚にただよう女薫が、艶やかにあえぐ嬌声が、熱くうるんだ肉の感触が、
何よりその極まった快美感自体がそれを許さなかった。
男の頭の中に染み入り、ささやき、侵し尽くし、甘く残酷に脳を励起させ続ける。
ますます勃起は強く滾り、命を垂れ流すように射精は止まらない……
気を失することさえ許されない哀れな男。
優しく与えられる暴力的なまでの厖大な快楽を、正面から受け止める破目に陥り、
かくして女肉の悦楽に比して、あまりに無力であった男の自我は、果て圧し潰された。
痴呆のようにうめき、延々と淫らな痙攣を続け、
緩みきった全身と、張り詰めきった剛直から
涎、汗、涙、精――あらゆる体液汁を放ちながら。

やがて女は落ち着きを取り戻したが、
すでに精気を吸い尽くされ廃人の如くピクリとも動かない男を下に
ただ呆然とするばかり。そしてお鶴はしばし泣き泣きはらしたのち、
静かに家戸より飛び去るのであった。めでたし。

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最終更新:2008年01月02日 22:51