アパートのドアの前で、大きな大きな深呼吸をいっかーい、にかーい、さんかーい……。


 よしっと覚悟を決めて、なるべく静かに鍵を開けて、出来るだけゆっくりじわじわと
ドアを押し開ける。
 何時でも素早く、閉じれる程度まで細く開けたドアの隙間から、聞き耳を立てても
取りあえず、とたとたという忙しない足音が聞こえてこない事にほっとしながら、急いで
室内に滑り込むと、目の前に広がっているのは、手乗り台風に蹂躙されまくった廃墟。

 そして、窓際のカーテンに爪を引っ掛けて宙ぶらりんになったまま、すっかり嗄れた声で
俺に向かって、ぶーたれ続けてるお嬢様だった。



 ほんの一ヶ月前、遂に棺桶に片足突っ込みやがった悪友が、全然似合ってない照れ笑いを
顔中に貼り付けながら、新妻と新居を見に来ないかと俺を誘ったのは、ほんの2週間前。
 気が付けば、お土産にと持っていったワインの紙袋の中には、銀色に見えなくも無い
灰色と白色の斑な毛並みの子猫(メス)一匹とネコ缶が数個突っ込まれて、無理矢理
お持ち帰らさせられてしまった。

 犬なら実家で飼ってた事も有るので勝手も解るのだが、猫は本当に始めてなので
自信が無いと、散々しぶったのだが最終的には悪友の『アパートに、生まれ立ての子猫。
女の子を部屋に連れ込む小道具としてはコレ、最強!!!』の殺し文句に、見事に騙された。

 確かに、最初の三日間ばかりは、俺の手すら簡単に届かない本棚の一番上の隅っこで
ぷるぷる震えているだけだったが、それも今となっては夢幻の如くなり。
 俺の性格を見極めやがったのと部屋の雰囲気に馴染んだ途端、アパートは戦場と化した。

 ケージに入れておくと、声が潰れるまで延々鳴きまくる。
 かと言って、根負けして室内に放すと、銀の弾丸よろしく縦横無尽に走り回るので
床は早くも傷だらけ。
 時々、垂直な壁を経て天井を触る事にまで、果敢に挑戦していらっしゃる。
 更に、開けてあろうとなかろうとお構いなしに、ガラス窓には力いっぱい体当たり。
 『ココは二階なんだから、落ちたら命が無い』と説教した瞬間だけは、一応しおらしく
耳を伏せて聞いている振りをしてみせるのだが、最早カーテンが只のボロキレになってる
あたりで、全然学習していないのは丸判り。

 時々、ネコトイレに、じゃなくて俺が床に脱ぎ捨てたままのシャツに小をしてしまうのや
ずっとお気に入りの遊び道具が、俺の手足と言うのも勘弁して欲しいのだが、本当に一番
痛かったのは、知らん間にプリンターの中にボールペンを突っ込まれてた件。
 しかも、俺が真剣で怒らざるをえないような事をやっちゃったと自覚した途端、一目散に
ケージの中のネコベットに飛び込んで、即爆睡。
 とてもじゃないけど『女の子を部屋に連れ込む』どころの騒ぎじゃない。


 だけど、今現在、何故かベッドに縛り付けられている俺の足元で、女の子座りしながら
右手で俺のモノを弄りながら、左手で自分自身を慰めて息弾ませてる少女は、一体誰なんだ?


「……んっ、あっあ……、ニャ……うニゃゥ!!!」

 さらさらと、しなやかに揺れる長めなおかっぱの髪は、銀色。
 その天辺では、同じ色の猫耳が一対、彼女の快感に震える声に合わせて、ふるふる動いている。
 今、その瞼は軽く閉じられているので、本当ならば全然解らないはずの瞳の色が、間違いなく
チャコールグレイなのを、俺は知ってる。
 新鮮な空気を求める金魚の様に、ぱくぱくと小刻みに開け閉めを繰り返す口元から、たらたら
流れ出す涎が、月明かりに輝いて。
 薄い胸板や細い腰周りに相応しく、慎ましやかなに上下している乳房の先端でつんと高く、存在を
主張している桜色の尖がり。
 うっすらと下半身を飾っている銀色の恥毛とぱたぱた振り回されている同色の尻尾以外の全身を
ミルクに薔薇の花びらが浮かんだ色に染め上げてる少女の瞼が、きゅっと強く顰められて……。

「はぁっ、……ニゃァん、ひ……ゃぁぁァん!!!」

 糸が一斉に切られた操り人形が崩れ落ちる様に、力の抜けた上半身が、ぱたりと俺の体の上に
重ねられる。
 しばらく、はぁはぁと息を整えていた彼女がゆっくり顔上げて、俺のそそり立っているモノに
そろそろ口を近づけていく途中、ようやっと二人の視線が絡み合った。

「……えーと……」
「……跪いて足をおニャめっ!!! こにょ、淫らな雄ヌコがっ!!!」
「本っっっ当ーに、そうして欲しいのなら、まず最初に、この戒めを解けっ。莫迦猫っっっ!!!」



『絶対、絶対、本当の本当に、怒らない?』としつこく何度も確認してからしぶしぶ、おてんばネコは
俺の戒めを解いた。
 当然、速攻で俺の膝の上で逃げられないようにしっかり押さえつけて『百叩き』ならぬ『百擽り』
の刑ですよ。
 もうどうせシーツはコイツの愛液でべったべたになってるんだから、いまさら少々オモラシされ様が
潮吹かれようが、そんなの関係ねぇ!

  いやいや、別に俺は全然、怒ってなんかいませんよ?
  コレは、単なる、躾です。
  ……飼い主を舐めるんじゃない。

 しかも、最初こそは、散々嫌がって必死で逃げ出そうとしていたおてんばネコだったけれど
ある一線を踏み越えて、スイッチが入ってしまった後はもう、でろでろ。
 物凄い壊れ方で、シーツの海を縦横無尽に泳ぎまくり、終いには床に落っこちてしまって
ベッドの下板の角に思いっきり頭をぶつけながらも、まだ悶え狂っていた。

 一体、挿入せずに何回失神させられるのか、とことん追い詰めてみたい気もしたけれど
その考察は潔く、次の機会に譲る。
 上も下もぐちゃぐちゃにして、大泣きしながら懇願して来たのを建前に、もったいぶりつつ
暴発寸前の俺のモノを前戯も無しに、手荒く捩じ込んだ。
 それだけで、また一人で勝手に彼方に逝っちゃったのを、奥底をがっつんがっつん突付き上げ
素早く呼び戻す。

「あーっ、あぉん、あぉおん!!! ……いニャらぁ、いニャぁぁぁん!!! ……ほっ、ほんとニャら
ワタシが、あニャたを、前の飼い主のお嫁さんみたいに、虐めニャきゃ、いけニャいのをぉぉっ!!!」
「……桶。アイツ等の力関係は総て、把握した。だが、断るっ!!!」
「ぎゃおぉん、ぎにゃぁぁ!!! ……ワラヒ、壊れる、壊れちゃうよおっ!!!」
「破壊無くして、創造無し。万物は流転する。諸行無常。って言うか、さっさと逝けっ!!!」
「ふにゃにゃ、……ぎゃぁぁぁぁん!!!」

 オマエは、ハウリングを起こしたスピーカーか? みたいな声を部屋中にわんわん響き渡らせて
降りて来れなくなった少女を玩具みたいに、朝まで延々犯し続けた。


「……こっ、こニョ辱めは、一生忘れないニャっ!!! 覚えていろだニャ。捲土重来にャぁ!!!」 
「朝飯は、トーストとベーコンエッグでいいか?」
「……うん、二つ欲しい。両目焼きが大好きニャ」
「そっか、冷ますのにもうしばらくかかるから、先にシャワー浴びとけ」
「……一緒に、入る……」
「何か言ったかぁ?」
「……にゃ・ん・で・も・にゃ・いっ!!!」