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ここに独白しよう
どうやら俺は人間として壊れているようだ


始まりはただの偶然だったのか、必然だったのかは今でもわからない
俺はこの世に生を受けてから十二年
ただの一度も親しい人物の死を経験したことが無かった

だからなのかもしれない

なまじ死を経験してなかったばかりにあの悲劇は起こった
あれから5年たった今でも、忘れることはない
だが、現実はいついかなるときでも
平等に不幸を産み出すのだ


小学校六年生の夏
いつもと同じように学校へ行き、そして友達と一緒に帰る
変わらないはずだった日常
あの日も仲良くなったばかりの友達と一緒に帰っている最中だった
まだ太陽の輝きが強い正午過ぎ
俺はあまりの暑さにアイスが食べたくなった

「わりぃ、金借してくれ」

あの頃の俺はやたらと金を借りていた
別に貧乏だったわけではない
ただ単に学校へ金を持っていく習慣が無かっただけだ

「また~? まぁいいけどさ。ちゃんとすぐに返してよ」
「俺は借りたものはすぐに返すってことには自信があるぜ」
「それはあたりまえだバーカ。で、いくら?」
「三百円くれる?」
「ハイ、三百円」
「サンキュ-。助かるわ」

だがその後にアイスを買うことは無かった
俺達の家までの道でコンビニは無かったからだ

それからしばらくたわいのない会話を続けていると、分かれ道が見えてきた
俺はこの三叉路を左へ
アイツはまっすぐ
明日はちょうど休日
そこで俺は考えた

「明日さ~お前の家行っていい~?」
「たぶんいいと思うけど」
「よっしゃ。じゃあ明日の昼ごろお前の家行くわ」
「来るのはいいけど、ちゃんと金持って来いよ」
「そのつもりだって」
「んじゃーな」
「おう、またな明日な」

そうして、笑いながらお互いを見送った

そうして俺達は離れてゆく
また明日、明日遊びに行くと約束をした
だから俺は二度とアイツと会えなくなるなんて

これっぽっちも考えちゃいなかったんだ


ぴっぴろぴろぴろぴっぴろぴろぴろぴろぴっぴろぴろぴろり~
ぴっぴろぴろぴっぴろぴ「はい、もしもし」

電話なんて出なければ良かった
そうすれば、俺はそのことを少しでも先延ばしにできたのに

アイツが死んだ

死因は急性心筋梗塞
アイツが居間で倒れているのをその祖母が発見
すぐに救急車で病院に運ばれたが
その時すでに呼吸停止状態だったらしい
救急隊員が心肺蘇生法を実行するが十分後、死亡が確認された

正直、何かの冗談かと思った
だって俺とアイツはたった数時間前に別れたばかりだった
誰にも話さなかったが、アイツの祖母はアイツが帰宅していることを知らず
アイツと最後に会話をしたのは、どうやら俺だったらしい

信じられなかった

その後担任から明日の夜に通夜を執り行うと電話があった

次の日
アイツの家は既に弔問客でごったがえしていた
し~んとした中で誰かがすすり泣いている声だけが
暗闇を木霊した
俺は焼香の順が回ってくるまでの間考え続けていた

馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な
信じられない信じられない信じられない信じたくない
アイツとは昨日笑って別れて
遊びに行くって約束したのに
なんで俺はアイツの通夜なんかに来ているんだ、と

そんなことばかり考えていると
俺の順が回ってきた
先生に焼香の仕方を教えてもらわなければならなかった時には
自分の無知さを呪った

アイツの両親から
最後に息子の顔を見ていってくれ、と言われて
俺は泣きそうになった
俺はどんな顔をしてアイツと会えばいいのか、
全くわからなかったからだ
だから、せめてアイツの死に顔は安らかであってほしいと
そう願いながら顔の部分が両開きになった棺桶から
アイツを覗き込んだ

顔が半分見えた所で
俺は顔を引っ込めた

あれ以上見ていたくなかった
「死者の顔」なんて想像もしたことがなかった俺は
見て、そして知ってしまった

死者の顔は死者の顔でそれ以上でもそれ以下でもない
ただ、そう在るだけだということを

結局俺は泣けなかった
皆が泣いている中
俺はただ一人、涙を流せずにいた

あの一件以来俺は変わったと思う
冷めてしまったのだ
人生なんてそんなもんだ
どんなに他人に優しくしても
結局は失われてしまうのだ
どんな助けたくても、助けることなんて出来なかった
何も感じなくなるのが一番良い
そう思ってしまった

だから俺は、その日を境に壊れてしまったのだ


それから二年の月日がたった

アイツの一件は徐々に忘れ去られ、風化していった
その間俺はただ生きて生活をする
ただの機械のような毎日を送っていた

いつもと変わらない生活という名の作業を繰り返していた
そんな中、毎年恒例の台風が発生し
学校が途中休校となったので自転車で帰っていると
帰り道にある酒屋の駐車場に
小学生らしき人だかりが出来ていた

一抹の好奇心でそこを覗いてみた

そこには昨日まで無かったダンボールの箱と
生後1ヵ月半ぐらいの子猫が四匹、捨てられていた

その子猫は激しく吹きつける豪雨でびしょびしょに濡れていて
本来ならば綺麗であろう明るい黄金色の体毛をしていた

無責任な小学生たちがかわいそうだと連呼した
小学生たちが無闇に触って子猫達を怖がらせた

粗末なダンボールに申し訳程度に敷かれたタオルの上でみい、と子猫の一匹が鳴いた
絶望の中にいて、それすら認識できていない子猫達と
かつて絶望の中にいて、何も感じなくなった俺

俺は膝を折って、一度だけ、子猫の頭を撫でた
みい、と猫が鳴いた
俺は気怠く首を振った。やはり、何も感じなかった
 俺は立ち上がって踵を返す
 憐憫は湧かなかった。同情は起きなかった。やはり、何も感じなかった
 みい、と猫が鳴いた
 振り返ると、さっき頭を撫でた子猫が、おぼつかない足取りで付いてこようとしていた

よせ

俺ではお前を救えない

 みい、と猫が鳴いた。
 俺は怯えたように一歩、後に下がった。
 子猫は求めるように一歩、前に進んだ。

 よせ

俺は何かを救えるような人間じゃない
 みい、と子猫が鳴いた
 俺は動けなかった
 子猫は求めるように一歩、前に進んだ
 子猫は求めるように一歩、前に進んだ。子猫は求めるように一歩、前に進んだ。子猫は求めるように一歩、前に進んだ。子猫は求めるように一歩、前に進んだ。子猫は求めるように一歩、前に進んだ。子猫は求めるように一歩、前に進んだ
 みい、と子猫が鳴いた

「馬鹿野郎」

助けてやる
放っておけば死に果てるであろうほかの子猫達も
俺が救ってみせる

まだ濡れていない体操服いれに子猫達をいれ
自転車をとばす
もう、だれもいなかった
あれだけ沢山いた小学生たちも
誰一人
いなかった

なけなしの知識を総動員して
ダンボール箱へ移し変え、清潔なタオルで震える体を拭いてやる
俺は子猫達へ温かいミルクを構えてやった

子猫達はみい、と鳴くだけで
俺を恐れて口をつけようとしなかった

頼む。飲んでくれ
そうしないと俺は
また救えない

願いが届いたのか
子猫達は恐る恐るとミルクに口をつけた

嗚呼、コレでやっと俺は
救ってやることが出来た

そう、思った


次の日学校で
一学年下の男子生徒に

子猫は大丈夫かと聞かれた

俺がああ、とだけ答えると
そいつは少し逡巡した後

ありがとう

とだけ言って頭を下げて帰っていった
意味は解らなかったが
久方ぶりに
俺は嬉しいと、感じることができた

拾った子猫達は
それから二日後に一匹を残して
残らず死んだ

死んで冷たく硬直した子猫達を裏庭に葬る

俺は無力だ

ざっくざっくと俺が土を掘る音だけがあたりに響く

俺は無力だ

何がいけなかったとか、そういう問題じゃない
俺はアイツらを救えなかった
それだけのことだ

俺は無力だ

二度と動くことは無い三匹を穴の底へ
出来る限り優しく沈める

俺は無力だ

土の中はいつだって暖かい
ここなら濡れることも無いだろうし
寒いと感じることはないだろう

俺は無力だ

最後の土を被せてやる
少し山のようになった墓標とも言えない墓を見る

俺は無力だ

すまない、俺はお前たちを救えなかった

俺は___________無力だ
俺の罪の証である最後の子猫は
兄が引き取ると言った
俺とは違い万事そつなくこなす兄ならば
任せても大丈夫だろうと
そう思って兄へ預けた
子猫が引き取られて数日後
俺は

アイツに名前をつけてやれなかったな、と気がついた

あれから三年たったある日の深夜
物音で目が覚めた俺は
美しい一人の少女が裸で目の前にいるのに
気がついた

「やっと、やっと貴方に会えた」

透き通った綺麗な声で
その少女は泣きながら俺にすがり付いてきた

「君は……誰、だ?」
「私が………わからないのですか?」

暗闇に慣れてきた俺の目が映し出した彼女は
月光で黄金に輝く金糸と
母性を強調するような大きな胸
それに反比例するような細い腰
肩口までかかる豊かな金の髪の間から見える耳
そして人間にはあるはずの無い
細く長い尻尾

「私に名前はありません」

彼女は形の良い唇から言葉を紡ぐ

「貴方には命を助けてもらいました」

ヤメテクレ

「私は三年前に貴方に救われた、一匹の猫ですよ」
「違う」

え、と彼女がつぶやく

「俺はだれかを救えるなんてそんな
大層な人間なんかじゃない」
「違います。貴方は私を救ってくれました。
あの冷たい地獄から、貴方は私を救ってくれました」
「君だけを残して君の兄妹全てを殺してね」
「そのことを気に病む必要はありません。
姉や弟たちは貴方を憎んでも、怨んでもいませんでした」

そんな馬鹿な
俺はただ自分の身勝手で彼女たちを拾って
そして殺してしまったのに

「姉弟達は幼心に、誰にも看取られず
ただ朽ちるよりは
死ぬとわかっていてもその最後まで
見続けてくれた貴方に、感謝していましたよ」
「それでも、俺が君の姉弟達を殺したのに変わりは無い
俺は無力なだけだったんだ」

そこまで言って
彼女の整った眉がぴくりと動く

「どうして貴方はそんなことばかり言うのです。
貴方は無力なんかじゃない。
あなたが無力なら私はここに存在しません」

言って、彼女は顔を近づけてきた

「な、なにを」
「まだ私がここに来た理由を言ってませんでしたね。
私は貴方に恩を返しに来ました」

彼女は顔を近づけてそして

「ふっ・・・ん、ん」
「・・・・・・!?」

俺とキスを交わした

長いくちづけを終え、彼女が離れると俺が問いただそうとすると

「いったい何でこんなんんっ・・・むぅっ・・・」
「ん、あぁぁ・・・」

今度は舌まで入れてきた
彼女の舌が俺の口内を駆け回って
俺の歯茎を舐め回して舌に絡みつく

「ぷはっ、どうですか? 私のキスは」

彼女のとのキスは甘く、頭がぼーっとしてきてしまった
対する彼女の瞳も大きく見開き
透き通った翡翠色の目もトロンとしている

「ちょうどよかったです。貴方に恩返しと
無力じゃないってことも教えられて」

そう言って彼女は既にいきりたっている俺のモノを自由にすべく
ズボンのジッパーを下ろす

「わっ…男の人のってこんなになってるんですね」
「ま、まさか君……ダメだ!俺なんかにそんなことしちゃうわぁ!?」

彼女は俺のモノを口に含んだのだ

「んっ、ちゅぷっんはあっ…すごい匂い………
それに大きいんですね。
なのにビクビクしちゃって、ふふっ、カワイイですよ」

彼女の言葉に俺は顔を羞恥に染める
だが、反論出来なかった

「きもふぃいいですかぁ?」

俺のモノを含みながら喋る彼女はひどく淫靡で
同時に限りなく美しい

「私の舌、ザラザラしてますけど大丈夫ですよね?」

実際彼女の舌は少し刺激が強いものの
我慢できる範囲のものだった
いや、むしろその刺激が俺を更なる快感へと導く

「あっ、 どんどん透明な液体が出てきましたよ。
感じてくれてるんですね」
「んっくあぁぁ……ダメだやめてくれ……」
「ダメですよ。これは恩返しなんですから。
私はまだ恩を返していませんから……ちゅぷっちゅぷっちゅぱっ」

さらに激しく俺のモノを責める彼女
色々な所を責め立てる

「んくぁぁ!!」
「んっ!……なんだかここを舐めるとさらに大きくなりましたよ。
もしかしてここが弱いんですか?」

彼女が舐めているのは亀頭と呼ばれる部位
そこを舌でちろちろと舐め回す

「クッ…ああっ……ダメだ出るっ……」
「出るんですか? なら出してください!」
「……くあぁああぁああっ!!」

びゅくんびゅくんと震える度に節操なく精液を吐き出す
俺のモノを彼女は恍惚とした表情で見ている

「ごめん」
「なんで貴方が謝るんですか?」
「だって、君の顔を汚してしまったから」

彼女の顔は満月の月光と俺の精液でてらてらと光っていた


「そんなこと気にしなくてもいいんですよ。
貴方は優しいんですね」
「優しくなんて無いさ。
君たちを助けたのも、ただの気まぐれだよ」
「嘘を言うのはこの口ですか?……つぷっ…んちゅ」

もう一度キス
俺はロクに抵抗できなくなっていた
身体に力が入らないのだ

「そろそろいいですね。
んしょっと、挿れますよ?」

彼女の股間には髪と同じ黄金色の毛が生えて
すでにそこは充分潤っていた

「っ! それだけはダメだっ!君自身の為にもそれは止めろ!!」
「ダメですよ。さっきも言ったでしょう。
私は恩返しに来たって。それに……私が出来ることなんて
これぐらいしかありませんから」

そう微笑んで彼女は俺のモノへ腰を降ろす

「痛~っ……!」
「くっ…早く、抜くんだ。俺は君にそこまでしてもらうほどのっ……価値はない」
「何……言ってるんです、かぁ……そんなことばっかり…言わないできださい」

そう言いながらも彼女は腰を上下する
その結合部の周りには徐々に破爪の血がまとわりついてゆく

「私わぁ…貴方は無力じゃないことをっ、感じてほしいんです」

翡翠の瞳に涙を浮かべながら紡ぎだした彼女の
声に俺は聞き入っていた

「私でっ…つぅっ…、私がここにいるって!
貴方が救った重みをっ……私という存在をっ貴方に感じてもら…うのが
私のっ、恩返しです!」

俺は言葉を失った

「すまなかった……なら俺も精一杯
恩を返させてもらう」

嬉しかったのだ
俺は彼女助けることが出来た
彼女の顔を、暖かさを、重さを、声を
そして彼女という存在を感じることが出来る
俺は無力じゃないってことがわかった
だから、嬉しかったのだ

「ひゃあああっ……良いですっ…貴方を…感じられます。
尻尾を……尻尾を掴んでくださいっ……!」

言われた通りに尻尾を掴む

「あんっ…そっそれを扱いてください!」
「くうっ……こ、こうか?」
「ふっ、ふにぁぁぁああぁぁぁん!!」

彼女の尻尾を上下に扱くとまるで狂ったかのように嬌声を上げた
肝心の尻尾は男性器のようにビクビクと脈打っている
瞬間、彼女の動きが激しくなって
その大きな胸が上下に激しく揺れる
途端にただでさえ気持ちの良かった彼女のが
さらに締め付けてきた

「良いですっ……! わっ私、もうっ……」
「うあっ……俺も、もう………気持ち良すぎる…!」
「一緒に……一緒にイってください…!」
「ダメだっ…!このままだと膣内にっ…出るっ……」
「いいんですっ…そのままっ、膣内にっ…膣内にいっぱいくださぁぁい!!」

彼女が上なので俺は動けずにいた
そして彼女はラストスパートをかけて
俺達の嬌声と水音が静寂な深夜を騒がしくしていく

「ダ、メ……だっ…………出るっ……」

「イって!イってくだ、さい!!」

彼女が言い終わったのと同時に最高に強く締め付けられ
俺は一番強く彼女を打ちつけ、強く彼女の尻尾を扱き上げた
「くっ、あぁぁぁああぁあぁああ!!」
「んあっ……イクッ…イキますっ……ふにゃああぁぁぁぁあああああああ!!!」

ドクッビュクッビュルビュルビュルルルルッ
俺はさっきと同じか、それ以上に長く多い量を彼女に射精していた

「あぁぁあっ…私の膣内にっ…貴方の熱いのがたくさん、出てます……!」

全てを放出し終わった俺のモノを彼女が抜くと
彼女の秘所から俺の放った精液と
彼女の愛液が混ざった混合液がごぽり、と音をたてて
俺の上へ落ちた

お互いに肌を重ねあったまま、どちらともなしに話しかける

「好きですよ。貴方のことが世界で一番大好きです」
「ああ、俺もこれ以上無く君のが好きさ」

陳腐な台詞だったが、お互いの心に嘘は無かった

このまま心地よく眠りにつくかと思っていた俺に
予想外の一声がかかるなんて分かるわけが無かった

「ところで………まだできますよね?」
「は……い?」
「あ、言ってませんでしたけど私、今発情期なんですよ~」
「何ですと……」
「あれぐらいじゃ身体の火照りが治まらないんです。
だ・か・らぁ~、もぉっとしましょう?」

う、嘘ぉ

「へ~、おいしそうな物がたっくさんありますね~」
「魚売り場だからな」
「私にとっては天国ですぅ~」
「随分と安い天国もあったもんだな」

あれから八回もシテしまった俺達は今
近所の総合デパートに来ている
何故かというと今は俺の服とジーンズと耳を隠す為の帽子を着けているが
彼女の着る服と
食材がなかったので、買いにいくついでに
彼女自身に選んで欲しかったからだ

「あんまりくっつかないでくれないか」

夏場なので彼女が着ている服はTシャツ一枚と
薄い上着をきているだけで
俺がブラジャーなんか持ってるわけがないので
彼女が擦り寄ってくるたびに、ノーブラの胸が俺の体に当たってしまうのだ
しかもショーツなんかも持ってるわけがないので
下は……ハイテナイ
もちろんそんな人間社会の常識を知らない
その上下手なアイドルよりも笑顔が似合う天然な彼女は

「……? なんでですか?」

と言うわけだ

「そ、その君は綺麗だし、その……なにより……」
「なにより……何です?」
「て、照れるん………だ」

彼女は一瞬呆けてそれから

「あははっ、やっぱり貴方はカワイイですね」

とか言ってくれやがりましたのだ

大量に買って、もうすぐ家が見えてくるといった所で
俺はずっと考えていたことを口に出す

「ウィッシュ」
「え? なんです。それ」
「名前だよ」
「それってもしかして……」
「君の名前だよ、名前まだ無いって言ってただろ」

彼女は心底驚いた顔をしていた

「君は俺にとっての希望の光だからさ
ウィッシュ、ウィッシュ・レイライトなんてどうかな?」

彼女はウィッシュ・レイライトと二、三度繰り返してから

「ウィッシュ、良い名前です。
その名前これから使わせていただきます。
ほんとうに……ありがとうございます……………ふぇええ」
「泣くなって。ま、よろしく頼むよ。ウィッシュ」
「は……はい。こちらこそよろしくお願いします!!」

泣き笑顔で返された俺は

「ああ。これからもな……ん、んんっ」

生まれて初めて自分からキスをした

だが、今振り返ってみると
あの時救われたのはウィッシュじゃなくて

俺の方だったのかもしれない

END

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最終更新:2007年09月02日 00:22