――夕食が終わり、シルスは魔術学院時代の先輩であるヘイルの元へと来ていた。
「――そうだったのですか。それは災難でしたね」
「ええ、まぁ。あの時ベルがいなかったらと思うと、正直ぞっとしますよ」
 その後、きっちり怒られちゃいましたが、とシルスは頭を掻きながら言う。
 二人の話題は、主にシルスとベルの旅に関しての事だった。
 その中でふとベルの話が上がった時に、ヘイルは顎に手を当てて、
「――そう言えば、シルス君はベルさんについてどれぐらい知っていますか?」
「え、ベルの事ですか?神聖竜って事と……後は純然たる血統がどうの、とか言っていた気がしますが」
「ふむ。では君はぶっちゃけ彼女の話を結構聞き流していたんですね」
「う……」
「彼女は彼女自身が言う通り、凄いというか……アレですよ?」
「アレ?」
「いわゆる逆玉というヤツです。それも奴隷が一国の姫と結婚するぐらいの」
「ぶッ!」
 シルスはミルクティを吹き零しかけながら、慌てて首を振った。
「ぼ、僕とベルは別にそんな関係ではっ……」
「そうなんですか?レオ」
 ヘイルが傍らに控えている猫人に訊くと、レオと呼ばれたその猫人はゆっくりと首を振った。――横に。
「失礼ながら言わせて頂きますと、ベルディラウス様からは貴方の――シルス様の匂いがします。逆も同様ですが。それも単なる体臭ではなく、性の――」
「だぁー!?」
 何かとんでもない事を言われそうになったので、取り敢えずシルスは大声で遮った。
 その様子を見て、ヘイルは声を出さずに笑う。
「君は相変わらず初ですね。それぐらいは分かっていますよ。彼女のあの態度を見れば」
「はぁ……」
「彼女が貴方にあそこまでベタ惚れでなければ、今頃はこの塔が跡形もありません」
「うーん……」
「……何やら、腑に落ちない事があるようですね?」
「ええ……」
 シルスは一拍置いて、実は――と、切り出した。

 部屋でベッドに寝転がっているベルは、夕食前とは打って変わって凄まじく上機嫌だった。
「~♪」
 常人には聞き取る事の出来ない竜言語で鼻歌さえ歌っている。
 ――と、その鼻歌が不意に止んだ。
 ベッドから上体を起こし、扉を睨み付ける。瞬間、軽いノックの音が響いた。
「――誰だ?」
「湯浴みの準備が出来ましたので、お呼びに参りました。如何なさいますか?」
「ああ、分かった。少し待て」
 そう答え、ベルはベッドを降りた。
 下腹を一瞥し、愛しそうに撫でて、扉へと向かう。
 扉を開けると、そこにはポチではない方の猫人が立っていた。
 ベルは夕食時の記憶を探り、レオという名前を導き出す。
「こちらです」
 レオに導かれ、ベルは通路を進む。
 陰湿な雰囲気を持つ、薄暗い石造りの通路。
 数メートル間隔で配置されている窓から時折吹き込む風が、ベルの肌を撫でた。
「――時に」
 不意に、ベルが口を開いた。
「シルスはどうしている?」
「我が主と談話中でございます。――お呼び致しましょうか?」
「いや、よい」
 夕食前の行為を思い出し、小さく笑いながら申し出を断る。
 ここの所、野宿が続いていただけに一緒に湯浴みというのも一興だが、また襲ってしまいかねない。
 つい数十分前まで苦痛を強いていただけに、なるべくそれは避けたかった。

「――こちらです。ごゆっくりどうぞ」
 レオが一礼して通路の闇に消える。
 それを見送って、ベルは案内された部屋を見渡した。
 木で作られた質素な雰囲気の細長い部屋。細かく仕切られた、蓋のない棚が狭い壁一面に並び、奥には湯気で曇る硝子張りの扉がある。
 棚には籠が入っており、どうやら服を入れる物らしい。
 ベルはまだ見た事のないタイプの湯浴み場だった。
「……ふむ」
 上機嫌に呟いて、法衣を脱ぐ。肩や腰の部分鎧と手甲は部屋に置いて来たので、それだけで生まれたままの姿になる。
 「ご自由にお使い下さい」とある籠の中にあるタオルを一枚取り、不意に出た鼻歌を止めぬまま、硝子張りの扉を開けて――
「――あ"」
「――ぬ?」
「――にゃ?」
 ベルの視界に入ったのは、眼前に広がる浴槽の中、今にもシルスに襲い掛かろうとしているポチ。
 三者の視線が合致し、静寂がその場を支配した。

 ――瞬間、何か大事な線が勢い良く引き千切られる音がしたのは果たしてシルスの気のせいだったかどうか。
「――あら御機嫌ようベルディラウス様。では頂きまーす」
 ポチは即座に立ち直ると、ベルに向かって挨拶を交わした後、一息に腰を下ろした。「うあ、わわわッ……!」
「ん~!スゴい……!」
「貴様らー!」
 シルスの肉棒がポチの胎に埋没するに当たって嬌声が上がると同時、遅れて正気を取り戻したベルが怒り心頭といった面持ちでポチに詰め寄った。
「今すぐそこを退け!」
「その席は我のモノだー、ですか?おちんぽの上が自分の席とは、神聖竜様ともあろう方が淫乱なコトで」
「煩い!そこに直れ!宣言通り、生きたまま八つ裂きにしてくれる!」
「ちょ、ちょっとベル、落ち着いて――」
「あ、業火に油」
「え?――がふっ!」
 胸元に踵を落とされたシルスが沈黙し、あらら、と呟いたポチは再びベルに向き直る。
「退いてもいいですけどー、シルス君を悦ばせるのは私の方が上手だと思いますよー?」
「関係ない!この下衆が、恥を知れ!」
「下衆呼ばわりは酷いですねー、まぁ神聖竜様と比べれば確かに下等ですけど」
 でも、とポチは付け加え、
「恥を知らないといけないのは、ベルディラウス様も同じなんじゃないですか?」
「な、何を……!」
「ほら、見て下さいよここ」
 そう言ってポチが示したのは、自身の胎に埋没しているシルスの肉棒の根元。
「こんなに痛そーな痕が残って……これ、ベルディラウス様の仕業ですよね?」
「だ、黙れ!」
「嫉妬のあまりにこんな酷い事するなんて、恋人の資格ありませんよ」
「貴様ッ……!」
 握り締めたベルの拳が怒りのあまり震える。
 それを見てポチは猫特有の細い笑いを浮かべ、
「あくまでもシルス君の恋人と言い張るのであれば、一つ勝負をしませんか?」
「勝負、だと?」
 ポチは笑いながら、ええ、と言い、
「簡単です。私とベルディラウス様でシルス君を悦ばせ、どちらがより興奮したかを彼に訊く――それだけですよ」
 お借りしますね、とポチは言って、ベルのタオルを手に取った。
 それを湯に漬け、十分に濡らしてからシルスの両手に巻き付ける。
「人間は、愛さえあればどんなに下手な行為でも興奮出来ると言います。お二人の間に愛があると言うのなら――私など相手にならない筈です」
 鼻に掛かった声を上げ、ポチは肉棒を胎から引き抜く。
「ベルディラウス様がシルス君を起こして下さい。そうしたら勝負の開始です」
「――そんな戯言には付き合っておれぬ、と言ったら?」
「神聖竜様は口だけは達者という事になりますねぇ」
 未だ目を覚まさないシルスの元を離れ、ポチは浴槽の縁に腰掛けながら尻尾を一振りして言った。
「さあ、見せて下さい。何もかもが作り物である私に、生ある者が持つ愛を――」


「……ス、……ルス、……きろ」
「う、うぅ……」
 聞き覚えのある声に呼び掛けられ、僕はゆっくりと覚醒する。
 目を開くと、滲んだ視界の中、眼前にベルの顔があるのが分かった。
 あれ……?僕はどうして……
 記憶が一部抜け落ちている。
 確か、先輩との話が終わった後、お風呂を勧められて……
 ――そうだ、確かポチさんに……!
 ……あれ?
「ベル……?なんでここに……」
 なんとなく視線を下げる。
 すると、いきなりベルの裸体が視界に飛び込んで来た。
「……っっ、ご、ごめ――」
 思考が沸騰して、咄嗟に謝り掛けた瞬間、不意に妖艶な笑い声が聞こえた。
「面白いねー、シルス君の反応。思わず笑っちゃった」
 声のした方に視線を向ける。
 湯煙の向こうに立つのは、尻尾を楽しそうに踊らせながら立つポチさんで、彼女も当然服は着てなくて……
 えーっと……
 目の前にはベル。お風呂だからか裸。
 右手にはポチさん。こちらも裸。
 なんだろう、この、夕食前とは似ているようで似ていない悪寒は。
 取り敢えず逃げる為に、咄嗟に身を起こして――
「ええっと……なんでしょうかこのタオル」
「そりゃ、シルス君が逃げ出さない為の、いわゆる拘束用よ」
 猫特有の笑みを浮かべて、ポチさんがこちらに歩み寄ってくる。
 ベルを見ると、何故か決意を秘めたような表情でこちらを見ていて。
「ね、シルス君」
「は、はい?」
「私達と、気持ちイイことしよう」
 視界の中に、ある意味で対照的な二人を見て、僕は夕食前の悪夢がまだ終わっていない事を思い知った……

「ちゅ、んっ、ふ、ん……」
「シルス君、気持ちいい?」
 目の前にはベルの金と赤の妖眼。背中とモノにはポチさんの胸と手。
 僕は今、ベルと唾液を交換するキスをしながら、ポチさんに身を預け、手による愛撫を受けていた。
 人間とは違う、やけにふっくらとした掌が適度に刺激を繰り返してきて、凄く気持ちいい。
「く、あ、はい……気持ちいいです」
「くす。正直なのはいいことよ」
 そう言って、ポチさんの手の動きが加速する。
「っ、ああっ!」
 少しは我慢しようと思ったものの、呆気なく射精。
 白濁液がベルの身体に掛かり、健康的な肌色の身体を白が彩る。
「……この、下衆め」
「う、ごめん……」
「ほらベル様、シルス君のおちんぽを舐めてあげたらどうですか?」
「舐める……のか?」
「あら、フェラしたこと無かったんですね」
 くすくす、という笑い声に、僕は顔を真っ赤にして俯く。
 不意に、モノが生暖かい感覚に襲われた。
「ベ、ベル……!」
「ん、ちゅ、れろ、んん……」
 苦い、と呟いて、ベルは舌で亀頭を舐め始めていた。
 普段の彼女と、今僕の目の前でモノを舐める彼女のギャップに、僕の興奮が色強くなる。
「う……」
「お、初めてにしてはいいセン行ってますよー。シルス君大興奮」
「そ、そんなんじゃ……」
「さて、私も負けてられませんね」
 背後でもぞもぞとポチさんの肉体が動く感覚があり、不意に頭の両側が柔らかな何かに包まれた。
 何かと思う前に、頭上からポチさんの声。
「ほら、おっぱい枕ー。気持ちいいでしょ。ついでにこっちも」
「わ、わわ……っ!」
 まともに狼狽する間もなく、柔らかな手が僕の薄い胸板を撫でる。
 胸とモノからの同時の快感に声を上げると、どちらとも知れない笑い声が耳に響いた。
「っ、く、あっ!ベルっ!」
「――!?」
 また射精する。
 どくどく、という脈動の音と共に精液がベルの口内に注がれる。
 それを喉を鳴らして嚥下する彼女。
 多量の精液を飲み干し、ふう、と一息吐いて僕を睨み付ける。
「苦い」
「う、あ、う……ご、ごめん」
「そー言う割には満更でも無かったみたいですけど」
「煩い!」
「ぐあっ!」
 何故か僕のモノを叩き憤慨するベルに、ポチさんは、まぁまぁ、と言って宥める。
「んー、私も少し飲みたくなってきちゃった。シルス君、まだ出ますよね」
 それは質問ではなく確認の言葉。
 もう出ません、と答えたかったが、情けない事に下半身が正直な上、拘束されて起き上がれない以上、拒否権はない訳で。
 少しばかり萎えかけていたモノも、彼女が舐め始めるとたちまち硬さを取り戻す。
「んー、立派ねー。下のお口で食べたいかも」
「それは我の方が先だ」
「はいはい……じゃあ頂きます」
「う、あッ!」
 モノを頬張り、もごもごと口内を蠢かせるポチさん。
 ベルとは比べ物にならない技術で、たちまち追い詰められる。
「ぷは、もうイく?」
「は、はい……!」
「ん、分かったわ」
 彼女が再び咥えた瞬間、亀頭を硬い感触が襲う。
 途端、また僕は射精していた。
「っ、ぁ、ぐっ……!」
 流石に限界が近いのか、僅かな痛みと共に眩暈がする。
「んっ、んっ、ちゅ……ふぅ、ご馳走さまでした」
 モノの中に残った精液まで吸い出して飲み干したポチさんが言う。
「それにしても濃いね。量も凄く多いし……んー、惚れそう」
「調子に乗るのも大概にしておけ」
「はいはい……じゃあ、本番行きますか」
 再びポチさんの柔らかい手が僕のモノに襲いかかる。
「ん、っ、あッ!」
 性懲りもなく、あっという間に勃起する。
 その様子を見て、彼女はくすくすと笑う。
「じゃあ最初はベル様から」
「その名で呼ぶな。貴様は遠慮という物を知れ」
「はいはい」
 僕の腰を跨いだベルと視線が合う。
 夕食前の記憶が蘇って、僅かに身体が震える。
「……興奮、しているか?」
「う、うん」
 ごめん、今はどっちかと言うと恐怖の方が勝ってる。
「そうか」
 でもベルは、そんな嘘の答えに満足したように頷き、ゆっくりと腰を下ろした。
 近付いてくる、整った陰門。もう数え切れない程身体を交わしているけれど、そこは未だ綺麗な色を保ち、汚れる様子は全くなくて――
「……あ、あれ?」
「どうした?」
 交わりの直前。
 亀頭と陰唇が触れ合う直前で、僕は疑問の声を上げた。
「その、それ……」
「ああ、これか」
 陰門から僅かに垂れている白い液体。
 半ば見当はついていたのだけれど、あえて聞いてしまう。
「お前の精液だ。まだここに沢山溜まっている」
「う……」
 下腹を撫でながらさも当たり前のように告げるベル。
 なんというか、その、非常に来る台詞だ。
「ベル、その、凄くいやらしいよ」
「――っ、煩い!」
 怒鳴ると同時、ベルは腰を下ろした。
 モノが生暖かい粘膜に包まれ、同時に締め上げてくる。
 ベルのお尻が僕の腰に当たると同時、亀頭が彼女の子宮口を突いた。
 お前の精液が、ここに――
「っ、ぐあっ……!」
 ベルの先程の台詞が脳裏を過ぎり、一気に絶頂に達する。
 さっきよりも酷い痛みが来るが、興奮の方が強い。
「っ、ベル、ベルっ!」
「っ、何だ、もう出したのか?もう少し我慢しろ、早漏がっ……んっ!」
 彼女の胎に精液が補充されていく。
 それを考えると、何を言われても彼女が愛しくて仕方がない。
「何をされてもモノを膨らませおって……恥を知れ、この下衆が……」
 ベルが水音を立てながら腰を振り、抜いて、また飲み込む。
 再び彼女の子宮口を亀頭が叩き、強烈な快感が来る。
「っ、ぐっ、あああっ!」
 脳内で火花が散る。
 血も一緒に出たんじゃないかと思える程の痛み。
 だけど、まだ続いて欲しいと、快感に当てられた脳で僕はそう思っていた。
「あッ、は……!シルスっ、最後は、我と共にッ……!」
「っ、うん、あ、ぐ、あッ!」
 痛みと共に昇っていく。
 不意にベルが震え、同時に来る強烈な締め付け。
「シルスっ、あ、く、ああっ!」
「っ、ぐうっ!ベ、ベルっ……!」
 快感と痛みが混ざって、視界が白く濁る。
 彼女の暖かな体温と心地良い重量を感じながら、僕は意識を落とされた。

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最終更新:2007年07月07日 16:34