南部大陸に広がる、赤土の赤銅色と森の緑色がまだら状に彩る野山に、二つの人影があった。
「はぁ……はぁ……待ってよ、ベル」
二つの影は、一組の少年と少女だった。
少年は茶色の外套に血色のの髪と身を包み、手に持つ長身細身の金鎚を杖代わりにして、やっとといった感じで歩いていた。その背中には、彼自身を押し潰しそうな程の体積を持つ荷物が背負われている。
少女の方は少年とは正反対に、白色の薄手の法衣に、要所を護る為の部分鎧しか着けていない。荷物らしきモノも一切持っておらず、実に身軽な格好をしていた。
「なんだシルス。もっと早く来いウスノロめ。この調子では日が暮れてしまうではないか」
少年にベルと呼ばれた少女は、本来の行程よりも遅れつつある事にいたくご立腹の様子で、少年をなじった。
ベルにシルスと呼ばれた少年は、一つ溜息を吐いてベルに言う。
「そう思うなら、少しは荷物を分担してくれればいいのに」
「何故に我がそんな事をせねばならんのだ。それは我の下僕となる名誉を与えたお前の使命だぞ」
「名誉と使命、ね……」
「そうだ。このベルディラウスの下僕はお前が最初の一人だ。光栄に思うがいいぞ」
腰まで届く銀色のロングヘアーから生えた二つの雄々しい角と、法衣の裾から伸びる、金色の鱗を持つ尻尾を誇らしげに示し、ベル――神聖竜ベルディラウスは、彼女の言う所で下僕のシルスにそう言い放った。
――どちらかというと、君を召喚した僕の方がご主人様だと思うんだけど。
シルスはそう思ったが、口には出さなかった。
反論しようものなら、下等竜でさえ七転八倒する彼女の竜尾が即座に飛んでくる。
「さあ!早く行くぞシルス!命を弄ぶ錬金術師など、神の名の元に成敗してくれようぞ!」
「その錬金術師だけどさ……本気で退治するの?」
「何を言っておる。悪は成敗されるのが世の定めだ!」
「そうじゃなくて……いや、確かに間違ってないと思うけど」
シルスは溜息を吐いて、懐から数枚の羊皮紙を取り出した。
「塔の邪悪なる錬金術師を討ち取りし者に望みのままの報奨を与える」
羊皮紙の出だしにはそうあった。
強力な合成獣の製造技術を持つという錬金術師の退治。
依頼主は小国の、先日即位したばかりの若い王だ。
この国は先日、この錬金術師の合成獣によって、王と王妃、そして首都の人口の二割を殺されるという災厄に見舞われた。
――もっとも、それは殺された前王が錬金術師との取引に違反したからの報復であって、悪いのは前王と言えなくもないのだが。
「僕が聞きたいのは、この錬金術師はやり手だから、何か勝算はあるの?って事」
「そんなモノはなくとも行かねばならんのだ。……それとも何か?我の実力が合成獣ごときに及ばぬとでも?」
「そうは思わない、けど」
「ならば大船に乗ったつもりでいるのだシルス。下僕のお前がその様子でいては、主人である我の格好が付かぬ」
「はあ……」


シルスが神聖竜ベルディラウスと出会ったのは一年程前の事だ。
召喚術師の修行の一環として独力のみで召喚を行う事になったシルスは、何処をどう間違ったのかベルディラウスを喚び出してしまった。
その時はご立腹の彼女を何とか宥め空かしてお引き取り願ったのだが、何故か次の独力召喚でも彼女を喚び出してしまった。
それから紆余曲折あって二人は主従の契約を結び、シルスはベルディラウスから「シルスと呼んでやる名誉」と「ベル様と呼べる名誉」を賜った。
それから二人は「下賤の者の世界を見るのも面白い」というベル様のお言葉で、諸国放浪の旅を続け、現在に至る。


「――はっ!」
ベルが正拳を繰り出し、小鬼――ゴブリンの持っていた盾ごと鎖帷子を貫いた。
情けない悲鳴を上げながら面白いように吹き飛ぶゴブリンを視界の隅に捉えたまま、シルスは杖代わりに使っていた金鎚を本来の目的の為に振り上げた。
重厚な先端部が風を割って振り下ろされ、ゴブリンの兜を直撃する。
痛快な音が響き、ゆっくりとゴブリンが後ろ向きに倒れた。
残ったゴブリンは次々に逃げ出し始め、倒れたゴブリンも仲間に引き摺られながら去っていく。
「……ふう。これで終わりか?下衆どもめ」
ベルが手甲に包まれた手を鳴らしながら、吐き捨てるように言った。
シルスが、やれやれ、と呟いて、空を見上げる。
陽の光は既に地平線へと沈みかけ、穏やかな朱色の光が辺りには広がっていた。
「ベル、残念だけれど今日はここまでだよ。キャンプしよう」
「そうだな……仕方あるまい」
悔しそうな表情をして塔のある方向を睨み付けるベルの傍らで、シルスは背中の荷物を下ろした。
魔の者を寄せ付けない魔法のテントに、二人分の食料と料理道具など、キャンプ用の道具が次々と下ろされる。
「今日の夕餉はなんだ?」
「ティスディスの肉が安かったから、そのマルディ風と、ベロワのサラダ」
「そうか。アレは美味だったな」
「まあ、得意料理になったからね」
シルスは手際よく準備を進め、ものの数分で料理を開始。
その間、ベルはじっとシルスの横顔を見つめていた。


「――うむ、美味だった」
「お粗末様」
数十分後に出来上がった料理をたった数分で残さず平らげ、ベルは満足げに感想を述べた。
シルスはベルと自分の食器を手際よく片付け、テントに――
「待て」
「――ぐえっ!」
――入ろうとした瞬間、ベルの竜尾がシルスの首に巻き付いた。
「げふっ、けふ……!なんだよ、突然!」
瞬間的に凄まじい力を首に加えられたシルスは猛烈に咳き込み、涙目になりながら振り返った。
眼前にはベルの、いつにない真剣な顔。それが不意に質の悪い笑みに変わり――
「食後の軽い運動がしたくなった。付き合え」
――瞬間、シルスは身体が宙に浮き、落下する感覚を得た。
足払いを掛けられたと分かったのは、地面に身体が叩き付けられる直前だった。
「痛っ……!げふっ!」
次いで、胸元に掛かるそれなりの重量。
「な、なんなんだよいった――ぃっ!?」
シルスが痛みから目を開けると、法衣に包まれたベルのあそこが眼前にあって、しかもベルはその部分の法衣を自ら摘み上げようとしていた。
「どうした?ん?」
「ど、どうした、って……!何してるんだよ!」
「食後の運動だと言っているだろう。あと、生意気な口を利くな。どのみちお前に拒否権はない」
言うが早いが、ベルは法衣を摘み上げた。
咄嗟にシルスは目を閉じたが――
「――こら、拒否権はないと言っているだろう」
「ぐっ!」
途端、シルスの首に巻き付いている竜尾の力が増し、たまらずシルスは目を見開いた。
「わ、わわ……!」
シルスの眼前には、ベルの秘めやかな果実があった。
ベルの呼吸に合わせ、僅かにその熟れた中身を覗かせている。
「初めて見るモノではないだろう。いい加減慣れろ」
「だ、だって……!」
「黙れ。気が散る」
ベルのやや怒気を孕んだ声に、シルスは無理矢理口を閉じた。
ベルはそれを確認して満足げに頷くと、おもむろに指を自分の露わな秘所に添え――
「目を閉じたら締め上げるからな。覚悟しろ」
そう、邪気を含んだ声で言った。
「んっ……!は、ぁ……」
ベルの指が、緩急を付けながら自らの秘所を探る。
「あ、は……!っ、あっ!」
ややぎこちなく、震えながら蠢く指は、いつの間にか二つにその数を増やし……突起を摘み上げ、尿道口をくすぐり、愛液でぬかるんだ襞を開く。
「んんっ……は、ああっ」
「ベ、ベル……」
「ふふっ、目を……閉じるなよ」
劣情に満ちた顔でそう言い、ベルは秘所をまさぐる指を三本に増やした。
二本の指で秘所を割り開き、残った一本を胎へと侵入させる。
「ああっ……見えるかシルス……我の中が……」
「う、うん……」
シルスが顔を真っ赤にしながら答えると、ベルは淫蕩な声色で、
「今……此処にお前のモノが入っているのを想って、触れておる……」
「あ、う……」
「お前の、あの逞しいモノがこの中に……っ、分かるか、我の気持ちが……?」
ベルは小さく震え、熱を帯びた吐息を吐くと、胎に入れる指を二本に増やした。
重い水音がシルスの眼前から響き、発情した「雌」特有の匂いが嗅覚を麻痺させる。
「ふふ……」
そう淫靡に笑うと、ベルはまた不意に震え、次いで小さく痙攣した。
軽くイったのだろう。
ベルは小さく身動ぎすると、ゆっくりと胎から二本の指を引き抜いた。
愛液が糸を引いて指にまとわりつく。そのまま、彼女は自身の口にその指を含んだ。
己の愛液を余さず舐め取った後――
「――んっ!?」
――素早く上体を倒し、シルスの唇を奪った。
小さい水音――唾液を交換するが互いの脳内に響き合う。
ややあってベルはシルスを解放し、問うた。
「どうだ……?美味だったろう……?」
「う……」
あまりの緊張と羞恥に何も言えないシルスを見て、どこか満足げにベルは笑い、
「寒くなってきたな。お互いに暖め合うとするか」
――そう宣った。
両手をシルスの胸板に置いたまま、ベルは竜尾をシルスの首から解いた。
シルスが安堵の息を吐く間もなく、今度は下半身で痛いほどに張り詰めている怒張を、鱗の硬い感触が撫で上げた。
「こんなに硬くしおってからに……我の痴態にそれほど興奮したか」
「う、うん……」
「この痴れ者め。我は竜ぞ……獣姦を肯定するとは、変態もいいところだ」
ベルはそうシルスをなじりながら、竜尾で器用に彼の肉棒を露出させた。
シルスの外套の中、華奢な肉体からは想像出来ないほどの肉の凶器だった。
先走りに濡れる凶悪な肉棒と、淫らな自慰によって愛液に塗れた秘所が触れた時に響いた、唾を飲み込む音は果たしてどちらのモノだったのか。
「では……頂くぞ」
強い粘性のある水音と共に、シルスの肉棒がベルの胎内に消えた。
「……あ、っっ!」
「あ、あああっ!」
どちらのモノとも知れぬ嬌声が、夕暮れの大地に木霊する。
しばし荒い獣のような吐息が交わされ、不意にどちらともなく動き出した。
「あ、あっ、あッ、シルスっ……!」
「っ、くっ、ぐっ、ベルっ……ベルっ……!」
二人の動きは徐々に加速し、互いを呼ぶ声も止まる事を知らない。
「ベルっ、ベルっ……!」
「っ……!この、竜に欲情する痴れ者めっ……!」
「ベルっ……!」
「っ、あああっ!」
一際大きくベルが嬌声を上げ、シルスの肉棒を強烈に締め上げた。
途端、男が精を吐き出す脈動の音が響き、ベルの顔が弛む。
「あぁ……出ておるぞ。卑しき人間であるお前の精が、高貴なる竜である我の胎に……」
愛おしむように両手を自らの下腹に当て、ベルはそう言った。


――空の白む翌朝、シルスはテントや放りっ放しの料理道具を片付けていた。
勿論、単独でである。
「よし、準備出来た」
「ではいざ行かん!」
高らかにベルは宣言し、重い荷物を背負うシルスを気にせずに、その前を征く。
そんな彼女の華奢な背中を見て、シルスは微笑を浮かべた。