「ですから性交しましょうよ、金太さぁ~ん。」
「イヤです。」
再三の伊藤さんのお願いにもきっぱり断る。
「殿方の精なしではあたしは生きていけないんですよ。」
俺の目の前にいる伊藤さんは人間ではなく、狐の獣人である。
自称神様なんだが如何せん怪しく、物の怪や妖怪の類にしか見えない。
神通力や幽波紋でも見せてもらえれば信じられるが以前見せてと頼んだけどつっぱねられた。ますますうさんくさい。
「人間の精が栄養になるのはわかってます。でも昨日やったばかりでしょ?俺は毎日続けてできません。」
実は栄養を取るだけなら普通の食物でも問題ないけど、そこはあえて触れないであげる。
「減るもんじゃないでしょうに…。」
頬を膨らまして突っ込みどころ満載の不満を漏らす。
こう可愛い表情をされると許してしまいそうになる。
正直な話、俺は伊藤さんが好きだ。
可愛くて家事もきっちりこなせる。
伊藤さんと一緒に暮らせることが幸せなことだと思ってる。
ただ、この人は性欲が強すぎる。
エロい子は嫌いじゃないけど度が過ぎるのは良くない。
度が過ぎるというより常に狙っているという感じだ。
先日食事中に襲われかけたがさすがに俺もキレてぶっきらぼうに投げてからのついげきでさらにダメージは加速した。
それ以来食事中にそんな真似をすることはなかったけどそれ以外は油断ならない。
「とにかくダメなものはダメです。伊藤さんも我慢してください。」
とは言ったものの絶対納得してくれないだろうな、この人。
「わかりました。今日は諦めます。グスッ」
…意外だ。
半べそかいてるけどこうあっさり引き下がるとは思わなかった。
自称とはいえ神様、嘘をつくようなことを伊藤さんはしない。
この涙に騙されなければ今日は安心してよさそうだ。

金太さんも人が悪いです。
もうちょっとこう、協力的になっていただいてもよろしいじゃないですか。
食物でも栄養がとれることを金太さんはご存知ないようですけどご馳走を知ってしまったらそれを求めるのは当然でしょう。
それに仮にも乙女を淫乱のような言い草ですし。
…間違っておりませんけど。
普段からあのような態度ですし、ここは少しお仕置きしないといけませんわね。

―――カチカチカチ
23:57。
男の寝顔に微笑む女が一人、否一匹。
すでに彼女の狩りは終わっていた。
『今日はしない』という約束を『忠実に』守っている。
24時になれば今日じゃない。
そんな子供の屁理屈みたいな考えだったが彼女にしてみれば大真面目だった。
23:59:47。
長い長い10秒。
今か今かと待ち焦がれる。
これまでに何度口の中に湧き出る唾を飲み込んだか分らない。
カチカチカチ―――。

深夜、水っぽい感触と水音で目が覚めた。
体を起こして見ようとしても体が動かない。
金縛りってやつだろう。
ふと俺の顔を伊藤さんがのぞきこんだ。
俺は今、仰向けの状態だから伊藤さんは俺の上に乗っているということになる。
真夜中に俺の上で何やってんだこの人は。
「あっ、起こしちゃいました?」
元々そのつもりだったんですけどね、と付け足される。
「なんか金縛りかかちゃったみたいなんで起こしてもらえます?」
「いいんです、そのままで。あたしがかけたんですから。」
何を言っているのかわからない。
そもそも会話が成立してない気がする。
「金太さんが動かせるのは顔とココだけでしょうかね。」
そういって反り上がっている肉棒をさする。
やっと状況が理解できた。
ようするに俺は彼女に犯されていたんだ。
「『今日』はしないって約束だったでしょ。」
「12時過ぎたら『明日』なんですよ。」
伊藤さんは屁理屈をこねた後俺のものを咥える。
さっきと同じ感触と水音。
このまま為すすべなくイカされる思っていたが寸前で止め、俺の腹の上に座る。
「次のお前のセリフは『Hしましょう、伊藤さん』という。」
したり顔で予言をする。
もちろんそんなことを言うつもりはない。
伊藤さんはこちらから目を離さずゆっくり肉棒を扱く。
俺がイキそうになると手を止め射精することを許さない。
そして射精感が遠退いたのを見計らってまた扱く。
イキそうになると手を止め、萎え始めるとまた扱く。
地獄のような繰り返し。
気が狂いそうになる。
既におびただしい量の透明液が布団を汚している。
「Hしましょう、伊藤さん。」
それは約束された敗北だった。

ズプリと一気に突き入れる。
それとともに勢い良く射精した。
長いこと寸止めを繰り返されていたため我慢できずすぐに吐き出した。
射精してもなお俺のものは萎えておらずそれを確認して伊藤さんは腰を動かし始める。
ぐちゅぐちゅといやらしい音をたて、出入りする。
体の自由は奪われ、それでいて欲情しきっている。
主導権は完全に伊藤さんが握っている。
むしろ俺は伊藤さんの思うがままに支配されていた。
俺の目には気持ちよさそうに喘ぐ伊藤さんしか映らない。
俺の耳には伊藤さんの喘ぎ声と肉と肉がぶつかりあう音しか聞こえない。
俺は伊藤さんから送られてくる快感しか感じない。
ふと俺のほうに体を倒す。
そのまま俺の唇を奪い、俺の口内を蹂躙する。
無理やり舌を絡ませたり、吸い付く。
その間も腰の動きは止めない。
抜くときは逃さないかのようにきつく締め、入れるときは包み込むかのようにゆるく。
それをじっくり味わうようにゆっくりとした動きでする。
「金太さん、もうイっちゃいそうですか?」
「はい。イかせてください。」
もう快楽に身を委ねることしかできない。
今考えられることは『イきたい』という願望を思い浮かべるだけ。
伊藤さんは今一度唇を重ね、俺に体重を預け抱きしめる。
抱き返せないのが少々癪だったが関係ない。
そして蠢く伊藤さんの膣内に導かれるままイった。

「もう寝込みを襲うようなことはしないでくださいよ。」
流されたのは事実だけど襲ってきたのは向こうだ。
うん、俺きっと悪くない。
「そんなこと言って、金太さんいつもよりノリノリでしたよ。これからはこっ、むーむー。」
最後まで聞きたくないんで手で口を塞いでやる。
今度から襲われる覚悟をしないといけないな。