「……迷った」
とある山の中で独り言を呟く人影。一見すると中学生にも見える幼い顔立ち、しかし身長の高さがそれを否定させる。
彼の名は西部 祐輔。今年で二十歳になる、第一印象は間違いなく無愛想だと思われる青年だ。
「やっぱり止めとくべきだったかもな。故郷の山とは全然違う。
それに、そもそも最後に山自体を歩いたのが七年前だし、休みの日はほぼゲーム三昧だったから、予想以上に体力が鈍ってる。
やばいかもしれん」
と言いつつ、実際彼はそれほど悲観的ではなかった。

彼は小学生の時、義理の父親と実の母親に虐待を受けていた。
母親が再婚するまでは全くそんな物はなく、彼自身も少々内気な事以外はごく普通の子供だった。
母親が再婚してから彼は地獄のような苦しみを受けた。詳しい詳細は省くが、全身痣だらけになる事も珍しくはなかった。
夏休みに叔父の家に泊まりに行った時に叔父の家族に虐待の事を知られ、叔父一家のおかげで虐待はほぼ失くなった。

彼の精神は虐待により崩壊寸前だった。叔父一家の訴えで助かったが、今でもその影響は残っている。
インドア派なのに時々泊まりがけで放浪したり、普段は真面目だが突然やさぐれたり。多少心が歪んでしまっているのだ。
「……暗くなってきたな。あの状態になれば出れるかもしれんが、極力使いたくねーな。
……ん?家、か?なんでこんな山奥に。
まあいい。空き家みたいだし、見た所崩れる心配もなさそうだ、使わせてもらうか」

彼が述べた「あの状態」とは、虐待の中で得た唯一の利点である。
一時的に感情を消し、思考力、判断力、観察力、反射速度等が飛躍的に上昇し、さらに肉体的、精神的な苦痛の耐性も上がる。
空手を習っていたのもあり、喧嘩でこの状態になれば四、五人くらいなら軽い物である。
ただ、欠点も存在する。
この状態になるとその日はずっとなりっぱなしな上、せっかく不完全とはいえ戻った感情がほんの少しだが失くなってしまうのだ。

一応中に呼びかけるが返事はない。鍵は掛かっていなかった。
その家は小さいながらも二階建てになっており、一階には飲食物があり、テーブルまであった。
ちなみに二階はダブルベッドがある部屋だけである。
「誰かの別荘なのか?また随分物好きな人もいるもんだ。
まあ、利用させてもらってる俺が言うのもおかしいがな」
もう外は漆黒に包まれており、今から動き出すのはどう考えても危ない。
「とりあえず寝るか。明日になったらこの食べ物と水を失敬して出るとしよう。
多少心苦しいが、背に腹は代えられん」
そう呟くと、彼はリュックを枕にして横になった。
ベッドを汚したくないというせめてもの気遣いである。
程なく彼は眠りの深遠に引きずりこまれた。それを窓からそっと見ている影がいたのに彼は気付かなかった。
その影は、それから一時間たってから家に侵入し、60キロはある彼を軽々と持ち上げて二階に向かっていった。

「ん…ちゅ……」
口の中に何か生暖かい物がうごめいているのに彼は気付いた。目を開けると同時にそれは口から出ていった。
「おはよう。ってまだ夜中だけどね」
彼の目の前には一人の女の子がいた。
身長150あるかないか、セミロング、幼さの中に大人を感じさせる整った顔。
身長と顔立ちから判断すると14~5歳といった所である。
君は誰だ、と問おうとして彼は違和感に気付いた。
(さっき俺は一階で寝ていたはず。なんでベッドにいる?
それに、彼女……何かが違う。なんというか……やばい感じがする)
「ふふっ、どうしたのそんな怖い顔して。可愛い顔が台なしだよ」
無邪気でありながら妖しさを感じさせる声。背筋がぞくりとした。
「私、ちょっと出掛けて来るね。動いちゃ駄目だよっ。
………動けないと思うけど」
踵を返して部屋を出ていく少女。その後ろ姿に二つに分かれている尻尾があるのを彼は見逃さなかった。

このままここにいたら何をされるかわからない。最悪命を落とす可能性もある。逃げよう。
そう考え、彼は行動を開始した、いや、しようとした。
身体を起こそうとした矢先、耐え難い激痛が走る。
「うっ……ぐああ!!」
さっきの少女の言葉を思い出す。
「くそっ、こういう事か……薬を盛られたか。
………だが、痛みだけなら問題ない……!
祐輔、お前は機械だ。感情を消せ。余計な情報は無視しろ……」
いつもの彼と違い、この状態――マーシナリーモードになる。
音を立てずに家から出る。荷物は置いたままだ。邪魔になるし、少女に近くにいると思わせるためでもある。
ひたすら歩いた。肉体からは悲鳴が上がっているが、精神は完璧にその情報をシャットアウトしている。
「……!出口だ!」
外灯がいくつも見える。が、その希望を打ち消すように後ろから声がかかる。
「まさかあの痛みで動ける人間がいるとはね。予想外だったわ。
でも残念ね。鬼ごっこはこれで終わり。
さ、戻ろうよ」

「抵抗されたら面倒だから一応気絶させるね」
多少なりとも武道の心得がある彼は、まともにやり合えばこの少女には到底かなわない事を肌で感じとっていた。
が、今の場合は同時にこの実力差が逆に好機である事にも気付いていた。
少女は油断しきっている。彼の状態は万全ではないし、仮に何も異常がなくても楽に倒せるのがわかっているからだ。
しかし痛みは今の彼にとって行動の支障にはならない。上手く油断の隙を突けば……
見た目は少女なので傷付けるのはかなり抵抗があるが、彼女は人間ではないと自分に言い聞かせた。
痛みで立っているのがやっと、というふりをしつつ相手の行動を待つ。
「じゃ、少しおやすみ。起きたら天国に連れてってあげるから……」
ゆっくりと少女が近付いてくる。もう彼の抵抗はないと思っているのだ。
ゆっくりと彼の間合いに入ってくる。と、少女が廻し蹴りを放った。
左腕でしっかりとガードをする。予想以上に重い一撃だ。
「え、うそ!?」
案の定、彼女は目に見えて動揺していた。
(今しかない、人中に一撃を喰らわせてやる!)
ちなみに人中とは、鼻と口の間の筋の場所で、急所の一つである。
(いける。何も問題は――)

「や、やめて、お願い……」
構わずそのまま拳を突き出すべきであった。が、少女がいきなりしおらしい声でそんな事を言い出したので彼は躊躇してしまった。
「ふふっ、隙ありぃ」
「っ、しまっ……!」
その一瞬の隙を突かれ、腕を捕られて後ろに捩曲げられる。
ついにはそのまま俯せに倒されてしまった。
「ふ~、危なかったあ。
普通なら反撃どころか動く事も出来ないくらいの痛みがあるはずなのに。
あなた、本当に人間?」
「……精神が多少イカレテいる以外はごく普通の人間だ」
「ふぅん、そっかぁ。ま、いいや。戻ろっか」
万事休す。もう彼女の隙を突くのは不可能だろう。
「と、その前に……
また暴れたら面倒だから気絶させるね」
言うが早いが彼の延髄に手刀を叩きこむ。程なく彼は意識を失った。
そして、少女は彼を抱き抱え、鼻歌を歌いながらあの家に戻っていった。

「起きて、ねえ起きてってばぁ」
肩を揺さ振られて目を開けると、例の少女がいた。
「やっと起きたね。全く、お寝坊さんなんだから」
(気絶させたのはどこのどいつだよ)
とツッコミたくなったが口には出さず、睨みつける。
「ふーん、両手両足縛られてて動けないのにそんな顔するんだ」
言葉の通り、彼は服を脱がされベッドに縛られている。
「さっきの反撃といい今の態度といい、随分強気だね。
ねえ、今どんな気持ち?悔しい?」
答えず、ひたすら睨み続ける。
「ちょっと、声くらい聞かせてよ。さっきの一言しか聞いてないんだからさあ」
そう言われても、彼は口を開けようとはしなかった。
「あ、そう……まあいいわ。そろそろ効き始める頃だから」
直後、彼に異変が起きてきていた。
呼吸がやや荒くなり、身体が熱くなってきている。
「お、お前、何をしやがった……」
「やっと喋ってくれたね。ああ、質問の答えはとっても簡単。
私特製の媚薬を飲ませただけ。どう、興奮してきた?」

「……で、俺をどうするつもりだ」
「ふふっ、わかってるくせに。女の子にそれを喋らせるつもり?
あ、もしかして、まだエッチした事がないのかな?」
マーシナリーモードに移行しようとしていた彼の集中が乱れる。そう、彼はまだ経験がない。
ルックスは悪くはないものの、無愛想で口数も少なく、どこと無く近寄りづらい雰囲気があるので当然の事だが。
「ふーん、図星みたいね。
ちょっと童顔だけど別に顔は悪くないし、人間にしては結構強いのにね」
「……やかましい。いいからさっさと縄を解け」
「薬が効いてるのに強がっちゃって。私とエッチしたくてたまらないくせに」
「風邪だろうよ。山の中を歩き回って疲れてるしな」
「……ここまで追い詰められてるのに、どうしてそんなに生意気なのかしら。
すごく気に入らないわ」
「気に入らんなら尚更解け。そしたら出てってやるから」
「……でも、そういうのを屈服させるのも面白いかもね」
「な、何!?」
予想外の反応をされ、彼は唸ってしまった。
直後、少女が彼にのしかかり彼の唇を彼女のそれで塞ぐ。

「んっ、んん……」
唇を押し付け、そこから少女の舌が彼の口内に侵入した。
「……!?」
さっきの発言が予想外だったので、反応が遅れてしまったのだ。
時既に遅く、彼の口内は彼女に蹂躙されていた。舌と舌が絡み、唾液と唾液が混ざり合う。
薬で倍増されている快楽が彼を襲う。必死に耐える彼。やがて、唇が離れる。
「ふぅ…どう?大人のキスは。興奮したかな?」
「はぁ…はぁ…そ、そんなわけあるか……!」
「肩で息しながらそんな事言っても説得力ないよ。
それに、さっきより口調が弱くなってるよ」
「だ、黙れ……!」
彼女は言葉を発するのを止めた。そして、彼の首筋を舐める。
さらに徐々に下の方に舌が向かい、胸元に到着した。
「んふふ、そろそろ可愛い声が聞きたいな」
と、直後に少女は舌を彼の乳首に当てる。
「………っ!」
未知の快感に危うく声を出しそうになるが、歯を食いしばって耐える。

「男の人でもここは感じるんだよ。
ほら、我慢しないで声出して。身体に毒だよ」
などと言いながら、彼の乳首を舐める彼女。
もう片方は、彼女の手で撫でられたり摘まれたりしていた。
突如彼女が彼のそれを甘噛みした時、ついに声が出てしまった。
「うっ……うああ……」
「あ、やっと可愛い声を出してくれたね。そうそう、その調子よ。
じゃ、次のステップね」
そして彼女の目線は彼の股間に向かう。そこには半立ちになっている彼のモノがあった。
「へえぇ……結構大きいんだ。えぃっ」
と彼女の手が彼のモノを掴む。
「うっ……くっ」
「ふふっ、気持ちいいんだ」
彼女の手が彼のモノを上下に扱く。
自分の手の場合と他人の手の場合ではやはり感じ方も違う。
ほぼ間違いなく後者の方が気持ち良い。
「あ、また声出すの我慢してるな。そんなに私のいうこと聞きたくないの?
ふーん……」
と言った後、彼女は彼の亀頭にキスをした。

「うわぁ、どんどん大きくなるね。そんなに気持ち良いの?」
嬉しそうに彼女が問い掛ける。
「ち、違……うぁっ!」
なおも否定しようとしたが、さらなる刺激により言葉が途切れてしまう。
睾丸部分から竿の上まで舌を這わせられる。
竿を握り、亀頭を舐められ、時折鈴口に舌を捩こまされる。
かと思えば、全体をすっぽりくわえられる。
「ん……ん、んん……」
「あ……あ、ああ……や、止め、うあっ」
「嘘ばっかり。ホントは続けて欲しいくせに。
ほら、もうイキそうなんでしょ?」
「ぐ……くそっ」
「イッちゃえ」
また全体をくわえられ、さらに彼女の指が彼の尻の穴に強引に入れられた。
「あがっ、う、うわぁ!」
耐え切れず、遂に射精してしまった。
「ん……凄く濃い…溜まってたんだ」
「ち、ちくしょう……」

一度射精したにもかかわらず、彼のモノはまだ縮まる様子がない。
「あれぇ?ひょっとしてまだし足りないの?」
「……お前が薬を盛ったからだろうが。それと、俺はお前みたいな子供に興味はない」
実際彼女の歳はわからないが、見た目がそうだったので彼はこう言った。
「ふーん。一度射精して、あんなに喘いてたのにまだそんな事言えるんだ」
悪い方に刺激をしたのに気付き焦るが、もう遅かった。
彼女は彼に跨がり、繋がる一歩手前である。
「えー、すまん。少し言い過ぎた。
だから俺をいい加減離してくれないか」
冷静に考えれば、被害者は彼であり謝る必要もないはずだが、何故かこう言ってしまった。
「絶対に、い・や・よ」
との言葉と共に、彼女の腰が下ろされる。
彼のモノが彼女の中に入り、無数のひだが絡み付く。
「あ、ううっ!くうぅ……」
「あらぁ、どうしたの?私のような子供に興味はなかったんじゃなかったっけ?」

徐々に上下に彼女が動き始める。
「くっ……うぁ、あくっ」
「さっきは興味ないとか言ってたのに、これはどういう事かな?
すっごい気持ち良さそうね」
「そ、それは薬を盛られたからだ……あうっ」
「それだけ?本当にそう言える?」
「うっ、あ、当たり前だ」
「薬を理由にしてるだけじゃないかな。
本当は、こうされたかったんじゃないの?」
「それは……!」
「それに、盛った薬だけど、あれあんまり長く効かないのよね。
もうとっくに切れてるはずよ」
「な!?」
(ま、まさか……彼女の言うとおりなのか?
俺は本当はこんな事を望んでいたというのか!?)
嘘である。薬の効果はまだちゃんと効いている。
生半可な事では彼の心を崩せないと思い、彼女は違う方向で攻めてきたのだ。
「ん、ほら、認めな、さいよ。
僕は、あん、こんな、子供に、うん、縛られて、犯されて、あふ、悦んでる、変態だって」

「あ、大きくなった。あん、そろそろ、イキ、そうなのね?
いいよ、いっぱい、私の、中に、出してえ!」
「あ、が……うわぁぁ!!」
限界を向かえ、白い液体が彼女の中に注ぎ込まれる。
そして、彼は意識を失った。

目を覚ますと、あの女の子はいなかった。縄も解かれている。
身体を起こした後に、手紙らしき物が置かれている事に気付く。
『あなたのイク時の顔と声、凄く良かったよ。
またさせてね』
「……はあ。ったく、誰が来るかっつーの」
服を来て、食べ物を失敬して小屋を出る。
「まあ、命が無事だったからよしとすべき、か。
しかし、最悪な体験だった」
見かけ中学生くらい、だが恐らく人間じゃない奴に心と体両方蹂躙された彼。
が、こんな事があっても壊れるそぶりはなかった。
「ん、猫か。首輪はしてないな。
うん?こいつ、尻尾が二つに別れてやがる」
一瞬何かひっかかったが、彼は思い出せなかった。
「突然変異か。にしてもまだついてくるなこいつ。
………ほらよ」
手を差し出すと、その猫は腕を伝って彼の肩に乗った。

「なんだ、お前随分と人懐っこいな。
……どうせだからお前家に来るか?」
問い掛けると、肯定するように猫は鳴いた。
「よし、じゃあ行くか」

彼は気付かなかった。
その猫が彼のリュックサックから出て来た事を。
その猫の尻尾の色や模様があの少女と全く同じな事を。
その夜、また彼は蹂躙される事になるが、それはまた別の話。