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「グランゾンとシンシア1」(2007/01/28 (日) 00:54:11) の最新版変更点
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ある夜の学校でのこと。
一人の男子生徒が、懐中電灯を片手に真っ暗な廊下を歩いていた。
「まったく……こんな時間に何の用だよ……」
ブツブツ文句言いながら歩く男子生徒の呟きも、誰もいない廊下に響いて何とも不気味な雰囲気を出している。
男子生徒の名は、神崎 巧(しんざき たくみ)。
ある事を除いてはごく普通の男子生徒である。
ちなみに彼の親戚が近所に数人いる。
「おい来たぞ。何の用だ?」
巧は真っ暗な学校で唯一明るく光っている教室、現在は使われていない化学実験室の扉を勢いよく開けた。
科学実験室内は得体の知れない機械やカプセル、多種多様な機材の他に鼻につく薬等の匂いが充満しており、巧は入った瞬間表情を歪めた。
そんな巧に、ソファーに座りながら制服の上に白衣を着ている男が一人、怪しく笑いながら振り向いた。
「ふっふっふ……来たなマイベストフレンド巧よぉ」
「気持ち悪いからそういう言い方やめろ秀」
懐中電灯の明かりを消し、巧は男のそばまで寄った。
白衣の男、その名は白河 秀(しらかわ しゅう)。
マッド・サイエンティスト……狂科学者という言葉がとても似合う男であり、容姿・学力・運動力共に全てを超越した超絶天才(自称)である。
巧とは腐れ縁の仲で、何かと巧を巻き込むトラブルメーカー。
「お前、こんな時間まで学校にいて大丈夫なのか?」
「俺を誰だと思っている! この学校始まって以来の大天才! 俺に不可能などなぁい!!」
「ハイソウデスカ」
「カタコトで言ったな貴様。時に聞くが、グランゾンは元気か?」
「あぁ、元気だ。今は家で充電中。あ、今度またメンテしてほしいとか言ってたぞ?」
「またか。せっかく貴様のために作ってやった機械娘だぞ。もっと丁寧に扱わんか」
「うるせーな。だったらお前が自分の家で……」
「さて本題に移ろう」
「……」
男二人は、いつものようにバカな会話をしていた。
秀は偉そうに足を組み自分で入れたものすごく濃いコーヒーを飲み、巧は自分の訴えを軽く流されムッとする。
そして秀が立ち上がり、ある物を隠しているように覆っているカーテンに手を掛けると、再び巧みの顔を見てニヤ~っと笑う。
「巧よ。このカーテンの中に、何が入っていると思う?」
「知るか、というより知りたくもない。どうせまた変な機械か何かだろ?」
「ふむ……間違ってはいないな。まぁ、とりあえず見てくれぇ!」
問いを吐き捨てるように答える巧に、秀は気にせず血走った目でカーテンを思いっきり引っ張るとブチブチっと言う音と共にボタンが飛んだ。
ボタンが顔に当たり、思わず腕で顔をふさぐ巧は、腕を退けカーテンがあったところを見ると目を見開いた。
「な、なにぃ?」
「くふふふふふふ……どぉうだぁ」
自信満々に怪しく笑っている秀をとりあえず無視しといて、巧は何かの装置の上にあるものに目がいき恐る恐る近寄ってみる。
「お、女?」
巧が思わず口に出してしまったとおり、そこにいたのは一人のしかも全裸の女だった。
黒く背中まである髪の毛に、少し日焼けしたような茶色い肌。
胸は……まぁ大きくもなく小さくもなく、スラリとした体つきで顔もかなり可愛く身長は巧より小さく見た目十五、六歳。
謎装置の上で静かに寝息を立てて眠っている。
その娘は巧のタイプにドンピシャで、巧は思わず生唾を飲んでしまう。
「ふっふっふ、どうだ?」
「ど、どうって、お前……」
巧の脳内では必死に状況を整理していた。
黒髪の女の子が普通の娘なら、既に秀の事は慣れている巧は冷静になれたが、黒髪の女の子は普通の女の子とは違う部分があった。
頭、そして尻部に犬のよう耳と尻尾が生えており、獣人という言葉がとても似合っている。
「この耳と尻尾が気になるか?」
「……」
最大の疑問を聞く前に秀に言われ、巧は素直に黙って頷いた。
「では説明してやろう。この娘は、この超絶天・才! が貴様の為に作り上げた、人間の遺伝子と狼の遺伝子を併せ持つ合成生物とでも言っておこう」
「はぁ? ご、合成、生物? またお前はそんなのを……」
「良いではないか! 犬耳だぞ? そそられるだろ? わざわざ貴様のタイプに合わせてやったんだ、大変だったんだぞ? ありがたく思え」
「で? その合成生物と俺と何の関係がある」
「いや何、お前にこの娘をくれてやろうと思ってな」
「はあぁ!!?」
そして当然のように言う秀の答えに、巧の困惑の声を上げた。
いきなり合成生物と漫画のような事を言われた上に、自分に預けるというのだから当然だ。
しかし秀はいつもの事のように言葉を続けた。
「まぁ、待て。この娘の生活費等は俺が賄ってやる。それならいいだろ」
「いや、そういう問題じゃねえよ」
更に言えば、犬娘は巧のもろタイプなので、同じ家で住めば理性がいつぶっ飛ぶかわからないという恐れがあった。
「ふっ……安心しろ? 俺がばっちりサポートしてやる。では俺はこれで!!」
「あっ! ちょっ……待てっ……」
そして一瞬の隙を見つけ、秀は瞬時に自分の荷物を取り凄い速さで立ち去って行き巧は止めようとするも叶わず呆然とする。
後を追おうにも、秀の方が巧より断然足が速いので追いつくことはもう不可能で、巧は深いため息を吐き下を向くと、一枚の紙が落ちているのに気づく。
「何だこれ?」
先ほどまで無かった紙に、巧は困惑の表情を浮かべながら手に取ると折りたたんである紙を開いた。
そこには秀の字で巧宛のメモが書かれていた。
”言い忘れてたぞ友よ。その娘は形は俺達の2、3歳下という設定、精神はまだ幼い。せいぜい教育してやることだ(笑) 永遠の大親友より”
「………いつか殺す」
巧はメモを読み終えた瞬間ビリッと紙を破り捨てた。
そして困った表情で、未だ寝ている犬娘を見つめる。
「……………チッ」
放って置くわけにいかず、再び深いため息を吐いた巧は、破れているカーテンを犬娘に包み制服の上着を羽織わせると、犬娘をおんぶし学校を後にした。
深夜という事もあってか外は寒く、犬娘は少し震えていた。
巧は白い息を吐きながら、急ぎ足で家へと目指した。
犬娘を背負い、巧は自宅へとたどり着いた。
巧の家は築25年の小さく少しボロいアパートの一室で、重く圧し掛かる犬娘を背負いながら一歩一歩階段を登り、一番奥の部屋の前に立ち止まった。
扉を開け、靴を脱ぐと部屋の奥から女の子が一人、巧を無表情で出迎えた。
「おかえりなさいであります」
「あぁ、ただいまグランゾン」
「背中の生命体は一体何でありますか?」
「それは後で説明するから」
女の子の当然の問いに、巧は苦笑しながらも部屋の奥に進み、布団の上に犬娘を寝かした。
無表情な少女もそれに続き、ゆっくりと巧の後ろに座った。
無表情な少女の名はグランゾン。
狂科学者・秀が作り上げた戦闘型女の子ロボットであり、犬娘同様巧が押し付けられた発明品の一人。
「巧、ご説明を」
「あーはいはい。あ、その前にお茶」
「了解しましたであります」
かなり疲れた様子の巧の要望に、グランゾンの胸は左右に開き機械部分が露出すると、そこから湯呑に入った熱いお茶が出てきた。
「どうぞ」
「どうも」
グランゾンはお茶を巧に手渡し、巧はもう慣れた様子でそのお茶を啜ると息を吐き心を落ち着かせた。
「まぁ、なんだ……この娘は、お前と同じ秀が作ったらしい。作ったっつーのは何か変だけどな。合成生物だと」
「博士がでありますか? ………なるほど、了解しましたであります」
「まっ、仲良くやって……」
「……ん………ん~」
巧がお茶を啜りながらグランゾンに犬娘の事を説明すると、グランゾンは一発で納得した。
その時、犬娘の耳がピクピクッと動くと、犬娘の瞳がゆっくりと開いた。
思わず後退る巧と戦闘態勢に入るグランゾンを、犬娘のブラウンの瞳が見つめる。
「………」
「……」
「………」
沈黙が狭い部屋内を支配した。
その沈黙をかき消そうと、巧は黙っている犬娘に手を差し伸べようとする。
「どうした?」
「…………………う゛~!」
「なっ!」
「う゛~………わんっ!」
そして唸られ吼えられた。
警戒した犬のように四つん這いになり犬のように吼えている少女は、まさしく犬であり吼えられた事に少なからずショックを受けた巧は少しヘコむ。
「わんっ! あんっわんっ!」
巧とグランゾンを警戒し大声で吼え続ける犬娘。
深夜という事もあり流石に近所迷惑であることに巧は気づいた。
「っく、うるせ……グランゾン、何とかしてくれ」
「了解したであります。バトルモード起動……ワーム」
「待て待て待て! 普通に止めろ普通に!」
「……了解したであります」
吼え続ける犬娘を止めようと、グランゾンは戦闘モードに移行したようだが巧がすかさず止めに入り、犬娘の背後に回りこむ。
「きゃぅっ!?」
「催涙スプレーであります」
「きゃんっ………きゅ……ん………スゥ」
そして犬娘の口元に掌を持っていき、掌の小さな穴から催涙スプレーを噴射させ犬娘を眠らせた。
暴れていた犬娘は、ようやく静かになり可愛い寝顔を巧に見せた。
「……ふぅ」
巧は安堵の息を吐くと、力が抜けたようにその場で寝転んだ。
そして、今後の生活と犬娘のことを考えた。
生活費は何とかなる。
「………初っ端から嫌われちまったか」
「落ち込むことはありません巧」
「ありがとよ」
グランゾンの何の感情の無い励ましに手を軽く振り巧は返す。
そして、どうやら嫌われてしまった自分。
今後の犬娘との生活に激しく不安になりつつ、これは夢だと自分に言い聞かせ今日のところは寝ることにし巧もそのまま瞳を閉じた……。
「おやすみであります、巧」
翌朝、雀が鳴き寒いとも感じられる風が吹きつけ巧の体がブルッと震え、目を開け始めた。
「ん……ん~~っ」
大きな欠伸をしながらゆっくりと上体を起こし、目を擦りながら巧は自分の周りを見ている。
グランゾンは尻尾型コンセントを電源につけ、正座をしながら目を瞑り未だ起動していない状態。
そして、そのグランゾンの膝の上で膝枕状態で眠っている犬娘の姿。
全裸ではまずいと思い、巧は寝ぼけ眼で自分の服を適当に着せていく。
夢ではなかった……嬉しいような悲しいような微妙な心境の巧は、とりあえず今更現実逃避をしつつ顔を洗いにゆっくりと起き上がり洗面所に向かった。
「んじゃ行ってくるぞ~」
「いってらっしゃいであります巧」
「う゛~~!!」
そして犬娘が警戒し唸り吼えるのを横に、いつものように制服に着替え、朝ごはんは食べずに、いつものようにアパートを後にした巧。
グランゾンはいつものように無表情で見送り、巧がいなくなったのを確認した犬娘は、次にグランゾンを睨み唸り始めた。
「う゛~~! わんっ!」
「……」
吼える犬娘に対し、攻撃等をしてはいけないと巧に命令されているグランゾンは、気にすることなく小汚い部屋を掃除し始め、いつものように家事をし始めた。
掃除、洗濯とこなしていくグランゾンを、警戒しても無駄だと思った犬娘は吼えるのをやめ丸くなって再び寝始めた。
数時間経ち、やることの無くなったグランゾンは昼ドラを見ながら充電中。
その横で、犬娘は起き始め大きな欠伸をしたと同時に、犬娘のお腹がぐ~っとなった。
犬娘は朝ごはんも食べておらず空腹なのだ。
「………クゥン」
「お腹が、すいたのでありますか?」
背に腹は代えられないのか、犬娘は警戒していたはずのグランゾンに甘えた声で鳴いてご飯を強請ると、グランゾンは僅かに困惑の表情を浮かべ台所に向かうと小さな冷蔵庫を開けた。
普通の犬や人間ならともかく、犬と人間の融合体には何を与えればいいか分からず、ほぼ人間に近いので、グランゾンはとりあえず牛乳と魚肉ソーセージを犬娘に与えてみた。
はじめて見る白い液体と長い物に、少し警戒しながらペロリと魚肉ソーセージと牛乳を舐めた犬娘は思った。
これは美味しいと。
後は簡単だ、5分も経たずに犬娘は魚肉ソーセージと牛乳を平らげ舌で口の周りを満足そうに舐め取る。
「………クゥン」
「まだ足りないのでありますか?」
そして再び甘えるような声で強請る犬娘に、グランゾンは再び冷蔵庫を覗き見て食べられそうな物を犬娘に与えていた。
「ただいま~」
「おかえりなさいであります巧」
数時間後、辺りはすっかり暗くなり、今日も秀が原因のゴタゴタに巻き込まれ、バイトで疲れきった巧が帰宅した。
無表情で出迎えるグランゾンに、巧は受け答えて部屋に入ると、まず犬娘に吼えられた。
「……」
そして巧は微妙にヘコみながら、グランゾンが既に用意してあった夕食を3人で食べ始めた。
小さなちゃぶ台に並べられた料理をグランゾンと巧は普通に食べていたが、犬娘は2人、特に巧を警戒して二人から距離をとって唸り続けている。
「一緒に食べるであります」
巧がいくら呼んでも答えようとはしない犬娘だったが、グランゾンが呼ぶと少し間をおきグランゾンの膝の上に乗り、グランゾンのあ~んで食べ始める。
その事にかなりヘコむ巧は、夕食後も何とか犬娘に懐いてもらおうと努力するも効果はなく、逆に四六時中一緒にいるグランゾンにはだんだんと懐いていき、数日後には完全にグランゾンだけ懐いている状態になってしまった。
「わんっ! う゛~~っ!」
「何で俺だけ……」
「元気を出すであります巧」
「……ありがとよ」
ヘコみ続ける巧にグランゾンは無感情な励ましを入れていた。
しかし、ある事がきっかけで犬娘と巧の距離は急激に縮まることになる。
それは、物凄い嵐の日のこと。
激しい風と痛みさえも感じさせる雨、そして凄い音を立てている雷の下、巧は既に壊れた傘を投げ捨てアパート目指して走っていた。
この日もバイトがあったものの、巧は休み、その前にボロいアパートが崩壊しないか心配だった。
いつもなら、こういった日はグランゾンが迎えに来るのだが、この日はグランゾンは定期メンテの為秀の元に言っており、それ以前に秀は嵐の中で輝くと言った常人では理解し得ない行動を起こしている為、巧は濡れながら秀の行動に呆れつつ走っているのだ。
「くっそ、あのバカ。こういう時に、役に立てよな。雷でも受けてろっての……うわっ!」
秀の愚痴をブツブツと言いながら走っている巧の背後で、雷が激しく鳴り何処かに落ちたようで爆発したような音が響き、巧は驚きながらも走り続けていた。
そしてようやくアパートにたどり着くと、ずぶ濡れで息を切らしながら鍵を開け自分の部屋に入った。
「ただいま……」
グランゾンがいない以上、言っても何も返っては来ないが、一応挨拶をしつつ巧は洗面所のバスタオルを手に取り頭を拭きながら奥の部屋に入った。
入った瞬間、巧は異変に気づいた。
「………あれ?」
いつもなら、巧が部屋に入った瞬間自分に対して吼えまくる犬娘がいる筈だった。
しかし、その声はなく風が窓を打ちつける音と雷の轟音しか響いていなく、巧は首をかしげながら部屋の明かりをつけた。
すると、巧の目線は敷きっぱなしで部屋の端に移動させてある布団にいく。
明らかに何かの盛り上がりがあり、小刻みに震えていた。
布団の中にいるのは犬娘と、巧はこの時点で確信している。
何故かと言えば、布団から犬娘の尻尾がはみ出ているから。
「頭隠して尻隠さずってね。おい、どうし」
「……っ……!」
「うわっ!」
巧は犬娘に覆い被さっている毛布を、勢いよく取り毛布は宙に飛ぶ。
真っ暗だった視界がいきなり明るくなり、明るくさせた巧を見る犬娘の表情はかなり怯えており大粒の涙を金色の瞳に溜めて、巧を見た瞬間、巧に飛びついた。
大声を上げる巧は、そのまま犬娘に押し倒されると頭を打ち少しもがくも、時期に痛みも治まり上体だけを起き上がらせると、いつもとは様子の違う犬娘を見下ろした。
「ど、どうした」
「……ゥ……クゥ……ン……キャゥン」
「お前……」
いきなり抱きつかれ、巧は少し戸惑っている。
巧から離れないとばかりに密着している犬娘は、犬耳を下に折るようにし、目を瞑り何かに怯えるように小刻みに震えていた。
そして雷が再び轟音を響かせ、空中を一瞬光らせると、犬娘の体はビクッと反応して一層震え出し巧に密着する。
そう、これまで感じたことのない音を響かせる雷を犬娘は怖いのだった。
その事に巧は気づくと、軽く息を吐き片手で犬娘の体を抱き寄せ、もう片手で頭を犬耳ごと優しく撫で始めた。
「よしよし、雷怖いのか……」
「……ク……ン」
「大丈夫大丈夫。雷は何もしやしないから、そう震えるな」
「……ン? ……?」
犬娘に囁くように小声で言う巧。
撫でられて気持ちのいい感覚に、巧の顔を見上げる犬娘の表情には敵視し警戒すると言うのは感じられず、巧は犬娘を落ち着かせようと笑顔を見せる。
「今日はずっとこうしてていいから。とりあえず落ち着け、怖くないからな」
「………ぴちゅっ………ン」
「なぁっ!!」
巧の言葉は通じているのか分からないが、犬娘は尻尾を僅かに振りながら耳をピクピクと動かし巧の頬をペロリと一舐めした。
犬娘の突然の行為に顔を真っ赤にさせ動転する巧を他所にに、犬娘はそのまま巧の膝の上で瞳を閉じ、安心したかのような表情で眠り始めた。
今この瞬間、犬娘が巧を家族、仲間と認めた瞬間であり、巧の理性に初めてひびが入った瞬間でもあった
「……………いかーーんっ! 相手は獣人、融合生物だぞ何を考えてる俺はぁぁーー!!!」
そしてこの一晩、犬娘の顔が丁度自分の分身にジャストミートしている中、巧は自らの理性と壮絶な戦いを繰り返しているのだった……。
[[第2話>http://www21.atwiki.jp/brutalanimal/pages/81.html]]
ある夜の学校でのこと。
一人の男子生徒が、懐中電灯を片手に真っ暗な廊下を歩いていた。
「まったく……こんな時間に何の用だよ……」
ブツブツ文句言いながら歩く男子生徒の呟きも、誰もいない廊下に響いて何とも不気味な雰囲気を出している。
男子生徒の名は、神崎 巧(しんざき たくみ)。
ある事を除いてはごく普通の男子生徒である。
ちなみに彼の親戚が近所に数人いる。
「おい来たぞ。何の用だ?」
巧は真っ暗な学校で唯一明るく光っている教室、現在は使われていない化学実験室の扉を勢いよく開けた。
科学実験室内は得体の知れない機械やカプセル、多種多様な機材の他に鼻につく薬等の匂いが充満しており、巧は入った瞬間表情を歪めた。
そんな巧に、ソファーに座りながら制服の上に白衣を着ている男が一人、怪しく笑いながら振り向いた。
「ふっふっふ……来たなマイベストフレンド巧よぉ」
「気持ち悪いからそういう言い方やめろ秀」
懐中電灯の明かりを消し、巧は男のそばまで寄った。
白衣の男、その名は白河 秀(しらかわ しゅう)。
マッド・サイエンティスト……狂科学者という言葉がとても似合う男であり、容姿・学力・運動力共に全てを超越した超絶天才(自称)である。
巧とは腐れ縁の仲で、何かと巧を巻き込むトラブルメーカー。
「お前、こんな時間まで学校にいて大丈夫なのか?」
「俺を誰だと思っている! この学校始まって以来の大天才! 俺に不可能などなぁい!!」
「ハイソウデスカ」
「カタコトで言ったな貴様。時に聞くが、グランゾンは元気か?」
「あぁ、元気だ。今は家で充電中。あ、今度またメンテしてほしいとか言ってたぞ?」
「またか。せっかく貴様のために作ってやった機械娘だぞ。もっと丁寧に扱わんか」
「うるせーな。だったらお前が自分の家で……」
「さて本題に移ろう」
「……」
男二人は、いつものようにバカな会話をしていた。
秀は偉そうに足を組み自分で入れたものすごく濃いコーヒーを飲み、巧は自分の訴えを軽く流されムッとする。
そして秀が立ち上がり、ある物を隠しているように覆っているカーテンに手を掛けると、再び巧みの顔を見てニヤ~っと笑う。
「巧よ。このカーテンの中に、何が入っていると思う?」
「知るか、というより知りたくもない。どうせまた変な機械か何かだろ?」
「ふむ……間違ってはいないな。まぁ、とりあえず見てくれぇ!」
問いを吐き捨てるように答える巧に、秀は気にせず血走った目でカーテンを思いっきり引っ張るとブチブチっと言う音と共にボタンが飛んだ。
ボタンが顔に当たり、思わず腕で顔をふさぐ巧は、腕を退けカーテンがあったところを見ると目を見開いた。
「な、なにぃ?」
「くふふふふふふ……どぉうだぁ」
自信満々に怪しく笑っている秀をとりあえず無視しといて、巧は何かの装置の上にあるものに目がいき恐る恐る近寄ってみる。
「お、女?」
巧が思わず口に出してしまったとおり、そこにいたのは一人のしかも全裸の女だった。
黒く背中まである髪の毛に、少し日焼けしたような茶色い肌。
胸は……まぁ大きくもなく小さくもなく、スラリとした体つきで顔もかなり可愛く身長は巧より小さく見た目十五、六歳。
謎装置の上で静かに寝息を立てて眠っている。
その娘は巧のタイプにドンピシャで、巧は思わず生唾を飲んでしまう。
「ふっふっふ、どうだ?」
「ど、どうって、お前……」
巧の脳内では必死に状況を整理していた。
黒髪の女の子が普通の娘なら、既に秀の事は慣れている巧は冷静になれたが、黒髪の女の子は普通の女の子とは違う部分があった。
頭、そして尻部に犬のよう耳と尻尾が生えており、獣人という言葉がとても似合っている。
「この耳と尻尾が気になるか?」
「……」
最大の疑問を聞く前に秀に言われ、巧は素直に黙って頷いた。
「では説明してやろう。この娘は、この超絶天・才! が貴様の為に作り上げた、人間の遺伝子と狼の遺伝子を併せ持つ合成生物とでも言っておこう」
「はぁ? ご、合成、生物? またお前はそんなのを……」
「良いではないか! 犬耳だぞ? そそられるだろ? わざわざ貴様のタイプに合わせてやったんだ、大変だったんだぞ? ありがたく思え」
「で? その合成生物と俺と何の関係がある」
「いや何、お前にこの娘をくれてやろうと思ってな」
「はあぁ!!?」
そして当然のように言う秀の答えに、巧の困惑の声を上げた。
いきなり合成生物と漫画のような事を言われた上に、自分に預けるというのだから当然だ。
しかし秀はいつもの事のように言葉を続けた。
「まぁ、待て。この娘の生活費等は俺が賄ってやる。それならいいだろ」
「いや、そういう問題じゃねえよ」
更に言えば、犬娘は巧のもろタイプなので、同じ家で住めば理性がいつぶっ飛ぶかわからないという恐れがあった。
「ふっ……安心しろ? 俺がばっちりサポートしてやる。では俺はこれで!!」
「あっ! ちょっ……待てっ……」
そして一瞬の隙を見つけ、秀は瞬時に自分の荷物を取り凄い速さで立ち去って行き巧は止めようとするも叶わず呆然とする。
後を追おうにも、秀の方が巧より断然足が速いので追いつくことはもう不可能で、巧は深いため息を吐き下を向くと、一枚の紙が落ちているのに気づく。
「何だこれ?」
先ほどまで無かった紙に、巧は困惑の表情を浮かべながら手に取ると折りたたんである紙を開いた。
そこには秀の字で巧宛のメモが書かれていた。
”言い忘れてたぞ友よ。その娘は形は俺達の2、3歳下という設定、精神はまだ幼い。せいぜい教育してやることだ(笑) 永遠の大親友より”
「………いつか殺す」
巧はメモを読み終えた瞬間ビリッと紙を破り捨てた。
そして困った表情で、未だ寝ている犬娘を見つめる。
「……………チッ」
放って置くわけにいかず、再び深いため息を吐いた巧は、破れているカーテンを犬娘に包み制服の上着を羽織わせると、犬娘をおんぶし学校を後にした。
深夜という事もあってか外は寒く、犬娘は少し震えていた。
巧は白い息を吐きながら、急ぎ足で家へと目指した。
犬娘を背負い、巧は自宅へとたどり着いた。
巧の家は築25年の小さく少しボロいアパートの一室で、重く圧し掛かる犬娘を背負いながら一歩一歩階段を登り、一番奥の部屋の前に立ち止まった。
扉を開け、靴を脱ぐと部屋の奥から女の子が一人、巧を無表情で出迎えた。
「おかえりなさいであります」
「あぁ、ただいまグランゾン」
「背中の生命体は一体何でありますか?」
「それは後で説明するから」
女の子の当然の問いに、巧は苦笑しながらも部屋の奥に進み、布団の上に犬娘を寝かした。
無表情な少女もそれに続き、ゆっくりと巧の後ろに座った。
無表情な少女の名はグランゾン。
狂科学者・秀が作り上げた戦闘型女の子ロボットであり、犬娘同様巧が押し付けられた発明品の一人。
「巧、ご説明を」
「あーはいはい。あ、その前にお茶」
「了解しましたであります」
かなり疲れた様子の巧の要望に、グランゾンの胸は左右に開き機械部分が露出すると、そこから湯呑に入った熱いお茶が出てきた。
「どうぞ」
「どうも」
グランゾンはお茶を巧に手渡し、巧はもう慣れた様子でそのお茶を啜ると息を吐き心を落ち着かせた。
「まぁ、なんだ……この娘は、お前と同じ秀が作ったらしい。作ったっつーのは何か変だけどな。合成生物だと」
「博士がでありますか? ………なるほど、了解しましたであります」
「まっ、仲良くやって……」
「……ん………ん~」
巧がお茶を啜りながらグランゾンに犬娘の事を説明すると、グランゾンは一発で納得した。
その時、犬娘の耳がピクピクッと動くと、犬娘の瞳がゆっくりと開いた。
思わず後退る巧と戦闘態勢に入るグランゾンを、犬娘のブラウンの瞳が見つめる。
「………」
「……」
「………」
沈黙が狭い部屋内を支配した。
その沈黙をかき消そうと、巧は黙っている犬娘に手を差し伸べようとする。
「どうした?」
「…………………う゛~!」
「なっ!」
「う゛~………わんっ!」
そして唸られ吼えられた。
警戒した犬のように四つん這いになり犬のように吼えている少女は、まさしく犬であり吼えられた事に少なからずショックを受けた巧は少しヘコむ。
「わんっ! あんっわんっ!」
巧とグランゾンを警戒し大声で吼え続ける犬娘。
深夜という事もあり流石に近所迷惑であることに巧は気づいた。
「っく、うるせ……グランゾン、何とかしてくれ」
「了解したであります。バトルモード起動……ワーム」
「待て待て待て! 普通に止めろ普通に!」
「……了解したであります」
吼え続ける犬娘を止めようと、グランゾンは戦闘モードに移行したようだが巧がすかさず止めに入り、犬娘の背後に回りこむ。
「きゃぅっ!?」
「催眠スプレーであります」
「きゃんっ………きゅ……ん………スゥ」
そして犬娘の口元に掌を持っていき、掌の小さな穴から催眠スプレーを噴射させ犬娘を眠らせた。
暴れていた犬娘は、ようやく静かになり可愛い寝顔を巧に見せた。
「……ふぅ」
巧は安堵の息を吐くと、力が抜けたようにその場で寝転んだ。
そして、今後の生活と犬娘のことを考えた。
生活費は何とかなる。
「………初っ端から嫌われちまったか」
「落ち込むことはありません巧」
「ありがとよ」
グランゾンの何の感情の無い励ましに手を軽く振り巧は返す。
そして、どうやら嫌われてしまった自分。
今後の犬娘との生活に激しく不安になりつつ、これは夢だと自分に言い聞かせ今日のところは寝ることにし巧もそのまま瞳を閉じた……。
「おやすみであります、巧」
翌朝、雀が鳴き寒いとも感じられる風が吹きつけ巧の体がブルッと震え、目を開け始めた。
「ん……ん~~っ」
大きな欠伸をしながらゆっくりと上体を起こし、目を擦りながら巧は自分の周りを見ている。
グランゾンは尻尾型コンセントを電源につけ、正座をしながら目を瞑り未だ起動していない状態。
そして、そのグランゾンの膝の上で膝枕状態で眠っている犬娘の姿。
全裸ではまずいと思い、巧は寝ぼけ眼で自分の服を適当に着せていく。
夢ではなかった……嬉しいような悲しいような微妙な心境の巧は、とりあえず今更現実逃避をしつつ顔を洗いにゆっくりと起き上がり洗面所に向かった。
「んじゃ行ってくるぞ~」
「いってらっしゃいであります巧」
「う゛~~!!」
そして犬娘が警戒し唸り吼えるのを横に、いつものように制服に着替え、朝ごはんは食べずに、いつものようにアパートを後にした巧。
グランゾンはいつものように無表情で見送り、巧がいなくなったのを確認した犬娘は、次にグランゾンを睨み唸り始めた。
「う゛~~! わんっ!」
「……」
吼える犬娘に対し、攻撃等をしてはいけないと巧に命令されているグランゾンは、気にすることなく小汚い部屋を掃除し始め、いつものように家事をし始めた。
掃除、洗濯とこなしていくグランゾンを、警戒しても無駄だと思った犬娘は吼えるのをやめ丸くなって再び寝始めた。
数時間経ち、やることの無くなったグランゾンは昼ドラを見ながら充電中。
その横で、犬娘は起き始め大きな欠伸をしたと同時に、犬娘のお腹がぐ~っとなった。
犬娘は朝ごはんも食べておらず空腹なのだ。
「………クゥン」
「お腹が、すいたのでありますか?」
背に腹は代えられないのか、犬娘は警戒していたはずのグランゾンに甘えた声で鳴いてご飯を強請ると、グランゾンは僅かに困惑の表情を浮かべ台所に向かうと小さな冷蔵庫を開けた。
普通の犬や人間ならともかく、犬と人間の融合体には何を与えればいいか分からず、ほぼ人間に近いので、グランゾンはとりあえず牛乳と魚肉ソーセージを犬娘に与えてみた。
はじめて見る白い液体と長い物に、少し警戒しながらペロリと魚肉ソーセージと牛乳を舐めた犬娘は思った。
これは美味しいと。
後は簡単だ、5分も経たずに犬娘は魚肉ソーセージと牛乳を平らげ舌で口の周りを満足そうに舐め取る。
「………クゥン」
「まだ足りないのでありますか?」
そして再び甘えるような声で強請る犬娘に、グランゾンは再び冷蔵庫を覗き見て食べられそうな物を犬娘に与えていた。
「ただいま~」
「おかえりなさいであります巧」
数時間後、辺りはすっかり暗くなり、今日も秀が原因のゴタゴタに巻き込まれ、バイトで疲れきった巧が帰宅した。
無表情で出迎えるグランゾンに、巧は受け答えて部屋に入ると、まず犬娘に吼えられた。
「……」
そして巧は微妙にヘコみながら、グランゾンが既に用意してあった夕食を3人で食べ始めた。
小さなちゃぶ台に並べられた料理をグランゾンと巧は普通に食べていたが、犬娘は2人、特に巧を警戒して二人から距離をとって唸り続けている。
「一緒に食べるであります」
巧がいくら呼んでも答えようとはしない犬娘だったが、グランゾンが呼ぶと少し間をおきグランゾンの膝の上に乗り、グランゾンのあ~んで食べ始める。
その事にかなりヘコむ巧は、夕食後も何とか犬娘に懐いてもらおうと努力するも効果はなく、逆に四六時中一緒にいるグランゾンにはだんだんと懐いていき、数日後には完全にグランゾンだけ懐いている状態になってしまった。
「わんっ! う゛~~っ!」
「何で俺だけ……」
「元気を出すであります巧」
「……ありがとよ」
ヘコみ続ける巧にグランゾンは無感情な励ましを入れていた。
しかし、ある事がきっかけで犬娘と巧の距離は急激に縮まることになる。
それは、物凄い嵐の日のこと。
激しい風と痛みさえも感じさせる雨、そして凄い音を立てている雷の下、巧は既に壊れた傘を投げ捨てアパート目指して走っていた。
この日もバイトがあったものの、巧は休み、その前にボロいアパートが崩壊しないか心配だった。
いつもなら、こういった日はグランゾンが迎えに来るのだが、この日はグランゾンは定期メンテの為秀の元に言っており、それ以前に秀は嵐の中で輝くと言った常人では理解し得ない行動を起こしている為、巧は濡れながら秀の行動に呆れつつ走っているのだ。
「くっそ、あのバカ。こういう時に、役に立てよな。雷でも受けてろっての……うわっ!」
秀の愚痴をブツブツと言いながら走っている巧の背後で、雷が激しく鳴り何処かに落ちたようで爆発したような音が響き、巧は驚きながらも走り続けていた。
そしてようやくアパートにたどり着くと、ずぶ濡れで息を切らしながら鍵を開け自分の部屋に入った。
「ただいま……」
グランゾンがいない以上、言っても何も返っては来ないが、一応挨拶をしつつ巧は洗面所のバスタオルを手に取り頭を拭きながら奥の部屋に入った。
入った瞬間、巧は異変に気づいた。
「………あれ?」
いつもなら、巧が部屋に入った瞬間自分に対して吼えまくる犬娘がいる筈だった。
しかし、その声はなく風が窓を打ちつける音と雷の轟音しか響いていなく、巧は首をかしげながら部屋の明かりをつけた。
すると、巧の目線は敷きっぱなしで部屋の端に移動させてある布団にいく。
明らかに何かの盛り上がりがあり、小刻みに震えていた。
布団の中にいるのは犬娘と、巧はこの時点で確信している。
何故かと言えば、布団から犬娘の尻尾がはみ出ているから。
「頭隠して尻隠さずってね。おい、どうし」
「……っ……!」
「うわっ!」
巧は犬娘に覆い被さっている毛布を、勢いよく取り毛布は宙に飛ぶ。
真っ暗だった視界がいきなり明るくなり、明るくさせた巧を見る犬娘の表情はかなり怯えており大粒の涙を金色の瞳に溜めて、巧を見た瞬間、巧に飛びついた。
大声を上げる巧は、そのまま犬娘に押し倒されると頭を打ち少しもがくも、時期に痛みも治まり上体だけを起き上がらせると、いつもとは様子の違う犬娘を見下ろした。
「ど、どうした」
「……ゥ……クゥ……ン……キャゥン」
「お前……」
いきなり抱きつかれ、巧は少し戸惑っている。
巧から離れないとばかりに密着している犬娘は、犬耳を下に折るようにし、目を瞑り何かに怯えるように小刻みに震えていた。
そして雷が再び轟音を響かせ、空中を一瞬光らせると、犬娘の体はビクッと反応して一層震え出し巧に密着する。
そう、これまで感じたことのない音を響かせる雷を犬娘は怖いのだった。
その事に巧は気づくと、軽く息を吐き片手で犬娘の体を抱き寄せ、もう片手で頭を犬耳ごと優しく撫で始めた。
「よしよし、雷怖いのか……」
「……ク……ン」
「大丈夫大丈夫。雷は何もしやしないから、そう震えるな」
「……ン? ……?」
犬娘に囁くように小声で言う巧。
撫でられて気持ちのいい感覚に、巧の顔を見上げる犬娘の表情には敵視し警戒すると言うのは感じられず、巧は犬娘を落ち着かせようと笑顔を見せる。
「今日はずっとこうしてていいから。とりあえず落ち着け、怖くないからな」
「………ぴちゅっ………ン」
「なぁっ!!」
巧の言葉は通じているのか分からないが、犬娘は尻尾を僅かに振りながら耳をピクピクと動かし巧の頬をペロリと一舐めした。
犬娘の突然の行為に顔を真っ赤にさせ動転する巧を他所にに、犬娘はそのまま巧の膝の上で瞳を閉じ、安心したかのような表情で眠り始めた。
今この瞬間、犬娘が巧を家族、仲間と認めた瞬間であり、巧の理性に初めてひびが入った瞬間でもあった
「……………いかーーんっ! 相手は獣人、融合生物だぞ何を考えてる俺はぁぁーー!!!」
そしてこの一晩、犬娘の顔が丁度自分の分身にジャストミートしている中、巧は自らの理性と壮絶な戦いを繰り返しているのだった……。
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