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青年がその狼を救ったのは気まぐれだった。 軍隊に入り、国が敗戦。下手に出世していたのだ仇になり、大きな町に住めなくなった。 だから青年は山で猟師を生業として生きるしかなかった。人と話すのは、月に一度町を降りて狩った動物の毛皮を売るときのみ。 生来人付き合いが苦手な青年はそれでも十分だと思っていた。だが、それでも無意識のどこかで寂しい思いをしていたのかも知れない。そしてその無意識の寂しさが、怪我をした狼を助けるという行為の理由だったのかもしれない。 いずれにしても、青年は怪我をした狼を助けた。普通の狼より二回りも大きいメスだった。 右目の大きな縦の裂傷の他、さまざまな傷を負ったメスの狼。 飼いならせば猟犬の代わりになるかもしれない、と自分に言い訳してつれて帰った。そして傷を手当し餌を与えた。 初めのうちは暴れ、ろくに力の入らない口で噛み付いてきたが、頭が良いのかこちらに害意がないとすぐに理解したらしく、警戒はするものの餌に口を付け始めた。 ひょっとしたら自己欺瞞のために自分に言い聞かせた、猟犬としての活躍を本当に期待できるかとも思った青年だったが、それは夢想に過ぎなかった。 傷が癒えると、狼は青年の山小屋から姿を消した。 寂しさを誤魔化すために悪態を付いた青年だったが、それは無用の行為だった。 狼は頻繁に青年の周りに姿を見せ始めた。青年の小屋の周りを縄張りにしたのだ。 以前まで青年の家の周辺を縄張りにしていた狼の群れはいなくなった。おそらくあの狼が追い払ったのだろう。 通常、群を形成する狼が立った一匹のはぐれ狼に遅れを取るなどありえない。 群を形成していないことや、体が通常より明らかに大きいことから、ひょっとすれば不適合固体――一種の奇形、あるいは新種なのかもしれない。 だが、いずれにしても青年にとってはどうでもいいことだった。 青年と狼が、そのほとんどの時間を共有するようになるまで、そう時間はかからなかった。 青年と狼がともに過ごすようになってから、二度目の春がきた。 そのとき、青年は狼の異変に気づいた。興奮し、落ち着きがなく、しかしどこか憔悴しているようにも見える。 もしかしたら病気かもしれないと思い、青年は狼を自分の部屋に連れて行くことにした。狼は抵抗を示したが弱々しいものであり、青年はいよいよ狼の不調を確信した。 その夜は、満月だった。青年は狼とともに暖炉を囲みながら、その頭をそっと撫でてやっていた。 青年はそのまま眠ってしまった。 青年が目を覚ましたのは数時間後だった。原因は柔らかい感触と、荒い何者かの息使いの音だった。 目を開けて、青年は驚いた。 自分が、裸の女に押し倒されていた。あわてて飛び起きようとした青年だったが、女がそれを押しとどめた。 その細腕からは考えられない力で、青年の肩を押さえつけていた。青年は何者かと問おうとして、しかしその口を、女は自分の口で塞いだ。 女はそのまま、青年の口に舌を進入させ、這い回らせる。ここ数年、女を知る機会がなかった青年にそれはあまりに甘美だった。 やがて女が頭を離した。青年と女の間に唾液がアーチを作る。当然と見つめあう二人。その沈黙は、女が破った。 「おまえ、せいだ」 単語をぶつ切りにするようなしゃべり方で、女は言う。 「おまえの、せいだ。おまえは、私を、お前の、巣に、引き込んだ」 何のことか解らなかった青年だったが、しかし青年は気づいた。女には右目がなかった。 右目のまぶたは閉じられ、その上を立ての裂傷が走っていた。 この女はあの狼だ。 体を見れば、いくつもの傷痕があり、その箇所は狼のそれと一致していた。 「どうして…お前、その格好…!」 青年の問いに、女はその金色の瞳を、わずかに悲しげに曇らせる。 「私は…私は、狼では、ない。人でも、ない だから、どちらの群れからも、追われ、一人で、生きてきた。 だが、お前は、私を、仲間と、思ってくれた。けど、それは、私が、普通の、狼だから。 だから、怖くて、黙ってた。けど、限界だ」 言うと、女は青年のシャツを掴み、引き裂いた。 暴力的な行為だが、しかし女の口からは、その行為とは正反対の言葉が漏れた。 「スキだ」 女は潤んだ瞳で、青年の顔を覗き込む。至近距離の口から、女の熱を含んだ息が吐きかけられる。 「春は、恋の季節。我慢できなくなる。だから、去年は、離れてた。 だが、今年は、離れる前に、お前が、連れ込んだ。 もう、我慢は、限界だ……!」 言うが早い、女は再び唇を押し付けてくる。だが今度の接吻は唇にとどまらず、そのまま頬、首筋、胸板へと愛撫をしていく。 「私は、お前が、欲しい。お前の、子供が、欲しい。抱け」 そういうと、女は強引に三度目の口付けをした。 三度目の口付けから数えて、いったい何度目の口付けだろう。 青年は、引き裂かれた自分の衣服の上に横たわっていた。その彼に、さらに女が跨っていた。 「はぁはぁ……お前のを、入れるぞ」 女が、いきり立った青年の分身を手にしながら言う。 青年は反抗しなかった。 最初のうちはせめて主導権をと反抗したが、女の文字通り人外の膂力で封じられ、たまに反逆に成功しそうになっても 「…いや、なのか?」 と、女が悲しそうな顔でこちらを見つめる。ためらった次の瞬間には、すっかり組み伏せられている。 そもそも、男にはこの行為を中断しようという思いは、ほとんどなかった。 女日照りが長かったし、なによりあそこまで熱烈な告白を受けて、断る男はいない。 形式はレイプだが、もはや殆どこれは同意の上でのセックスだった。 女は腰を上げて、青年の肉棒を自分の蜜壷にあわせると、腰を下ろした。 「…んんあっ!」 女の尻が、男の下腹部とぶつかり、ぺちんという音を立てる。亀頭は一気に女の中心まで侵入し、受け入れた女の体は、その感触にビクビクと痙攣した。 「ぅん…はぁぁぁ……」 軽い絶頂を迎えたのか、女は青年に跨ったまま、身を震わせる。 口元には惚けた笑みが浮び、口端からは唾液が一筋たれている。 その淫猥な表情に見とれていた青年だが、直後に、足に鋭い痛みを覚えて現実に引き戻される。女がつめを立てたのだ。 「動けぇ」 女が快楽にとろけた目で青年を見下ろす。 「動け。私を、抱けと、言ったはずだ。だから、動け」 この状況は、自分が女に抱かれているというべきだと思ったが、これ以上痛い思いはしたくなかったし、自分の息子を、この蕩けるような極上の肉壷に入れ、しかも動かないままなどということもしたくなかったので、青年は言われたとおりにした。 「んぁ!あっ!はぅ!はぁ、ひあっ!」 青年の腰の上で女は踊りだした。暖炉の燃え残りの火が、女の肌を暖色に染め、飛び散る汗を彩る。 青年だけでなく女のほうも自身で動き回り、淫らな舞は加速する。その激しい動きにより、青年の肉棒は女の粘膜を擦り上げ、女の蜜壷は青年の直棒をしごき上げる。 やがて、青年は自身の限界が近いことを察した。自分の白い汚液が肉棒の先端まで競り上がり、女の胎内を汚し尽くせと主張しているような錯覚を得る。 「あああああぅっ!」 先に絶頂を迎えたのは女だった。より深く、ありえないことだがそれこそ子宮を突き破らんとするほどの勢いで、腰を下ろしたとき、女は身を反らせ、まるで遠吠えする狼のように絶頂を迎える。 体中が突き抜ける快感と衝撃で痙攣する。だがそれもひと時のこと。痙攣が治まると、再び激しく動き出す。 「あん!はん!ひゃん!ど、どうした!なぜ、出さない!?ふぅっ…、気持ちよく、ないかぁんっ!」 動きながらあえぎながら、女は言って、そして唇を重ねてきた。 上と下、両方で重なり合いながら、青年はとうとう絶頂を迎えた。 びゅるびゅると音が聞こえるのではないかというほどの勢いで、精液が女の中に流し込まれた。 「!……んっ、…っ!……」 女も青年の射精を感じたのか、キスをしたまま腰を擦り付け、更なる射精を促す。 やがて青年の射精が済むと、女はキスした唇を離し、笑顔を見せる。 「すごいぞ、子種が、中に、たくさんだ。きっと、孕む」 女は言いながら腰を上げ、そしてまた、じゅぶりという音を立てて、腰を沈め肉棒を飲み込んだ。 「だが、もっとだ。もっと、抱け」 言いながら、再び腰を振り出す。 いつの間にか消えた暖炉の光。ただ窓から差し込む満月が、二人の淫舞を照らしていた。 翌日、女の姿はなかった。狼の姿もだ。 青年はすべてが夢かとも思ったが、しかししかし夢のはずはない。 引き裂かれたシャツも、思い出される感触も、すべてリアルだ。 青年はすぐに狼の姿を探したが、しかし、その姿はなかった。 青年は落胆し、だがあきらめきれず、すがるような思い出ウサギの干し肉――狼が好きだった――を木の枝にかけた。狼に餌を分け与える時に、よくやる手段だった。 次の日に言ってみると、その干し肉はなくなっており、あの狼の足跡もあった。 完全にどこか行ってしまったのではないと解り、青年はほっとした。だがそれでも狼の姿が見えないことは変わらなかった。ただ青年は、毎日のように、木の枝に干し肉をかけ続けた。 そのまま、狼が姿を見せることがなく一ヶ月がたった。 そして、青年が狼と会わなくなってからちょうど一ヶ月目の夜。 寝台の上で寝ていた青年は、目を覚ました。一ヶ月前と同じように、女が青年の上に跨っていた。 「やっぱり、お前を、忘れられない」 女は潤んだ瞳で青年を見下ろしていた。 「離れる、つもりだった。私は、化け物だから、お前に、嫌われる前に、自分で、出て行くつもりだった。 一人で、子供を、育てる、つもりだった。 けれど……、子供、できなかった。それにお前、餌を、分けてくれ、続けた。仲間だと、行動で、示し続けてくれた。 だから、離れたくない。独りは……」 女が言い終わるより早く、青年は女を抱きしめた。そして耳元でささやく。自分も独りはいやだと。共にいて欲しいと。 女は驚いたようだったが、すぐに嬉しそうに、まるで童女のような純粋な笑顔を浮かべて、こう言った。 「なら、抱け。今度は、お前が、私を、犯せ」 純粋な笑顔と行為のまま女はくちびるを近づけてくる。 「お前の、子供、欲しい」 そして、二人はくちびるを重ねた。 数ヵ月後、青年が毛皮を下ろす店の承認は、青年から数着の女物の服と産着の注文を受けた。何でも嫁を貰い、その嫁が子供を孕んだらしい。 いつの間にと聞くが、青年は微笑むだけで答えない。 それからさらに一年後、とある不穏な噂を聞いた商人は、青年の家にいった。 青年の山小屋に行くと、青年の妻に会った。青年の妻は右目に傷を持った、しかしそれを考慮したとしても美しい女だった。ただ、遠い国の出身なのか、妙な話し方をしていた。出迎えた子供は、なんと四人。どうやら四つ児だったらしい。 どうしてこんなところまで、と驚いた様子の青年に商人は、まずは祝辞とそれから町で聴いた噂を話した。 それは青年が住む山に、人に姿を変える狼の化け物が一匹、同じく人の子供に化ける子狼を四匹つれて住んでいるという噂だった。危ないから引っ越したほうがいいという商人に、青年とその妻は妙に慌てたように、心配はないと主張して、かたくなに引越しを断ったのだった。 完
青年がその狼を救ったのは気まぐれだった。 軍隊に入り、国が敗戦。下手に出世していたのだ仇になり、大きな町に住めなくなった。 だから青年は山で猟師を生業として生きるしかなかった。人と話すのは、月に一度町を降りて狩った動物の毛皮を売るときのみ。 生来人付き合いが苦手な青年はそれでも十分だと思っていた。だが、それでも無意識のどこかで寂しい思いをしていたのかも知れない。そしてその無意識の寂しさが、怪我をした狼を助けるという行為の理由だったのかもしれない。 いずれにしても、青年は怪我をした狼を助けた。普通の狼より二回りも大きいメスだった。 右目の大きな縦の裂傷の他、さまざまな傷を負ったメスの狼。 飼いならせば猟犬の代わりになるかもしれない、と自分に言い訳してつれて帰った。そして傷を手当し餌を与えた。 初めのうちは暴れ、ろくに力の入らない口で噛み付いてきたが、頭が良いのかこちらに害意がないとすぐに理解したらしく、警戒はするものの餌に口を付け始めた。 ひょっとしたら自己欺瞞のために自分に言い聞かせた、猟犬としての活躍を本当に期待できるかとも思った青年だったが、それは夢想に過ぎなかった。 傷が癒えると、狼は青年の山小屋から姿を消した。 寂しさを誤魔化すために悪態を付いた青年だったが、それは無用の行為だった。 狼は頻繁に青年の周りに姿を見せ始めた。青年の小屋の周りを縄張りにしたのだ。 以前まで青年の家の周辺を縄張りにしていた狼の群れはいなくなった。おそらくあの狼が追い払ったのだろう。 通常、群を形成する狼が立った一匹のはぐれ狼に遅れを取るなどありえない。 群を形成していないことや、体が通常より明らかに大きいことから、ひょっとすれば不適合固体――一種の奇形、あるいは新種なのかもしれない。 だが、いずれにしても青年にとってはどうでもいいことだった。 青年と狼が、そのほとんどの時間を共有するようになるまで、そう時間はかからなかった。 青年と狼がともに過ごすようになってから、二度目の春がきた。 そのとき、青年は狼の異変に気づいた。興奮し、落ち着きがなく、しかしどこか憔悴しているようにも見える。 もしかしたら病気かもしれないと思い、青年は狼を自分の部屋に連れて行くことにした。狼は抵抗を示したが弱々しいものであり、青年はいよいよ狼の不調を確信した。 その夜は、満月だった。青年は狼とともに暖炉を囲みながら、その頭をそっと撫でてやっていた。 青年はそのまま眠ってしまった。 青年が目を覚ましたのは数時間後だった。原因は柔らかい感触と、荒い何者かの息使いの音だった。 目を開けて、青年は驚いた。 自分が、裸の女に押し倒されていた。あわてて飛び起きようとした青年だったが、女がそれを押しとどめた。 その細腕からは考えられない力で、青年の肩を押さえつけていた。青年は何者かと問おうとして、しかしその口を、女は自分の口で塞いだ。 女はそのまま、青年の口に舌を進入させ、這い回らせる。ここ数年、女を知る機会がなかった青年にそれはあまりに甘美だった。 やがて女が頭を離した。青年と女の間に唾液がアーチを作る。当然と見つめあう二人。その沈黙は、女が破った。 「おまえ、せいだ」 単語をぶつ切りにするようなしゃべり方で、女は言う。 「おまえの、せいだ。おまえは、私を、お前の、巣に、引き込んだ」 何のことか解らなかった青年だったが、しかし青年は気づいた。女には右目がなかった。 右目のまぶたは閉じられ、その上を立ての裂傷が走っていた。 この女はあの狼だ。 体を見れば、いくつもの傷痕があり、その箇所は狼のそれと一致していた。 「どうして…お前、その格好…!」 青年の問いに、女はその金色の瞳を、わずかに悲しげに曇らせる。 「私は…私は、狼では、ない。人でも、ない だから、どちらの群れからも、追われ、一人で、生きてきた。 だが、お前は、私を、仲間と、思ってくれた。けど、それは、私が、普通の、狼だから。 だから、怖くて、黙ってた。けど、限界だ」 言うと、女は青年のシャツを掴み、引き裂いた。 暴力的な行為だが、しかし女の口からは、その行為とは正反対の言葉が漏れた。 「スキだ」 女は潤んだ瞳で、青年の顔を覗き込む。至近距離の口から、女の熱を含んだ息が吐きかけられる。 「春は、恋の季節。我慢できなくなる。だから、去年は、離れてた。 だが、今年は、離れる前に、お前が、連れ込んだ。 もう、我慢は、限界だ……!」 言うが早い、女は再び唇を押し付けてくる。だが今度の接吻は唇にとどまらず、そのまま頬、首筋、胸板へと愛撫をしていく。 「私は、お前が、欲しい。お前の、子供が、欲しい。抱け」 そういうと、女は強引に三度目の口付けをした。 三度目の口付けから数えて、いったい何度目の口付けだろう。 青年は、引き裂かれた自分の衣服の上に横たわっていた。その彼に、さらに女が跨っていた。 「はぁはぁ……お前のを、入れるぞ」 女が、いきり立った青年の分身を手にしながら言う。 青年は反抗しなかった。 最初のうちはせめて主導権をと反抗したが、女の文字通り人外の膂力で封じられ、たまに反逆に成功しそうになっても 「…いや、なのか?」 と、女が悲しそうな顔でこちらを見つめる。ためらった次の瞬間には、すっかり組み伏せられている。 そもそも、男にはこの行為を中断しようという思いは、ほとんどなかった。 女日照りが長かったし、なによりあそこまで熱烈な告白を受けて、断る男はいない。 形式はレイプだが、もはや殆どこれは同意の上でのセックスだった。 女は腰を上げて、青年の肉棒を自分の蜜壷にあわせると、腰を下ろした。 「…んんあっ!」 女の尻が、男の下腹部とぶつかり、ぺちんという音を立てる。亀頭は一気に女の中心まで侵入し、受け入れた女の体は、その感触にビクビクと痙攣した。 「ぅん…はぁぁぁ……」 軽い絶頂を迎えたのか、女は青年に跨ったまま、身を震わせる。 口元には惚けた笑みが浮び、口端からは唾液が一筋たれている。 その淫猥な表情に見とれていた青年だが、直後に、足に鋭い痛みを覚えて現実に引き戻される。女がつめを立てたのだ。 「動けぇ」 女が快楽にとろけた目で青年を見下ろす。 「動け。私を、抱けと、言ったはずだ。だから、動け」 この状況は、自分が女に抱かれているというべきだと思ったが、これ以上痛い思いはしたくなかったし、自分の息子を、この蕩けるような極上の肉壷に入れ、しかも動かないままなどということもしたくなかったので、青年は言われたとおりにした。 「んぁ!あっ!はぅ!はぁ、ひあっ!」 青年の腰の上で女は踊りだした。暖炉の燃え残りの火が、女の肌を暖色に染め、飛び散る汗を彩る。 青年だけでなく女のほうも自身で動き回り、淫らな舞は加速する。その激しい動きにより、青年の肉棒は女の粘膜を擦り上げ、女の蜜壷は青年の直棒をしごき上げる。 やがて、青年は自身の限界が近いことを察した。自分の白い汚液が肉棒の先端まで競り上がり、女の胎内を汚し尽くせと主張しているような錯覚を得る。 「あああああぅっ!」 先に絶頂を迎えたのは女だった。より深く、ありえないことだがそれこそ子宮を突き破らんとするほどの勢いで、腰を下ろしたとき、女は身を反らせ、まるで遠吠えする狼のように絶頂を迎える。 体中が突き抜ける快感と衝撃で痙攣する。だがそれもひと時のこと。痙攣が治まると、再び激しく動き出す。 「あん!はん!ひゃん!ど、どうした!なぜ、出さない!?ふぅっ…、気持ちよく、ないかぁんっ!」 動きながらあえぎながら、女は言って、そして唇を重ねてきた。 上と下、両方で重なり合いながら、青年はとうとう絶頂を迎えた。 びゅるびゅると音が聞こえるのではないかというほどの勢いで、精液が女の中に流し込まれた。 「!……んっ、…っ!……」 女も青年の射精を感じたのか、キスをしたまま腰を擦り付け、更なる射精を促す。 やがて青年の射精が済むと、女はキスした唇を離し、笑顔を見せる。 「すごいぞ、子種が、中に、たくさんだ。きっと、孕む」 女は言いながら腰を上げ、そしてまた、じゅぶりという音を立てて、腰を沈め肉棒を飲み込んだ。 「だが、もっとだ。もっと、抱け」 言いながら、再び腰を振り出す。 いつの間にか消えた暖炉の光。ただ窓から差し込む満月が、二人の淫舞を照らしていた。 翌日、女の姿はなかった。狼の姿もだ。 青年はすべてが夢かとも思ったが、しかししかし夢のはずはない。 引き裂かれたシャツも、思い出される感触も、すべてリアルだ。 青年はすぐに狼の姿を探したが、しかし、その姿はなかった。 青年は落胆し、だがあきらめきれず、すがるような思い出ウサギの干し肉――狼が好きだった――を木の枝にかけた。狼に餌を分け与える時に、よくやる手段だった。 次の日に言ってみると、その干し肉はなくなっており、あの狼の足跡もあった。 完全にどこか行ってしまったのではないと解り、青年はほっとした。だがそれでも狼の姿が見えないことは変わらなかった。ただ青年は、毎日のように、木の枝に干し肉をかけ続けた。 そのまま、狼が姿を見せることがなく一ヶ月がたった。 そして、青年が狼と会わなくなってからちょうど一ヶ月目の夜。 寝台の上で寝ていた青年は、目を覚ました。一ヶ月前と同じように、女が青年の上に跨っていた。 「やっぱり、お前を、忘れられない」 女は潤んだ瞳で青年を見下ろしていた。 「離れる、つもりだった。私は、化け物だから、お前に、嫌われる前に、自分で、出て行くつもりだった。 一人で、子供を、育てる、つもりだった。 けれど……、子供、できなかった。それにお前、餌を、分けてくれ、続けた。仲間だと、行動で、示し続けてくれた。 だから、離れたくない。独りは……」 女が言い終わるより早く、青年は女を抱きしめた。そして耳元でささやく。自分も独りはいやだと。共にいて欲しいと。 女は驚いたようだったが、すぐに嬉しそうに、まるで童女のような純粋な笑顔を浮かべて、こう言った。 「なら、抱け。今度は、お前が、私を、犯せ」 純粋な笑顔と行為のまま女はくちびるを近づけてくる。 「お前の、子供、欲しい」 そして、二人はくちびるを重ねた。 数ヵ月後、青年が毛皮を下ろす店の商人は、青年から数着の女物の服と産着の注文を受けた。何でも嫁を貰い、その嫁が子供を孕んだらしい。 いつの間にと聞くが、青年は微笑むだけで答えない。 それからさらに一年後、とある不穏な噂を聞いた商人は、青年の家にいった。 青年の山小屋に行くと、青年の妻に会った。青年の妻は右目に傷を持った、しかしそれを考慮したとしても美しい女だった。ただ、遠い国の出身なのか、妙な話し方をしていた。出迎えた子供は、なんと四人。どうやら四つ児だったらしい。 どうしてこんなところまで、と驚いた様子の青年に商人は、まずは祝辞とそれから町で聴いた噂を話した。 それは青年が住む山に、人に姿を変える狼の化け物が一匹、同じく人の子供に化ける子狼を四匹つれて住んでいるという噂だった。危ないから引っ越したほうがいいという商人に、青年とその妻は妙に慌てたように、心配はないと主張して、かたくなに引越しを断ったのだった。 完

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