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第三回 「電脳戦争」

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先の大戦最大の怪異と言えばBFサンタの存在でしょう。
重力制御の施されたワインレッドのリキシーが空を翔り、その速度はゴブリンの約三倍。
連合国が極秘裏にエリア51で開発していた試作機の一つであると考えられます。
しかし、後に配備されたものよりも遥かに高性能であったと言われ、更に同じ日の同じ時間に次々に現れては消えたと言います。
忽然と現れ、次の瞬間には消え去る。彼の正体は未だに解っていません。


コラム「戦場の神秘」より


  報告書


□無念 Name としあき **/**/**(*)**:**:** No.********

 鯖まだー?


□無念 Name としあき **/**/**(*)**:**:** No.********

 早漏兵乙


□無念 Name としあき **/**/**(*)**:**:** No.********

 鯖あき来るまで変態兵器を妄想しようぜ


□無念 Name としあき **/**/**(*)**:**:** No.********

 >鯖あき来るまで変態兵器を妄想しようぜ
 手榴弾を人間の顔にすりゃあ良いんじゃねーの、爆発するエフェクトは真っ赤でさ


□無念 Name としあき **/**/**(*)**:**:** No.********

 >鯖あき来るまで変態兵器を妄想しようぜ
 そこでマップ半分ぐらいの大きさの巨大力士さんの登場ですよ


某掲示板LOG、自動抹消済み
所在地はおろか通信経路すらも特定出来ず、監視は続行。


BF委員会、不正サーバについての報告書より



第三回 「電脳戦争」


量子コンピュータによって定義された架空空間での疑似体験は人間の意識の境を無くし、これが現実であるのか、夢であるのか、その認識すらも危うくした。
稼動当初のNetworkBattlefieldSystem(以後略称:NBS)で戦う兵士達は己の存在を霧散させて、自らの手によって死に至らしめると云う事件が相次いだ。
NBS内での死は死では無く、中空で眺める15秒間のブランク、生死に対する意識が薄れ、他者を簡単に殺してしまう。
そして取り入れられたのが痛みである。NBS内で銃に撃たれれば直接神経に信号が走り、痛覚を刺激する。同様に高い地点からの落下も場合によっては激しい痛みを伴う。
15秒のブランクは地獄のような苦痛、安らかな死ではなく、限り無く最悪な生の時間、この痛みを味わいたくないために死を恐れ生に執着する。


NBSにもルールはある。ルールの無いものなんてこの世には存在しない。


まず、不正アクセスの禁止、これは大前提である。クラッキングにウィルスの類の使用は厳しい処罰の対象となる。
そもそも世界で最も美しいプログラムと言われるNBSのセキュリティーホールを付くのは難しい、ほぼ皆無と言われ、更に言えばTheBabyの演算能力に対処できるコンピュータはいまだ存在しない。
開発したと言うが、実際のところ偶然できてしまった産物であり、開発者が死に絶えた今日でもそれはブラックボックスの塊である。
細かい諸事項については制定された『BF法』について参照してもらいたい。


NBSの肝は陣取り合戦である。


いかに迅速に相手の旗を取り、自軍の旗を揚げられるか、ワンマンプレイで敵陣に突っ込んで行ったとしてもそれは意味が無い。
陣地は要であり、死亡した際の復活地点となる。よって、相手の陣を全て奪い取り生き残っている敵を全て排除すれば勝ちだ。
つまるところ、連携こそが勝利の鍵である。哨戒を行う者、護る者、そして、攻める者。
NBSのVer.2以降ではメディックが簡易な蘇生を行うことができるようになり、戦略の幅が広がった。
最も活躍する花形は何と言っても戦車兵だろう。颯爽たるクロガネに乗り込んで装甲を生かした遊撃を行い味方を助ける、これほど頼りになる存在は無い。
歩兵にとって恐ろしいものはスナイパーであり、砲撃である。前者の熟練者は姿を現さずに次々と味方を仕留め、後者は砲撃を行っている地点は分かるが、喰らえばただでは済まない。
一人で全てを行うのでは無く、全体で役割を決めれば良いのだ。全てをこなせることに越したことは無いが、一つを突き進めプロフェッショナルになるのが一番だろう。



「クソッ、ケツ掘りやがったな、あんにゃろお!!」
「ジープの突撃、捨て身の戦術だな・・・」
「俺の可愛い可愛い戦車ちゃん、今修理してやりますからねー」
「うわ、キモいよ、お前」
「キモい言うなっ!」
「いやあ、十分キモいって」


「録音記録」より


このように現実的では無い攻撃を行い、強力な兵器を打ち倒せることから、一部の学者はNBSをスポーツであると称す。
確かに近年ではこのような感覚で行われているが、黎明期においては国家の存亡の掛かった戦いであったため、このような柔軟な考えは無い。
そもそも、自らの犠牲において味方を助ける、この発想が無かった。先の大戦において艦隊勤務に励む兵士達にとって空からの突撃は恐ろしいものだ。
枢軸の主国家はコストや熟練兵の無駄な消費を嫌い、すぐに廃止されたが、極東の国においてはそれを美徳とし、逆に推奨した。
俗に言うKAMIKAZE、海から来るならそれはKAITEN、主神を信望する者から言わせれば自殺は悪だ。
ゆえに先の大戦を体験した兵士はこの愚かな行いを嫌悪し、デジタルな世界であったとしても倫理を捨てることは無く想像したとしても決して行わなかった。



これは記念すべき第一回目のNBSの記録映像である。





薄暗い暗雲、けれども決して夜ではなく、太陽の日差しがもやがかった空気の中で仄かに照らしていた。
まるであの日、あの時に戦った戦場のようだ。手を固め、そして開き、それを何度も繰り返して歩いてみる。
「あー、あー」
声も出る。そして頬をつねってみる。
「ん、痛みは無いのか……」
擬似体験であるからそんなものは必要無いのか、と疑問にすら思わなかった。ずっしりと感じる銃の感触、ものは例に一発、音も反動も同じ。
ちらほらと仲間が現れ始めた。そして、待つこと数刻。


『両軍セットアップ完了を確認――開始までのカウントダウンをスタートします』


「やってやるぞ!」
「あの日の仇討ってやるぜ!」
「儲かれば何でも良いよ」
「そんな考えだと上がった後に上官に絞られるぜ?」
「ま、監視してるしな……」
「マジかよ、下手なことできねーじゃねえか」
各々に胸の内を開け、チープな音が流れた。ファンファーレとまで行かなくて、これは無いだろ。
「戦争に始まりの合図は無いか……」
あるとすれば宣戦布告だろうけどな、独り愚痴て、当初決められていた通りの行動に移る。
今回自分に与えられた任務は中央地点の陣の制圧、これは両軍どちらにも属さない唯一の陣、これを中継に敵を攻めることができる。
要はここを落とさないことには始まらないと云うことだ。俺達はリキシーに乗り込んでその地点へと向かう。


ガタゴトと揺れる車両、決して快適な走りでは無いが、重装備をして歩いて移動するより遥かにマシだ。
「敵の姿は……まだ居ないみたいだな、斥候が居ないか注意しろ、工兵!対戦車用の地雷の設置を頼む」
最も、戦車が姿を現したら完全に俺達の負けだが……そもそも、戦車が姿を現すような運営をする指揮官はただのバカだ。
リキシーから降りた歩兵はすぐさに哨戒にあたる、狙撃手の姿はもう見当たらない。彼らは影の守り手だから、どこかに隠れたのだろう。
「敵車両が3、対戦車兵頼む、戦車は居ない!」
次の瞬間、吹き飛んだ。言葉を発した兵士は頭上を舞い、落下して絶命した。
「どこかに隠れてやがるな……遮蔽物に隠れて警戒、衛生兵負傷者を」
三点バーストで敵を仕留める。ポイントが占領の2ポイントと敵を倒した1ポイントを合わして3。
倒せば倒すほどポイントが溜まり、これが査定の評価となる。決して悪い気分じゃない。勿論、味方を倒したらポイントはマイナスされる。
敵も味方も必死だ、明日のおまんまが掛かっているからな。おっと、無駄なことを考えている暇は無い。
腰の手榴弾を投擲し、敵を吹き飛ばす。アレは目の前に転がってきたら不発弾であることを願うしかない厄介な代物だ。
星を見るまでも無く、感覚として覚えている勘を頼り、動きながら撃つ。順調、順調。


何が起こったか分からなかった。次の瞬間には意識は中空を飛び、戦場を見下ろしている。
ワケが分からず、少しパニックに陥った。そして、数秒、自分だ死んだことに気づいた。
どうやって殺されたのか?一瞬だったため、何が何だか分からない。スナイプか、手榴弾か……はたまた戦車か。


「厄介だな」
タン、と重量によって十数センチの高さから足で着地。すると目の前に迫った敵兵がナイフを構えている。
「うわ、危ね」
何とか避けたが、このナイフと云う代物は厄介で、どこにヒットしようが、一撃の下で死に至るらしい。
投げても使えるお得な五本セット、でも投げるのは推奨しないな俺は。
自分もナイフで応戦しようとしたところ、敵は横に吹っ飛んだ。味方の銃弾だ。
「助かったぜ」
「仲間っつーのは助けあうもんだろ?」
不敵な笑み、視線を逸らし、次の敵を見る。うかうかしてると得物が居なくなるからな。


状況は均衡を保ち、両軍のチケットは五分の五分、上の連中も苛立っているところだろう。
彼らからしてみれば、さっさと倒してヤツらより優位に立ちたいのだ。
「ふん、結局兵士を駒としか見て無いんだな」
声に出さずに呟いた。どこに目があり、耳があるか分からない。
隊長がクイクイと指を曲げて俺を見ている。作戦の変更か?


「敵陣に攻め掛けるんで、陽動を頼む」
これもまたあっさりと、まあ、深刻な顔は深刻なんだろうけど、思いつめた深刻さじゃない。
あの時の戦場の指揮官は真っ青な顔をしてたっけな。
「サー、イエッサー、サクっとやっちゃいましょうや」


とは軽口を叩いたものの、さてどうしたものか。アシストをしたところでポイントにはならない。
うん、これは後で上にかけ合った方がよさそうだ、苦労して何もならないんて間違っている。


「そりゃ反則だろおおおおおおお」


戦車二台で吹っ飛ばされた。中空で胡坐をかいて考える。
これって敵陣の後ろから対戦車兵を寄越して、俺達が吹っ飛ばされている間に戦車吹っ飛ばした方が良いんないかと。


まあ、結局僅差で負けたんだけんどね。



「兵士の手記」より



以上の記録や兵士達の意見により、戦場での違和感を取り除かれ、完成度を高めていった。
あまりにもポイントの低いものや、態度が不真面目なものは次々に辞めさせられ、次々に兵士達が交代させられた。
敗者は勝者の言うことを聞く。これが原則である。戦いの終わった後は片方が満面の笑みで、片方が引きつった笑顔で握手をする。
こうして世界は本当の意味での戦争は無くなった。効率化された戦場において、人が死ぬ必要は無いのである。
しかし、人が死なない以上、人はどこまでも冷酷になれる。


次回、バトルフィールド1942「電脳戦争2(予定)」

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