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A Happy New Year


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胸ポケットに閉まっていた父から譲られた銀の懐中時計の蓋を開けて中を覗いた。
年の瀬である。1942年、生まれ故郷から遠く離れたこの雪原で俺達は敵襲を恐れながら暖を取り談笑している。
色々なことがあった。明らかに負けの色が濃い中で撤退を指揮しなかった無能な指揮官……彼は己自身の命と幾千の部下を失った。
俺はと言うとクリスマスの奇跡で何とか生き延びた口だ。真紅の彗星、連合の新兵器ゴブリンの実に三倍の速さで飛んだ幻想。
その数日後壊滅的だった簡易な司令部を敷いた基地に人員と俺達の命を救ったリキシーがやってきた。

しかし、良いことばかりでは無かった。

仲間の一人が「死んだ戦友の霊を見た」
そして、他の一人が「体が無い……首だけだ」

隊内は騒然とする。目撃者はうなぎ上りに現れ、そして、その怪奇現象の発生条件が発覚する。
この間、送られてきた地雷がキナ臭い、と。どうもこの地雷は霊を惹きつける何かがあるらしい。
当然、これを持って敵車両を吹っ飛ばす役目の工兵は嫌がり、気味悪がって適当に棄てて来る始末。
お陰で

「うぼあ」

「JIKODA!!」

冗談では無い、幸い死傷者が居ないから良いものの、これは許される状態ではない。
かと言って軍隊とは言え、生首が唐突に現れる地雷を持って任務に当たれ、と命令出来るほど新しく補充された上級士官達は人間を捨てきれずに居た。
不気味過ぎる。真冬のホラーなんて寒々しいだけだ。

回想するなか、刻々と時計の針は今年の終わりへと向かっている。

「おい、Tossy、お前もこっちこいよ」
戦友にして悪友の一人がどこで見つけてきたのか、瓶を持ってやって来た。
琥珀色の液体……顔を見ると真っ赤とは言わなくとも赤みを帯び、そして漂ってくる酒の香り。
「お前……まあ、何も言うまい」
見張りの任をコイツは受けていたような気もしなくは無いが、まあ、死ぬほどどやされるのはコイツだ。
ソッチに行くぜ、とパカンと時計の蓋を締めて立ち上がる。


――A Happy New Year.

今年もよろしくな、みんな。旧い1942年は終わり、新しい1942年へ――