今日はSOS団の集まりも無く、俺はそそくさと帰路につくところだった。
だがどういう風の吹き回しか、帰り際に長門に食事に行かないかと誘われた。
珍しいこともあるもんだ。特に断る理由も無かったので俺は長門についていく事にした。

「今日はどうしたんだ?」
有希『何が』
「何か話があるんじゃないか?ハルヒの事とか」
有希『・・・涼宮ハルヒは関係ない』
「それじゃあ・・・」
有希『今日は姉さんが食事当番。その責務が全うされる確率は極めて低い
   よって、家に帰る前に食事を済ませる必要がある。』
「・・・そうか、大変なんだな」
有希『平気。もう慣れた』
「でも、それならコンビニででも何か買って帰れば良いんじゃないか?」
有希『この国の一般的な高校生にとって、こちらの方が自然。
   さらに言えば、複数人で行くのがより妥当であり、
   その相手としてあなたが最も理想的であると判断した』
「それは光栄だな」
有希『・・・そう』

長門の目は相変わらず前方をただ見つめていたが、
ほんのり朱に染まっている頬を見てなんだか嬉しくなった。
・・・そんな事を考えている間に店に着いた。
食事といっても勿論そんなたいそうな店でなく、Mで始まる某有名ファストフード店だ。


有希『ビックマックセット、3つ。1つはハンバーグ抜きで』
店員「・・・お持ち帰りですか?」
有希『そう』

・・・おい長門、『そう』じゃないだろ。さっき言ってたのと違うし。
それに男女二人でビックマックセット3つをテイクアウトってのは決して自然とは思えないぞ。
しかも何だ、『ハンバーグ抜きで』って。店員さん明らかに動揺してたろ。

有希『どうしたの』
   「長門・・・、持ち帰るなら俺が一緒に来る必要性も無かったんじゃないか?」
有希『・・・情報の伝達に齟齬が発生。貴方の記憶の曖昧さが原因と思われる』
   「・・・・・もういい・・・」

俺の家と長門の家は店を挟んで反対側にあるため、外に出た瞬間に別々に分かれなければいけなかった。

   「家まで送るか?」
有希『大丈夫』
   「そうか、気をつけてな」
有希『・・・また明日』
   「あ、ああ」

長門と別れた俺は、珍しくあいつと会話らしい会話が出来たことに少し満足していた。
やはり人間関係はこうでなければ。


家の近くまで来たところで、見覚えのある二人組みの後姿が見えた。
一人は何を隠そう、俺の兄貴であり我が家の家計を一人で支えるアキト兄さんだった。
もう一人は・・・何回か会ったことがある。確か長門の妹のルリちゃんだ。
長門には悪いが、あの姉妹の中で一番しっかり者という印象があった。
しかし、その二人がなぜ手まで繋いで仲よさそうに歩いているんだ?

アキト「あのラーメン、きっとルリちゃんも気に入るよ」
ルリ『はい、アキトさん。楽しみです』

・・・どうゆう事だ?これから二人でラーメンを食いに行くのか?
それともウチに食いにくるとか・・・。
その可能性は十分だ。なんせ俺たちが生活できているのは兄さんのラーメンのおかげなんだから。
そんな事より、今『アキトさん』って言ったよな!?
イカン、気になってしょうがない。

アキト「こっちだよ、ルリちゃん」
ルリ『はい』

どうやらウチに行くワケじゃなさそうだ。
俺はどうすべきか悩んだが、結局二人の後をつける事にした。
断じて興味本位などではなく、家族の交友関係の把握のためだということを誓っておこう。

二人が入ったのは近所のラーメン屋だった。
うん、何回か兄さんに連れられて来た事があるぞ。確かに美味かった。
広さもまあまああるので、少し後に入って二人を観察するのも可能だった。
俺は運良く、先に入った二人から遠からず近からずの席に誘導された。

ルリ『アキトさん、何にします?』
アキト「そうだなぁ・・・ルリちゃんは何が良い?」
ルリ『私は・・・、アキトさんと同じのが良いです・・・』
アキト「そっか、じゃあ醤油にしようね。すいませーん・・・」

兄さんはよほどここの醤油が好きなんだろう。前もその前も醤油だったな。
俺も醤油を頼み、二人の会話に集中する事にした。
しかし、この行為はどう考えてもスト・・・
いやいや、さっきも言ったがこれは家族の交友関係の把握に他ならない。と信じたい。


アキト「ルリちゃん、今日は自分の家の晩御飯は大丈夫?」
ルリ『はい、今日はレイ姉さんが食事当番なので・・・』
アキト「そ、そっかあ。大変だね」
ルリ『いえ・・・もう慣れましたから。でももしかしたら有希姉さんが・・・』
アキト「え?」
ルリ『あ・・・何でもないです・・・』

事情を知っているのか、兄さんは俺と同じリアクションに必死の笑顔を沿えて返していた。
しかし、姉妹に揃って同じ事を言われる一番上の姉さんは大丈夫なのか?
まあ、長門とルリちゃんがいれば問題無いとは思うが。

ルリ『アキトさんはこれからもラーメンを作っていくんですか?』
アキト「そのつもりだよ。ルリちゃんにはこれからもずっとタダでご馳走してあげるよ」
ルリ『え・・・それって・・・』
アキト「ん?」
ルリ『あっ・・・何でもない・・・です・・・』

気にするなルリちゃん。俺にもそう聞こえた。

店員「お待ちどうさまー」
アキト「おっ、来た来た。ルリちゃん、熱いから気をつけてね」
ルリ『はい・・・頂きます』
アキト「はい、ルリちゃん。あーん」
ルリ『えっ?』

おい兄さん、お前は何をしているんだ

アキト「あーん」
ルリ『あ、あーん・・・・・・・・・もぐもぐ・・・』
アキト「どう?美味しい?」
ルリ『お、美味しい、です・・・』

こっちまで恥ずかしくなるバカップルぶりに、ルリちゃんの白い頬は真っ赤になってしまっている。

ルリ『アキトさん・・・』
アキト「ん?」
ルリ『あ・・・あーん・・・』
アキト「あーんっ」
ルリ『・・・もう、アキトさん子供みたいですよ?』
アキト「はは、そうかなあ。じゃあルリちゃんは良いお母さんになるね」
ルリ『あの・・・やっぱりそれって・・・』
アキト「それって?」
ルリ『いえ、何でも・・・』

・・・もうダメだ。早く出よう。
俺は二人の5倍のスピードでラーメンを流し込むと、素早く会計を済まし外に出た。
二人は気になるが、さっさと家に帰るとしよう。


「ただいま」

ん?見慣れない靴があるが・・・

シンジ「(あっ!やばい、綾波、早く服着て!)」
レイ『何をそんなに慌てているの?』
シンジ「(見つかったらヤバイんだよ!早く!)」

・・・あーシンジ君、何をしておいでですか?

シンジ「お帰りっ、キョン兄さん!早かったね!」
レイ『碇君もとても早かったわ』
シンジ「何言ってんだよ綾波!あっ・・・今日ちょっと遊びに来ててさ・・・」
レイ『お邪魔してます』

いや、こっちこそ

  「あの、早く帰って妹さんの世話をしたほうが良いのでは?」
レイ『心配ないです。彼女達は私よりずっとしっかりしているから』

全くだ。

  「でも夕飯の支度とかは・・・」
レイ『あ・・・』

忘れていたのか

レイ『ごめんなさい、碇君。私、帰るわ』
シンジ「じ、じゃあそこまで送るよ!」
    「気をつけてな」

二人を見送ると、俺は鞄を放りソファにもたれかかった。

「・・・やっと落ち着けるな」

・・・俺は一人になって今日の事を思い出していた。
そして、二人が帰ってきたらそのことを目いっぱいからかってやろう。
そんな事を考えていた。


-三姉妹の家-

レイ『ただいま』
有希『おかえり』
ルリ『おかえりなさい』
レイ『・・・二人とも、なんだかとても嬉しそう。今日はよっぽど良いことがあったのね』
有希・ルリ『・・・別に』
レイ『そう・・・良かったわね』





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