風呂場にて
有希「……綾波レイの身体データに変化あり。これが人間の成長期……」
ルリ「……有希姉も成長してますね。けしからん具合に」
有希「私はこんなに臀部や太股に脂肪及び筋肉はない。メーカーと造型師による情報改ざん」
ルリ「理想の姿だったりして」
有希「……」
ルリ「ごめんなさい、ウソです」
レイ「……二人とも、何してるの? お湯が冷めるわ」
ルリ「そうですね。今夜は寒くなりそうですし、入ります」
有希「……」
ルリ「……はいはい、わかりました。有希姉、ばんざーいして下さい」
有希「……ばんざーい……」
ルリ「はいはい」
ルリ「……ところで有希姉、いつの間にうちのお風呂はこんなに立派になったんですか?
ジャグジーついてたりテレビついてたり、挙句の果てにライオンの口からお湯が出てるんですけど。
というかそもそもお風呂場全体が広いです。どんなセレブの家ですか」
有希「たまには能力を使わないとサビつく」
ルリ「わけないでしょう。勝手に使ったらダメですよ。いざって時の力なんですから」
レイ「いいんじゃない? 3人だと普通の浴槽は狭いもの」
ルリ「その『普通の浴槽』は大抵3人一緒に入るようには出来てませんから」
レイ「でも、泡風呂よ。アヒル隊長もそう言ってるわ」
ルリ「いつの間にそんなおもちゃを……」
レイ「白いネコだって。こんにちはルリちゃん♪わたしキテ……」
ルリ「アウトです。アウト」
有希「こんな所にしましまとらの……」
ルリ「そんなトラなんて知りません」
――
ルリ「……少し長く入りすぎましたね。ぶっちゃけのぼせ気味」
レイ「汗もかいたからちょうどいいダイエットにはなったはずよ(サワサワ」
ルリ「どこ触ってんですか」
レイ「妹の成長具合のチェックを(ワキワキ」
有希「私も(ワキワキ」
ルリ「……指を妖しく動かしながらにじりよってくる姿、シンジさんとキョンさんに見せたいです」
レイ「湯冷めしないうちに寝ましょう、有希」
有希「(コク これからの季節は靴下の使用を推奨」
ルリ「どんだけわかりやすいんですか二人とも……いいですけど」
ルリ「じゃ、おやすみなさい」
レイ「おやすみ」
有希「お休み」
ルリ「……」
レイ「……」
有希「……」
ルリ「あ、レイ姉」
レイ「なに?」
ルリ「パジャマのボタン、掛け間違えてましたよ」
レイ「……今更この状態でそんな仕返しするなんて……」
有希「……」
レイ「有希もなんとか言って」
有希「……」
ルリ「寝てますね。一応寝なくても問題ない体ですけど」
有希「今は『寝たふり』という状態を再現している。だから返答できない」
ルリ「いや喋ってるじゃないですか」
有希「これは『二人がうるさいから目が覚めた』という状態を再現しているから」
レイ「うるさいだなんて……有希までひどいのね……」
有希「あなたと共に睡眠をとるようになり、今まで睡眠中に『碇君』と言った回数は2560回。『ババアうざい』と言った回数24回。
『ステーキとか今時ありえない』と言った回数1回。『死ぬかと思ったら死んでた』が2回。
『ジャーマン崩れ、静かにして』が58回。『ハンバーガー、肉抜きで』が1回」
レイ「お休みなさい有希。私が悪かったわ」
ルリ「これでゆっくり休めますね。じゃ……」
有希「ちなみにルリが『アキトさん』と呟いた回数は……」
ルリ「止めてください」
レイ「詳しく」
ルリ「だめです。知りません。何も言ってません」
――
シンジ「あ、綾波。なんか今日のシンクロテスト、調子悪かったみたいだけど……クマもできてるし、寝不足?」
レイ「ちょっと……でも大丈夫だから」
アスカ「そんなんじゃあっという間に肌もカサカサになっちゃうわよ~?」
レイ「……ニキビ……」
アスカ「え?うそ!?どこどこ?」
レイ「ウソ」
アスカ「クッ……あんたねえ……ってシンジ、あんたホントにニキビあるじゃない! 目立たないけどあごの辺りに二つ」
シンジ「そうなんだ……ちゃんと顔洗ってるんだけどな……」
ミサト「それは思われニキビね(ニヤニヤ」
レイ「思われニキビ……?」
ミサト「そうよ。自分を思ってる人がいると、あごの辺りにできるの。ま、迷信だけどね~♪ んじゃお疲れ♪」
レイ「……(二つ……)」
アスカ「……(二つ……)」
レイ・アスカ「一つつぶしましょう」
シンジ「ええっ!? やだよ跡が残るっていうし痛いし血が出るし……」
――
ルリ「アキトさん、こっちのどんぶり全部片付けちゃって大丈夫ですか?」
アキト「あ、うんお願い」
ルリ「ふぁ……」
ユリカ「あれれ? ルリちゃんもしかして寝不足? ダメだよちゃんと寝ないとー!」
アキト「珍しいねルリちゃんがあくびするなんて。一緒に住んでたときも寝つきは良かったのに」
ルリ「お馬鹿な姉のせいです」
アキト「あー……なるほどね、はは……」
ユリカ「ずっとお喋りしてたとか?」
ルリ「当たりです」
ユリカ「なに話してたのー?」
ルリ「それは……秘密です」
ユリカ「えー教えてよ~」
ルリ「ダメです。艦長でも」
ユリカ「今は艦長じゃないもーん!アキトの愛する妻だもん♪」
ルリ「じゃあもっとダメです」
ユリカ「ムッ。じゃあやっぱり元艦長権限で命令します!」
ルリ「元じゃ意味ないです」
ユリカ「あーもう! じゃあ教えてってば~……」
――
キョン「ふわぁあぁ……」
ハルヒ「キョン! 大口開けてあくびするな! 間抜け面が3割増しになるわよ!」
キョン「余計なお世話だ。谷口がまたフラれて愚痴に付き合ってたら遅くなったんだよ」
ハルヒ「ったく、あたしも古泉君もみくるちゃん有希も、どんなにリラックスしてる時だってあんたほど気を抜いちゃいないわよ!
少しは見習いなさい! 有希があくびしてるところなんて一度も見たことないわ!」
キョン「お前は授業中に俺を壁にして優雅に寝てるからだろうが。古泉はどんなに疲れててもそれを表に出さないのが
上手いだけだし、まあ朝比奈さんは例えあくびをしてても可愛いから問題ない。それに長門は……」
ハルヒ「なによ?」
キョン「いや……」
古泉「そういえば、長門さんはあくびどころか疲れた様子を見せた事が一度もありませんね」
みくる「そ、そうですねぇ~」
ハルヒ「確かにそうよねえ」
有希「……鍛えてるから」
キョン「(アリなのか!? 今の答えは回答としてアリなのか!?)」
古泉「(大丈夫ですよ)」
ハルヒ「ま、有希ならそれぐらいしてそうよね。案外家じゃエクササイズしてたりして」
古泉「(ね? どうやら長門さんのキャラが涼宮さんの中でもおかしな立ち位置にあるようですが……
多少の不自然さも問題なくスルーできるのならばいいんじゃないでしょうか?)」
ハルヒ「ん? 有希、今日読んでるのは何?」
有希「人間の睡眠のメカニズムについて。とてもユニーク」
ハルヒ「ふーん……」
みくる「あ、そういえばこの前テンピュールの枕っていうのを買ったんです。すっごく寝心地よかったですよ~」
ハルヒ「結構高いのよね、あれ。あ、ちょっとパソコンで検索して……あ、やっぱ結構するわね」
有希「……(ジーッ」
ハルヒ「わっ、そんなところから覗かなくても見たいならそう言いなさいよ。ほら。ていうか有希も興味あるの?
寝不足なんか縁がなさそうって話してたのに」
有希「……私にではなく、家族に」
ハルヒ「あーなるほど。って、あの二人そんなに眠れないの?」
有希「昨晩雑談に時間を費やしすぎた。そのため二人は恐らく睡眠不足による疲労と眠気を感じているはず」
ハルヒ「だからってこんな高い枕なんて買うの?」
有希「そういうわけではない。少し気になっただけ。心配しなくていい」
ハルヒ「ま、そりゃそうよね。でも有希も立派ね。二人ともいい姉と妹を持ったと思うわ!
もちろんあたしもいい団員を持ったと思ってるわよ!(ナデナデ」
有希「そう……よくわからない」
ハルヒ「そういう気持ちが大事なのよ、気持ちが」
キョン「家族を想う気持ち、ってやつだ」
有希「……。……少しの間、パソコンの使用を」
ハルヒ「ん? いいわよ?」
有希「少し集中するので会話に入る事が出来なくなる。あなた達は話を続けて」
ハルヒ「集中って……そんなに大事なことなら何も言わずに使って頂戴。んじゃ続けるわね。
幸いうちの二人は寝つきがいいから寝不足とかそんなにないのよね。寝相はあんまり良くないけど」
みくる「あ、なんか想像できちゃいます。翠星石ちゃんなんかきっと可愛いんだろうな~」
ハルヒ「あ、あの子なんか知んないけど、いっつも起きると毛布に包まってんのよね。なんかすこし狭い感じが
いいのかしら? 寝る位置もあたしとアスカの間だし」
古泉「なんとも微笑ましい光景ですね」
ハルヒ「どうかしら? そんなにいいもんじゃ……あ、閃いたわ! 今度みんなで真冬の百物語しましょう!
布団に包まりながらね!」
キョン「今までの話の流れ的に、それはただ、いわゆる『お泊り会』ってやつをやりたいだけじゃないのか?」
ハルヒ「う、うっさいわね。それはそれよ! メインは寝るまでの間なんだから!」
キョン「やれやれ……その夜はなかなか寝させてくれなさそうだな……」
ハルヒ「!! へ、変なこと考えてんじゃないわよ!? 男子はもちろん別の部屋で寝てもらうんだから」
キョン「……当たり前だ。何を言うとるんだお前は」
古泉「おや、では僕とあなたと二人だけですか……」
キョン「……それなら一晩中怪談話聞いてたほうがマシな気がしてきた」
ハルヒ「その点は淋しがらなくても大丈夫よ。ちゃんとシンジ君やアキトさん、ジュン君にも来てもらうからね。
だから当然、ユリカさんや真紅たちにも来てもらうわ。当然鶴屋さんもみくるちゃんもよ? いいわね?」
みくる「ひぇ~っ……あんまり怖いのはやめてくださーい……」
キョン「なんだかただのお泊り会って規模を上回りそうだな……」
古泉「(ユニークな知り合いが増えた分、涼宮さんの欲求も容易に満たされやすくなってますし、こちらとしてはありがたいですよ。
私個人としても、単純に楽しいですしね)」
有希「終了……」
ハルヒ「あ、終わった? ……ネットショッピングしてたのね。まさかマジで枕買ったの?」
有希「もう少し安価なものを。見てもらってもかまわない」
ハルヒ「んじゃ遠慮なく……なになに……『着ぐるみパジャマ-ウサギ』、『着ぐるみパジャマ-カエル』、『着ぐるみパジャマ-ネコ』……」
キョン「……自分とレイちゃんとルリちゃんの分か?」
有希「(コク」
ハルヒ「じゃあ今度泊まる時に見せてもらうわ! あたしもみくるちゃんも負けてられないわね……なんか面白いのないかしら……」
みくる「え、わ、わたしもですかー??」
ハルヒ「当然よ! 普通のカッコなんて面白くないじゃない! あ、キョン、あんたは例のトナカイのカッコね」
キョン「勘弁してくれよ……あれは寝るの前提の服装じゃねーだろ……」
古泉「(ここは一つ、お願いします)」
有希「私ももう一度見てみたい。あの姿のあなたは、ユニーク」
キョン「はあ……そう言われて断れる訳ないな(古泉はともかく)……やれやれだ」
――
アスカ「はぁ!? こんなカッコできるわけないじゃない! 死んだ方がマシよ!」
翠星石「翠星石にもプライドってもんがあるですぅ! 裸の次に恥ずかしい、いやある意味裸より恥ずべき姿ですぅ!!」
ハルヒ「ガタガタ言わないの! みんなにもとっておきのコスチュームで来るように言ってるんだから!」
――
ルリ「有希姉」
有希「何?」
ルリ「またちょっとしたトラブルの種を撒いてきませんでしたか?」
有希「? 言っている事の意味が判らない」
レイ「よくわからないけどこのウサギスーツもらっていいのね? 暖かいわ……」
ルリ「いつの間にナチュラルに着込んでるんですか」
レイ「ルリが当たり前のように先にネコスーツを選ぶんだもの。仕方ないわ」
有希「それでいい。私はこのカエルスーツを。
……今の二人の姿はとてもユニーク」
ルリ・レイ「……」