夏休み、は余り関係ない。
今日も今日とて、少し不思議な光景が三女の目の前で繰り広げられていた。

向かい合った長女と次女が、互いの顔をぺたぺたと触ったり引っ張ったりしている。
「有希、違うわ。こうよ、こう」むにゅうっと長女が次女の頬を伸ばす。
「けど姉さん、何か違う」次女もぺたりと触り返す。
子猫がじゃれてるようだ、と言えなくもないが、この姉達は何をしているのだろう?

意を決して聞いてみた。返って来た答えは、電子の妖精の想像の範疇を大きく超えるものだった。
「え、笑顔の練習?」
こくり、とそろって首肯。ぺたりと対になって座り込こみ、
綺麗な左右対称でこちらを見て同時にうなずくのは止めて欲しい。昔のアイドルみたいだ。

長女曰く、有希は表情が乏しい。あんたが言うな。
女性の魅力は垣間見せる笑顔だと、特定の男子だけに見せる事で威力は3倍増になると。
そこで自分の経験を生かし、有希に笑顔の特訓をしているのだそうだ・・・。


さらに姉の講義は続く。喋る方も聞く方も真剣なので、見守る事にしよう。
「まずシチュエーションが大事。相手と二人っきり、助けてもらって抱き起こされてる場合なんかがベスト。
 至近距離で、普段の無表情の下に隠された笑顔をぶつけるだけで、99.89%は撃沈可能」

ここまで聞いて有希の表情が僅かに曇る。
「その状況は既にあった。
 しかし、『眼鏡が無い方が可愛い』と言われ、その動揺で適切な対処が出来なかった・・・」
「有希・・・!なんてこと・・・・」
「姉さん、どうしよう・・・?」

新手の姉妹コントだろうか。有希姉の脳内でも多少情報の齟齬が生じているようだ。
『可愛い』とまで言われてないじゃん・・・。

「仕方がないわ。有希、こうなったら最後の手段よ」
こくん、頷いた有希姉が高速呪文の詠唱に入る。なんだろう?何をする気だ、この姉。
「この世界を再構築して邪魔者を排除。有希、わたしは転校生で碇くんと恋に落ちるパターンでよろしく」
ちょっと!そんな事を気軽にやるな、と言う間もなく世界は新しくなった。

こうして「消失」が始まった。


あ~あ、わたしのクラスにアキトさんが教育実習に来るとかのパターンにして欲しかったのに・・・。





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