「エラーが発生した」
まだ寒さの残るこの季節。目が覚めて歯磨きのために来た洗面台で顔を合わして、一言目がそれですか。
呆れてるうちにレイ姉も後ろからのたのたとやってきました。
呆れてるうちにレイ姉も後ろからのたのたとやってきました。
「おはよう。……どうしたのルリ? 歯磨き粉の泡が口からこぼれそう」
危ない危ない、私までボケキャラになるところでした。
……歯磨き粉は……もうついてないですね、よかった。
……歯磨き粉は……もうついてないですね、よかった。
聞いてくださいレイ姉、有希姉がおかしなこと言い出したんです。
エラーが発生したとか。
エラーが発生したとか。
「お姉ちゃんにも聞いて欲しい。今の私はエラーが発生し、機能のほとんどをリカバリーにまわしているので
一般女性と等しいスペックしか発揮できない。性格パターンにも若干の影響が出ている。
ただ、日常生活には支障はないので安心して欲しい」
一般女性と等しいスペックしか発揮できない。性格パターンにも若干の影響が出ている。
ただ、日常生活には支障はないので安心して欲しい」
はぁ、そうですか。
問題ないならいいですけど……って、「お姉ちゃん」?
問題ないならいいですけど……って、「お姉ちゃん」?
「大変だわ。有希が『お姉ちゃん』だなんて……」
「お姉ちゃん、苦しい……」
ああ……なんということでしょう、匠のレイ姉に抱きしめられて有希姉は顔を赤くして……顔を赤くしてる?
「有希、もう一度言って」
「……お姉ちゃん」
「大変」
って言いながら全然大変そうに感じません。
むしろ喜んでるようにしか見えないです。
頭撫でまくってるし。
私なんて目まいがしそうです。
あの有希姉が、キョンさん相手にすら「あなた」としか言わない有希姉が、「お姉ちゃん」だなんて……。
それどころか抱きしめられて顔を赤くして、恥ずかしそうに眉を下げてるなんて……。
有希姉の眉が動く時はムッとしたときぐらいだと思ってたのに。
むしろ喜んでるようにしか見えないです。
頭撫でまくってるし。
私なんて目まいがしそうです。
あの有希姉が、キョンさん相手にすら「あなた」としか言わない有希姉が、「お姉ちゃん」だなんて……。
それどころか抱きしめられて顔を赤くして、恥ずかしそうに眉を下げてるなんて……。
有希姉の眉が動く時はムッとしたときぐらいだと思ってたのに。
「そんなことない……」
ほら、今少しだけ眉間が動いたじゃないですか。
有希姉って無感動無関心無表情かと思いきや、案外そうでもないんですよね。
一緒に暮らしててつくづく思いました。
むしろこっそり観察してても楽しめるぐらいです。
初めてのものには異常に関心持つし。
この前だって雑貨屋さんで3時間ぐらいじっと……
有希姉って無感動無関心無表情かと思いきや、案外そうでもないんですよね。
一緒に暮らしててつくづく思いました。
むしろこっそり観察してても楽しめるぐらいです。
初めてのものには異常に関心持つし。
この前だって雑貨屋さんで3時間ぐらいじっと……
「有希、他に具合の悪いところはないの? 無理しなくていいのよ。
学校も休んでもいいわ」
学校も休んでもいいわ」
話遮られました。
こーゆー時に急にお姉ちゃんぶるというか、母性を発揮するんですよね、レイ姉って。
しかも今「お姉ちゃん」って呼ばれたせいかいつもより3割増で過保護になってるっぽいです。
こーゆー時に急にお姉ちゃんぶるというか、母性を発揮するんですよね、レイ姉って。
しかも今「お姉ちゃん」って呼ばれたせいかいつもより3割増で過保護になってるっぽいです。
「大丈夫。変化があったのはデータベース以外の全機能の縮小。原因はバグの蓄積。
しばらくすれば完全復旧する」
しばらくすれば完全復旧する」
「よかった。でも、元に戻っても『お姉ちゃん』って呼んで欲しいわ」
「……それは……嫌」
「『嫌』……」
「今はエラーのために言語プログラムも変わっている。修復後は呼び名も自動的に元に戻る」
断るとか否定するとかじゃなくて、「嫌」ですか。
普通っぽくなった今の言い方の方が案外グサっときますね。
ま、その内なおるんならそんなに心配なさそうで何よりです。
レイ姉はしょぼーんとしてますけど。
普通っぽくなった今の言い方の方が案外グサっときますね。
ま、その内なおるんならそんなに心配なさそうで何よりです。
レイ姉はしょぼーんとしてますけど。
でも、バグが蓄積って、そんなにバグが出るほどのことしましたっけ?
なんか、家じゃじっとしてるだけな気がしたんですが……。
なんか、家じゃじっとしてるだけな気がしたんですが……。
「これは人間で言えばストレスの蓄積と爆発に近い」
「ストレスが溜まることなんてあったの? そういう時こそ、『お姉ちゃん』に頼って欲しいわ。私がいるもの」
「……」
有希姉、無言で窓越しに隣の家を見てます。
ああ、そういうことですか。
言わんとしてる事はわかります。
ああ、そういうことですか。
言わんとしてる事はわかります。
「正直、付き合ってるこっちがSOS」
わぉ、これは歴史に名を残す瞬間です。
あの有希姉が冗談をかましましたよ?
あの有希姉が冗談をかましましたよ?
ていうか本音?
「私からも、あそこの次女になんとかするよう言っておくわ。個人的に色々言いたい事もあるから」
こっそりガッツポーズ決めながら言うレイ姉も、実は性格パターンにおかしなことが起きてませんか?
「あら、まだトーストかじりながら『遅刻遅刻ぅ』なんて言わないわよ」
そんな事言い出したら本気で世界の終わりを信じます。
「シンジさん相手ならやりかねない」
そうそう。
「ひどいわ有希。ていうか有希、私でも名前で呼んだことないのに……妹にまで出し抜かれた……」
ああ、今のでわかりました。
本当に学校休むべきなのはレイ姉ですね。
おかしいです。
本当に学校休むべきなのはレイ姉ですね。
おかしいです。
「朝は人間の機嫌が不安定な時間帯。これぐらいなら問題ない。いつものこと」
はぁ……。なんか朝からどっと疲れました。
ま、しばらくは面白い有希姉が見れそうなんで、とりあえずビデオビデオ……。
ま、しばらくは面白い有希姉が見れそうなんで、とりあえずビデオビデオ……。
おわり