第一話っぽいの、その2

ATMの前でため息をつく。
あの部屋に通帳があったことから大体想像はついていたが、やはり今まで使っていた口座は使えなくなっていた。
再び利用できるようにすることはできるだろうが、何者かによってあの部屋に集められたことを考えれば、監視されている可能性がある。
であれば、無理に自分の口座に執着することもないだろう。幸い通帳には家具を揃えた上で、三人がしばらく生活するのに困らない程度の金額が記載されていた。

あの部屋で私がメモに気付いてからしばらく無言が続いた。どうもこの二人は無口な性格らしい。ユリカさんのような性格の人間が一人いれば、話は楽だったのだろうけど。
なんとか二人の名前を聞き出し、現状を把握する。
「まず、姉妹ということですが…」
「私たちに血縁関係はない。姉妹というのは不自然」
銀髪の女性、有希さんがそんな根本的なことを指摘する。
「いえ、これは姉妹として、この街に溶け込んで生活するように、という指示だと解してください」
「了解した」
有希さんは私の目を見て、こくんと頷いた。
「それで、それぞれの呼び方なのですが」
私もあまり乗り気ではないが、他の二人が頼りないのだから仕方なく仕切り役を買って出る。
「私が…長女をやる」
手を上げたのは、青髪の女性、レイさん。その自発的な行動はありがたい。だが、
「年齢的に言えば、有希さんが長女役を演じるのが妥当です」
「そう…」
レイさんは無表情のまま、手を降ろした。落ち込んでいるのかどうか、表情がないので不明だ。
「残念ながら、その提案には賛同できない」
異を唱えたのは有希さん。
「この場合私が長女役をやるのは不自然」
「不自然も何も、年齢的に有希さんがやるのが自然です」
高校生の有希さんに、中学生のレイさん。どちらが長女か、一目瞭然だ。
「年齢の問題ではなく、この三人の中では、レイが長女になることがより自然」
言っていることは全く理論的ではないが、つまりは長女役はやりたくないと言うことだ。
長女役がやりたいレイさんに、長女役がやりたくない有希さん。利害は一致している。
「…わかりました。それで手を打ちましょう」
この矛盾のせいで、生活が失敗に終わったとしても、それは私の責任ではない。この三人を選んだ人間の人選ミスだ。
もしそのせいでこの世界が滅んだとしても、私には責任がない。
そもそも、私は元々この提案には、乗り気でないのだ。
家具を揃えるためのお金を下ろした私は、銀行を出る。
外では二人がじっと私を待っていた。





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