「8-307」(2007/12/31 (月) 11:15:45) の最新版変更点
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<p>年の瀬の昼過ぎ。</p>
<p>ゴロリ。寝癖の付いた青い髪を直そうともせず、コタツに首まで埋まった少女が<br>
昔懐かしのRPGを寝転んだままで器用にプレイしている。<br>
勇者の名前は「いかりく」、パーティーは賢者一人で「レイ」。<br>
さきほど、「そうりゅ」と名付けた商人を、どこぞの町に置いてきたところだ。</p>
<p>ペラリ。そのこたつの対岸では、制服にカーディガンを着た少女が<br>
綺麗な正座を微塵も崩さずに読書をしている。<br>
そこに、対面から、手だけが伸びてきて何かを探すようにぺちぺちとこたつを叩く。<br>
読書中の少女は、無言でその手にこたつの上のみかんを一つ握らせてやる。</p>
<p>「ありがとう、有希」<br>
「どういたしまして・・・」</p>
<p>また、RPGのフィールドの音楽と、時折ページをめくる音だけがリビングに残る。</p>
<p><br>
カチャ、バタン。玄関の方から、とんとん、と足音がして<br>
髪を二つに結んだ少女が、大きな買い物袋を二つ抱えて入ってきた。<br>
「ただい・・・ま・・・」<br>
目の前の姉二人の光景に、思わず挨拶が途切れる</p>
<p>この家の長女、RPGをプレイしいた少女は、入ってきた少女を見るやコタツにもぐる。<br>
この家の次女、読書の少女は、見る人が見れば分かるいささか気まずそうな表情を<br>
浮かべて、ついっと目をそむける。</p>
<p>そんな姉二人を交互に見つめ、一方はコタツの中だが、<br>
この家の三女が一言、「買い物に行くから、大掃除しておいてって言いましたよね?」</p>
<p>こたつの中から応えがする。<br>
「・・・寒いから、大掃除の前にちょっと温まろうと思って・・・」<br>
コクコクと、次女も同意する。</p>
<p>「わたしはその寒い中を、お買い物に言って来たのですけど」<br>
三女、ルリの声は冬の寒さを忘れるほど冷たかった。<br>
そして最後に一言、「せっかくお正月のご馳走を沢山買ってきたのに・・・」<br>
ぴしり、と固まったのは有希。慌てたのかゴツンとコタツに頭をぶつけたはレイ。</p>
<p>次の瞬間から、窓を開けてこたつを上げて、掃除機・はたきを持ち出してと<br>
いそいそと掃除を始めた。<br>
動き出した姉達を見て、ルリも満足したのか、わたしはキッチンを掃除しますねと<br>
言い残し去っていった。</p>
<p>その声音が何時もどおりだったので、レイと有希は、そっと見合って胸を撫で下ろした。<br>
どうやら、今年もなんとか無事に年を越せそうである。</p>
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