第251話~第260話

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airi-kumai

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だれでも歓迎! 編集
646 :名無し募集中。。。:2009/11/04(水) 23:32:58.04 0
>>482
第251回

「もも!」

清水と別れてからさっきよりもずっとずっと速く走って屋上へ向かった。
屋上の、鉄の重い扉を思いっきり押して開けると、うちはそう叫んだ。

「・・・みや?」
「もも・・・よかった」

ももはフェンスの前でうずくまっていた。目も赤くて鼻も赤い。
泣いてたの、バレバレだよ。
でもとりあえずなんだかホっとして、ゆっくりとももへ近づいた。
ももは立ち上がらないけど、座りなおして、近づいてきたうちに微笑んだ。

「どしたの?」
「・・・心配だったから」
「そっか、ありがとう」
「なんで泣いてんの」
「・・・泣きたいこともあるさ」
「話してよ」
「それよりもさ」
「ん?」
「もものこと、ぎゅーって抱きしめて?」
「はぁ?」
「お願い」
「・・・いやでも」
「みや?」

もものそばに立っているうち、座っているももは思いっきり上目遣いだ。
・・・・・・明らかに作ってる顔なのに、悔しいけど、めっちゃ可愛い・・・うぅ。


647 :名無し募集中。。。:2009/11/04(水) 23:34:08.38 0
>>646
第252回

「みーや。」
「・・・は、恥ずかしいしやだ」
「みやに抱きしめて欲しかったんだ。・・・頑張ったんだよ。
言いたくても言えなかった事、聞きたくても聞けなかったこと
全部じゃないけど、でもぶつけられた。
スッキリもしたけど、でもほんとは、怖かった。
みやには大丈夫だよなんて言ったけど、でもほんとはちょっと怖かった
だから、・・・・そうだなぁ、頑張ったねってご褒美?」

また、上目遣い。
でもこれでももが泣いてた理由もよく判った気がする。
ももは強そうに見えて弱い。弱そうに見えて強い。ちょっと捉えどころのない人。
だけど間違いなく今は前者で。
弱々しくて、誰かに支えてもらいたがっている、そういう風に見えた。

だから、うちはももに手を差し出した。
首を傾げながら差し出された手を取ったももは自分の手を差し出す。
うちはそれを引っ張りあげてももを立たせた。
そしてその流れのまま、ちっこいももを上からぎゅーっと抱きしめた。

がっしりしてる、なんて思ったこともあったけど
でもすごく小さくて細い。壊れちゃうんじゃないかって思うくらい。
ちっちゃいくせに、頑張り屋さんだなぁ、ももは・・・。

「えへへ・・・みや、ありがとう」
「ううん、もも」
「ん?」
「よく、頑張ったね。えらいぞ」
なんて頭を撫でるとももは目を赤くしたままにっこり微笑んでくれた。


648 :名無し募集中。。。:2009/11/04(水) 23:36:00.31 0
>>647
第253回

あいつ、泣いてた。ううん、泣き顔なんて昔に飽きるほど見た。
・・・・なのに、なんでこんなに気になるんだろう?
屋上から立ち去って、階段を下りているときそんなことを考えていた。

茉麻のせいだ。余計なことばっかり言うから。
嗣永だってそうだ。何をいまさら。そんなこと聞いてどうするって言うんだ。
別に理由なんて・・・・そんなのないのに。

だけど自殺しようとしていたとは思わなかった。そこまで辛かったのかな。
私って・・・・なんであんなことしたんだろうな。
・・・なんかもうよくわかんない。

途中、夏焼雅に会った。茉麻が言ってた、嗣永の想い人。
1対1で話すのは初めてだった。見れば見るほど派手な顔。
髪だって服装だって、生徒会長としてちょっと注意したいレベル。
でも、実直な・・・なんていうか芯の通った人っていう感じがする。
不思議な人に見える。

えらく嗣永のことを心配していた。なにか、聞かされていたんだろうか。
彼女は私が立ち去るとダッシュで階段を駆け上がって行った。
何をそんなに心配なんだろう。でも、・・・あの目・・・きっとあの子も・・・
嗣永のこと好きなんだろうなぁって・・・直感でそう思った。

そう思った瞬間、なんだか無性に悔しくなった。
私にはそんなに心配してくれる人はいない。私を好きな人もいない。
・・・はぁ。と小さくため息が漏れる。
気付いたら、私は再び屋上への階段を上り始めていた。

私は今さら、何がしたいんだ。・・・・ちょっと考えてみてもよくわからなかった。


716 :名無し募集中。。。:2009/11/08(日) 00:47:07.00 0
>>648
第254回

屋上へ出る扉の前で立ち止まった。
この扉を開けて、私は一体なにをしようとしているんだろう。
わからない。
でも、・・・・多分、これは、きっと・・・・嫉妬だ。
何に対して?誰に対して?・・・。

認めない。そんなの絶対認めない。

ぐっと拳を握り締めて、私は小さく扉を開いた。
小さな隙間から、いるはずの嗣永と夏焼雅を探した。
右の隅の方に、2人の姿が見えた。

何か話をしているようだけど、声は聞こえない。
でも、2人がガッチリ抱き合っているのが見えた。
腕が、腰に回されていて・・・テレビとかで見た、恋人同士がそうするような、抱きしめ方。

「・・・・・・・・」

嗣永は夏焼の胸に顔を埋めて幸せそうな顔していた。
私が見たこともない蕩けそうな顔が遠くからでもわかる。

「・・・・帰ろ」

小さく呟いて、扉を閉めた。
なんとも言えない気持ち。辛い?悲しい?寂しい?
きっとどれか、いや、全部か。

茉麻、素直になんてなれないよ。やっぱ無理。
でも、・・・・私・・・・多分、きっと・・・あいつのこと・・・・。


827 :名無し募集中。。。:2009/11/12(木) 23:47:10.38 O
>>716
第255回

「ハロー、佐紀ちゃん」

教室に置きっぱなしになっていたカバンを取りに戻る途中、
茉麻が現れた。手には、自分のカバンと・・・・私のカバン。
どうやら、ここで待っていたらしい。
茉麻はなんだかヘラヘラしてる。気持ち悪いんだけど。

「・・・・・・・・・」
「ちょっと無視しないでよー」
「・・・・なんの用?」
「えぇ、ちょっと長いから一緒に帰ろ?」
「拒否する」
「まあ、いいや。付いてく」
「・・・・じゃあ聞かないでよ」
「えへへ」
「・・・・・・もう」

結局、茉麻は私の少しだけ後ろを歩きながら付いてきた。
もうすっかりあたりは暗くなっている。
夏とはいえ、学校を出る時間にしてはちょっと遅い。
ったく・・・嗣永のせいで遅くなった。夏焼のせいで遅くなった。

・・・ってことは、自分のせいで遅くなった?
いや違う、あいつらが・・・。

「もも先輩と何の話したの?」
「どうせ茉麻がふっかけたんでしょ?」
「何でそう思うの?」


828 :名無し募集中。。。:2009/11/12(木) 23:48:12.81 O
>>827
第256回

「嗣永が私に声かけるとか、まずありえないし。そもそも、
文芸部に誘ってくるって、おかしいでしょ。茉麻しか考えらんない。
てかまぁ、嗣永も茉麻が誘えって言ったとかなんとか言ってたし。」
「さすが佐紀ちゃん。いや、誰でもわかるか・・・」
「そうだよ」
「で、それ以外の話は?」
「それ以外って?」
「好きです、って言えた?」
「はぁ!!?」

思わず出た大きな声。茉麻は慌てて私の口を塞いだ。

「ちょ、声でかいよ佐紀ちゃん」
「いやいや、ありえないって。むしろ、嫌いだし。」
「佐紀ちゃんツンデレ、いやツンツンしすぎだなー。素直になっちゃえばいいのに」
「何が言いたいの?」
「んー・・・・わかんないけど、でも、佐紀ちゃんがもも先輩のこと嫌いな風には見えないよ。」
「あっそ。」
「佐紀ちゃん、文芸部はいつでも歓迎してるからね」
「勝手にして」
「相変わらずだなぁ」

茉麻はそう言ってんーっと背伸びをしてはぁ、とため息をついた。
少し顔を上げて、茉麻の顔を盗み見ても、何を考えているのか全然わからない。
・・・何がしたいんだか・・・・。

そんなときふと、思い浮かぶ、思い出す夏焼に抱きしめられた嗣永の姿。
嬉しそうな顔。私が見たこともない、顔。
なんだか、悔しい。そう、思った。なにが悔しいのかはわからないけど、悔しい。


829 :名無し募集中。。。:2009/11/12(木) 23:49:22.94 O
>>828
第257回

「私が1個言いたいのはさ、あとで後悔しても遅いぞってこと」
「え?」
「私もさ、好きな人がいるの。一番最初に仲良くなったのに、ってこれは勝手に思ってるだけだけど。
後から出てきた子にあっさり取られちゃって。もっとアピールしときゃよかったかなぁ、とか
なんでちゃんと告白しなかったんだろう、とか後悔ばっかしちゃって。
もちろん、諦めてるわけじゃないし好きなのは変わらないんだ。でも、やっぱりね・・・」

茉麻はあとを濁すように小さな声になって話を止めた。
下を向いてしまって、少々悲しそうにも見える。
そういえば、茉麻とこんな話あんまりしたことなかったっけ・・・・。
誰のことなのかはわからないけど、でも、後悔の色は見て取れる。

「別にもも先輩と付き合えとか極端な話じゃなくてさ、気持ちくらい伝えとかないと
後々、『あのとき言っておけば・・・』って後悔しちゃうよってことなんだよね。」
「うん」
「だからさ、素直になっちゃえってことなわけで。」
「そりゃ、言ってることはわかるけど」
「ま、そういうことだ。私が言えるのはここまで。・・・・ってなわけで、寄るとこあるから、またね!」

茉麻はピタっと立ち止まって、家とは逆の方向へと歩いていった。
急に、そばに人がいなくなって、なんだか変な感じがする。

「・・・・後悔・・・ねぇ。」

ああやって、好きなんでしょ好きなんでしょって何度も言われるとそうなのかなって思う。
でも、それが本当かどうかはわからない。だけど、なんだか、もし、そうだったとしても
それはそれでいいのかな、と思えてくるから不思議な気持ちだ。
今朝の、お昼の、必死にそれを否定しようとしていた自分の気持ちは、今はない。
茉麻に言われた数々の言葉が身に沁みる。


830 :名無し募集中。。。:2009/11/12(木) 23:50:17.84 O
>>829
第258回

「はぁ・・・もうすぐテストなんだけどなぁ」

小さく、そう呟いて家へ歩き出した。
勉強なんて、出来ないぞ。・・・こんな気持ちじゃ出来ない。
なんでよりによってこんなときにかき乱すんだろう。

・・・自分の中で、何か答えを見つけなきゃ・・・じゃなきゃ、だめだ。全然、だめだ。




屋上で、空を見上げながらみやと話をした。
無論、抱きしめてくれていた手は離れているけれど
手を伸ばせばすぐに届く距離にいてくれる。
そんな優しいところも、大好きだよ。

「ねえ、みやはそろそろもものこと好きになってくれた?」
「わかんないよ」
「またそうやってはぐらかすんだから」
「だって、わかんないんだもん」
「・・・・・ももは、ずっと好きだよ」

みやの目を見て、そう言う。
みやは目をそらすことなく、真剣な顔をして頷いてくれる。
あれ、いつもとちょっと・・・違う?


831 :名無し募集中。。。:2009/11/12(木) 23:51:20.26 O
>>830
第259回

「うん、知ってる」
「だから、待ってる。でも、他に好きな人が出来たら言ってよ。絶対だよ」
「・・・・・うん、だけど」
「だけどなに?」
「・・・やっぱりいいや」
「えぇ、なに?気になる!」
「なんでもないよ」
「・・・・むぅ」
「はいはい、可愛くないよ」
「ばか!」
「はいはい、ばかですよ」

いや、いつもと一緒か。こうやってふざけあって終わってしまう。
そろそろ先へ進みたいって思っているけどでも、
みやの気持ちがももに向かないんだから、それはもうどうしようもないことだよね。
なんて、前にも同じようなことを思ったっけな・・・・。

「・・・・ところで、みやテストは?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「黙らないのー!成績落ちちゃったらまた嫌味言われるんだからさ」
「...まぁ、そうだけど。でも、・・・」
ま、ももだって人のこと言えるほどテストに余裕があるわけじゃないけどさ。
「けど、今それよりも、考えなくちゃいけないことあるでしょ?」
「うん」
「うちはそれに必死なわけです。」

なーんて言って、みやはもう屋上の地面に倒れこんで背伸びをした。
さっきまで、ももを抱きしめてくれたカッコイイみやと同じ人とは思えない。
だけど、そんなところも好きだから何も言わず、ずっと隣にいた。


832 :名無し募集中。。。:2009/11/12(木) 23:52:10.47 O
>>831
第260回


「・・・・・みや、帰ってこない・・・須藤先輩帰っちゃったし・・・・ももは?」

みやが出て行って、しばらくして須藤先輩は帰ってしまって、ももは戻ってこない。
私は一人、文芸部の部室でひたすら数学の問題を解いているわけだけど・・・

「帰っちゃうぞー・・・・」

と、呟いてみても誰もいない部室。
小さく響いて消えていった。

「次に学校に来るのは月曜が休みでもう火曜日か・・・・」
部屋に張られたカレンダーに、持っていたシャーペンで印を付ける。
「・・・なんとかしなきゃなぁ、でも人がいないなぁ・・・・」
生徒会長さんがもし入ってくれたら?いや・・・ありえないんだけど、でも
もしそうなったとしたら・・・?あと1人・・・・
最後の一人ってやつが、難しかったりするんだよね。

「どうしよう・・・・っておーそーいー!!!」

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