第181話~第190話

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airi-kumai

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196 :名無し募集中。。。:2009/09/11(金) 01:20:10.79 0
>>195
第181話

「今日は、生徒会でいろいろあって怒られて余裕なくなってて必死で・・・・」
「・・・そうだったんですね。心配してました、ずっと・・・」
「ごめん、言えばよかったんだけどそういう時間もなくて・・・」
「ううん、いいんです。ちゃんと、話してくれて嬉しかったから、いいんです」
「・・・ありがと。そう言ってもらえると嬉しい、好きだよ愛理」
「へっ?あ、な、なに言って・・・!」

会話流れの中でサラっと出てきた言葉に私はびっくりして動揺した。
耳まで赤くなっていくのがわかる。
・・・抱きしめられててよかったかも。こんなだらしない顔見せられない・・・。

「そういえば、最近ちゃんと言ってなかったなぁと思って」
「・・・・はい、ですね・・・私も、好きです」
「ありがとう。嬉しい・・・キス、していい?愛理に癒して欲しい」
「・・・そういうのは、言わなくてもいいです」
「うん・・・」

先輩が私の腰から腕を離して、少し離れると身を屈めて私にキスをしてくれた。
甘い、味がした気がする。そんなキス。
先輩の綺麗な整った顔が美しすぎて私は目を閉じることなくその顔を見ていた。
いや、忘れてたのかもしれないけど。

「・・・帰ろっか」
「はい」
先輩が手を差し出してくれる。私はそれをしっかりと掴んだ。

帰り道、2人で、生徒会への文句をいっぱい言った。
なんだかスッキリしたような気持ちになって楽しかった。
・・・・別れ際、何も言わずに降ってきたキスは一瞬で離れたけれど嬉しくてたまらなかった。


229 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2009/09/12(土) 00:18:50.03 0
>>196
第182話

「・・・絶対、連れ帰る」
「別に放っておけば・・・」
「だめ!じゃあ、千聖来なくていい」
「だ、だめだよ。舞ちゃん一人で行かせられないもん」
「じゃあ、協力しなさいよ」
「う、うん・・・・でもなぁ」

出発の3日前、舞ちゃんとはこんな会話をした。
自分からいなくなったんだから、別に追いかけなくたっていいのに。
置いていった、置いていかれたんなら、その程度の存在だったってことなんだよ舞ちゃん。
でも、舞ちゃんはそれを理解してくれないから大変なんだ。

だから、こうして2人、飛行機の中にいる。
目的地は、東京。いや、舞美ちゃんのところ。
転校先の高校は、うちがチラっと見た舞美ちゃんのファイルケースの中の書類で知ってる。
・・・説得して、戻ってきてもらう。・・・舞美ちゃんが不可欠なんだよ。って舞ちゃんは思ってる。
もちろんうちだって思ってるけど、だけどやっぱり自分から去ったいった人を追いかけるのは
あんまり賛成のできることじゃない・・・なって思うんだけど。

飛行機ってヤツは想像よりもずっと速くて、東京へはすぐに着いてしまった。
時間は夕方の少し前というところか。
うちらは大きなカバンを持ってとりあえず腹ごしらえをして
舞ちゃんの親戚の家に向かった。
舞美ちゃんが転校した学校へは徒歩でいける場所みたいだ。
もちろん?そこに住んでる舞ちゃんのいとこはその高校へ通っているらしい。
直接連絡を取るよう仲じゃないから、なにか聞き出したりってことはできないみたいだけど。
そこは大きな家ですっごいお金持ちらしくて、舞ちゃんもうちも泊めてくれるらしい。
舞ちゃんの家ってそんなお金持ちじゃないんだけど・・・まぁ、探るのは止めとく。

230 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2009/09/12(土) 00:19:39.88 0
>>229
第183話

うちの学校はスポーツ校で、ほとんどの運動部が全国大会常連であり、
勉強はしなくてもスポーツができれば卒業できる。
うちらの部はもうすでに全国大会出場が決まっていて、あとは勝つのみって感じで。
そんなときに、2人して学校も部活も休んで東京までやってきた。

でも、親や先生、先輩たちとの約束で期間は3日間。
それで舞美ちゃんを説得できなきゃすぐに帰ってくること。そう決まっていた。
練習に遅れが出るのは喜ばしくないからだ。ってすでに遅れるのは決定だけども。

夕方すぎ、夕焼けが綺麗な時間。

「・・・はぁ、なにこの家。いやむしろ、これ博物館的な?」
「来るの二回目だけど、すごいよねぇ・・・」

舞ちゃんの親戚のお家に着いた・・・は、いいけど想像以上に大きな家に圧倒されていた。
まず、門の高さがおかしい。そして、家の姿カタチがまったく見えない。
・・・なんだここは!

2人でインターホンをどっちが押すかでモメていると、後ろから声をかけられた。

「あの、家に何か用ですか?」
振り返ると、背の高い美人な子が一人とやけにニコニコした女の子が一人。

「・・・熊井ちゃん!」
「へ?」
「舞、舞だよ!覚えてない?」
「あ、舞ちゃん!?なんでここに!?」
「う、うん、ちょっと・・・」
「と、とりあえず入りなよ、あれ、お友達?」

231 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2009/09/12(土) 00:20:54.48 0
>>230
第184話

「千聖、舞のいとこの熊井友理奈ちゃん。」
「あ、どうも・・・岡井千聖って言います」
「よろしく、舞ちゃんのお友達かー。あ、隣にいるのは愛理。うちの後輩」
「どうも・・・鈴木愛理です」

舞ちゃんがいとこの美人を紹介してくれる。しかし・・・デカイなこの人。
隣の後輩さんは笑顔の可愛らしい人だ。癒し系って感じ。
うちの周りにはいないタイプだ・・・。ちょっと新鮮。

しばらく喋っていると、リムジンみたいな大きな車がやってきて玄関まで運んでくれる。
・・・すごい。もうそういう単純な言葉しか出てこないレベルだねこれは。

無駄に豪華な応接室に通されて、紅茶を飲みながらなぜここに来たのかという話を舞ちゃんははじめた。
ちなみに、おばさん(熊井ちゃんのお母さん)が熊井ちゃん(そう呼んでって言われた)に
舞ちゃんが来ることを伝え忘れていたらしい。

「で、その、転校しちゃった先輩って名前は?なんとなく、話からして想像つくけど」
「え?想像?あ、矢島舞美。熊井ちゃん知ってる?」
「「あ・・・・やっぱり」」

目の前の愛理(同い年だから呼び捨ててでいいよって言ってた)と熊井ちゃんは
やっぱり、と何か想像していたのか、そう言って渋い顔をした。

「なるほど・・・」
「舞美ちゃん、だから理由を話さなかったんですね」
「だね、確かにこういうのって言いたくないよね・・・」

2人は小さな声でそう言いながら渋い顔のまま頷き合っていた。
うちと舞ちゃんは意味がわからずに首を傾げていた。


270 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2009/09/13(日) 01:31:40.78 0
>>231
第185回

「おはよ、舞美ちゃん」
「愛理、お、おはよ。どしたの、珍しい」
「んー・・・ちょっとね」
「そ、そう」

先輩のいとことその友達に会った次の日の朝。
私はいつも私の家の前で待っている舞美ちゃんよりも先に家を出て、
舞美ちゃんの家の前で舞美ちゃんを待っていた。
舞美ちゃんは私を見て少しビックリした様子だった。

2人して、駅まで歩く。いつもより、ちょっと早い朝。

「・・・舞美ちゃん、私に会いに転校してきたってうそでしょ?」
「なんで?うそじゃないよ。ほんと」
「違う。うそだよ。」
「なんでよ。なんでそう思うの?私はただ愛理に会いたくて・・・・」
「違う!そうじゃないんでしょ?・・・私、聞いたよ。舞ちゃんって子に」
「・・・・え、な、なんで・・・舞ちゃんって・・・」

舞美ちゃんはわかりやすく驚いて、マズイ、って顔をした。
ほんとはこんな風に追い詰めたくはないけれど、
いつまでも自分から言わない舞美ちゃんが悪い。

「・・・・舞ちゃんって萩原?」
「そう。友理奈先輩のいとこ」
「えぇ!?そ、そうなの!?」
「うん」

もう一回驚いた舞美ちゃんは、そのあと、首を垂れて何も言わなくなった。

271 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2009/09/13(日) 01:32:48.75 0
>>270
第186話

そんな様子の舞美ちゃんを見ていたら、なんとなくそれ以上聞けなくなって
2人は黙り込んだまま、りーちゃんの家にたどり着いた。

「愛理おはよー」
「おはよ、りーちゃん」
「梨沙子おはよ」
「舞美ちゃん今日も一緒なんだね」
「まぁ、ね」

りーちゃんは楽しそうだけれど、私と舞美ちゃんは気まずくて
りーちゃんを真ん中に挟んで、私たちは近づかないようにして駅まで歩いた。

電車の中でみやと合流して、りーちゃんは私たちの願いも虚しく
みやの隣に座り、私と舞美ちゃんは必然的に2人になってしまった。

そして、電車が学校最寄の駅に着く少し前、舞美ちゃんは小さな声で言った。

「ねぇ、愛理」
「・・・なに?」
「今日の放課後、時間ある?」
「え、うん・・・平気だけど」
「ちゃんと話すよ。・・・ほとんど知ってるみたいだけど・・・でも、ちゃんと話すから」
「・・・わかった。待ってるね」
「うん」

舞美ちゃんは小さく頷くと、駅に着くと同時に一人で電車を降りていってしまった。
そして、舞美ちゃんがいなくなってから、舞ちゃんと千聖ちゃんがこっちに来ていることを、
伝え忘れていたことに気付くのだった。


321 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2009/09/14(月) 02:29:15.24 0
>>271
第187話

足早に駅を後にして、学校へ向かう。

愛理が、知ってしまった。隠しておこうと思っていたのに。
舞ちゃんも余計なこと・・・ってちょっと待って。
愛理はどういう経緯でそれを聞いたんだろう。
なんで、舞ちゃん、なんて親しげに呼んでいたんだろう?
熊井ちゃんといとことか言ってたっけ・・・・まさか、嫌な予感がする。

下を向いて歩いていたけれど、ハッとして顔を上げたら、そこには
「・・・・舞ちゃん、千聖。やはり来てたか」

校門に寄りかかって、舞ちゃんと千聖がいた。
向こうはまだ私に気付いていないらしく、ヒマそうにまだ早いから眠そうにしている。
隣には熊井ちゃんがいて、私を待っているように見えた。

・・・何しに来たんだか。てか2人もインターハイがあるのに、何してんだまったくもう。
部長だったころのように、2人を心配する自分に気付いて
ブンブンと頭を横に振った。もう、部長なんかじゃない。もう・・・・関係ない。

正直、二人の前に姿を現したくはなかったけれどあの場所にずっといられたら
私が学校の中に入れない。意を決して、校門へと近づいていった。

「「舞美ちゃん!!」」
二人は私に気付いて走り寄ってきた。
私は冷静を装って2人を相手にせず校門の前まで歩いてきた。
「舞美ちゃん、会いたかったの!」
「ま、舞ちゃん・・・・」
私が立ち止まると、舞ちゃんは目を潤ませて私に抱きついた。

322 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2009/09/14(月) 02:29:55.94 0
>>321
第188話

「・・・寂しかったんだよ、なんで急にいなくなるの!」
「あ、あはは・・・」
「笑い事じゃないよ!どれだけ心配したと思ってるのさ!」

まだ、人通りの少ない学校の前に舞ちゃんの声が響き渡った。
隣にいる千聖を見ると、目が合って、気まずそうに笑った。

「ごめん、ごめんね舞ちゃん。千聖も、わざわざ来てくれてありがとう。」
「舞美ちゃん、あのさ、・・・舞ちゃんは戻ってきて欲しいんだって。」
千聖が控えめな声で言う。舞ちゃんの感情的な声とは対照的だった。

「・・・残念だけど、戻らない。」
「なんでっ!」
「今更戻ってなんになるの?私は何も出来ない。何の価値もない。
あの場所にいる意味がない。だから、戻らない。
それに今楽しいんだ。ここへ来てまだそんなに経ってないけど、でも、楽しい。
もう、あんな地獄みたいな場所へ戻る理由がない。ごめん、もう行く」
「あ、ちょ、舞美ちゃん!」

私の腰に絡みつく舞ちゃんの腕を振り払って校内へ入っていった。
愛理やみやが近くに来ていたけれど、みんなの表情を確認する余裕はなかった。

もう、校内へは舞ちゃんや千聖は入って来れない。
私は振り返ることなく、文芸部の部室へと向かった。


323 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2009/09/14(月) 02:31:02.86 0
>>322
第189話

授業が始まる少し前、人気のない階段の踊り場で愛理と2人、話をしていた。

「舞ちゃんどうするって言ってました?」
先に校内へ入った愛理が、あのあとのことを聞いてくる。
「うちに帰って、また放課後来るって」
あの強気な姿を思い出して感心する。
でも、ああやって抱きついて甘える姿は可愛くて素直な女子に見えた。

「そうだ、舞美ちゃん今日の放課後話をしてくれるって言ってました」
「そう・・・そっか。ちゃんと聞いておいで。」
「はい」
愛理は可愛く頷いて微笑んだ。

「それにしてもすごい熱意ですね」
「だね。」
「・・・でも、舞美ちゃんなんだかいつもと違う気がしませんでした?
冷たいって言うか、突き放してる感じ・・・おおらかな舞美ちゃんっぽくないなって」
「うん、舞ちゃんも似たような事言ってた。変わったって・・・・あぁ、そうそう
昨日の夜さ、千聖はうちの部屋のソファで寝ちゃって舞ちゃんとベッドで
話し込んだんだけど、舞美ちゃん舞美ちゃんってそりゃもうすごくて。あんま寝れなかったよー」
「え・・・・」
「でさ、絶対連れて変える!とかそんなことばっか言ってたよ。
・・・でも、さっきの舞美ちゃん見る限りその可能性はかぎりなく低そうだよね、それで」
「あの、・・・」
愛理が浮かない顔をして、うちの話を遮る。
「うん?」
「・・・舞ちゃんと2人でベッドで寝たんですか?」
愛理は言うのを躊躇って、でも、そう口にした。

324 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2009/09/14(月) 02:32:00.31 0
>>323
第190話

「・・・・・・・だめ」
「んっ?」
「わ、私以外の人と・・・同じベッドで寝ちゃダメです・・・」
愛理は顔を真っ赤にして、でも、ちょっと拗ねたような怒った様な口調で。
こんなこと言うともっと愛理は怒るだろうけど、すごく、可愛い。
「え、でも舞ちゃんはいとこで・・・」
「だめ!・・・や、妬いちゃうんです」
愛理は強気なんだか恥ずかしいんだかわからないけど、そう言う。
ほんと、可愛い子だ。
「愛理・・・・ごめん、そこまで気が回らなかった」
「・・・い、いえ。私こそ・・・」

愛理がそう言ったきり、うちらの会話は止まってしまった。
なんだか、うちまで恥ずかしくなったからだ。
でも、さっきから繋いでる手はそのままで。

もうすぐ、授業が始まるというのに、その場を離れられなかった。

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