第21話~第30話

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airi-kumai

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だれでも歓迎! 編集
309 :名無し募集中。。。:2009/07/05(日) 22:52:33.98 0
>>293
第21回

「あぁ、ごめん。言い方を変えよう。愛理ちゃんは甘いもの好き?」
「はい、好きです・・・けど?」
「じゃあよかった。美味しいケーキがあるんだ、食べて行ってよ。今日のお礼させて。」
「そ、そんなのいいですよ。申し訳ないですし・・・」
「遠慮しないの。ほら、こっちだから」

駅とは逆方向、うちのある方向へ愛理ちゃんの腕を引っ張った。
愛理ちゃんは困った顔をしていてそれもなんだか可愛らしい。
って困らせたらお礼になってないな・・・どうしよう?

「ごめん、いやだった?」
「え・・・あ、いえ」
愛理ちゃんの顔を覗き込むと愛理ちゃんは驚いた表情をして否定した。
うちはとりあえずホっとして家まで歩くことにした。
「でもいいんですか?私なんかお邪魔なんじゃ・・・」
「いいんだって。ママも喜ぶと思うし」
「は、はぁ・・・じゃあお世話になります」
「うん。」

愛理ちゃんは礼儀正しい子だ。
どっかのピーチ姫みたいに気付いたら家の中にいて勝手にケーキ食べてる、
なんてことは愛理ちゃんなら絶対にありえないだろう。
・・・・ピーチ姫か。あぁ、だめまた泣きそうになる。
考えちゃダメ・・・ダメ。

頭の中のももちを打ち消して愛理ちゃんとの会話に集中した。
やはり誘ったのは間違いじゃなかった。
愛理ちゃんと話していると楽しくて自然と笑顔になった。不思議な子、そう思った。


316 :名無し募集中。。。:2009/07/06(月) 00:37:43.01 0
>>309
第22回

熊井先輩に誘われて、最初はビックリしたけど腕を掴まれてドキドキして
家の前まで着いてきてしまった。

っていうか・・・・これ家?博物館とか美術館とかじゃないよね?
で、玄関どこだろ?全然見えないんですけど・・・
目の前にあるのは思いっきり見上げないと視界に入りきらないほどの高い門。
その奥には森かよっ!ってツッコミたくなるほど木が茂っていて
石畳の道路?が奥へと伸びているのが目に入った。

うちのパパもプロスポーツ選手だから他のおうちよりは裕福に育ててきてもらったけど・・・
これはなんだか桁が違うというかなんと言うか・・・。場違い感を感じてしまう。

「どした?」
「お、大きいですね・・・」
「まあ、うん・・・ちょっと待ってて?」
「はい」

先輩は門のすぐ隣にあるインターホンを押した。

「友理奈です。後輩を連れてきました。車、お願いします」

え、く、車?どんだけ広いのこの家・・・。
驚いてばかりの私の目の前に、5分と経たないうちリムジンがやってきた。
「こっち、おいで」
先輩に手を引かれてリムジンの後部座席に乗った。
ふかふかでおよそ車とは言えない・・・ソファみたい・・・そう思った。

そして何分か車に乗って、目の前にはそれこそ美術館とでも言うべき建物が現れた。
場違いどころか来ちゃいけなかったんじゃないか、とさえ思えて別の意味でドキドキし始めていた。


319 :名無し募集中。。。:2009/07/06(月) 00:59:45.27 0
>>316
第23回

夢を見てるみたいだった。
家の中はヨーロッパ風家具がズラリと並んでいてそこら中に
明らかに高そうな絵画や彫刻なんかの美術品が並べてある。

どうしよう、やっぱり来るんじゃなかった・・・。
先輩が大富豪の娘なんて噂では聞いてたけどまさかここまでとは・・・
ももだって教えてくれなかったし・・・ってこのお嬢様の幼馴染のももって
一体なにものなんだろう・・・・それもちょっと気になる。

「おかえりなさいませお嬢様。そして、そちらのお嬢様もいらっしゃいませ」
どう見ても執事さんな白髪のおじいさんが私に頭を下げてくれる。
私はびっくりどころではなくって「こ、こんにちはお、お邪魔します・・・えっと」
なんて言って慌ててもう恥ずかしくてしょうがなかった。

ふかふかの落ち着いた色調の絨毯の上をスリッパ越しに歩く。
先輩は付いて来て、と言って階段を上り始めた。
「うちの部屋、こっちだから」
「はい・・・」
きっと部屋もすごく大きいんだろうな・・・・。
あぁ、なんか心が折れそう。
こんなにも高嶺の花とは思わなかった。
・・・写真を見てるだけの方が幸せだったかもしれない。
知らなくてもいいことっていうのがあって、これはそうだったに違いない。
「先輩・・あの、」
「ん?どうしたの?ごめんね、もう着くよ」
「あの、・・・やっぱり帰ります」

ここにいちゃいけないって思った。私はそんな人間じゃない。
私はこの家にふさわしくない。私は上った階段を下り始めた。


330 :名無し募集中。。。:2009/07/06(月) 12:22:56.78 0
>>319
第24回

「え、ちょ、ちょっと待ってよ愛理ちゃん!どうしたの!?」
先輩が追ってくるけど、私は足を止めなかった。
だめだ、ここにいちゃだめ。自分の理想と現実は違う。
それに気付いちゃった今、ここにいてはダメだと思えてしまう。

「ま、待ってってば!」
「あの、両親が心配するんで・・・えっと帰ります」
玄関の手前で腕を掴まれた。ガシっと結構強く。
「・・・うち、なんか気に障ること言った?ごめん、そうなら謝るから・・・ごめん」
先輩はももに怒られたときにみたいに背中を丸めて小さくなった。
可哀相、なんかひどいことしちゃった・・・そう思ったけど、でもやっぱり・・・
「ち、違うんです!先輩は何も・・・ただ、早く帰らなきゃって思って・・・」
ウソをついた。本当のことは言えない。言ったらきっともっと傷つけてしまいそうだから。
「・・・・そう、ごめん無理に引き止めて。今日はなんかずっと空回りだ・・・・」
「そんな・・・」
先輩は泣きそうな顔をしてごめん、と何度も謝ってくれた。
違う、そうじゃないんだと言いたかったけど言い出せなかった。
「・・・送るよ、車出すから」
「い、いえ!一人で帰れます、平気ですから」
「気にしないで。お詫びだから」
「で、でも・・・」
「じゃあ門まで。愛理ちゃんきっと迷うから」
「は、はい・・・・」
やっと折れた私を、先輩は玄関の外で見送ってくれた。
悲しそうな顔だった。謝らなきゃいけないのは私なのに。悪いのは私なのに。
せっかく誘ってもらったのに。せっかく仲良くなれたのに。

「今日はゴメンね。ありがとう、また明日。」
先輩の寂しそうな顔だけが頭の中にずっと残っていた。


345 :名無し募集中。。。:2009/07/06(月) 23:36:05.35 0
>>330
第25回

「・・・何やってんだろ」

愛理ちゃんが帰って、部屋に独りぼっちになった。
今頃ケーキを食べながら、愛理ちゃんと談笑していたはずなのに。
あの笑顔に癒されたくて誘ったのに。
結局無理に引っ張ってきて嫌な思いをさせてしまった。

「・・・謝らなきゃ。」

とにかく明日、謝ろう。何がいけなかったのか聞いてみよう。
そうでもしなきゃ自分自身が落ち着けないから・・・。

「今日は散々だったなぁ・・・・もう寝よ・・・」

落ち込んでばかりは辛くて、もうずっと泣いていたいような気分だった。
うちは夕食も食べずに寝てしまった。
やらなきゃいけないこともたくさんあって、文芸部のことも何とかしなくちゃいけない。
でも、眠りたかった。眠ってしまえば全部忘れられるんじゃないかなんて
子供みたいなことも考えてた。

ごめんね愛理ちゃん、ごめんねももち。
うち無神経でバカだから二人のこと傷つけちゃったよね。
どうしたら・・・いいのかなぁ。

堂々巡りの考えを続けているうちに、ベッドで寝息を立てていた。


348 :名無し募集中。。。:2009/07/06(月) 23:47:14.59 0
>>345
第26回

「おはよー」
「んー・・・おはよ」
「なに愛理機嫌悪いの?」
「ううん、ちょっとね・・・・」

先に電車に乗っていたみやが私を見つけてそう言った。
機嫌が悪いんじゃなくて・・・色んな意味で落ち込んでて・・・

昨日は罪悪感がすごすぎて眠れなかった。
最低なことをしてしまったのかもしれない。
無理に帰るなんて本当はすべきじゃなかった。

多分もう嫌われた。きっともう誘ってくれないし話しかけてもくれないと思う。
ううん、それでいい。あのお嬢様っぷりを見せ付けられて
今までと同じように接したり、素直に憧れたりするのはもうできない。
引いたと言われればそうかもしれない。
結局、私は先輩の外見が好きだっただけなのかもしれない。

昨日、いろいろあって先輩の弱いところを見て・・・ちょっとだけ本気で好きになった。
口に出さずにそっと暖めようと思っていたこの感情。
でも、あの家を見たら全てが醒めてしまった。
先輩が悪いわけじゃない。悪いのは一方的に憧れてた私で・・・・。
だからこそ申し訳なかった。

電車を降りて改札を通る。
ふと、顔を上げると券売機の横にもたれかかった熊井先輩がいた。
相変わらずの美しい顔、長い髪、スラっとした容姿は誰もが惹かれるはずだ。
そんな先輩と思いっきり目が合ってそらせなくて、びっくりして・・・
後ろからたくさん人がやってくるのに私はその場から動けなくなった。


355 :名無し募集中。。。:2009/07/07(火) 00:00:09.50 0
>>348
第27回

「愛理?どした?」
「あ、えっと・・・」
急に立ち止まった私に声をかけるみや。
みやは私の視線の先を確認して「あぁ」と頷いた。

「おはよ、愛理ちゃん」
先輩は私のそばまでやってきてニコっと微笑んだ。
「お、おはようございます・・・あ、あの昨日は」
と続けようとしたら
「昨日はごめん!」
先輩が先に私に頭を下げた。
「え、あ、え?な、なんで?」
私は混乱してしまってうまく言葉が出てこない。
「無理やり引っ張ってきちゃってごめん。配慮が足りなかった、ごめんね。」
「・・・・そんな、悪いのは私で!」
「ううん、先輩として年上としてよくなかったと思う。反省してる・・・だから、その、
お詫びに・・・また遊びに来てよ、美味しいケーキ用意してるからさ?」
「グズッ・・・・」
「え、ちょ、愛理?」
「あ、愛理ちゃん?」
本当はこんな人の多い駅まで泣きたくなかった。
でも、涙が止まらなかった。
私が悪いのに。高嶺の花過ぎる先輩にちょっと引いてしまって
自分なんか・・・そう思って逃げ出したのは私なのに。
何でこの人は・・・こんなに優しいんだろう。
なんでだろう・・・・?

「ごめん・・・グスッ、みや、さき、行って・・・」
泣きながら、そう言うのが精一杯だった。


359 :名無し募集中。。。:2009/07/07(火) 00:11:17.31 0
>>355
第28回

「・・・平気?」
差し出されたハンカチを受け取って涙を拭く。
「はい・・・すいません」
「ううん、これもきっとうちのせいだよねごめん・・・泣かせるなんて最低だよね」
先輩は全部自分のせいだと思ってる。
違う、そうじゃない、悪いのは私で・・・

みやに先に行ってもらって、私たちは近くの公園のベンチにいた。
学校に行かなきゃいけないけど先輩はずっと私のそばにいてくれた。
背中を撫でてくれる。大きな手暖かい手。

「ご、めんなさい・・・私が悪いんです」
先輩に謝られるのはいや。嫌われてもいい、本当のことを話そう。と思った。
「え?」

思っていることを素直に話した。

「ごめんなさい、・・・本当にごめんなさい。先輩は何も悪くないんです・・・」
「・・・・そっか、そうだったんだ」
「ごめんなさい・・・」
「ううん、悪いのはやっぱりうちだ。やっぱり配慮がなかったんだと思う。ごめん」
先輩はまた謝る。だからそうじゃなくて・・・

「・・・だけど、」
「え?」
「愛理ちゃんに憧れられてるなんて光栄だよ、ありがとう」
「あ、い、いえ・・・その・・・・」
余計なことまで喋っていたようで私はしどろもどろだった。
言うんじゃなかった・・・・「私の憧れの熊井先輩に私はふさわしくない」なんて・・・・。


362 :名無し募集中。。。:2009/07/07(火) 00:23:23.82 0
>>359
第29回

「・・・うちのこと嫌いになった?」
「せ、先輩こそ・・・私のこと嫌いになりましたよね?
結局外見でしか先輩を見てなかった私なんて・・・・」
「外見でも・・・嬉しいよ。愛理ちゃんみたいな可愛い子が憧れてくれるなんて。
嫌いになんてなるわけない。変なこと言わないの」

先輩は私の頬を軽く抓ってそう言った。

「・・・私は・・・私は先輩のこと好きです」
「へっ?」
「正直あの家はビックリしたし、一方的に憧れてたくせに醒めた、なんて
勝手なこと思ってました。先輩の表しか見てなくて・・・私かっこ悪いです。
でも・・・今日先輩と話してて思いました。私、先輩のことが好きです」
「あ、愛理ちゃんそれって・・・こ、告白?」
「はい」

すらすらと言葉が出てくる。もちろん、恥ずかしい。
先輩も顔を赤くして下を向きがちである。

「はい・・・か。ってえぇ!?本気?」
先輩は急にビックリした顔をして私の顔をマジマジと見た。
「本気です!っていうか私もなに喋ってんだがよくわからないんですけど・・・
でも・・・先輩が好きってことは本当です!」
「そ、そっか・・・そうか・・・」

先輩は困った顔になって頭を掻いている。
そりゃ困るだろう。一昨日初めて喋った子にそんなことを言われるなんて思ってなかっただろうし・・・
私も写真の君だった人に告白してるなんて信じられないし・・・
暖めるはずだった恋を一度は捨て、今度は暖める間もなく言葉にしていた。


367 :名無し募集中。。。:2009/07/07(火) 00:46:54.73 0
>>362
第30回

先輩と学校まで歩く。1時間目はとうに始まっている。
優等生な先輩が遅刻なんて、と言ったけれど気にしないでと言われて
それ以上は遅刻に関しては何もいえなかった。

いや、会話はなかった。二人とも黙り込んだままで何も話をしなかった。
先輩は私の告白を聞いたあとずっと黙ったままなのである。
私も返事を聞くのが怖くて何も聞けないままで・・・。
きっと結果はNOだってわかってる。でも望みを捨てきれないから怖いんだ。

ももはなんて言うかな。バカって言われちゃうんだろうな私。
なにやってんの、敵だよくまいちょーは!って言うももの姿が容易に想像できてしまう。


下足室に着いて、先輩は行ってしまう・・・と思ったら足を止めた。
「愛理ちゃん・・・」
「は、はい・・・!」
「今日は生徒会があるから・・・明日またうちに来てくれると嬉しい。でも、無理はしないで。
返事は・・・そのとき言うから。」
「・・・い、行きます!絶対行きます!」
「ありがとう。じゃあ、また」

先輩は後ろを向いたまま話していたから表情はわからない。
でも、来てくれると嬉しい、そう言ってくれた。
だから必ず行く。先輩に笑って欲しいから。先輩の笑顔が好きだから。
大きな家は気後れしちゃうけど、慣れればきっと大丈夫。
そんな理由で昨日みたいに先輩を悲しませたくない。

バカみたいな理由で帰った自分を、心底悔いていた。

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