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207 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/24(水) 01:00:18.68 0
&color(blue){>>177}
第361回
「ハロー、憂佳ちゃん」
「・・・・」
「ちょっと無視しないでよ」
「・・・・今日見ないなぁって思ってたのに急に出てくるから」
放課後、憂佳をつかまえた。
…まあ正確に言うと、教室から出てきたところをつかまえて
昨日と同じ屋上へ引っ張ってきたんだけども。
「昨日の続き、しようか」
「・・・帰ります」
「ちょっと待って、だめだよ。話してもらう」
「勉強しないと」
「喋っちゃえば帰すから。あたしも勉強したいし」
「・・・・・・今まで言わなかったこと、・・・ですよね」
「そう」
それっきり憂佳は口を閉ざしてしまった。まだまだ熱い太陽の下、
憂佳は屋上の給水塔にもたれたまま、じっとグラウンドを見下ろしていた。
「私が両親と血が繋がってない、とか言ったらどうします?」
「・・・んなドラマみたいな話があるとは思えない」
「マンガみたいなことしたくせに」
「なっ!・・・・まぁ、否定できないけど」
「まぁ、それはないんですけど、・・・でも、なんか、違うんです」
「なにが?・・・もっと具体的に言って」
うーん、と空を見上げる憂佳。何かを必死で考えているような顔。
…・可愛い。悔しいけど、いやなにが悔しいのかわかんないけど。
208 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/24(水) 01:01:16.33 0
&color(blue){>>207}
第362回
「両親のことは嫌いじゃない、優しいし・・・でも、合わないんです。
お姉ちゃんもそう、私には合わない・・・何がって言われたら困るんですけど、
でも、・・・なんか違う、ってそう思っちゃうんです」
随分頭の痛い話だ・・・。そんな感覚的なことわからないよ。
だからきっと言いたくなかったんだ。でも、聞いたからには
わからない、で済ませられない。
「物心付いたときからずっとなんです。なんか違う、私の居場所はここじゃないって。
いつもそう思ってた。おじいちゃんといるときの方がよっぽどラクだった。
家なのに、家族で団欒しているのに、ちっとも寛げなかった。
…それが爆発っていうか、・・・しかけてたときに村上さんに出会って・・・」
「で、家に帰りたくなかった、と?」
「うん・・・」
憂佳はうん、って小さく頷いて下を向いた。
私には、憂佳が言う「なんか違う」がわからない。
でも、家に帰りたくなかったのは私も同じ。
否定はしたくない。温かく、包んであげたい。なんて・・・思ってたりして。
「だから、だから今は楽しいんです。両親もお姉ちゃんも寂しいって言ってくれたし
それはそれで嬉しかったけど、私は、いなくなってくれて嬉しかった。
こんなこと絶対に口に出来ないけど・・・でも、それが本音なんです」
「辛かった?」
「・・・ちょっとだけ」
憂佳は微笑んで私の顔を見た。ちょっと切なそうな、でもスッキリした顔をしてる。
私も思わず笑みがこぼれた。
209 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/24(水) 01:02:26.86 0
&color(blue){>>208}
第363回
「えっ・・・」
「ごめん、こういうことしたい気分」
笑みと同時に、私は憂佳を抱きしめていた。
身長は、もう抜かれちゃって私のほうが小さいんだけど、
でも、包み込むように優しく。
憂佳に触れるのは初めてかな、・・・・記憶をたどってみるけれど
やっぱり初めてだ。柔らかい体だなぁ・・・。
「・・・ありがとう、言いたくないこと話してくれて」
「聞いて欲しかったんだと思うんです、ほんとは」
「そっか」
しばらくそのままでいたら、憂佳は静かに泣き始めて、
私はずっとその背中を撫でていた。
気付いたころにはもう日は沈みかけていて。
それでも、なんとなく、2人で空を見ていた。
あのころみたいだね、なんて言い合って、・・・不思議な気持ちだった。
ただはっきりと、憂佳を好き、と感じていた。
きっとずっと感じてた思いなんだろうけど、今このときはっきりと確信した。
…それが辛い恋になるとは、想像もしていなかったんだけれど。
254 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/27(土) 01:00:42.74 0
&color(blue){>>209}
第364回
「やばい、どうしよう」
佐紀ちゃんはさっきからそればっかり言ってる。
放課後、ともも先輩に言ったはいいものの、もも先輩のクラスは
補習で遅くなるらしい。もも先輩が佐紀ちゃんのクラスまで
わざわざ言いに来たらしいんだけど、恥ずかしくて目が見れなかったとか
佐紀ちゃんはそんな可愛いこと言ってる。
で、・・・佐紀ちゃんの人の少なくなった教室でえりかちゃんと一緒に作戦会議。
えりかちゃんはすごくビックリしてたけど、でも、
「えらいじゃん」って佐紀ちゃんに言ってた。
佐紀ちゃんは「うっさい」って照れてたけど、それも可愛かった。
…素直になるのは難しいけど、なっちゃえば、ラクらしい。
「佐紀、あと40分しかないよ」
「わ、わかってるし」
「なんて言うの?まさか好きです付き合ってくださいとかじゃないよね」
「い、言うわけないでしょそんなこと・・・とりあえず、謝らなきゃ」
「そっか、そうだよね・・・あたしも謝った方がいいのかな・・・でもなぁ」
えりかちゃんは頭を抱えだした。いや、そこはこの際いいから。
また今度悩んでよ。今日は佐紀ちゃんの大切な日になるんだから。
「と、とりあえず佐紀ちゃん言うことまとめよ」
「そうだよね、頭パニックになりそう・・・」
私がそう言うと、佐紀ちゃんは腕を組んで考え出した。
255 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/27(土) 01:01:47.59 0
&color(blue){>>254}
第365回
「とりあえず、謝って、あんなことした理由・・・それが聞きたいんだよね、嗣永は」
「そう言ってたんでしょ?もも先輩」
「うん・・・理由知りたいって言ってた」
「すばり、好きだから、でしょ?」
「・・・まぁ、間違ってはいないけど」
えりかちゃんが人差し指を立てた。で、えりかちゃんはその便乗して
もも先輩いじめてたんだよね・・・・まぁ、これ以上えりかちゃんの過去のことは言うまい。
「それそのまま伝えちゃもも先輩混乱しちゃうよ」
「そうかなぁ」
えりかちゃんは首を傾げる。矢島先輩とのことにはデリケートなくせに、もう。
「そうだよ、混乱させてどーすんのよ。佐紀ちゃんは素直に思った言葉言えばいいじゃん」
「それが難しいんだってば」
「・・・勉強は出来るくせに」
「ま、茉麻だって熊井ちゃんのこと!」
「な、なんでそれを今言うの!」
…余計なこと言っちゃった。私のことはいい。今はいい。
は、恥ずかしいなぁもう。・・・熊井ちゃんは・・・いいんだよ。熊井ちゃんが幸せならそれで。
◆
言いたいことはいっぱいある。でも、うまく言葉にできなくてずっと悩んでる。
時間なんてもうないのにそればっかり考えてる。
茉麻もえりかもいっぱい一緒に考えてくれる。感謝しなきゃなぁ・・・。
256 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/27(土) 01:02:44.83 0
&color(blue){>>255}
第366回
素直な自分なんて気持ち悪い、って今でもそう思ってる。
でも、その方がラクって気付いたら突っぱねているのもバカらしい。
そりゃちゃんとしなきゃいけないことには厳しいのは当たり前だけど・・・
そうでもないとこで厳しい必要はないよね、茉麻、ありがと。
…あぁ、やっぱ私気持ち悪い。
「じゃあ、佐紀頑張って」
「うん・・・」
「頑張ってね、佐紀ちゃん」
「ありがとう」
「うわ、気持ち悪い」
「う、うっさいなぁ!」
私が珍しくありがとう、なんて言うから茉麻に気持ち悪いって言われた。
…でもちょっと気持ちがほぐれた。ありがと。
茉麻とえりかちゃんは教室で待っていてくれるらしい。
私は2人に手を振って、教室を出て体育館のほうへと歩いた。
心臓がバクバク言ってる。手には変な汗。
気温も高いけど、私も熱い。顔真っ赤になってる気がする・・・
手に平で頬を覆ってみても、手が熱いってことしかわからなくて。
理由を話すこと、謝ること、今の気持ちを話すこと・・・
いっぱいあって混乱しそう。でも、1ずつ丁寧に言えば嗣永もきっとわかってくれるはず・・・
そう、信じてる。
…いや、だめかな・・・めちゃくちゃひどいことしたし・・・許してくれなんて虫が良すぎるよね・・・
257 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/27(土) 01:03:25.46 0
&color(blue){>>256}
第367回
「あ、会長さん」
「ご、ごめん呼び出して」
「ううん、いいよ。話って何?」
体育館に近づくとまだ補習のはずの嗣永がいて心臓止まりそうになったけど
ふーっと深呼吸をして平静を装った。・・・はずだったんだけど。
「あぁ、もものクラスの補習早く終わったんだ」
「そ、そう」
「で、なに?」
「・・・え、えっと、あの、・・・あ」
「ん?」
アレ言わなきゃ、これ言わなきゃって言葉が一気に押し寄せてきてパニックになってた。
なんでこんなに慌ててんだろうってくらいカッコ悪い。
…だから、咄嗟に変なことを口走った・・・・。
「・・・・・あの、・・・好きです!!」
「ふぇ・・・・?」
や、やばい・・・・!!!私なに言ってんだろう・・・・・・。
とりあえず、この場からダッシュで逃げたい・・・・。
34 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}}:2010/03/11(木) 10:55:17.90 0
&color(blue){第368回}
「・・・え、えっと、あの、・・・・・」
「何が好きなの?んー会長さんだから勉強?」
「え?・・・あぁ、いやえっと」
…よかった、嗣永バカでよかった。
いや言いすぎた天然でよかった。
「何て、ウソ。好きってなーに?」
「・・・・・・・・・・・その前に座っていい?」
「うん」
前言撤回。やっぱり、そんなことないよね。
そこまでバカじゃないよね、いや、天然じゃないよね・・・。
体育館の前にある段差に座って、二人で話す。
普段はうるさいバスケット部の声もバレー部の声も、
さすがに試験前はしない。とっても、静かな空間。
呼吸を落ち着けて。バカみたいなこと口走ったことは一旦忘れて。
心も落ち着けて。ゆっくり、順序を守って、丁寧に話そう。
慌てることはない。さっきはちょっとおかしかっただけ・・・そうだ。
私はそんなに慌てるタイプじゃない。よし、落ち着け・・・。
「・・・今日は、全部話そうと思って」
「全部?」
「そう、全部。嗣永が知りたいこと」
「・・・・なんで喋ろうと思ったの?試験前だよ」
「・・・茉麻に言われたんだ。素直のほうが可愛いよって。テストは関係ないじゃん」
「・・・・・・・会長さん、試験第一な人って思ってたから」
「だから、素直になることにしたってだけ・・・聞いてくれる?」
35 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}}:2010/03/11(木) 10:57:02.40 0
&color(blue){第369回}
はぁっーってため息が隣から聞こえてくる。
さっきまで爆発しそうでやばかった心臓、一旦収まったのに
またそれが騒ぎ出そうとしてる。この沈黙が怖い。
「・・・・当たり前じゃん」
「そう、よかった」
「でもどういう心境の変化?信じられない」
「じゃあ別に信じなくていい」
「素直になったならそういう言い方しないでよ」
「ご、ごめん・・・」
「あはは、確かに可愛いw」
笑いながらそう言われて、ちょっとムっとした。
…こっちの気も知らないで・・・。
だけど、気負っていたのもがふっと軽くなるようなそんな気がした。
嗣永の笑顔は可愛かった。悔しいほど可愛くて、改めて「好き」だと思った。
「ももが知りたいのは、なんであんなことされたのか」
「うん」
「とりあえずそれがわかれば・・・・うん」
「あれは・・・・あれはね、」
長い話になった。
とっても長い話。
空は青々としていたのに、気付いたら赤くなってたんだもん。
嗣永はじっと黙って話を聞いていた。私が、「好きだったから」と言っても
表情一つ変えずに、ぐっと唇を噛んだだけだった。
責められることもなかった。嗣永は何かをじっと考えこむような仕草をよくしていた。
36 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}}:2010/03/11(木) 11:00:08.68 0
&color(blue){第370回}}
好きだから、あんなことしたなんて。ほんとガキって思う。
他に愛情表現を知らなかったなんて、子どもすぎて誰にも言い訳できない。
…真実に向き合うのは辛くて苦しいけど、でも、目の前で目を真っ赤にしてるこの子は
私なんかが想像もできないほど辛くて苦しかったはずなんだ。
私なんかがわかる、と言ってもきっとそれはわかっていないんだろうけど・・・。
好きなくせに突っぱねて、強がって、なんてことないってフリして
強い生徒会長になって、気付いたら口調がすっごくきつくなってて
作られたイメージを壊すのが怖かったんだ。
自分じゃない自分を自分だと思い込んで、私は、ずっとそうしてたんだ。
茉麻はきっとそのことをわかっていて、私に素直になれとそう言ったんだ。
…・そうだよね?茉麻。年下のクセに生意気だぞっ。
でも、ありがとう。
ふと、我に返ると嗣永は小さな声をあげて泣いていた。
さっきまで済ました顔をしていたからちょっとびっくりして、でも刺激しないよう声をかけた。
「・・・・大丈夫?」
「うん、ゴメン、泣くつもりなかったんだけどな・・・グス」
「こっちこそ、ごめん」
「いいの、違うの、そうじゃないんだけど、・・・わかんない」
わかんない、って困ったように笑った。
「なにそれ」なんて言って一緒に笑った。
ずっとなんとなく緊迫した空気が、一気に和らぐような気がした。
207 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/24(水) 01:00:18.68 0
&color(blue){>>177}
第361回
「ハロー、憂佳ちゃん」
「・・・・」
「ちょっと無視しないでよ」
「・・・・今日見ないなぁって思ってたのに急に出てくるから」
放課後、憂佳をつかまえた。
…まあ正確に言うと、教室から出てきたところをつかまえて
昨日と同じ屋上へ引っ張ってきたんだけども。
「昨日の続き、しようか」
「・・・帰ります」
「ちょっと待って、だめだよ。話してもらう」
「勉強しないと」
「喋っちゃえば帰すから。あたしも勉強したいし」
「・・・・・・今まで言わなかったこと、・・・ですよね」
「そう」
それっきり憂佳は口を閉ざしてしまった。まだまだ熱い太陽の下、
憂佳は屋上の給水塔にもたれたまま、じっとグラウンドを見下ろしていた。
「私が両親と血が繋がってない、とか言ったらどうします?」
「・・・んなドラマみたいな話があるとは思えない」
「マンガみたいなことしたくせに」
「なっ!・・・・まぁ、否定できないけど」
「まぁ、それはないんですけど、・・・でも、なんか、違うんです」
「なにが?・・・もっと具体的に言って」
うーん、と空を見上げる憂佳。何かを必死で考えているような顔。
…・可愛い。悔しいけど、いやなにが悔しいのかわかんないけど。
208 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/24(水) 01:01:16.33 0
&color(blue){>>207}
第362回
「両親のことは嫌いじゃない、優しいし・・・でも、合わないんです。
お姉ちゃんもそう、私には合わない・・・何がって言われたら困るんですけど、
でも、・・・なんか違う、ってそう思っちゃうんです」
随分頭の痛い話だ・・・。そんな感覚的なことわからないよ。
だからきっと言いたくなかったんだ。でも、聞いたからには
わからない、で済ませられない。
「物心付いたときからずっとなんです。なんか違う、私の居場所はここじゃないって。
いつもそう思ってた。おじいちゃんといるときの方がよっぽどラクだった。
家なのに、家族で団欒しているのに、ちっとも寛げなかった。
…それが爆発っていうか、・・・しかけてたときに村上さんに出会って・・・」
「で、家に帰りたくなかった、と?」
「うん・・・」
憂佳はうん、って小さく頷いて下を向いた。
私には、憂佳が言う「なんか違う」がわからない。
でも、家に帰りたくなかったのは私も同じ。
否定はしたくない。温かく、包んであげたい。なんて・・・思ってたりして。
「だから、だから今は楽しいんです。両親もお姉ちゃんも寂しいって言ってくれたし
それはそれで嬉しかったけど、私は、いなくなってくれて嬉しかった。
こんなこと絶対に口に出来ないけど・・・でも、それが本音なんです」
「辛かった?」
「・・・ちょっとだけ」
憂佳は微笑んで私の顔を見た。ちょっと切なそうな、でもスッキリした顔をしてる。
私も思わず笑みがこぼれた。
209 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/24(水) 01:02:26.86 0
&color(blue){>>208}
第363回
「えっ・・・」
「ごめん、こういうことしたい気分」
笑みと同時に、私は憂佳を抱きしめていた。
身長は、もう抜かれちゃって私のほうが小さいんだけど、
でも、包み込むように優しく。
憂佳に触れるのは初めてかな、・・・・記憶をたどってみるけれど
やっぱり初めてだ。柔らかい体だなぁ・・・。
「・・・ありがとう、言いたくないこと話してくれて」
「聞いて欲しかったんだと思うんです、ほんとは」
「そっか」
しばらくそのままでいたら、憂佳は静かに泣き始めて、
私はずっとその背中を撫でていた。
気付いたころにはもう日は沈みかけていて。
それでも、なんとなく、2人で空を見ていた。
あのころみたいだね、なんて言い合って、・・・不思議な気持ちだった。
ただはっきりと、憂佳を好き、と感じていた。
きっとずっと感じてた思いなんだろうけど、今このときはっきりと確信した。
…それが辛い恋になるとは、想像もしていなかったんだけれど。
254 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/27(土) 01:00:42.74 0
&color(blue){>>209}
第364回
「やばい、どうしよう」
佐紀ちゃんはさっきからそればっかり言ってる。
放課後、ともも先輩に言ったはいいものの、もも先輩のクラスは
補習で遅くなるらしい。もも先輩が佐紀ちゃんのクラスまで
わざわざ言いに来たらしいんだけど、恥ずかしくて目が見れなかったとか
佐紀ちゃんはそんな可愛いこと言ってる。
で、・・・佐紀ちゃんの人の少なくなった教室でえりかちゃんと一緒に作戦会議。
えりかちゃんはすごくビックリしてたけど、でも、
「えらいじゃん」って佐紀ちゃんに言ってた。
佐紀ちゃんは「うっさい」って照れてたけど、それも可愛かった。
…素直になるのは難しいけど、なっちゃえば、ラクらしい。
「佐紀、あと40分しかないよ」
「わ、わかってるし」
「なんて言うの?まさか好きです付き合ってくださいとかじゃないよね」
「い、言うわけないでしょそんなこと・・・とりあえず、謝らなきゃ」
「そっか、そうだよね・・・あたしも謝った方がいいのかな・・・でもなぁ」
えりかちゃんは頭を抱えだした。いや、そこはこの際いいから。
また今度悩んでよ。今日は佐紀ちゃんの大切な日になるんだから。
「と、とりあえず佐紀ちゃん言うことまとめよ」
「そうだよね、頭パニックになりそう・・・」
私がそう言うと、佐紀ちゃんは腕を組んで考え出した。
255 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/27(土) 01:01:47.59 0
&color(blue){>>254}
第365回
「とりあえず、謝って、あんなことした理由・・・それが聞きたいんだよね、嗣永は」
「そう言ってたんでしょ?もも先輩」
「うん・・・理由知りたいって言ってた」
「すばり、好きだから、でしょ?」
「・・・まぁ、間違ってはいないけど」
えりかちゃんが人差し指を立てた。で、えりかちゃんはその便乗して
もも先輩いじめてたんだよね・・・・まぁ、これ以上えりかちゃんの過去のことは言うまい。
「それそのまま伝えちゃもも先輩混乱しちゃうよ」
「そうかなぁ」
えりかちゃんは首を傾げる。矢島先輩とのことにはデリケートなくせに、もう。
「そうだよ、混乱させてどーすんのよ。佐紀ちゃんは素直に思った言葉言えばいいじゃん」
「それが難しいんだってば」
「・・・勉強は出来るくせに」
「ま、茉麻だって熊井ちゃんのこと!」
「な、なんでそれを今言うの!」
…余計なこと言っちゃった。私のことはいい。今はいい。
は、恥ずかしいなぁもう。・・・熊井ちゃんは・・・いいんだよ。熊井ちゃんが幸せならそれで。
◆
言いたいことはいっぱいある。でも、うまく言葉にできなくてずっと悩んでる。
時間なんてもうないのにそればっかり考えてる。
茉麻もえりかもいっぱい一緒に考えてくれる。感謝しなきゃなぁ・・・。
256 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/27(土) 01:02:44.83 0
&color(blue){>>255}
第366回
素直な自分なんて気持ち悪い、って今でもそう思ってる。
でも、その方がラクって気付いたら突っぱねているのもバカらしい。
そりゃちゃんとしなきゃいけないことには厳しいのは当たり前だけど・・・
そうでもないとこで厳しい必要はないよね、茉麻、ありがと。
…あぁ、やっぱ私気持ち悪い。
「じゃあ、佐紀頑張って」
「うん・・・」
「頑張ってね、佐紀ちゃん」
「ありがとう」
「うわ、気持ち悪い」
「う、うっさいなぁ!」
私が珍しくありがとう、なんて言うから茉麻に気持ち悪いって言われた。
…でもちょっと気持ちがほぐれた。ありがと。
茉麻とえりかちゃんは教室で待っていてくれるらしい。
私は2人に手を振って、教室を出て体育館のほうへと歩いた。
心臓がバクバク言ってる。手には変な汗。
気温も高いけど、私も熱い。顔真っ赤になってる気がする・・・
手に平で頬を覆ってみても、手が熱いってことしかわからなくて。
理由を話すこと、謝ること、今の気持ちを話すこと・・・
いっぱいあって混乱しそう。でも、1ずつ丁寧に言えば嗣永もきっとわかってくれるはず・・・
そう、信じてる。
…いや、だめかな・・・めちゃくちゃひどいことしたし・・・許してくれなんて虫が良すぎるよね・・・
257 :&color(green){&b(){名無し募集中。。。}} 投稿日:2010/02/27(土) 01:03:25.46 0
&color(blue){>>256}
第367回
「あ、会長さん」
「ご、ごめん呼び出して」
「ううん、いいよ。話って何?」
体育館に近づくとまだ補習のはずの嗣永がいて心臓止まりそうになったけど
ふーっと深呼吸をして平静を装った。・・・はずだったんだけど。
「あぁ、もものクラスの補習早く終わったんだ」
「そ、そう」
「で、なに?」
「・・・え、えっと、あの、・・・あ」
「ん?」
アレ言わなきゃ、これ言わなきゃって言葉が一気に押し寄せてきてパニックになってた。
なんでこんなに慌ててんだろうってくらいカッコ悪い。
…だから、咄嗟に変なことを口走った・・・・。
「・・・・・あの、・・・好きです!!」
「ふぇ・・・・?」
や、やばい・・・・!!!私なに言ってんだろう・・・・・・。
とりあえず、この場からダッシュで逃げたい・・・・。
34 :&color(blue){&b(){&u(){名無し募集中。。。}}}:2010/03/11(木) 10:55:17.90 0
第368回
「・・・え、えっと、あの、・・・・・」
「何が好きなの?んー会長さんだから勉強?」
「え?・・・あぁ、いやえっと」
…よかった、嗣永バカでよかった。
いや言いすぎた天然でよかった。
「何て、ウソ。好きってなーに?」
「・・・・・・・・・・・その前に座っていい?」
「うん」
前言撤回。やっぱり、そんなことないよね。
そこまでバカじゃないよね、いや、天然じゃないよね・・・。
体育館の前にある段差に座って、二人で話す。
普段はうるさいバスケット部の声もバレー部の声も、
さすがに試験前はしない。とっても、静かな空間。
呼吸を落ち着けて。バカみたいなこと口走ったことは一旦忘れて。
心も落ち着けて。ゆっくり、順序を守って、丁寧に話そう。
慌てることはない。さっきはちょっとおかしかっただけ・・・そうだ。
私はそんなに慌てるタイプじゃない。よし、落ち着け・・・。
「・・・今日は、全部話そうと思って」
「全部?」
「そう、全部。嗣永が知りたいこと」
「・・・・なんで喋ろうと思ったの?試験前だよ」
「・・・茉麻に言われたんだ。素直のほうが可愛いよって。テストは関係ないじゃん」
「・・・・・・・会長さん、試験第一な人って思ってたから」
「だから、素直になることにしたってだけ・・・聞いてくれる?」
35 :&color(blue){&b(){&u(){名無し募集中。。。}}}:2010/03/11(木) 10:57:02.40 0
第369回
はぁっーってため息が隣から聞こえてくる。
さっきまで爆発しそうでやばかった心臓、一旦収まったのに
またそれが騒ぎ出そうとしてる。この沈黙が怖い。
「・・・・当たり前じゃん」
「そう、よかった」
「でもどういう心境の変化?信じられない」
「じゃあ別に信じなくていい」
「素直になったならそういう言い方しないでよ」
「ご、ごめん・・・」
「あはは、確かに可愛いw」
笑いながらそう言われて、ちょっとムっとした。
…こっちの気も知らないで・・・。
だけど、気負っていたのもがふっと軽くなるようなそんな気がした。
嗣永の笑顔は可愛かった。悔しいほど可愛くて、改めて「好き」だと思った。
「ももが知りたいのは、なんであんなことされたのか」
「うん」
「とりあえずそれがわかれば・・・・うん」
「あれは・・・・あれはね、」
長い話になった。
とっても長い話。
空は青々としていたのに、気付いたら赤くなってたんだもん。
嗣永はじっと黙って話を聞いていた。私が、「好きだったから」と言っても
表情一つ変えずに、ぐっと唇を噛んだだけだった。
責められることもなかった。嗣永は何かをじっと考えこむような仕草をよくしていた。
36 :&color(blue){&b(){&u(){名無し募集中。。。}}}:2010/03/11(木) 11:00:08.68 0
第370回
好きだから、あんなことしたなんて。ほんとガキって思う。
他に愛情表現を知らなかったなんて、子どもすぎて誰にも言い訳できない。
…真実に向き合うのは辛くて苦しいけど、でも、目の前で目を真っ赤にしてるこの子は
私なんかが想像もできないほど辛くて苦しかったはずなんだ。
私なんかがわかる、と言ってもきっとそれはわかっていないんだろうけど・・・。
好きなくせに突っぱねて、強がって、なんてことないってフリして
強い生徒会長になって、気付いたら口調がすっごくきつくなってて
作られたイメージを壊すのが怖かったんだ。
自分じゃない自分を自分だと思い込んで、私は、ずっとそうしてたんだ。
茉麻はきっとそのことをわかっていて、私に素直になれとそう言ったんだ。
…・そうだよね?茉麻。年下のクセに生意気だぞっ。
でも、ありがとう。
ふと、我に返ると嗣永は小さな声をあげて泣いていた。
さっきまで済ました顔をしていたからちょっとびっくりして、でも刺激しないよう声をかけた。
「・・・・大丈夫?」
「うん、ゴメン、泣くつもりなかったんだけどな・・・グス」
「こっちこそ、ごめん」
「いいの、違うの、そうじゃないんだけど、・・・わかんない」
わかんない、って困ったように笑った。
「なにそれ」なんて言って一緒に笑った。
ずっとなんとなく緊迫した空気が、一気に和らぐような気がした。
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