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693 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/01/28(木) 22:34:51.46 0 第331回 「そろそろ来るだろうなぁって思ってました。」 「なんで?」 「村上さん鋭いもん。私のことなんてすぐに見つけると思ってた」 「なにそれは買いかぶりか、それとも憂佳の自惚れ?」 「・・・・どっちもです」 「そう・・・・で、こっちはいっぱい聞きたいことあるんだけど」 「私にはあんまりないです・・・でも、話したいことはたくさんあります」 「じゃあ、行こうか」 「どこ行くんですか?」 「どこがいい?」 「・・・どこでも、ついて行きますよ?・・・私は、強くなったんです」 「ほんとかな?そりゃ、楽しみ・・・行こう」 村上さんは私の腕を引っ張った。 ・・・昔は引っ張られるんじゃなくて引っ張ってばかりいた。 一人になりたくなくて、でも、一人になりたくて、私は村上さんのそばから離れなかった。 なんで壊れちゃったんだろう。私たちは何も悪いことなんてしていないのに。 ・・・いや、深夜歩き回るのはよくなかったけどさ・・・ ってそういうことじゃなくて・・・・。 767 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/01(月) 01:09:18.28 0 第332回 教室に残って勉強をしていたら、あ、図書館には佐紀がいるんだけど テスト前の勉強中は異常に殺気立ってるから極力近づかないのが慣例になってる。 あ、で、教室で勉強してたんだけど、そろそろ帰ろうかとトイレへ行ったその帰り 階段をトボトボ降りてくる舞美が目に入った。 好きな人を見つけると、素直に嬉しい。 「舞美、発見」 「なんだ、えりか」 テンションの上がった私とは対照的に、テンション低めな舞美ちゃん 「なんだとはなんだー。」 「ごめんごめん」 「なにしてんの?こんなところで」 「・・・うーん、まぁ、考え事」 「勉強は?」 「やめてよ、えりまで。・・・勉強は嫌いなの」 「そりゃわかるけど、テストだよ?」 「わかってるよ、わかってるけど・・・・それどころじゃない」 「なにが?」 「いろいろ・・・・いろいろだよ」 「ふーん・・・で、部員集まりそう?」 「・・・ううん。打ち止めの空気漂ってる・・・あたしには誘える友達もいないし」 なんか落ち込んでるのかな、舞美。 元気がない。あれ、私ひょっとして空気読めてない? 769 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/01(月) 01:10:40.20 0 第333回 一瞬迷って、「なんかあった?」と聞いた。 「うーん・・・まぁ、あった。でも、えりに話したらきっとえりが落ち込むから言わない」 「なに?そこまで言われるとき気になるよ?」 舞美は結局何も言ってはくれなかった。一体なんだって言うんだよー。 私が落ち込む・・・・? ◆ 「屋上好きなんですね、いつも屋上にいるって夏焼先輩が言ってました」 「・・・いけない?」 「いや。静かなのが好きなんでしたっけ?」 屋上に来て、段差に腰掛けて、静かな声で話をする。 あの時とは違う。上手く言えないけど、二人を包んでいるものはまるで違う。 「じゃあ、さっそくなんだけど。なんでいるの?」 「・・・うわぁ、ストレートすぎません?」 「怒るよ」 「ごめんなさい・・・」 憂佳がふざけるから、ちょっと冷たく言うとしゅんとなった。 可愛い、相変わらず、その愛玩動物的な可愛さは健在のようで。 「どうしても、もう一度会いたかったんです」 「いや、ここに入学しなくても会えるし」 「・・・・ううん、それは違います」 「なにが?」 「・・・あの事件のあと、家族全員で外国へ移ることになって・・・・」 770 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/01(月) 01:12:17.85 0 第334回 「え?」 「やっぱりなんとなくウワサが広まっててもう、あのあたりには住めなかったんです。 で、お父さんの海外転勤が決まって・・・・家族全員で行ってあのことは忘れようって・・・」 「なんで一緒に行かなかったんだよ?」 「・・・・村上さんに会いたくて」 「会ってなんになるの?なに考えてんの!」 会いたくて、と繰り返す憂佳に苛立っていた。 自然と声は荒っぽくなって。いや、怒りたかったわけじゃない・・・でも、 「今は、一人で暮らしてたおじいちゃんと住んでいます・・・・ おじいちゃんがこの学校に行ってもいいって・・・両親には別の高校へ行ってることに」 「・・・なにしてんの憂佳・・・バカすぎるよ・・・はぁ」 なんでそこまで・・・わけわかんない。あたしは憂佳のお姉さんを傷つけたのに。 「あんたのおじいちゃんもバカなんじゃないの・・・」 「そんなことありません!・・・ちゃんと話したらわかってくれました」 「ほんとかなぁ・・・・ていうかこの学校もなんで入学させるかな・・・・」 被害者の妹って事くらいわかりそうなもんでしょうが・・・・ いろんなことに対してため息ばっかり零れる。 「で、・・・会ってなんになるの?っていうのの返事は、」 「え?」 憂佳はあたしからちょっと離れてがばっと頭を下げた。 「・・・ごめんなさい!あれは、あの事件は私のせいです!・・・・悪いのは、私なんです・・・」 「なに今更?」 「私がお姉ちゃんに余計なこと言って・・・」 余計なこと?あたしの・・・・知らないこと・・・? 「謝りたくて、ちゃんと謝りたくて!!」 憂佳の声が胸へ、胸の中へ響いていくような不思議な感覚。 802 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/03(水) 00:04:55.81 0 &color(blue){>>770 } 第335回 「毎晩遅くまでなにやってるんだってお姉ちゃんに怒られて・・・ それで、私、・・・・私・・・」 だめ、泣かないって決めてたのに。なのに、だめだ、・・・ 「泣いてどーすんの、ほら」 「すいません・・・グス」 村上さんがハンカチをくれて私は必死に涙を堪えて話を続けた。 「村上さんに無理やり引っ張りまわされてるってウソを・・・ いろんなことさせられたって、全部・・・・村上さんのせいだって・・・」 「そういうことか・・・・あんたのお姉ちゃん、 随分おかしいこと言うなぁとは思ってたんだけどね。」 「私が、全部私が悪いんです・・・私がウソつかなきゃ村上さんは停学なんて・・・・」 「いやそれは別に大したことじゃないけど、怪我は痛かったなぁ」 「ごめんなさい・・・」 冗談で言ったのに、超真剣に謝られてこっちがびっくりしちゃって。 「ご、ごめん、そんなつもりじゃ」なんて私が謝ったりして。 「怖くて・・・いろんなこと、お姉ちゃんや親に知られたくなくて・・・ 私・・・最低なんです、なんであんなこと言ったんだろう・・・後悔ばかりして・・・私・・・」 「いろんなことって?そういやあたし、憂佳のこと何も知らない。 お姉ちゃんがいるのも知らなかったんだし。」 「・・・その話はまた今度に・・・」 「ダメ、全部言いなさい」 憂佳が顔を伏せたから、きつい言葉でそう言った。 803 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/03(水) 00:06:09.24 0 &color(blue){>>802 } 第336回 「あの、話変わるんですけど」 でも、憂佳は私のきつい言葉などなかったことのように、話を変えた。 …ったく、折れないやつ。 「いや、変えないで」 「・・・村上さん・・・私の告白覚えてますか?」 「はぁ?いやそんなことじゃなくて・・・」 「・・・答えてください」 「覚えてる、覚えてるよ。だからなに?」 「今でも、同じ気持ちだって言ったら信じてくれますか?」 「憂佳、そんなこと話したいんじゃないの。なんでウソなんてついたのか知りたいだけ」 「・・・帰ります」 「へっ?ちょ、待ってよ!」 憂佳はヘソを曲げたのか、むすっとして屋上を出て行こうとしている。 あたしは憂佳の二の腕をつかまえた。 「いやいや、このタイミングおかしいから」 「離して下さい」 「いや」 とは言っても、憂佳はこれ以上何も話さないだろうと思った。 なんなんだよぉ、わけわかんない。 はぁ、とため息をついて手を離した。 憂佳は「ごめんなさい」と小さくそう言って出て行った。
693 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/01/28(木) 22:34:51.46 0 第331回 「そろそろ来るだろうなぁって思ってました。」 「なんで?」 「村上さん鋭いもん。私のことなんてすぐに見つけると思ってた」 「なにそれは買いかぶりか、それとも憂佳の自惚れ?」 「・・・・どっちもです」 「そう・・・・で、こっちはいっぱい聞きたいことあるんだけど」 「私にはあんまりないです・・・でも、話したいことはたくさんあります」 「じゃあ、行こうか」 「どこ行くんですか?」 「どこがいい?」 「・・・どこでも、ついて行きますよ?・・・私は、強くなったんです」 「ほんとかな?そりゃ、楽しみ・・・行こう」 村上さんは私の腕を引っ張った。 ・・・昔は引っ張られるんじゃなくて引っ張ってばかりいた。 一人になりたくなくて、でも、一人になりたくて、私は村上さんのそばから離れなかった。 なんで壊れちゃったんだろう。私たちは何も悪いことなんてしていないのに。 ・・・いや、深夜歩き回るのはよくなかったけどさ・・・ ってそういうことじゃなくて・・・・。 767 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/01(月) 01:09:18.28 0 第332回 教室に残って勉強をしていたら、あ、図書館には佐紀がいるんだけど テスト前の勉強中は異常に殺気立ってるから極力近づかないのが慣例になってる。 あ、で、教室で勉強してたんだけど、そろそろ帰ろうかとトイレへ行ったその帰り 階段をトボトボ降りてくる舞美が目に入った。 好きな人を見つけると、素直に嬉しい。 「舞美、発見」 「なんだ、えりか」 テンションの上がった私とは対照的に、テンション低めな舞美ちゃん 「なんだとはなんだー。」 「ごめんごめん」 「なにしてんの?こんなところで」 「・・・うーん、まぁ、考え事」 「勉強は?」 「やめてよ、えりまで。・・・勉強は嫌いなの」 「そりゃわかるけど、テストだよ?」 「わかってるよ、わかってるけど・・・・それどころじゃない」 「なにが?」 「いろいろ・・・・いろいろだよ」 「ふーん・・・で、部員集まりそう?」 「・・・ううん。打ち止めの空気漂ってる・・・あたしには誘える友達もいないし」 なんか落ち込んでるのかな、舞美。 元気がない。あれ、私ひょっとして空気読めてない? 769 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/01(月) 01:10:40.20 0 第333回 一瞬迷って、「なんかあった?」と聞いた。 「うーん・・・まぁ、あった。でも、えりに話したらきっとえりが落ち込むから言わない」 「なに?そこまで言われるとき気になるよ?」 舞美は結局何も言ってはくれなかった。一体なんだって言うんだよー。 私が落ち込む・・・・? ◆ 「屋上好きなんですね、いつも屋上にいるって夏焼先輩が言ってました」 「・・・いけない?」 「いや。静かなのが好きなんでしたっけ?」 屋上に来て、段差に腰掛けて、静かな声で話をする。 あの時とは違う。上手く言えないけど、二人を包んでいるものはまるで違う。 「じゃあ、さっそくなんだけど。なんでいるの?」 「・・・うわぁ、ストレートすぎません?」 「怒るよ」 「ごめんなさい・・・」 憂佳がふざけるから、ちょっと冷たく言うとしゅんとなった。 可愛い、相変わらず、その愛玩動物的な可愛さは健在のようで。 「どうしても、もう一度会いたかったんです」 「いや、ここに入学しなくても会えるし」 「・・・・ううん、それは違います」 「なにが?」 「・・・あの事件のあと、家族全員で外国へ移ることになって・・・・」 770 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/01(月) 01:12:17.85 0 第334回 「え?」 「やっぱりなんとなくウワサが広まっててもう、あのあたりには住めなかったんです。 で、お父さんの海外転勤が決まって・・・・家族全員で行ってあのことは忘れようって・・・」 「なんで一緒に行かなかったんだよ?」 「・・・・村上さんに会いたくて」 「会ってなんになるの?なに考えてんの!」 会いたくて、と繰り返す憂佳に苛立っていた。 自然と声は荒っぽくなって。いや、怒りたかったわけじゃない・・・でも、 「今は、一人で暮らしてたおじいちゃんと住んでいます・・・・ おじいちゃんがこの学校に行ってもいいって・・・両親には別の高校へ行ってることに」 「・・・なにしてんの憂佳・・・バカすぎるよ・・・はぁ」 なんでそこまで・・・わけわかんない。あたしは憂佳のお姉さんを傷つけたのに。 「あんたのおじいちゃんもバカなんじゃないの・・・」 「そんなことありません!・・・ちゃんと話したらわかってくれました」 「ほんとかなぁ・・・・ていうかこの学校もなんで入学させるかな・・・・」 被害者の妹って事くらいわかりそうなもんでしょうが・・・・ いろんなことに対してため息ばっかり零れる。 「で、・・・会ってなんになるの?っていうのの返事は、」 「え?」 憂佳はあたしからちょっと離れてがばっと頭を下げた。 「・・・ごめんなさい!あれは、あの事件は私のせいです!・・・・悪いのは、私なんです・・・」 「なに今更?」 「私がお姉ちゃんに余計なこと言って・・・」 余計なこと?あたしの・・・・知らないこと・・・? 「謝りたくて、ちゃんと謝りたくて!!」 憂佳の声が胸へ、胸の中へ響いていくような不思議な感覚。 802 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/03(水) 00:04:55.81 0 &color(blue){>>770 } 第335回 「毎晩遅くまでなにやってるんだってお姉ちゃんに怒られて・・・ それで、私、・・・・私・・・」 だめ、泣かないって決めてたのに。なのに、だめだ、・・・ 「泣いてどーすんの、ほら」 「すいません・・・グス」 村上さんがハンカチをくれて私は必死に涙を堪えて話を続けた。 「村上さんに無理やり引っ張りまわされてるってウソを・・・ いろんなことさせられたって、全部・・・・村上さんのせいだって・・・」 「そういうことか・・・・あんたのお姉ちゃん、 随分おかしいこと言うなぁとは思ってたんだけどね。」 「私が、全部私が悪いんです・・・私がウソつかなきゃ村上さんは停学なんて・・・・」 「いやそれは別に大したことじゃないけど、怪我は痛かったなぁ」 「ごめんなさい・・・」 冗談で言ったのに、超真剣に謝られてこっちがびっくりしちゃって。 「ご、ごめん、そんなつもりじゃ」なんて私が謝ったりして。 「怖くて・・・いろんなこと、お姉ちゃんや親に知られたくなくて・・・ 私・・・最低なんです、なんであんなこと言ったんだろう・・・後悔ばかりして・・・私・・・」 「いろんなことって?そういやあたし、憂佳のこと何も知らない。 お姉ちゃんがいるのも知らなかったんだし。」 「・・・その話はまた今度に・・・」 「ダメ、全部言いなさい」 憂佳が顔を伏せたから、きつい言葉でそう言った。 803 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/03(水) 00:06:09.24 0 &color(blue){>>802 } 第336回 「あの、話変わるんですけど」 でも、憂佳は私のきつい言葉などなかったことのように、話を変えた。 …ったく、折れないやつ。 「いや、変えないで」 「・・・村上さん・・・私の告白覚えてますか?」 「はぁ?いやそんなことじゃなくて・・・」 「・・・答えてください」 「覚えてる、覚えてるよ。だからなに?」 「今でも、同じ気持ちだって言ったら信じてくれますか?」 「憂佳、そんなこと話したいんじゃないの。なんでウソなんてついたのか知りたいだけ」 「・・・帰ります」 「へっ?ちょ、待ってよ!」 憂佳はヘソを曲げたのか、むすっとして屋上を出て行こうとしている。 あたしは憂佳の二の腕をつかまえた。 「いやいや、このタイミングおかしいから」 「離して下さい」 「いや」 とは言っても、憂佳はこれ以上何も話さないだろうと思った。 なんなんだよぉ、わけわかんない。 はぁ、とため息をついて手を離した。 憂佳は「ごめんなさい」と小さくそう言って出て行った。 830 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/04(木) 23:27:59.16 0 &color(blue){>>803 } 第337回 屋上を飛び出した私は部室にいた。 当然誰もいなくて、いつも夏焼先輩が座っている席に座ってる。 「・・・・はぁ」 なんでこんなところにいるんだろう。さっきからため息ばっかりだ。 全部話すつもりだったのに、逃げてきちゃった。 怒ってるかなぁ、怒ってるよなぁ・・・。 家族のこと、確かに言いたくない。でも、村上さんにはちゃんと伝えるべきって そう思っていたのに。なのに言い出せなかった。 ・・・それどころか、余計なことまで言ってしまって。 今思い出しても恥ずかしい・・・「告白を覚えてますか」なんて・・・。 あーだめ、ほんとに恥ずかしい・・・。 だけど、あんなこと言ったのには・・・理由が・・・・。 『ガチャ』 と、急に扉が開いてハっとした。誰だろう?もう結構遅いのに・・・。 「あれ、カギあいてる・・・?お、前田ちゃんなにしてんの?」 私に声をかけた人は、夏焼先輩。 「先輩こそ?」 「あぁ、これ忘れちゃって」 と先輩は机の上にあったシャーペンを手に取った。ピンクの可愛いやつ。 「そっちこそ、なんでこんなとこに。もう遅いよ」 「・・・はい」 「家どっち方向だっけ?一緒に帰ろうよ、それともまだなんか用事ある?」 831 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/04(木) 23:29:17.06 0 &color(blue){>>830 } 第338回 「いえ、・・・なにも」 「そっか、じゃあ行こう。」 夏焼先輩はニコっと微笑んで扉を開けて待っていてくれる。 何でこの人はこんなに、・・・・無防備な笑顔なんだろう。 初めは、そんな気なんてなかったのに。 ・・・そんな気なんて。 「どした?」 「え、あ、えっ?」 「ぼーっとしてた」 「ご、ごめんなさい・・・」 そうやって、顔を近づけて私を惑わせる。あなたにそんな気がないことは よくわかっているつもりなのに、こんなにもドキドキするのは・・・。 私は、村上さんのことが知りたくて夏焼先輩に近づいた。 文芸部が部員を募集していると知って、チャンスだと思った。 だって夏焼先輩はちょっと怖くて近寄りがたくて、クールな人だと思ってた。 ・・・こういう機会でもなきゃ話すことすら出来なかったと思う。 初めはそれだけのつもり・・・それだけだったのに。 知れば知るほど、この人を好きになっていく自分がいた。 ちょっとバカっぽくて、実は表情が豊かで、ヘタレっぽいとこもあって、後輩に優しくて・・・。 ずっと、村上さんのことを想っていたはずなのに・・・なのに。 ふと、思い出してしまったんだ。村上さんと話しているとき、この人の笑顔を。 だから、あんな恥ずかしいこと聞いて。逃げてきた。 村上さんと向き合うのが、怖かったんだ。 846 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/05(金) 23:09:45.95 0 &color(blue){>>831 } 第339回 「あぁ・・・・!!」 家で勉強していても落ち着かない。全然落ち着かない。 さっきから同じことばっか考えてる。 こんなのよくない。これじゃ、成績はガタ落ち確実・・・。 謝る?怒ったまま? どうするべきか、答えは出てる。 でも、怖くて出来ない。でも、やらなくちゃ。 意を決して、うちは家を出た。 もう結構遅くて、外は真っ暗で。 車を出すと散々言われたけど断って、電車に乗り込んだ。 ・・・・切符の買い方わからなくて、駅員さんに買ってもらったのは誰にも言わないでおこう・・・。 聞いていた駅に降り立ったはいいけれど、どこへ行けばいいのかわからない。 右?左?・・・わかんない。 うち、好きな人の住んでいる家もわからないのかな・・・なんか、かっこ悪い・・・。 なんだか落ち込んでしまう。うち、こんなダメな感じだっけ・・・。 ううん、愛理に出会ってから・・・今まではそんなことなかったのに。 ももちにたまにからかわれるくらいで、・・・なのに。 「熊井ちゃん?」 「・・・り、さこ?」 「何してるの、こんなところで」 声をかけられて振り返ると、梨沙子がたこ焼きを手にして立っていた。 847 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/02/05(金) 23:10:27.63 0 &color(blue){>>846 } 第340回 「あ、えっと、愛理に会いに・・・」 「そっか」 「あ、あのさ・・・でも、その場所がわからなくて」 「えぇ、恋人なのに?」 「うん・・・」 そう、恋人なのにわかんないんだ。情けない。 「あぁ、そっか。今日愛理泣いてた」 「・・・・・・・・・・・」 「泣かしたんだ?」 「・・・・まぁ、いろいろあって」 「泣かしちゃダメじゃん」 「うん・・・わかってるけど・・・」 「愛理ってさ、頑固だからさ、気に入らないと泣いちゃうの」 「・・・・・なんとなくわかる」 「そこ、上手くコントロールしなきゃ」 「う、うん」 なんかズバズバ、突き刺さることばっかり言われている・・・。 でも、どれも正しい気がして反論する気になれない。 梨沙子の言葉にいちいちちょっとずつ傷つきながら、 梨沙子と一緒に愛理の家を目指した。 話しながらも、しっかりと場所を覚えるようにじっくりと街並みを見ていた。 車でしか来ないからやけに新鮮に見えた。 それでも、見覚えのある看板が目に入ると、「もうすぐだよ」と梨沙子は教えてくれた。

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