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第101話~第110話」(2009/08/05 (水) 10:11:21) の最新版変更点

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350 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/02(日) 02:41:49.29 0 &color(blue){>>349 } 第101回 「みんなー新しい仲間連れてきた!」 先生はカビくさくて、狭くて、乱雑な部室に入るなりそう言ってももの肩を抱いた。 「新入部員ですか?足りなくて困ってたんですよー」 「だろうと思ったー。1年生の桃子ちゃん」 「あ、えっと嗣永桃子です、よ、よろしくお願いします」 「よろしくね桃子ちゃん!」 部屋にいたのは3人でみんな机に向かって何か作業をしていた。 部屋の中には「文芸部」と書かれた冊子なんかが散らかっていた。 「先生ここ何部ですか?」 「文芸部だよ桃子、小説とか好きって言ってたから」 「はぁ・・・・文芸部・・・」 正直何をするところなのかよくわからなかった。 それでも1週間もすればももはこの部に、部室に馴染んでいた。 先輩3人はみんな優しかった。 先生からそれとなくもものことを聞いていたようでとても優しくしてくれた。 クラスでは相変わらず辛い思いをしていたけど この部屋に来ると安心できた。先輩とくだらない話をして笑いあっていた。 学校でこんなに笑える日が来るなんて思っていなかった。 嬉しくて泣いてしまって先輩を困らせた日もあった。 そして先生もこの部の出身だと聞いた。先生の人生を変えた文芸部にももがいる。 ももの人生も変わるかな・・・と入部して2週間そんなことを考えていた。 351 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/02(日) 02:42:29.59 0 &color(blue){>>350 } 第102回 先生が実習を終える日、先生は部室に来てももに言った。 「頑張ってね、桃子。先生、先生じゃなくなっちゃうけど、桃子のこと応援してるから」 先生はそう言ってももを励ましてくれた。ももは勇気をもらった。 強くなることが出来た。全部先生のおかげだった。 自分から動けば何かが変わるはず、先生の言葉がいつも頭の中にあった。 ももは自分の居場所を見つけて、入り浸るようになった。 同時に自分から動き出せばなにか変わるはず、を実行して暗い顔をするのをやめた。 いつも笑顔でいようと心がけた。中学の頃のように自分は可愛い、と自信を持つようになった。 嫌な事をされたら下を向かずに立ち向かうようにした。 今まで言えなかった「やめて」を言える様になった。 何かが変わるはずだと信じて努力をした。 するとなぜかももへの嫌がらせは少しずつ減っていった。 理由はわからないけど、クラスの誰かが言うには面白くなくなった、と。 それがどういう意味かはわからないけど、ももに大きく覆いかぶさっていた 重くて暗いものがなくなっていった。その事実だけが残った。 先生はたまにももの様子を見に、部室を訪ねてくれた。差し入れを持って。 他愛もない話をして笑うと先生はちゃんと笑えるじゃん、と褒めてくれた。 嫌がらせがなくなったことも喜んでくれた。 頑張ったね、と頭を撫でてくれた。 352 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/02(日) 02:43:26.28 0 &color(blue){>>351 } 第103回 そして、部室はももの宝物になった。先生もここは宝物だと言っていた。 ももを助けてくれた場所。ここがなければ、優しい先生や先輩に出会ってなければ ももはまた死のうとしていたかもしれない。 そう思うと部室は大切で、かけがえのないものになった。 過去の作品や冊子がたくさんあるこの部室。 狭くてカビくさくて古くて冷房も暖房もないし、 入り口のドアのカギはなかなか開かないし、 中に置かれた机と椅子は古くてボロボロ。 歴史ってやつを感じる空間。 でも、だけど、だからこそ?ももの大切で大好きな場所だ。最高の、居心地。 ◆ だから、失うわけにはいかない。 先輩たちが築きあげた部と部屋をももが潰すわけにはいかない。 生徒会の勝手な理由なんかで部室を取られるわけにはいかない。 廃部を免れたところでこの部屋がないのならなんの意味もない。 それならいっそ廃部でも構わない。 でも、今ももがしているのは駄々っ子と変わらない。 さしたる理由も言わずに嫌だと言い張っているのだから。 それに話したからと言って部室を取り上げられることがなくなるとも思わない。 だから生徒会に事情を話すつもりは一切ない。 ・・・・それに、生徒会長はももに嫌がらせをしていた、主犯格【リーダー】なのだから。 戦ってやる。絶対奪わせたりしない。 ももはあのときよりももっともっと強くなった。負けたりしない。 だから、愛理手伝って。 398 :&color(green){&bold()名無し募集中。。。}}:2009/08/03(月) 01:59:25.45 0 &color(blue){>>352} 第104回 そしていよいよ、意見交換会の日がやってきた。 ももやみやと相談を重ねて、 1.部室を出る気はないこと 2.廃部にも応じないこと 3.部員を増やすという提案をすること これを主張することを文芸部の総意として決めた。 顧問で保田先生は長期入院でいないから報告だけした。 実は先生も、うちの高校の文芸部出身らしくて 部室は守れ・是非頑張れと激励してくれたけど オトナがいてくれないのはちょぴり心細い。 でも、その日だけ行こうか?っていう先生をももと一緒に止めた。 病人に心配させちゃいけないよね。 それに戦うって決めたのは私たちなんだから3人で決めたんだから。 3人で頑張らなくちゃいけない。 ◆ 朝から、不安でいっぱいだった。気合は入ってるんだけど 相手がどういう反応に出るか読めないから怖い。 友理奈先輩が言うには、会長さんはどういう進行で話を進めていくか 自分の参謀ともいえる、もう一人の副会長とばかり相談していて 先輩には全然教えてくれないらしい。 まだ2年生だからかな・・・ってちょっと悲しそうに先輩は言ってた。 いやそうじゃなくてももや私に近すぎるから言わないんだと思う。 意欲満々で部室から追い出す気だよってそれは先輩から聞いていたから。 399 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/03(月) 02:00:52.72 0 &color(blue){>>398} 第105回 土曜日だから午前中で授業は終わり、意見交換会が始まるまで 私たち3人は部室に集まって最後の気合いれをしていた。 ちなみに各部代表二人らしく、みやは口下手を理由に参加を見送った。 いや、ただやりたくないっていうまあみやらしい理由なんだけどさ。 「さて、あと30分で始まっちゃうね」 ももが自前のハートの腕時計を見ながら呟いた。 3人とも、気合だ、と購買部のパンを3個ずつ頬張った。 ・・・保田先生のおごりで。 「頑張ってよ、みやここで待ってる」 「うん、頑張ってくる!私ね、頑張る!」 「おー、愛理は頼もしいなぁ。」 みやは私の頭を撫でてくれる。ありがとって微笑むと みやはちょっと照れくさそうに笑い返してくれる。 「むぅ、みや、ももは?」 「はいはい。もう、ガキなんだから」 「うるさい!」 「ほら、おいで。頑張ってね、部長」 「・・・うん、頑張るから」 みやは文句を言いながら結局、ももの頭を撫でて激励した。 なんかこの2人、いや、みやが最近変わった気がする。 ももにちょっと甘くなったっていうか・・・なんでかな。 気のせいかもしれないんだけど。 400 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/03(月) 02:01:33.00 0 &color(blue){>>399} 第106回 そして、10分前、私とももは部室を出て会場となる会議室へ向う。 緊張しちゃう。手には汗。上手く喋れるかな・・・みやよりはイケるはずだけど。 緊張しすぎて喋れなくなったらいやだな・・・。 なんて考えていたら、ももはそんな素振りも見せず意志の強い顔で前だけ見ていた。 その様がちょっと、いや、大分かっこよく見えて緊張してる自分が かっこ悪く思えた。だから、ももを見習おうと思って、下手に緊張するのを抑えた。 会議室へ入ると、生徒会長がどーんと上座に座って紙パックの紅茶を飲んでいた。 先輩はなにか書類を見ながら窓辺で太陽に当たっていた。 他の部や同好会の人たちや、生徒会の人もいて、なんだか部屋中ピリピリしてる。 先輩が私が入ってきたことに気付いたらしく、書類から顔を上げて笑いかけてくれる。 その顔を見るだけで幸せに感じて、私を笑顔を向けた。 ももを見るとももも、笑ってくれて、心がほどけていくような気持ちになって こんな空気でも、絶対屈したりしないと心に誓うのだった。 そして、この会に参加する人が全員着席すると、生徒会長が会の開始を告げた。 私たちの、戦いの始まりでもあった。 490 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/05(水) 01:27:54.52 0 &color(blue){>>400} 第107回 「では、部活動の意見交換会を始めます」 生徒会長の声がして、一気に静まり返った。 愛理はちょっと固い顔をしてる。心配だなぁ・・・。 うちは、生徒会長の隣でヒヤヒヤしながら事の成り行きを見守っていた。 「生徒会長の清水です。まず、なぜこのような会を開催するに至ったのか、 それについて話をしたいと思います。」 この場にいる全員が、会長の話に耳を傾ける。 「うちの高校は部活動が大変盛んであり、数多くの部活が活動しています。 部として生徒会及び学校が公認している部は28に上り、それぞれが 大中小の部室を使っています。しかし、同時に同好会もここ数年増えており、 同好会に所属する人数も年々増加しています。同好会は生徒会の公認を 得ていないので、活動資金や活動場所において不自由な思いをしているようです。」 うんうん、と同好会側の生徒たちが頷く。 ももちと愛理は表情変えずに話を聞いている様子だ。 「私が把握しているだけでも、同好会は10を越えています。 そこには20人以上が所属する同好会もあり、精力的に活動しています。 生徒会としては、部の中には5人以下という部もいくつかありますので、 人数が多く、かつ部として存続していくのだ、という熱意のある 同好会を部として公認していく一方、数の限られている部室も与えたいと考えています。 そこで、部員が5人以下の部には部室を空けて欲しい、と思っているのです。」 しーんとした空気の中、会長はさらに喋り続けた。 491 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/05(水) 01:28:38.75 0 &color(blue){>>490 } 第108回 「もちろん、廃部ということではなく、部室をより多くの生徒に有効的に 活用して欲しいという生徒会の思いなのです。 しかし、一方的な決定は好ましくありませんし、みなさんにも納得もしてもらえないはずです。 そこで、今日は部員が5人以下である、4つの部の代表者と 所属が20名前後の4つの同好会の代表者に集まってもらいました。 みなさんに積極的に意見を出してもらい、どうすることが一番いい方法なのか それを考えていきたいと思っています。長くてスイマセン、以上です」 会長が喋り終えると、緊張感漂う空気が一瞬にして崩れ、回りからこそこそと声が聞こえてくる。 ももちと愛理は平気なのか・・・ってうちが一番緊張してるのかも。 どうなっちゃうのかな。 ◆ ももにトイレにぶちまけたお弁当を口だけで食べろと言った人とは思えないなぁ。 外面だけは完璧な優等生、生徒会長様。見事だよ、清水さん。 あんたなんかに負けるものか。どんな正論並べられたって打ち破ってやる。 みやとの、愛理との約束なんだから。 テーブルの下で拳を握った。すると、愛理が手を伸ばしてきて、ももの拳に掌を重ねた。 「もも、平気だよ。大丈夫」 「・・・ありがとう」 愛理はこんな緊張した場面なのにニコニコ笑っていて ふっと気が抜けるようなそんな優しい気持ちになれた。 ももは、愛理に感謝しつつ、事の進行を待った。 部と同好会の紹介が行われた。 部活の参加は、ももたちの文芸部(3人)、天体観測部(4人)、手芸部(5人)、卓球部(3人)の計4つ 同好会は、ペタンク同好会(22人)、フットサルサークル(21人)、映像制作同好会(18人)、社会調査会(17人)の計4つ 492 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/05(水) 01:29:24.72 0 &color(blue){>>491 } 第109回 うぅ・・・くまいちょーがホワイトボードに書き連ねていく人数が圧倒的に違ってちょっと凹む。 3と22って違いすぎる・・・うぅ・・・。で、でも!愛理はそれくらい集めようって言ってるし! ももだってやる気あるし!負けてられない。 「この同好会4つは生徒会が個別に、部への昇格と部室保有の意思を確認した結果に基づきます。 ・・・部の4つはただ人数が少ないということで来てもらいました。不本意でしょうが、我慢してください。 では、はじめます・・・。まず、同好会の方から意見をそどうぞ」 どの同好会も部へ昇格することと部室を持つことへ並々ならぬ決意と熱意のこもった意見を述べた。 4つの部の代表者がちょっと威圧されてしまうくらいだった。 そして、次は部の番。席順的に、ももたちは最後になった。 手芸部は、廃部にならなければ部室はなくてもいい、と考えられないことを言い、 卓球部は倉庫で着替えるから部室はあったほうがいいが、なくてもいいと言い、 天体観測部は、備品を置く場所を確保してくれれば部室はなくてもいい、と言った。 っておい!あんたら味方かと思ったらそっち派かい! ももと愛理は顔を見合わせて困惑した表情を浮かべた。 ・・・そのとき、清水が笑ったように見えた。ももが睨みつける様に見ると、 頬杖をついて気味の悪い笑顔を浮かべた。 寒気がした。・・・きっと、すでに懐柔してあったんだろう。 清水が何かしら条件をつけて納得させたに違いない。ももは、そう悟った。 だから、結局この会は、文芸部の部室を奪うためだけの・・・。 手の込んだことしてくれちゃってさー。 493 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/05(水) 01:30:22.69 0 &color(){>>492} 第110回 そして、ももたちの番・・・ももが立ち上がろうとすると、愛理がそれを制した。 「え?」 「任せて」 なんて自信たっぷりに言う愛理。いや・・・いいけど、大丈夫? って言いたかったけど本当に自信ありげでももは任せてみるか、と腹をくくった。 そもそも戦うって言ったの愛理だ。・・・頑張れ、愛理! 「わが文芸部は部室がなくては困ります。明け渡す気はありません」 意志の強い顔をして、愛理はそう言った。すっごくかっこいい。 「なぜ?」 清水が頬杖をついたままそう聞いた。・・・なんでそう態度悪くなるんだ。 舐められちゃってるよ・・・腹立つなぁ。 「理由は、わが文芸部がわが校最初の部活動であり、 創部80年を越える伝統ある部の部室であるからです。部室には過去80年分の、 文芸部が発行してきた雑誌や冊子が大切に保管されており、それは同時に わが校の歴史と呼べるからです。私たち文芸部は、新しい雑誌を発行することも その活動ではありますが、それらの古い資料を保管していくということも重要な活動内容です。 それは顧問の保田先生からの言いつけでもあり、教えでもあります。 また、あの部室は幾度となく改修こそ行われていますが、創部時から部屋の構造も場所もずっと一緒です。 先輩方もたびたびいらっしゃいますし、あの場所がなくなってしまうと大変に困ってしまうのです。」 ・・・え、創部80年?そんなの知らないよ?保管が活動?初耳・・・ 部室の場所も変わってないってそれほんと?・・・ウソ?そんなわけないだろうけど・・・。愛理ってすごいかも・・・。 「・・・でも、たった3人しかいない部にあの部屋はもったいないのでは? 過去の雑誌等も場所を移せばいいんだし、先輩方には3人しか部員を集められなかった 自分たちが悪いのだと謝ればいいでしょう。 あの部屋は広くはないけれど過去の資料やあなたたちの机とイスを持ち出せば空間はそう狭くはない。・・・どう?」
350 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/02(日) 02:41:49.29 0 &color(blue){>>349 } 第101回 「みんなー新しい仲間連れてきた!」 先生はカビくさくて、狭くて、乱雑な部室に入るなりそう言ってももの肩を抱いた。 「新入部員ですか?足りなくて困ってたんですよー」 「だろうと思ったー。1年生の桃子ちゃん」 「あ、えっと嗣永桃子です、よ、よろしくお願いします」 「よろしくね桃子ちゃん!」 部屋にいたのは3人でみんな机に向かって何か作業をしていた。 部屋の中には「文芸部」と書かれた冊子なんかが散らかっていた。 「先生ここ何部ですか?」 「文芸部だよ桃子、小説とか好きって言ってたから」 「はぁ・・・・文芸部・・・」 正直何をするところなのかよくわからなかった。 それでも1週間もすればももはこの部に、部室に馴染んでいた。 先輩3人はみんな優しかった。 先生からそれとなくもものことを聞いていたようでとても優しくしてくれた。 クラスでは相変わらず辛い思いをしていたけど この部屋に来ると安心できた。先輩とくだらない話をして笑いあっていた。 学校でこんなに笑える日が来るなんて思っていなかった。 嬉しくて泣いてしまって先輩を困らせた日もあった。 そして先生もこの部の出身だと聞いた。先生の人生を変えた文芸部にももがいる。 ももの人生も変わるかな・・・と入部して2週間そんなことを考えていた。 351 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/02(日) 02:42:29.59 0 &color(blue){>>350 } 第102回 先生が実習を終える日、先生は部室に来てももに言った。 「頑張ってね、桃子。先生、先生じゃなくなっちゃうけど、桃子のこと応援してるから」 先生はそう言ってももを励ましてくれた。ももは勇気をもらった。 強くなることが出来た。全部先生のおかげだった。 自分から動けば何かが変わるはず、先生の言葉がいつも頭の中にあった。 ももは自分の居場所を見つけて、入り浸るようになった。 同時に自分から動き出せばなにか変わるはず、を実行して暗い顔をするのをやめた。 いつも笑顔でいようと心がけた。中学の頃のように自分は可愛い、と自信を持つようになった。 嫌な事をされたら下を向かずに立ち向かうようにした。 今まで言えなかった「やめて」を言える様になった。 何かが変わるはずだと信じて努力をした。 するとなぜかももへの嫌がらせは少しずつ減っていった。 理由はわからないけど、クラスの誰かが言うには面白くなくなった、と。 それがどういう意味かはわからないけど、ももに大きく覆いかぶさっていた 重くて暗いものがなくなっていった。その事実だけが残った。 先生はたまにももの様子を見に、部室を訪ねてくれた。差し入れを持って。 他愛もない話をして笑うと先生はちゃんと笑えるじゃん、と褒めてくれた。 嫌がらせがなくなったことも喜んでくれた。 頑張ったね、と頭を撫でてくれた。 352 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/02(日) 02:43:26.28 0 &color(blue){>>351 } 第103回 そして、部室はももの宝物になった。先生もここは宝物だと言っていた。 ももを助けてくれた場所。ここがなければ、優しい先生や先輩に出会ってなければ ももはまた死のうとしていたかもしれない。 そう思うと部室は大切で、かけがえのないものになった。 過去の作品や冊子がたくさんあるこの部室。 狭くてカビくさくて古くて冷房も暖房もないし、 入り口のドアのカギはなかなか開かないし、 中に置かれた机と椅子は古くてボロボロ。 歴史ってやつを感じる空間。 でも、だけど、だからこそ?ももの大切で大好きな場所だ。最高の、居心地。 ◆ だから、失うわけにはいかない。 先輩たちが築きあげた部と部屋をももが潰すわけにはいかない。 生徒会の勝手な理由なんかで部室を取られるわけにはいかない。 廃部を免れたところでこの部屋がないのならなんの意味もない。 それならいっそ廃部でも構わない。 でも、今ももがしているのは駄々っ子と変わらない。 さしたる理由も言わずに嫌だと言い張っているのだから。 それに話したからと言って部室を取り上げられることがなくなるとも思わない。 だから生徒会に事情を話すつもりは一切ない。 ・・・・それに、生徒会長はももに嫌がらせをしていた、主犯格【リーダー】なのだから。 戦ってやる。絶対奪わせたりしない。 ももはあのときよりももっともっと強くなった。負けたりしない。 だから、愛理手伝って。 398 :&color(green){&bold()名無し募集中。。。}}:2009/08/03(月) 01:59:25.45 0 &color(blue){>>352} 第104回 そしていよいよ、意見交換会の日がやってきた。 ももやみやと相談を重ねて、 1.部室を出る気はないこと 2.廃部にも応じないこと 3.部員を増やすという提案をすること これを主張することを文芸部の総意として決めた。 顧問で保田先生は長期入院でいないから報告だけした。 実は先生も、うちの高校の文芸部出身らしくて 部室は守れ・是非頑張れと激励してくれたけど オトナがいてくれないのはちょぴり心細い。 でも、その日だけ行こうか?っていう先生をももと一緒に止めた。 病人に心配させちゃいけないよね。 それに戦うって決めたのは私たちなんだから3人で決めたんだから。 3人で頑張らなくちゃいけない。 ◆ 朝から、不安でいっぱいだった。気合は入ってるんだけど 相手がどういう反応に出るか読めないから怖い。 友理奈先輩が言うには、会長さんはどういう進行で話を進めていくか 自分の参謀ともいえる、もう一人の副会長とばかり相談していて 先輩には全然教えてくれないらしい。 まだ2年生だからかな・・・ってちょっと悲しそうに先輩は言ってた。 いやそうじゃなくてももや私に近すぎるから言わないんだと思う。 意欲満々で部室から追い出す気だよってそれは先輩から聞いていたから。 399 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/03(月) 02:00:52.72 0 &color(blue){>>398} 第105回 土曜日だから午前中で授業は終わり、意見交換会が始まるまで 私たち3人は部室に集まって最後の気合いれをしていた。 ちなみに各部代表二人らしく、みやは口下手を理由に参加を見送った。 いや、ただやりたくないっていうまあみやらしい理由なんだけどさ。 「さて、あと30分で始まっちゃうね」 ももが自前のハートの腕時計を見ながら呟いた。 3人とも、気合だ、と購買部のパンを3個ずつ頬張った。 ・・・保田先生のおごりで。 「頑張ってよ、みやここで待ってる」 「うん、頑張ってくる!私ね、頑張る!」 「おー、愛理は頼もしいなぁ。」 みやは私の頭を撫でてくれる。ありがとって微笑むと みやはちょっと照れくさそうに笑い返してくれる。 「むぅ、みや、ももは?」 「はいはい。もう、ガキなんだから」 「うるさい!」 「ほら、おいで。頑張ってね、部長」 「・・・うん、頑張るから」 みやは文句を言いながら結局、ももの頭を撫でて激励した。 なんかこの2人、いや、みやが最近変わった気がする。 ももにちょっと甘くなったっていうか・・・なんでかな。 気のせいかもしれないんだけど。 400 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/03(月) 02:01:33.00 0 &color(blue){>>399} 第106回 そして、10分前、私とももは部室を出て会場となる会議室へ向う。 緊張しちゃう。手には汗。上手く喋れるかな・・・みやよりはイケるはずだけど。 緊張しすぎて喋れなくなったらいやだな・・・。 なんて考えていたら、ももはそんな素振りも見せず意志の強い顔で前だけ見ていた。 その様がちょっと、いや、大分かっこよく見えて緊張してる自分が かっこ悪く思えた。だから、ももを見習おうと思って、下手に緊張するのを抑えた。 会議室へ入ると、生徒会長がどーんと上座に座って紙パックの紅茶を飲んでいた。 先輩はなにか書類を見ながら窓辺で太陽に当たっていた。 他の部や同好会の人たちや、生徒会の人もいて、なんだか部屋中ピリピリしてる。 先輩が私が入ってきたことに気付いたらしく、書類から顔を上げて笑いかけてくれる。 その顔を見るだけで幸せに感じて、私を笑顔を向けた。 ももを見るとももも、笑ってくれて、心がほどけていくような気持ちになって こんな空気でも、絶対屈したりしないと心に誓うのだった。 そして、この会に参加する人が全員着席すると、生徒会長が会の開始を告げた。 私たちの、戦いの始まりでもあった。 490 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/05(水) 01:27:54.52 0 &color(blue){>>400} 第107回 「では、部活動の意見交換会を始めます」 生徒会長の声がして、一気に静まり返った。 愛理はちょっと固い顔をしてる。心配だなぁ・・・。 うちは、生徒会長の隣でヒヤヒヤしながら事の成り行きを見守っていた。 「生徒会長の清水です。まず、なぜこのような会を開催するに至ったのか、 それについて話をしたいと思います。」 この場にいる全員が、会長の話に耳を傾ける。 「うちの高校は部活動が大変盛んであり、数多くの部活が活動しています。 部として生徒会及び学校が公認している部は28に上り、それぞれが 大中小の部室を使っています。しかし、同時に同好会もここ数年増えており、 同好会に所属する人数も年々増加しています。同好会は生徒会の公認を 得ていないので、活動資金や活動場所において不自由な思いをしているようです。」 うんうん、と同好会側の生徒たちが頷く。 ももちと愛理は表情変えずに話を聞いている様子だ。 「私が把握しているだけでも、同好会は10を越えています。 そこには20人以上が所属する同好会もあり、精力的に活動しています。 生徒会としては、部の中には5人以下という部もいくつかありますので、 人数が多く、かつ部として存続していくのだ、という熱意のある 同好会を部として公認していく一方、数の限られている部室も与えたいと考えています。 そこで、部員が5人以下の部には部室を空けて欲しい、と思っているのです。」 しーんとした空気の中、会長はさらに喋り続けた。 491 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/05(水) 01:28:38.75 0 &color(blue){>>490 } 第108回 「もちろん、廃部ということではなく、部室をより多くの生徒に有効的に 活用して欲しいという生徒会の思いなのです。 しかし、一方的な決定は好ましくありませんし、みなさんにも納得もしてもらえないはずです。 そこで、今日は部員が5人以下である、4つの部の代表者と 所属が20名前後の4つの同好会の代表者に集まってもらいました。 みなさんに積極的に意見を出してもらい、どうすることが一番いい方法なのか それを考えていきたいと思っています。長くてスイマセン、以上です」 会長が喋り終えると、緊張感漂う空気が一瞬にして崩れ、回りからこそこそと声が聞こえてくる。 ももちと愛理は平気なのか・・・ってうちが一番緊張してるのかも。 どうなっちゃうのかな。 ◆ ももにトイレにぶちまけたお弁当を口だけで食べろと言った人とは思えないなぁ。 外面だけは完璧な優等生、生徒会長様。見事だよ、清水さん。 あんたなんかに負けるものか。どんな正論並べられたって打ち破ってやる。 みやとの、愛理との約束なんだから。 テーブルの下で拳を握った。すると、愛理が手を伸ばしてきて、ももの拳に掌を重ねた。 「もも、平気だよ。大丈夫」 「・・・ありがとう」 愛理はこんな緊張した場面なのにニコニコ笑っていて ふっと気が抜けるようなそんな優しい気持ちになれた。 ももは、愛理に感謝しつつ、事の進行を待った。 部と同好会の紹介が行われた。 部活の参加は、ももたちの文芸部(3人)、天体観測部(4人)、手芸部(5人)、卓球部(3人)の計4つ 同好会は、ペタンク同好会(22人)、フットサルサークル(21人)、映像制作同好会(18人)、社会調査会(17人)の計4つ 492 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/05(水) 01:29:24.72 0 &color(blue){>>491 } 第109回 うぅ・・・くまいちょーがホワイトボードに書き連ねていく人数が圧倒的に違ってちょっと凹む。 3と22って違いすぎる・・・うぅ・・・。で、でも!愛理はそれくらい集めようって言ってるし! ももだってやる気あるし!負けてられない。 「この同好会4つは生徒会が個別に、部への昇格と部室保有の意思を確認した結果に基づきます。 ・・・部の4つはただ人数が少ないということで来てもらいました。不本意でしょうが、我慢してください。 では、はじめます・・・。まず、同好会の方から意見をそどうぞ」 どの同好会も部へ昇格することと部室を持つことへ並々ならぬ決意と熱意のこもった意見を述べた。 4つの部の代表者がちょっと威圧されてしまうくらいだった。 そして、次は部の番。席順的に、ももたちは最後になった。 手芸部は、廃部にならなければ部室はなくてもいい、と考えられないことを言い、 卓球部は倉庫で着替えるから部室はあったほうがいいが、なくてもいいと言い、 天体観測部は、備品を置く場所を確保してくれれば部室はなくてもいい、と言った。 っておい!あんたら味方かと思ったらそっち派かい! ももと愛理は顔を見合わせて困惑した表情を浮かべた。 ・・・そのとき、清水が笑ったように見えた。ももが睨みつける様に見ると、 頬杖をついて気味の悪い笑顔を浮かべた。 寒気がした。・・・きっと、すでに懐柔してあったんだろう。 清水が何かしら条件をつけて納得させたに違いない。ももは、そう悟った。 だから、結局この会は、文芸部の部室を奪うためだけの・・・。 手の込んだことしてくれちゃってさー。 493 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/05(水) 01:30:22.69 0 &color(){>>492} 第110回 そして、ももたちの番・・・ももが立ち上がろうとすると、愛理がそれを制した。 「え?」 「任せて」 なんて自信たっぷりに言う愛理。いや・・・いいけど、大丈夫? って言いたかったけど本当に自信ありげでももは任せてみるか、と腹をくくった。 そもそも戦うって言ったの愛理だ。・・・頑張れ、愛理! 「わが文芸部は部室がなくては困ります。明け渡す気はありません」 意志の強い顔をして、愛理はそう言った。すっごくかっこいい。 「なぜ?」 清水が頬杖をついたままそう聞いた。・・・なんでそう態度悪くなるんだ。 舐められちゃってるよ・・・腹立つなぁ。 「理由は、わが文芸部がわが校最初の部活動であり、 創部80年を越える伝統ある部の部室であるからです。部室には過去80年分の、 文芸部が発行してきた雑誌や冊子が大切に保管されており、それは同時に わが校の歴史と呼べるからです。私たち文芸部は、新しい雑誌を発行することも その活動ではありますが、それらの古い資料を保管していくということも重要な活動内容です。 それは顧問の保田先生からの言いつけでもあり、教えでもあります。 また、あの部室は幾度となく改修こそ行われていますが、創部時から部屋の構造も場所もずっと一緒です。 先輩方もたびたびいらっしゃいますし、あの場所がなくなってしまうと大変に困ってしまうのです。」 ・・・え、創部80年?そんなの知らないよ?保管が活動?初耳・・・ 部室の場所も変わってないってそれほんと?・・・ウソ?そんなわけないだろうけど・・・。愛理ってすごいかも・・・。 「・・・でも、たった3人しかいない部にあの部屋はもったいないのでは? 過去の雑誌等も場所を移せばいいんだし、先輩方には3人しか部員を集められなかった 自分たちが悪いのだと謝ればいいでしょう。 あの部屋は広くはないけれど過去の資料やあなたたちの机とイスを持ち出せば空間はそう狭くはない。・・・どう?」

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