統帥治論

概要

『統帥治論』とは、ラドリザン1310年に上梓された思想書。軍事・政治・外交を主な題材とする。作者はゲイル・アレイア

ユーラスティ大陸では当時最も複雑な政治体制を擁していたガルデス共和国の軍人・外交官として名を馳せ、構成各国の思惑が複雑に交錯するアレシア連邦議会の実情をも詳しく知るゲイル・アレイアが、自らの経験・知識と、国内政治の混迷に翻弄されたことの余波で、一再ならず軍事的劣勢を余儀なくされたガルデス共和国時代の反省を元に作成した思想書。
本書は全12章で構成されており、そのカバーする範囲は統治体制・政治学から兵站に至るまで多岐にわたっているが、その根底に流れる思想は下記の5点に集約されている。

  1. 「国民に対する奉仕者」としての為政者。如何なる統治体制においても為政者は国民に対する責務を果たす必要があることを強調するなど、政治家としての心得を説く内容となっている。
  2. 戦争・外交の分析に対する夢想的・理想論的アプローチの排除。テキストの中では、戦争を過度に美化したり、また逆に極度の反戦思想に陥ったりすることを厳しく戒めている。また、戦争によってもたらされる内政・外交両面における影響を細かく述べ、開戦の判断に対する熟慮を求めている。
  3. 将軍・為政者に対する「部下の命を預かる」という意識の強調。
  4. 諜報・防諜活動の重要性。
  5. 一貫した指揮系統と後方支援体制の必要性。特に、本書では指揮系統の明確性が重視されている。

備考

  • ラドリザンの思想史において、本書は軍事学と政治学の橋渡し的存在とされており、政治学・軍事学の両面において高く評価されている。
  • 本書は兵站など戦略レベルでの記述が多数を占める反面、同時代の軍事理論を扱った著作として双璧を成す『天風兵書』などと比較すると、戦術レベルの記載が少ないという特徴がある。特に、戦場での駆け引きに関する記載が殆ど存在しない。
    • これはゲイル・アレイアの問題意識が政治・外交・戦略に対して向けられていたせいであり、彼が戦術家として無能だったというわけではない。
    • このような経緯があるためか、後世の人々が兵法や軍事理論を学ぶ際には、本書と『天風兵書』など戦術中心の兵法書が併読されていた。

関連項目


最終更新:2011年04月22日 16:24