概要
戦闘に至るまでの背景
ガライザラは、元々国というより騎馬民族の集まりであった。それぞれの民族に長が存在し、更にそれを束ねる長の中の長が居る。
後世、史書をまとめる際に、便宜上「ガライザラ国王」をつけなくてはならないというのなら、その地位にいるのは、数日前までは
バシュタルクであったが、
ケルティアの戦いにより、その座は
シオンに移り渡った。
だが、
ガライザラ内乱により戦いが相次ぎ、勝者である筈のシオンが率いる兵力は、既に全盛期の半数にも満たなかった。
そこに突如現れた
ヴァン・フレイ国の正規軍、そして、その軍勢の中にいたかつての親友。
自分達の、騎馬民族の誇りを賭けた戦いは、その全てが
聖なる魔女の掌の上で踊らされていただけだった事を、この時シオンは認めざるを得なかった。
両軍の戦力
戦闘経緯
ヴァン・フレイ国軍は、決して
ガライザラを過小評価してはいない、むしろ、
フェローラの戦いや
リオナ海の戦いで手痛い目に会い、その実力を高く買っていた。だからこそ、
ガライザラ内乱を影で操り、その力を削いだ。
その結果、既に戦いとは呼べないほど圧倒的な兵力差がうまれたが、ヴァン・フレイ国軍は決して手を抜くことなく、更なる策を弄した。
それは、餌付けした
魔物を一列に並べ、一斉に敵陣に突撃させるという戦法であった。
ミッドガルツ、
ミュー部隊から解き放たれた魔物は、一直線にガライザラ陣へ突撃、冷静に対処すれば、決して倒せない突進ではないが、見た目のインパクトは兵士達の士気をそぎ落とし、ガライザラ陣は蹂躙された。
騎馬民族としてのプライドまで踏みにじられたと、
イクルテイは突撃を仕掛けるが、
ゴトラス部隊で止められ、全身に矢を受けて絶命。
同時刻、かろうじて突撃する魔物を打ち払ったシオンだが、既に部隊とは呼べないほど壊滅した自軍を見ると、ヴァン・フレイ国本陣への特攻を決意する。
イクルテイ、シオン、そして数日前の
バシュタルク、自ら馬を駆っての敵本陣への特攻は、まさに騎馬民族最後の誇りでもあり、同時に、最後の輝きでもあった。
そのシオンの前に、
ティアナが立ちはだかる。
既に体力の限界まできていたシオンは、自分を討ち取って手柄にしろと語りかけるが、ティアナは手柄のためではなく、シオンの誇りの為に彼女を討ち取る。
戦いの結末
ガライザラにとっては、戦いすらも聖なる儀式であり、自らの誇りを賭して戦い続けた。だが、常に近代戦を行ってきた
ヴァン・フレイ国の前では、その彼らの誇りを賭けた戦いさえも「新戦術の実験台」であった。
ヴァン・フレイ国が試した「餌付けした魔物の突撃」は、興奮した魔物がそのまま命令を無視して四方に散った為、これ以後使われることはなかった。
ガライザラの各部族は、この戦いの後ヴァン・フレイ国に毎年貢物を差し出す事を誓い、その支配下となった。
そして、謁見の際にその才知を見出された
グラーバルは、人質という名目でヴァン・フレイ国に送られ、後に将軍の中に並ぶこととなる。
この戦いは、純粋に生きたシオンたちのプライドをあまりにも土足で踏み潰し(特に実験として行われた魔物突撃戦法)た為、後世のみならず、当時においても一部から批難された。
だが、それに対して
ガラは、「なら、相手にあわせて正面から戦って、死なずに済んだ味方の兵を殺し、その家族を泣かしてもいいというのか」と、冷静に答えたという。
最終更新:2011年04月22日 17:54