概要
戦闘に至るまでの背景
両軍の戦力
進軍
もともと
ガルシーダ国王
ガルは、
ヴァーグリア国に対して劣等感を持っていた。4年まえに開始された突然の
ヴァーグリア国侵攻は、
周辺魔族との戦いに苦心していた今なら勝てるという彼1人の思い込みからはじまったものであり、国民の多くが望んだものではなかった。
そのため、今回の
ヴァーグリア国の本気の反撃に、国内でも早い段階での降伏を希望する者も多く、外からの攻撃に呼応して、内部から首都を混乱させるという密通も届いた。
罠の警戒をしつつも進軍する
ヴァーグリア国軍。このときの彼らの状況をあらわすものとして、
ロリスザードの言葉がある。「ガルシーダ国の軍勢を恐れた事は一度も無い、俺が恐れるのは本国と前線の距離だ、ガルシーダ国の領土が僻地かつ自然が作り出した要塞だということは皆も承知のはずだ。入り口に蓋をされない様に進軍しなければならない、それも迅速かつ的確に最短距離を通ってガルシーダ国の首都を抑えなければならない」
戦場で負けるとは思っていないが、僻地の
ガルシーダ国で退路を塞がれる恐怖を考えると、慎重にならざるを得ない、という心境であった。これらを考慮して下された結論は、軍勢を2手に分け、先発部隊と後発部隊に時間差を付けることで、例え敵地に孤立してもすぐさま救援ができる態勢を敷くという独創性はないものの無難なものとなり、全軍は国境で
ガルシーダ国軍とにらみ合っていた駐屯部隊と合流し、一気に国境を突破した。
前衛部隊には
ロリスザード、
エリス、
バイソン、その他突撃力に定評のある猛将が数多く選ばれ兵力は4万、後衛部隊には
マルタナ、
シーバズル、
ザークを中心に総兵力3万に及ぶ部隊が選ばれた。
しかし、何度も軍議を重ねた
ヴァーグリア国とは対照に、
ガルシーダ国は既に統一性を欠き、互いに連動しない散漫な攻撃を仕掛けるだけで、各個撃破されていく。
最初のうちはその行動も、自分達を領土深く誘い込ませる罠だと思っていた
ヴァーグリア国軍だが、その実体は、ただ半狂乱になってそれぞれの判断で襲撃を仕掛けているだけに過ぎず、組織的な反抗は、モントリア平原での戦いの一度のみであった。
モントリアの戦い
ガルシーダ国軍が、周辺の部隊を集結させ、唯一組織的に対決したのが、モントリア平原での戦いである。
開戦当初は、地形に慣れた
ガルシーダ軍が、地の利を得ながらも更に防衛に徹して
ヴァーグリア国軍の前衛をしなやかにかわして迎え撃った為、焦った
ヴァーグリア国軍の一部隊が軍列を乱して先行し壊滅した。
勢いに乗った
ガルシーダ軍が、防衛から一気に攻撃に転じて一度は
ヴァーグリア国軍の前衛を後退させるまで押し込むが、後衛部隊を指揮する
マルタナと
シーバズルの機転により、3万の軍勢から選ばれた8千の兵士が別働隊となって密かに
ガルシーダ陣の後方へ移動、前屈みとなり前方しか視野が届かなくなった彼らに後方より予期せぬ一撃を食らわせる。
この攻撃で陣が崩壊した
ガルシーダ軍は、このまま押し込むべきか後退するべきかを決め損ね、立ち直った
ヴァーグリア国前衛部隊の反撃を受けて攻守が交代することとなる。
更に、前衛の中でも温存されていた
エリス、
バイソンを中心とした部隊までもが投入され、
ガルシーダ軍は完全に崩壊する。
ガルシーダ攻略戦
モントリアの戦いで主力部隊が壊滅した
ガルシーダ国軍は、天然の要塞である本国に全軍を集結させ篭城の構えを見せた。
軍議の結果、ひとまず難攻不落のガルシーダ本城は忘れ、周囲の城を一気に陥落させ、本城を孤立させていく。そのうち城から自暴自棄になって討って出てくればよい、出てこなくても最終的に手足をもがれた本城を落とすのは難しくは無いという結論に達した。
こうして全軍は三路に別れると、それぞれのルートから周囲の城に次々と侵攻、二ヶ月近くの戦いで39の砦と8の城が陥落し、ガルシーダ城の喉元にまでその剣は到達しようとしていた。
12月13日、首都ガルシーダは最終決戦の戦場となった。
山脈に囲まれた首都は、その高地に肥沃な農地を持ち、自給自足もある程度可能な要塞であった。しかし、これに対して
ロリスザードは僅かな手勢を率いて背後の山脈にある一本の道を遮断した。
それは、決して軍勢は入り込めないが、少人数単位ならかろうじて通れる山脈から別国へと通じる細い道であり、その道こそ「塩の道」であった。
いかに自給自足が可能な完璧な要害とはいえ、
ガルシーダ国は山国である。塩だけは必ず他国から仕入れていると睨んでいた
ロリスザードは、決戦の傍ら、
シーナにその道を探す密命を与えていた。
山脈を探り、一本の滝の裏側の狭い洞窟が背後の山脈への抜け道だという事を見つけ出した
シーナからの報告を聞いた
ロリスザードは、数人の手勢を率いて塩の輸送部隊を襲い、その道に火薬を仕掛けて爆破し、崩れてきた岩によって完全に封鎖する。
塩が無ければ人は生きていけない。塩の道が遮断された事を知った
ガルシーダ国は、このまま疲弊を待つより、兵士たちの力が残っているうちに篭城を捨てて討ってでるしかなかった。
もはや死兵となって
ヴァーグリア国本陣へ特攻を仕掛けた所を、冷静に待ち構えた数段階の防衛陣に誘い込まれて完膚なきまでに叩かれ、敗残軍となり城へ戻ってきたところを蜂起した反乱部隊によって帰り道を遮断される。
こうして、ついに建国以来敵兵を一人も入れたことのない城へ、
ヴァーグリア国軍は侵入する事となった。
この国の王は、代々「ガル」の名を継いでいた為、この時も過去の王と同じ
ガルという名であった。
自国の民衆に対しては決して暴君ではなかったが、戦争を起こしながら敗れた者の末路として、戦後
ヴァーグリア、
ガルシーダ両国の公式な歴史書に「独裁者」としてのみ名を残された彼の野望は、自ら部屋の中に放った炎に飲み込まれてその身と共に散っていった。
合わせ鏡
戦史の多くは中立視点で書かれている。しかし、元々この戦争は
ガルシーダ国が一方的に仕掛けた戦いであった為、多くの史書が、
ヴァーグリア国視点で描いている。
しかし、吟遊詩人が歌う「
合わせ鏡」という代表的な唄がある。
これは、
ガルシーダ国の
ガラハ、
リスティという、将軍ではない兵卒の視点から、侵略してくる
ヴァーグリア国軍の恐怖を描いた物語となっている。
戦いの結末
首都陥落によって戦いは終わりを告げ、
ガルシーダ国は
ヴァーグリア国が派遣した宰相と、独裁者の息子を王として納めさせる事で国は生まれ変わった。
この王は傀儡に過ぎず、実権は
ヴァーグリア国の派遣した宰相が握っていたが、思いのほか良識と能力を持ち、真に王と名乗るべき人物であるとわかると、これより数年後、
ヴァーグリア国から派遣された宰相と治安維持部隊は帰国し、
ガルシーダ国をこれまで同様国家として認めて貿易も再開させることとなる。
4年にわたる
ガルシーダ国との戦争は、こうして終わりを遂げることとなった。
最終更新:2013年08月27日 20:34