概要
戦闘に至るまでの背景
パレスは、宗教国家を名乗っているが、その規模は帝国や共和国の一都市と同規模程度である。にも関わらず、三つ巴の戦いにおいて、多大な影響を与えていた。
特に
クルーディア帝国にとっては、もっとも動いてほしくないタイミングに必ず動かれ、僅かな兵力で帝国の動きを封じるという、厄介な存在であった。
これらはひとえに
ホワン個人の智謀・能力によるところが大きく、逆を言えば、
ホワン1人を倒せば、
パレスは無力化することが可能であった。
ラドリザン6893年、
ランドヴァルク作戦における
サムルトンの裏切りで、大敗北を喫した
クルーディア帝国だが、健在振りを内外に示さなければならなかった。
フェリサスを中心として軍勢は再編され、来るべき
サムルトンとの戦いに備えていたが、それと同時に
グラスシードに
パレス征伐を命じた。
こうして、
グラスシードは、
ホワンとの決戦に赴く。
帝国内における1部隊である
グラスシードだけでも、
ホワンと兵力的には互角であった。しかし、
パレスは自然の要害に守られた土地で、正面から攻め込むには圧倒的に不利であった。
そこで、軍師
アレスの提案により、
パレスの背後に存在した牙の谷を強襲する案が実行されることとなった。
これに成功すれば、無防備な背後からの攻撃が可能であったが、そもそも「防衛の必要がない」といわれるほど断崖絶壁な牙の谷を、もっとも危険な冬に進軍するという無謀な策に、諸将も最初は不安を口にした。また、谷を越えたとしても、すぐに
ホワンが討てなければ、退路のない敵の本拠地で孤立するという危険な賭けでもあったが、
グラスシードはこの案を採用した。
陽動の部隊を派遣して、
パレスの目をそちらに向けさせてから、
グラスシード部隊は密かに出陣した。
両軍の戦力
牙の谷越え
グラスシード隊は牙の谷を強行した。目もくらむ渓谷と谷底からの突風に足を滑らせて落ちる者も少なくはなかったが、道なき道に橋を造り、山を切り崩しながら行われた20日間の行軍によって、
グラスシードは
パレスの横腹をつくことに成功する。
時を同じくして、
ムゥナが
ガスタルを護衛に引きつれ、
パレスに来訪していた。
クルーディア帝国に大勝利を収めた
ムゥナであったが、焦りから裏切りのタイミングを早まってしまい、帝国軍を全滅させるには至らず、勝利に酔いしれる間もなく、すぐに次の手を打たねばならなかった。
そのためには
パレスの助力は必須であったが、
ホワンはここにきて
サムルトンの要請に首を縦に振らなかった為、
ムゥナが直談判に来ていた。
なかなか姿を現さない
ホワンに苛立つ
ムゥナだが、そこに、
クルーディア帝国軍が、現れる筈のない背後から突然現れたという急報が届くこととなる。
パレス強襲
グラスシード部隊は、牙の谷を越えると、すぐさま強襲作戦を開始した。
まずは守備部隊に突撃を仕掛けるが、そこには
ムゥナの護衛として随伴していた
ガスタルの姿もあった。
ムゥナは、自分はこの事を本国に伝えると言い、
ガスタルを残して撤退。これは、
ガスタルを囮にして自分だけ脱出するための命令であり、
ガスタルは、自分を討ち取った
グラスシード部隊ではなく、
ムゥナへの恨みを叫びながら戦死した。
戦いの結末
シルフィは、重傷をおったものの、命に別状はなかった。
パレスは、宗教国家であり、教祖
ホワン個人のカリスマによってまとめられいた。その
ホワンの戦死により、悲観して泣き叫ぶ者、右往左往する者、教祖の仇を討ち殉教しようとする者と、大混乱に陥るが、国境で陽動をしていた部隊が、
パレスの混乱に乗じて正面から進軍、元々の兵力差もあり、
パレスは
クルーディア帝国に併合され、その姿を消す。
旧
パレス領の南半分は
グラスシードに与えられ、彼の帝国での地位は一気に上昇する。
他の都市を占領した場合と違い、
パレスの民衆とは信徒である為、捕虜として帝都へ輸送され、帰化する者のみ帝国民となった。公式記録には残されていないが、殉教した者も少なくなかったという。
この後、帝国から移民した人々が住み、完全に
クルーディア帝国の一領土となる。
最終更新:2013年04月13日 02:29