概要
戦闘に至るまでの背景
だが、これで戦乱が終わる……という訳ではなかった。
ベルザフィリス国は、
ディグド、
ギザイアを中心とした和平派と呼ばれる派閥が出来つつあった。彼らは
ロー・レアルス国を滅ぼさず、このまま均衡状態を維持して外交によって平和的に二国共存をもって戦乱の時代を終わらせるという主張を持っていた。
それに対して二国の共存は、いずれ禍根を作るかもしれないという理由から、あくまでも
ベルザフィリス国の天下統一にこだわる
ガイヴェルド、
ディルセア、
バイアラスを中心とした交戦派が正面より対立する。
710年の秋、この年から徐々にこの地方に寒波が襲い始める。
各地で不作が続き、食料を失った
ロー・レアルス領土の村人が、国境を越えて
ベルザフィリス国領土の村を襲った。これを鎮圧するべく
ベルザフィリス国の国境守備部隊が動き、
ロー・レアルス領土の村を攻め滅ぼす。
これに怒った部隊が動き始め、両国は上層部の意向を無視して臨戦態勢となる。
こうなると、最早時代の流れが彼らを動かしていると自らを納得させ、両国の交戦派が動き出し、
ベルザフィリス国軍は
ロー・レアルス国軍を完全に沈黙させる最後の決戦へと出陣した。
迎え撃つ
ロー・レアルス国は、かつて
ルディック国の首都であり、この大陸を一度は統治していた
ルディック城を最後の拠点として、全軍を集結させた。
ここに、
ルディックの陣が幕を開ける。
両軍の戦力
前哨戦
1月21日 北東区の戦斗
1月22日、
ルディック城内で軍議が開かれた。
この時、
ルーの元に内通を促す使者がやってきたが、誰もそのような流言に乗ることはなかった。出身も目的も異なり、中にはかつて敵同士だった者もいる、にもかかわらず、
将星将軍は驚くほど協調がとれていた。
それが、滅びの美学を完成させようとする将たちの本能だったのかどうかはわからない。
軍議では、城外に機動部隊を配置し、極地的な勝利を重ねていくことで戦線を混乱させ、相手の部隊間に隙を作らせるという結論に達した。その機動部隊に志願したのが
グローリヴァスであり、
ルーがこれを援護する事となる。
レイディックが戦死した
シャリアル遠征のとき、この二人は包囲する側とされる側であった、にも関わらず、乱世が成せる技か、二人の間には友情が生まれていた。 だが、
ルー自身敵の出現場所によって臨機応変に動かなければならず、
グローリヴァスを援護することは不可能だと悟っていた。
グローリヴァスもそれを承知の上で死を覚悟しての志願であった。
1月23日 南区の戦斗
1月27日 ルディック城落城
1月27日、両軍は最後の激突を繰り広げた。
だがこの戦いは、
ガイヴェルドの最後の戦いにしてはあまり出来のよいものではなかった。
それは、もはや特攻して、華々しい散り花を咲かす道しか残されていない
ロー・レアルス国軍と、勝利後の恩賞を考え始め、最後の最後まできたこの局面で戦死するのはあまりにも惜しいと考える
ベルザフィリス国軍の、決戦に対する姿勢の違いの現れであった。
ルーは7人の影武者を駆使して神出鬼没の戦いを見せ、
ベルザフィリス国軍を混乱させると、
ガイヴェルド本陣に突撃、本陣の旗は倒れ、
ガイヴェルド自身馬に乗り剣を振るう所まで追い詰められていた。
戦いながら日付は変わり1月28日、
シーヴァス、
レニィラ、
シルヴァス、
バイアラス部隊の総攻撃により
ルディック城は炎に包まれていた。
城内の決戦で、
ベルザウス、
シリナ、
ガルダ、
ドゥバは戦死し、
ファクト、
ゾルデスク、
ノードゥは城を包む炎の中に身を投げた。
城が燃えるのを見た
ルーは、闇夜に紛れて一旦姿を消すと、早朝に
ガイヴェルド本陣に向かって特攻を仕掛けた。
この時、
ルーと共に駆け抜けた騎馬は108騎。一人、また一人と討たれる中、ひたすら彼らは
ガイヴェルド本陣を目指した。この突撃に対して
ベルザフィリス国軍は、ほとんど防衛が機能しなかった。それは
ルディック城も落ち、天下統一が成し遂げた今、勝利の美酒を飲みかける寸前で何故命を捨てなければならないのかという自己保身のためである。
たった一人、この突撃を本気で食い止めようとしていた
リディも、腕を斬られて負傷、この傷は思ったより深く、彼女は二度と槍をもてなくなる。
しかし、神憑りな突撃も、たった108人ではやがて限界が訪れた。同日昼過ぎ、
ルーの戦死をもって、ルディックの戦いは完全に終わりを遂げた。
戦いの結末
ベルザフィリスによって統一されたこの土地にようやく平穏な日々が訪れた。
ガイヴェルドは、
ルディック城を再建すると、そこを新首都(後に帝都)とし、各地に功績のあった将軍を領主として派遣した。
かつて
ルディック帝国が、領地を各区に別けたのとは異なり、独自の法体勢などは一切認めず、あくまでも
ベルザフィリス国法のみで統一し、領主としてその土地の発展を任されることとなった将軍達。
だが、
ディルセアは新領土の授与を辞退し、隠居を申し出た。
ガイヴェルドもこれを止める事なく、すんなりと承諾。こうして
ディルセアは、全ての肩書きを捨てて再び旅人となり歴史の表舞台から姿を消す。
この頃、天下を統一した諸将は新たな領土でそれぞれの乱世の後始末に入っていた。
バイアラスは、家族や、一兵卒時代から苦楽を共にした友人達と栄華を楽しみ、
リディは
アレスの墓を作り、武器を捨てると相変わらずの無口さで治世に務めた。
ギザイアは、完全に互いを憎む関係になっていた
シーヴァスにあえて不毛の土地を与えると、彼が反乱せざるをえないところまで追い詰めて、後顧の憂いなく彼を討ち取った。
ディグドは、かつて
シャリアル国に仕えていた頃の領土を貰うと、妻子を殺した
メスローの一族を見つけ出し、報復として皆殺しとした。
ラゴベザスは、
デイロードの墓参りをすませると、
デイロードの遺児を連れて隠居。故郷の村へと戻り、そこで昔の様に畑を耕す生活を送った。
ヴィルガスは、ようやく手にした平穏な日々を楽しみ、治世に務め、
レニィラは養子を貰い、子育てという新たな戦いに四苦八苦しながら領土を統治していった。
蜉蝣時代は終わりを告げ、大きな戦いは終わったが、この後、
国崩れの乱が勃発し、更に大寒波の到来により、あれだけの戦乱を経て、ようやく手に入れたこの地を、自ら捨てなければならない日がくることとなる。
最終更新:2011年12月16日 04:25