一月の別離酒

概要

一月の別離酒とは、アルファ706年、ロードレア国の主要な将軍が、ベルザフィリス国、ロー・レアルス国に亡命した事件。
ロードレア国滅亡の原因の一つとして知られる。

ヴェリアの堕落

ヴェリアの大遠征は、彼にとって生まれて始めての真の敗北であった。大遠征に失敗したロードレア国軍は、軍としての統率も失ったまま本国へ戻ってゆく。
ヴェリアは、アレス戦死を聞いた日から酒量が目に見えて増え、酒に逃避しはじめたのは明らかだが、2月7日に街角で一人の少女と出会う。
その少女こそ、皮肉にもヴェリアがかつてロードレア国国主を巡って争ったデイズの娘で、ヴェリアの策により親を失い孤児となっていたルフィである。
この後、ヴェリアは酒とルフィに溺れ、彼女の言うことを真に受けて実行することとなる。
ルフィは最初からデイズの旧臣、またはルフィ自身の意思により、ヴェリアを惑わすために意図的に近づいたという説もある。その説の真意はわからないが、ルフィが稀代の悪女として歴史に名を残すことだけは紛れもない事実である。

一月の別離酒

706年1月1日、例年通り新年の宴が行われていたが、この時ヴェリアは、これまでの乱れた生活が祟って宴の最中体調を崩し、ルフィに寄り添われて席を立つ。
その姿を見たバイアラスは、一つの決意を胸に秘め、1月4日、自宅にシルヴァスグローリヴァスリディザロといった個人的に友誼のある有力将軍を招いた。表向きは新年の宴であったが、これが後に「一月の別離酒」と呼ばれる事件となる。

この席でバイアラスは、ロードレア国を脱出する事を皆に打ち上げた。
バイアラスは天下統一よりも、自分を一兵卒から引き上げてくれたラディアの敵討ちしか興味を持っていなかった。今のロードレア国、堕落していくヴェリアの下では、それはもう望めない。それならば、ロッド国と戦う為にベルザフィリス国へ行くと彼は述べた。
しばしの沈黙の後、グローリヴァスが最初に同意し、それにシルヴァスザロも続いた。最後まで沈黙を守ったリディは、バイアラスの前に膝を付くと、この瞬間より自分はバイアラス直属の隠密になると告げた。
隠密は、国ではなく個人に忠誠を誓う。アレス死後、自らの主を持たなかったリディは、バイアラスを新たなる主とした。
こうして4人は家族と自分に忠誠を誓う部下を連れて国境を突破するが、この裏切りに怒ったヴェリアが討伐隊を派遣、盲目の娘を守るために一行からはぐれたグローリヴァスのみロー・レアルス国へ向かうが、バイアラスたちは、1月26日にベルザフィリス国へ到着する。

この頃ディルセアは、ルーディアの眼帯を貰い、二代目独眼竜という名を継いでいた。ルーディアは、志を息子ガイヴェルドに、名を軍師ディルセアに継がせ、自らは隠居生活を送っていた。
そのルーディアが、バイアラスリディを突如自宅に招く。降伏を認められ、ベルザフィリス国の将となっていた彼らだが、何しろ彼らほどの人材である。「降伏は偽りであり、ヴェリアの奇策」を警戒する者は多く、未だ猜疑の目で見られる日々を送っていた。
互いの存在だけが唯一の支えとなっていたバイアラスリディは、この招きに応じてルーディアの元へと赴く。
僅かな供と山奥の館に静かに暮らしていたルーディアは、二人を手料理もてなすと、昔話に花を添えた。直接関わったことはなくとも、同じ時代を生きた者同士、バルディゴス討伐連合軍からディースの戦いまで、それぞれ違う立場で、その戦いをどう見ていたのか、話は盛り上がっていた。
ルーディアの影響力はいまだ絶大であり、「ルーディアが認めたのならば…」と、諸将も、次々とバイアラス達への警戒を解いた。

なお、この時ルーディアは、もしガイヴェルドに将来皇帝となるべき器があれば彼を補佐してほしい、しかし権力という波に飲み込まれる様な器なら、息子を殺してほしいと二人に告げたというが、これは後世の創作説もある。

それぞれの理由

彼らが亡命を決意した理由は、以下の様に推測されている。
  • バイアラス
  • リディ
    • この頃、ルフィの矛先は、リディにも向けられていた。彼女の無表情さがルフィを苛立たせ、私用といえる不条理な命令を何度もされていた。彼女自身はそれに耐え続けていたが、バイアラスが見かねて、何度か守っていた。その為、ルフィバイアラスも敵視、このままでは彼に危害が及ぶと考えたリディは、バイアラスの直属隠密になることで、「貴方が国を出るのなら、無条件で自分もついていく」という状況を作り出した。
  • グローリヴァス
  • ザロ
  • シルヴァス
    • ルフィが国内で作りつつあった派閥と、シルヴァス達武断派は、水面下で激しい派閥争いを行っていた。ルフィによる武断派の追い落としは日に日に増し、彼自身の立場も苦しくなっていた。

忠臣の亡命

蜉蝣戦記、というより、この時代のロンドーナ大陸東部における特徴として、「元々同じ国だったものが分裂している」、という考えがある。
その為、「国」を名乗っておきながら、「文化も歴史も違う他国」ではなく、「同じ国の別の区」という考えが、この大陸の人々の心の底に根付いていた。
バルドの国替えがその一例で、国替えといいながら、移動したのはボルゾックを代表とする上の人間だけであり、民衆はそのまま動くことがなく、民からすれば、あくまでも「上司が入れ替わった」という感覚に近かったという。
また、サリーアフィリスといった国主が、簡単に国を託しているのも、彼らにとっては他国に併合されるというより、同じ国内における「都市合併」に近い感覚があった為である。

ベルザフィリス国は、ルディック帝国の区ではなかったものの、この思想は大陸そのものに根付いていた為、彼らの亡命は、他の時代、他の大陸でいう「亡命」とは、若干意味合いが異なる。

関連項目






最終更新:2011年12月14日 19:16