メファイザスの逆遠征

概要

メファイザスの逆遠征とは、705年9月、ヴェリアの大遠征を撃退したロー・レアルス国軍が、逆にロードレア国へ進軍した戦いだが、当のメファイザス自身は、様々な理由から(後述)この遠征に乗り気ではなく、「対峙するだけで、決戦なく終了」という戦いになっている。

ヴェリアの堕落

ヴェリアの大遠征は、彼にとって生まれて始めての真の敗北であった。大遠征に失敗したロードレア国軍は、軍としての統率も失ったまま本国へ戻ってゆく。
ロー・レアルス国軍の追撃、更には略奪が行われた占領地での民衆たちの反乱によって、撤退していくロードレア国軍のいくつかの部隊は壊滅したものの、大敗の割には比較的かなりの部隊が無事本国へ撤退することができた。
だが、ヴェリアは、本国でアレス戦死の報告を聞くと、呆然としたまましばらく諸将の呼びかけに答える事はなかったという。
天才軍師、そしてロードレア国国主としてのヴェリアの人生は、この瞬間終わりを告げた。
この後も、彼の肉体は生き続けるのだが、それまでのヴェリアとはもはや別人と成り下がった彼に多くの歴史家は失望し、小説ではこの遠征でヴェリア自身も戦死し、ここで物語を最終回とするものも多くみられた。

蜉蝣戦記の著者であるアルディアも、これ以後のヴェリアには冷たい評価を下し、ヴェリアレイディックの出会いの章を破り捨て、彼はロードレア国を滅ぼす元凶とすら指摘した。
常に中立のペンを持ち続けた彼女にしては、珍しく感情のこもった文章であるが、後年アルディア自身も別の書籍で、そこに関しては後悔を以下の様に述べている。
「まだ若き頃のヴェリアとであった時、この男が歴史を動かしてくれるという高揚感と期待感を感じていた。それが裏切られた気持ちで、思わず感情を走らせてしまった……」と。実際、これ以後は再び「中立」に徹した文章に戻っている。

そのヴェリアは、アレス戦死を聞いた日から酒量が目に見えて増え、酒に逃避しはじめたのは明らかだが、2月7日に街角で一人の少女と出会う。
その少女こそ、皮肉にもヴェリアがかつてロードレア国国主を巡って争ったデイズの娘で、ヴェリアの策により親を失い孤児となっていたルフィである。
驚くほどアレスに似た彼女とヴェリアの出会い、それが単なる恋愛であれば、胸をときめかす運命の出会いとして美談で済んだであろう。しかし、これこそが、ロードレア国を滅ぼす出会いと呼ばれる禁断の邂逅であった。
この後、ヴェリアは酒とルフィに溺れ、彼女の言うことを真に受けて実行することとなる。
だが、この二人が偶然出会ったのなら、話が少々出来すぎている気がする。
そこで、後世に囁かされたのが「復讐説」である。
ルフィは最初からデイズの旧臣、またはルフィ自身の意思により、ヴェリアを惑わすために意図的に近づいたという説である。
その説の真偽はわからないが、ルフィが稀代の悪女として歴史に名を残すことだけは紛れもない事実である。

メファイザスの逆遠征

ロードレア国軍を完全に撃退したロー・レアルス国軍。
今度はメファイザスが、ロードレア国への大規模な逆侵攻を行うため、連日軍議を重ねていた。
しかし、6月からはじまった軍議は、一向に結論の出ないまま夏を迎える。メファイザス自身が出兵に乗り気ではなかったためである。何度話し合いを重ねても、これだけの大規模な遠征を実行に移すことはできなかった。それは、自分が動けばベルザフィリス国も呼応して動くことがわかっていた為である、ヴェリアはそれを見据えて、ベルザフィリスに自分の力を見せつけ、留守に動けば真の罠が動くという疑心暗鬼にまで落とし、備えを万全にしてから大遠征を実行に移した。
しかし、今のメファイザスには、そこまでベルザフィリス国を封じ込める自信はなかった。
遠征を行う構想力、実行力、そしてベルザフィリス国に対する威圧において、自分がヴェリアに勝てないことをメファイザスは悟ったのである。
戦場においては勝利したものの、戦略構想においては自分はまだヴェリアに勝っていない事を自覚した彼は、勝利の余勢に乗る諸将の士気を挫かない為、一応遠征の決意はするが、その軍事目的は、ヴェリアの大遠征で奪われた都市の奪還と、国境の威圧に留まった。

9月に出陣したロー・レアルス国軍の遠征は、メファイザスゼノスガイアスガルダゾルデスクドゥバドルトンレザリア、そしてルーという錚々たる陣営で総兵力51200、対するロードレア国軍は国境に三方向から軍勢を集め、レイアスメネヴァノースイルの総兵力14800兵。
しかし、メファイザスの想像通り、ここでベルザフィリス国軍が横槍を入れて動き出す。ロードレア国軍、ロー・レアルス国軍がにらみ合っている間にディルセアヴィルガスラゴベザスグレシアの総兵力50000の軍勢が一気にロー・レアルス国へ侵入する。これを覚悟していたメファイザスは、11月18日にルーを総指揮官とした別働隊を裂いてベルザフィリス国軍にあたらせる。
この時点で、既にメファイザスが、ルーの才能を高く買っていたことがうかがえる。

その一方、ここでロードレア国軍が一気に本隊を投入すれば、ロー・レアルス国軍を撃退し、ベルザフィリス国軍と呼応しての侵攻も可能な状況になる。急ぎバイアラスをはじめとする諸将がヴェリアに出陣を促す。
しかし、11月26日に行われた軍議でその案は却下された。
軍議の席に突如現れたルフィが「ベルザフィリス国とロー・レアルス国が戦い始めたのだから、相打ちして果てるまで見守りましょう」と言い、ヴェリアはもはや覇気を失い空ろとなった目で「アレスならそう言う、今は動かないことだ」と言い、軍議を終わらせた。
バイアラスは去っていく二人を見て、呆然としていた。そして、アレスがそんなことを言うはずがないと洩らすと、静かに軍議の席を立ったという。
この時、ルフィの可愛がっていた愛鳥が風邪をひいていた為、ヴェリアを外へ出したくなかったルフィがその様な発言をしたと言われている。
国主がこの有様では、兵士達の軍規も失われていた。ロードレア国軍兵士は、大遠征の後遺症から、日に日に積もる不信感と不安により徐々に暴走がはじまり、かつての統率のとれた動きは既になく、自国領土ですら兵士達の略奪行為が見られ始めていた。

ベルザフィリス国軍は、ロー・レアルス国軍が思いのほか早く自分たちに軍勢を差し向けてきた事から、結局にらみ合いとなり大きな戦いはなく、この三つ巴の国境決戦は、「対峙したまま決戦なく引き上げる」という、不思議な終わり方を迎えた。

戦いの結末

決戦なく終わった戦いだが、この後、一月の別離酒が起きる等、ロードレア国は、戦った結果ではなく、戦わなかった結果として、内部から崩壊していくこととなる。


最終更新:2011年12月15日 01:24