ロードレアの内乱

概要

ロードレアの内乱とは、蜉蝣時代の戦乱の中で、アルファ698年5月から7月に渡って繰り広げられた、レイディックの後継を巡って行われたロードレア国内の戦いである。

戦闘に至るまでの背景


▲698年5月における勢力図

レイディックの横死により、ロードレア国は、空席となった国主の座を巡っての戦いが始まった。
この戦いに名乗りを上げたのが軍師ヴェリアを筆頭に、ボルゴスデイズミルフィー、そして本人が名乗り出た訳ではないものの、自動的にその立場に置かれたアルヴァドスであった。
また、この時点ではフィリスは明確な意思表示をしなかったものの、独自に兵を集めていた事は確かである。
ヴェリアはまずは軍勢をまとめて東へと向かった。その先に立ちはだかるボルゴスを討伐するためである。
この時代、兵士は民からの交代式の徴兵制で、普段から各地に駐屯し、大掛かりな遠征でない限り基本的に将軍のみが動き、到着した先の駐屯兵を使用する事が一般的であった。しかしこの内乱により誰が敵で誰が味方か判らない状況となり、各将軍は自らがその時点で率いていた兵士をそのまま移動させることとなっていた。

ロードレアの内乱~ボルゴス討伐戦

攻撃側 守備側

ロードレア国軍
軍勢
ロードレア国軍
総兵力47500 兵力 総兵力24600
ヴェリア 総指揮 ボルゴス
アレス 軍師
主要参戦者

ヴェリア

アレス

リディ

ファルザス

グローリヴァス

ボルゴス

ファクト




ナッシュ

バドス


ボルゴスは、レイディックの初陣の頃から既に戦歴を重ねていた剛将であり、流れ者のヴェリアアレスを快く思わず、レイディック以外の主に仕えるつもりはないと今回の旗揚げを決意。元々人望がなかったわけでもなく、周辺の城を従えることに成功し、一大勢力を築いていた。
これに対してヴェリアは、アレスに命じてボルゴスへの降伏勧告文を書かせた。勿論それを聞くことがない事を承知の上である。その上でボルゴスを挑発する文面を書かせ、諸将の前で怒りくるってその手紙を破る姿を見せれば、先の見える者がこちらに内応の意志を示すかもしれないという策である。
この策は、失敗しても手紙一枚を失うだけという、ヴェリア側にとって被害のないものであったが、城内の将ファクトが内応に応じるという最高の結果を出している。

5月12日早朝、霧で視界が全く見えないこの日を待って、ヴェリア軍はボルゴスが立て篭もる城へ総攻撃を仕掛けた。
東門に集中する騎馬部隊の轟音に、城兵は弓隊を集結させて矢の雨を浴びせる。
この攻撃に騎馬部隊は一向に城に近づいてこないが、あまりにも動きがなさ過ぎることに不審に思った防衛部隊が霧の中目を凝らすと、そこにいたのは、蹄の音を立てているだけの兵士のいない馬のみの部隊が、一列に並んでいるだけであった。
攻撃軍の本隊は、西門に姿を現し、囮にまんまとはめられた守備部隊は、急ぎ西門へ移動する。
防衛部隊が漸く西門に到着した時、東門から「馬だけの部隊の背後から真の部隊が姿を現し、東門が攻撃されています」という防衛軍を翻弄させる伝令が届く。
完全に守備部隊は手玉に取られ、真の攻撃部隊が東門を総攻撃、城門を突破して城内へとなだれ込む。
ボルゴスは自ら槍を振るって奮戦するが、全身に矢を受けて絶命した。

アルヴァドス包囲網



ヴェリアボルゴスを一瞬にして討ち取った事は、他の将の計算を根底から崩した。
激しい戦いを繰り広げていたミルフィーデイズは、決着をつけてからアルヴァドス討伐に向かい、レイディックの仇を討ったという大義名分の上で国主の座を狙うつもりであったが、ボルゴスが倒れた事で二人は進路を変え、直接アルヴァドスへと向かった。
そのアルヴァドスにしても、ミルフィーデイズが戦っている間にデイズの拠点を攻め落とそうとしていた計算が崩れ、四方から追われる身となり、持ち兵1万で急ぎ陣を敷いた。

5月15日、バイアラス部隊がヴェリア部隊に合流、兵力は増加され、稀代の名将バイアラスヴェリアの旗の下に馳せ参じた。
しかし、当のヴェリアは、その報告にも上の空で深刻な考え事を抱えていた。
どんな勇将、智将を揃えても、人の力ではどうしようもないものがある。それが「時間」であった。アルヴァドスを討つという共通の目的を持つヴェリアミルフィーデイズの3将だが、ミルフィーデイズアルヴァドスまで数日の距離なのに対して、ロッド国国境に配備されていたヴェリアは、全速力で東へ向かっても彼らには追いつけない。アルヴァドス自身に1万ほどの兵力しかいない為、一度戦端を切れば、それがミルフィーであろうとデイズであろうと、アルヴァドスが討ち取られるのは目に見えていた。
ヴェリアがこの状況を打開する策を考え出し、歓喜の声と共に諸将を見た時、ようやく目の前にいたバイアラスに気付いたと言うから、彼がいかに焦っていたかが伺える。
ヴェリアが考え出した策とは、アルヴァドスに密かに策を与え、ミルフィーデイズに勝利させることであった。
敵に、それもただの敵ではない、仇であるアルヴァドスにたとえ一時期とはいえ、勝利させる策を授ける。途方もない作戦ではあったが、他に手もなく、結局この作戦を実行することとなった。
問題は、アルヴァドスヴェリアからの策を素直に信じる訳がなく、それを承知で赴き、アルヴァドスを信じさせる程の使者が必要な事であった。
この使者に名乗り出たのはバドスであった。彼は決死の覚悟をもって単身アルヴァドスの元へと駆けた。

5月26日、ヴェリアからの使者に驚きを隠せないアルヴァドスは、自らその使者バドスと面会した。彼の口上は「盟友アルヴァドス殿の危機を救うべく、ヴェリア殿の奇策を持って来た」というものであった。盟友と呼ばれたアルヴァドスは、ヴェリアレイディックの死でいよいよ発狂したのかと笑い飛ばすが、バドスの真剣な口上は続けられた。戦乱の時代、状況から敵と味方は日々変わっていくもの、ヴェリアアルヴァドスと同盟を結びたいと言い、それでもアルヴァドスが信じないと、今度は「ヴェリアが本気になれば貴様如き一日で葬れる、それをしないのは、貴様が手を結ぶに値する盟友と思っているからではないか」と怒号を浴びせる。バドスは時に下手に、時に高圧的にアルヴァドスを説得した。しかしあと一押しが足りないと感じた彼は、ついに最後の手にでる。
彼は、自らの愛剣で自分を貫き、その血まみれの手でヴェリアからの書状をアルヴァドスに手渡した。
死に行く者は嘘をつかない。生者が勝手に生み出したこの幻想を最大限に利用して、彼は自分の説得に最後の押しをつけてアルヴァドスを信じ込ませた。そして、その書状を受け取ったアルヴァドスは、この策を用いればミルフィーデイズに勝てると叫び、完全にヴェリアの策を信じ込んでいた。

ロードレアの内乱~エルグライの戦い

攻撃側 守備側

ロードレア国軍
軍勢
ロードレア国軍
総兵力39500 兵力 総兵力12100
デイズ 総指揮 ミルフィー
軍師
主要参戦者

デイズ





ミルフィー






5月28日、アルヴァドスを討つために進軍を続けるデイズ軍、その背後をミルフィーが狙い、デイズの支配下となっていた城を次々と陥落させる。
だが、それはデイズにとってそれほどの損害ではなかった。元々アルヴァドスを討つまでの被害は、その後の見返りで数倍になって戻ってくる先行投資のようなものである。デイズは、寧ろミルフィーが後方の城に気をとられている間にアルヴァドスに到着する機会が訪れたと進軍を止めなかった。
だが、レイアル砦に続いて、エルグライ城が陥落したと聞いた時、デイズの顔色が変わった。
エルグライ城は、デイズ軍の補給基地であり、彼の妻子もそこにいた。ミルフィーが城を狙う事はわかっていたため、あえて進行ルートから大きく逸れていたエルグライ城を拠点としていたのだ。何故ミルフィーは、この一刻を争う時にあえて侵攻ルートから外れたエルグライ城を攻撃したのか、デイズには理解できなかった。
それは、ヴェリアアルヴァドスに授けた策の序章であった。ミルフィーエルグライ城を攻撃し、デイズが引き返してミルフィーと一戦交える様にこちらで仕掛けるので、両軍が共倒れした時、アルヴァドスが横槍を突くことで勝利を得よ……と。
では、ヴェリア自身は、何故デイズエルグライ城に補給拠点を構えたのか判ったのか……それは、692年、カルディスを討った後に行われたレイディックの東征、この戦いでヴェリア部隊として従軍し、ヴェリア流の補給術を叩き込まれたのがデイズだった為、デイズがどこの城を拠点にするか、師匠であるヴェリアには、手に取るようにわかったのである。

デイズは、急ぎエルグライ城へと駆け戻り、ミルフィーとにらみ合った。
そして6月4日、総攻撃を命じ両軍は戦闘状態となる。
しかし、戦局が不利となったミルフィーは、城に火をつけると、デイズの妻を殺し、食料を焼き払って自らも自決した。
この時、デイズの娘ルフィは、業火の中から脱出に成功する。ヴェリアの策により家族を失ったこの時15歳のルフィが、後に歴史の表舞台に立ち、ヴェリアに大きく関わるというのは運命の皮肉としか言い様がない。
ミルフィーを討ち取ったものの、6月6日にアルヴァドス軍の奇襲を背後から受けたデイズの部隊も壊滅、デイズもここに戦死を遂げる。
ミルフィーデイズの残存部隊を吸収したアルヴァドス部隊は、そこで漸くヴェリアに利用されていた事に気付き、ヴェリアと決着をつけるべく陣を構えた。

ロードレアの内乱~フィリスの乱

攻撃側 守備側

ロードレア国軍
軍勢
ロードレア国軍
総兵力53500 兵力 総兵力21000
ヴェリア 総指揮 フィリス
アレス 軍師
主要参戦者

ヴェリア

アレス

リディ

ファルザス

グローリヴァス

フィリス





ナッシュ

バイアラス

ミルフィーデイズは共倒れとなり、アルヴァドスと対峙するのはヴェリアだけとなっていた。その彼と合流するべくフィリス部隊が接近してくる。
フィリス部隊の駐屯していた土地は、元々彼が国主をしていた時代のゴアル国の領土であり、その気になればヴェリアボルゴスと戦うよりも前に合流することができた。にもかかわらずフィリスは、ヴェリア部隊と合流せず、平行しながら距離を保ち進軍を続け、この時期にきて合流を申し出た。
並の将ならば、単にこの後継者争いに誰が勝つか日和見を決め込み、大勢が決した為ヴェリアに助力しにきた……で説明がつくのだが、フィリスレイディックの幼少の頃からの知り合いで、ロードレア国に降ってからは代々の将と同じか、それ以上の待遇を持って迎え入れられている。レイディックとの信頼関係も深く、彼の仇討ちなら何をおいても馳せ参じる筈であった。
これらの行動に一抹の不安を感じたヴェリアは、リディを偵察に向かわせ、その上でバイアラスを先発させると、アレスグローリヴァスファルザス部隊にフィリス部隊を包囲する形で移動する様に命じた。
さすがに疑いの度が過ぎるのではと諸将は語るが、同じロードレア国の将でありながら、誰を信じればいいのかわからない上、兵士の補充ができないという特殊な状況もあって、ヴェリアは慎重であった。

リディが偵察から戻り、フィリス陣形がウロボロスの陣になっていると聞かされたヴェリア。合流が目的なら、部隊を散開させる必要などない筈。フィリスの真意を読み取ったヴェリアバイアラス部隊に突撃準備をとらせ、ファルザスナッシュに包囲網を固めさせたその瞬間、フィリス部隊は全軍をヴェリア本陣に向けて突撃させた。
だが、既に準備万端であったヴェリア軍によってフィリスは撃退され、この戦いで彼も戦死する。
このフィリスの突然の反乱は、蜉蝣時代の未だ解き明かされていない謎として現在でも歴史学者の間で数多くの説が唱えられている。
代表的なのは、純粋に国主の座を狙った「野望説」、元々ゴアル国の国主であった彼なら、抱いても不思議ではない野望であり、彼もまたレイディック以外の者を主と認めなかったのかもしれない。他にもヴェリアレイディックの後を継ぐ器があるかどうかを試した「試練説」、レイディックの後を追った「殉死説」、さらにはヴェリアが有力なフィリスを陥れ、その兵力だけを吸収したかった「ヴェリア陰謀説」などがある。
しかし、野望説はフィリスにしては計画が杜撰、試練説はそこまでする必要があったのか、殉死説は自分一人が自害すればよいものを兵士を巻き込むのはフィリスらしくない、陰謀説はこの時点でヴェリアがそこまでフィリスに警戒する必要性を感じない……と、どの説も最後の説得力に欠け、結局の所真相は歴史の闇へと葬られていく。

ロードレアの内乱~ルースの戦い

攻撃側 守備側

ロードレア国軍
軍勢
ロードレア国軍
総兵力58700 兵力 総兵力28700
ヴェリア 総指揮 アルヴァドス
アレス 軍師
主要参戦者

ヴェリア

アレス

リディ

ファルザス

グローリヴァス

アルヴァドス





ナッシュ

バイアラス


フィリスを討ち、その部隊を吸収したヴェリア軍。デイズを討ち、その部隊を吸収したアルヴァドス軍。しかし、その戦力差は明らかにヴェリア軍に比があった。
アルヴァドスは、陣形をワイバーンの陣に編成し、二重の防衛陣を敷くが、それを取り囲む様にヴェリア軍は配備された。

兵力でも、率いる将の人材でも戦う前から決着はついていた。
6月20日、両軍は真正面からぶつかるが、アルヴァドスの祈りにも似た決意は天に届く事もなく、崩れるべくして守備陣は崩れ、倒されるべくしてアルヴァドス本陣の旗は倒された。
夕刻には勝負がつき、アルヴァドスは僅かな兵と共に戦場から離脱。配下の将軍に、この先に馬が用意してあると言われ、そこへ向かうが、そこで待ち伏せていた部下に撫で斬りにされた。
自らの栄達と見返りを期待して反乱に加担しておきながら、こんな結末だったことにより、アルヴァドスは部下からも見捨てられたのである。

レイディックの仇討ちは終わり、ヴェリアレイディックの葬儀を壮大に執り行い、7月15日、正式にロードレア国国主の地位に就いた。
新体制により、アレスロードレア国軍師の座につき、南伐総指揮官にバイアラス、西伐総指揮官にシルヴァス、国政総指揮官にミリフォン
そして、ファルザスグローリヴァスメネヴァ、成長著しいリディ……新世代を担う将もヴェリア陣営の中核に据えられた。(フィリスの息子アルガードは、父の反乱を恥じて一時平民となるが、アレスの説得により2年後将軍に復帰する)
こうしてロードレア国は、新たな局面を迎えようとしていた。






最終更新:2011年12月17日 02:51