レザベリアスの戦い

概要

レザベリアスの戦いとは、蜉蝣時代の戦乱の中で、アルファ692年8月、ロードレア国軍とロー・レアルス国軍の間に起きた戦いである。
レイディックカルディスの決着をつけた最後の決戦として知られている。

戦闘に至るまでの背景


▲692年8月における勢力図

軍師現る

ソフィスの戦死から数日、国境を巡っての混乱は、レイディックラディアを派遣したことにより、ようやく落ち着きを取り戻していた。
そんな中、レイディックは町で笛を嗜む少女と出会う。
レイディックは、その少女にソフィスへの鎮魂歌を頼み、少女もこれに応じて一曲披露した。レイディックは礼として彼女を城に招く。純粋に鎮魂の唄に対しての礼という意味もあったが、この時代、各地を旅する吟遊詩人は貴重な情報源として各国にて重宝されていた事もあり、情報と引き換えに食事に招くことは別段珍しいことではなかった。
少女の名はアレス。戦災孤児を集めて私塾を開いていた学者エザリアンの弟子であった。
エザリアンの元で共同生活を送っていた子供たちは、成長すると自立するためにそれぞれ旅に出る。アレスもその例に倣って各地を旅していた所であった。
会話を続けるうちに、彼女の才気に気付き始めたレイディックは、しばらくアレスを逗留させ、話し込んでいた。そんな中、バルド国4万の軍勢がロードレア国首都を強襲して領土を二分させ、ロー・レアルス国と挟撃しようと軍勢を派遣する。その報告を聞いた時、レイディックは無意識のうちにアレスに意見を求めた。これは単に会話のきっかけとして、聞いてみた程度に過ぎなかったのだが、彼女は「バルド国の軍勢がゼノグリア山地に差し掛かる時、大雨と霧に襲われるでしょう。そこを奇襲すれば撃退が可能です」と答えた。
アレスは居ながらにして既に周囲の状況と天候を把握していた。おそらくは同じエザリアンの私塾で育った隠密と共同で動き連絡をとりあい、彼女独自の情報網を持っていたのだろうが、個人の力で把握できる情報は限られている。この時期にバルド国に情報網を集中させていたのは間違いなくアレスの指示であったと思われる。
はたしてアレスが予期した通り、ゼノグリア山地に差し掛かったバルド国軍は、大雨と霧で一旦行軍を止めるが、そこをアリガル部隊に襲われて散々に打ち破られた。(ゼノグリアの戦い
これをきっかけにレイディックアレスを正式に軍師として招こうとするが、アレスは自分より優れた男がいると、同じ私塾出身のヴェリアを推薦し、自らは副軍師の地位に留まった。
この報告を聞いた時、ロー・レアルス国最前線に駐屯していた軍師メファイザスは、本国で不穏な動きを見せる一派の掃討を口実に、ロードレア国との決戦に向けて続々と軍勢が終結する中、一人最前線から後方へ移動する。
メファイザスエザリアン私塾の一人で、ヴェリアの才能を知り尽くしていた。その男が今度の戦いでロードレア国の軍師として出陣する。それが意味する結末を予期したメファイザスは、「次の手」をうつべく動き出していた。
一方ロードレア国では、7月23日にロッド国からギザイアが使者としてロードレア国に赴く。同盟を更に強固にするため、ロッド国国主リヴァイルシアレイディックの妹シルフィーナの婚約話をまとめるためである。
この時点ではギザイアは単なる使者であるが、後にこの男こそロードレア国を傾ける存在になるとは知る由もなかった。
こうして8月3日に両国をあげた壮大な華燭の宴が行われるが、その一方、ロー・レアルス国がついに動き始めた。

蜉蝣戦記の著者にして、後世ではなく、リアルタイムに彼らと接してきたアルディアは、アレスとの出会いは詳細に書き残しているが、ヴェリアとの出会いについては簡潔に済ませている。
当初はアレスとの出会いに匹敵するだけのページが出会い編として続いていたのに、そのページが原本から丸ごと破り捨てられていることが確認できる。
おそらく、晩年のヴェリアの堕落に失望したアルディアが、自身の書いた本から、ヴェリアとの出会いに関するページを破り捨てたと推測される。
その為、レイディックヴェリアの出会いは、その後の物語によって様々な形が存在する。

両軍の戦力

攻撃側 守備側

ロードレア国軍
軍勢
ロー・レアルス国軍
総兵力112500 兵力 総兵力184300
レイディック 総指揮 カルディス
ヴェリア 軍師 ドルトン
主要参戦者

レイディック

ヴェリア

アレス

ラディア

アリガル

カルディス
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ガイアス

ゼノス

ゾイ

ドゥバ

バイアラス

メディ
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エルジレア

ボルゴス

アルヴァドス
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ザウグ
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レザリア
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ワイヴァ
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リヴァドル

ボゥル

フィリス
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ノース

レイアス

ザルス

ロゥズ

前哨戦


レザベリアス平原を中心に、北にエルザイア山脈、南にローザメス山地、ムゥルの森を挟んで、ラディアが駐屯するガルヴァウド城、そして国境最前線にエルザイア城。これがレザベリアスの戦い前哨戦の舞台となる。

8月9日、カルディスが18万の軍勢を率いてエルザイア城に接近すると、この城を任されていたザルスと、副将ロゥズは、戦わずして降伏を決意。エルザイア城を拠点とするはずだったロードレア国軍は、急遽ガルヴァウド城を拠点に変更、この城に駐屯するラディアと合流した。
こうして両軍はレザベリアス平原を挟んでにらみ合い、ここに謀略においての前哨戦が始まった。
まず仕掛けたのはヴェリアロードレア国から寝返ったザルスは、実は密命をうけていて、決戦時にはロー・レアルス国軍を挟み撃ちする策だという噂がロー・レアルス国軍の陣中に流れた。その様な重要な策があっさりと洩れるのも不思議な話であり、カルディスは即座にこれが敵の謀略と看破、この時点でヴェリアの名前すら知らないカルディスは、レイディックの策と信じ込み、「ソフィスを失ったから、策の質が落ちた」と呟き、これを逆手にとって罠を仕掛けた。
今度はロードレア国軍陣地に噂が流れる。ザルスは挟み撃ちの策が発覚してカルディスに処刑され、副将ロゥズは命からがら脱出、レイディックの元に帰参する。
勿論、ザルスは処刑などされておらず、ロゥズの帰参もカルディスからの埋伏の毒であった。それを看破しているヴェリアは、更に次の段階へと赴く。お互いが相手の策を見破った上で、だまされたふりをして相手を策に落とそうとするだましあいが続く。
ヴェリアは次に、レイアス将軍を呼ぶと、書状を持たせてカルディスの元へ派遣する。その書状はロゥズからの書状という形で、決戦時における反乱の打ち合わせについてだった。一度はこれを偽書状と見破ったカルディスだが、レイアスの説得によって心が傾き始める。その瞬間を狙って絶妙な書状がカルディスの元に届く、それはレイディックから降伏を促した書状であった。これに怒り狂ったカルディスは、レイアスの説得を鵜呑みにする。

こうして虚虚実実の謀略戦が続く中、ラディアが自分の副将バイアラスを将軍に昇格させる様レイディックに進言する。
これまで無名だったバイアラスがいかなる将か興味をもったレイディックに、ラディアはこの2ヶ月前に行われた小競り合いの話を聞かせた。
6月20日、ロー・レアルス国軍は、ガイアスゼノスが2万5千の兵を率いてエルザイア城へ迫っていた。僅か3千しか守備兵がいなかったザルスは、ラディアに2万という援軍を要求、ガルヴァウド城のほぼ全軍というこの援軍要請に他の将軍は反対するが、ラディアは自ら軍勢を率いてエルザイア城へ出陣。隙をついてガルヴァウド城へ向かうゼノス別働部隊に奇襲を仕掛けて撃退すると、エルザイア城防衛では自ら最前線に立ち指揮を振るった。この戦いで流れ矢を受けて負傷したラディアを守って城内まで運んだのが、一兵卒だったバイアラスだった。
この働きでラディアは彼を副将に抜擢、翌日には1千の兵を率いて敵を翻弄させ、援軍をほぼ無傷のままガルヴァウド城へ帰還させた。
決戦を前にそれほどの将を手に入れたレイディックは幸運であった。

話は戻って8月21日、もはや用済みとなったロゥズに、ヴェリアは最後の仕上げを仕掛ける。
ロゥズロー・レアルス国から共につれて来た兵を率いて最前線へ送られる。帰参を証明するため、最前線を偵察すればよいとだけヴェリアに伝えられたロゥズは、言われるがまま行軍する。しかしそこには猛将ゼノスが控えていた。ゼノスの哨戒に見つかったロゥズは、瞬く間に討たれる。ロー・レアルス国からつれて来た兵をロー・レアルス国に討たせ、裏切り者ロゥズを処断し、またカルディスに、ロードレア国軍はうかつな行動をしているという印象を与えるヴェリアの策であった。
こうして決戦の8月22日を迎えようとしていた……

戦闘経緯 1日目


レザベリアス平原を舞台に、配置された両軍。
ヴェリアは、アレスにムゥルの森に火を付ける様に指示する。火を避けてレザベリアス平原に移動したところを待ち伏せする為である。しかし、真の目的は更に次の段階であった。この火攻めによる誘き出し作戦は、カルディスに見破られる事を見据えていた。ヴェリアは謀略による前哨戦の段階から、とにかくカルディスに「自分は相手の策をことごとく見破っている」と思わせ、カルディスが自分こそ主導権を握っていると思わせた形で戦いを進めていく様に仕向けていた。見破られることを前提にしながら、簡単すぎても疑念を招く、カルディスの器を測った上での、この絶妙のさじ加減をヴェリアは見事にやり遂げていた。

8月22日、アレスが望む風がなかなか吹かず、予定より遅れながらも、火攻め部隊がムゥルの森に火をつけ、この炎がロー・レアルス国軍の後方を襲う。カルディスは瞬時にして待ち伏せを見抜き、ゼノス部隊に逆に突撃を命じた。この突撃で待ち伏せ部隊を「演じていた」アリガル部隊が予定通り演技の後退、これに呼応してロードレア国軍が全軍守備を固める。必要以上の深追いを避けたゼノスだが、初戦の戦果は十分、カルディスも全軍を押し上げ、ロードレア国軍は逆に徐々に後退、ローザメナス山地へと布陣していく。

戦闘経緯 2日目


互いの布陣は大きくその配置を変えていた。一言で言うならばロードレア国軍は、ローザメナス山地まで押し込まれ、ロー・レアルス国軍は追い詰めたという形となる。しかし、地形はロードレア国軍がはるかに優勢な上、全てはヴェリアの仕掛けた罠であったことに、勝ちに乗っていたロー・レアルス国軍はまだ気づいていない。
決戦2日目の朝、カルディスゾイに先陣を任せると、彼をロードレア本陣に、ゼノス部隊をラディア部隊へと出陣させた。
この戦いでは、ゼノスが自ら名乗り出て、ラディアに一騎討ちを要求する、2ヶ月前の戦いで敗れた遺恨を晴らすための独断行動だが、この時代、名乗りを上げての一騎討ちは、合戦の華だったこともあり、特に珍しい光景ではなかった。ゼノスの猛攻には、さすがのラディアも支えきれず、勝負はあったかと思われたが、これをバイアラスが救出。ゼノスは自らの武勇に絶対の自信を持ち、二人同時に相手をすると宣言、この壮絶な戦いを合図に各地で交戦が開始される。一騎討ちを終え、それぞれの軍勢指揮に戻ったラディアバイアラスゼノスも今度は軍勢をもって正面から激突。ヴェリアの策により、ラディアバイアラス部隊は後退し、追撃してきたゼノスを石の下敷きにして打ち破る。ラディアは、「軍師の策でなければこんな戦いは絶対したくなかった」とつぶやいたという。
しかし、ゼノス本人は不死身とも見紛う生命力でこの罠を掻い潜り、バイアラスがこれを食い止める為踏みとどまり、両軍は泥沼の戦いへともつれ込む。(ゼノスはこの戦いで一時生死不明となり、メファイザスの政変後に再び姿を現すこととなる)

一方で、ゾイを中心とした主力部隊は、アリガル部隊を突破、ボルゴス部隊も突破して、ロードレア国軍を追い詰めていく。更にリヴァドル部隊から「ロードレア国軍本陣で混乱発生」という報告を受けたカルディスは、これこそ内通の約束をしていたロゥズの働きだと確信。ゾイリヴァドル部隊に総攻撃を命じる。更にこれが罠だったとしても対処できる様に、レザリア部隊、ドルトン部隊の進軍速度を落とさせる周到さも見せる。
ロードレア国軍本陣に一気に迫るゾイだが、ここまで守りに徹していたロードレア国軍が突如として反撃、ゾイ部隊を完全に包囲して壊滅させる。この戦いで、建国時代から苦楽を共にしたゾイを失ったカルディスは、彼にしては珍しく取り乱し、戦死の報告を信じようとしなかった。
しかし、ロードレア国軍が更に後退したと聞かされると、今度は復讐の表情を見せ、ゾイの弔いも兼ねた追撃を命じる。

戦闘経緯 6日目

これまでの動から、一転して静の戦いが始まる。
山頂に陣を構えたロードレア国軍は、完全に守りの体勢をとり、カルディスも容易に手が出せなくなった。
そんな中、山頂から出陣の合図である鬨の声が上がり、すぐさま迎撃の準備をとるロー・レアルス国軍。しかし一向にロードレア国軍は動かない。鬨の声の発生位置を探ろうにも、山々に木霊した声は、どこから発せられているのか見当もつかず、結局ロー・レアルス国軍は姿の見えない敵を警戒したまま時間だけが過ぎる。
こんなことが三日三晩続き、山頂から見下ろされたロー・レアルス国軍は徐々に疲労を蓄積していった。将兵の疲れに、決戦を焦ったカルディスは、自ら敵陣を視察、山の地形を見事に利用した布陣から、正面からの攻撃を断念すると、ローザメナス山脈の名前の由来ともなっているローザメナス山に目をつけた。
8月27日、篝火、キャンプ、旗を残したまま、全軍を3ルートにわけ、闇夜に乗じて密かに移動したカルディスだが、見渡しのいい高地に到着したカルディスは、そこで信じられないものを見せられる事となる。
大木を使って作られた「墓」であり、そこにはカルディスの名が刻まれていた。

その瞬間、カルディスは全てを悟った、すべては自分をここにおびき寄せる策だったことに……そして、草むらから次々と姿を現す伏兵が、一斉に火矢を放った。
8月27日深夜、カルディスはこの地で完全包囲され、炎の中で壮絶な戦死を遂げた。
この戦いの特徴は、両軍あわせて数十万という大合戦だったにも関わらず、ヴェリアは袋の中の石からたった一つの玉を掴むかの様に、カルディス本隊だけを最初からターゲットとしていた。
ロー・レアルス国はカルディス個人の強烈な個性によって保たれた部分がある。彼さえ討てば、あとはロー・レアルス国は内紛を起こし弱体するというのがヴェリアの狙いであった。
巨大な国を正面から討つより分裂させて各個撃破する。次の段階を見据えたヴェリアの策であった。
だが、この策だけは、もう一人の「先を見据えた男」メファイザスによって実現を妨げられる事となる。

戦いの結末

この後、レイディックの東征により、ロー・レアルス国の北東部は完全に切り取られた。
カルディス戦死により混乱が続いていたロー・レアルス国だが、北東部を切り捨てる事により、新たな国境最前線を建て直し、ロードレア国軍をそれ以上は侵入させず、ようやく落ち着きを取り戻した。
次にロー・レアルス国の新たなる国主探しが始まる。カルディスの叔父ブウゲイドが候補として上がる。叔父とはいっても、養子に出されていた彼は、カルディスと直接の面識もなく、最近ではカルディスの叔父という立場すら、捏造だったのではないかと言われている。
ともかく、彼を国主として担ぎ出し傀儡として自らが国を操ろうとしていた一派がいた事は確かである。その中心人物がゾルドリィドであったが、ブウゲイドを招いたまさにその日、突如城に潜入した兵士達によって彼らは討ち取られる。
そこに姿を現したのは、カルディスの軍師を務めたメファイザスであった。
彼は色めき立つ他の将を制して、自らがロー・レアルス国を継ぐと宣言する。ブウゲイドを平民として一応の礼節をもって軟禁。既に多くの将に根回しがされていたメファイザスのクーデターは思いのほか簡単に成功することとなる。

翌年の1月3日には、レザベリアスの戦いで戦死したと思われていたゼノスが奇跡の生還を果たし、メファイザスの元へ姿を現す。
カルディス信望者でもあった彼は、メファイザスの裏切りともとれるこの行為を許せるはずもなく、早速彼に面談する。だがその問いを待つより早くメファイザスは、彼に逆に問いかけた。カルディスの望みは一族の繁栄か、それとも乱世の終結か、一族の繁栄を目指すなら血族であるブウゲイドを立てて私を討つがよい。乱世の終結ならば私と共にカルディスの遺志を継ぐがよい……と。
そう言われると、ゼノスは熟慮の末、メファイザスの旗下に入るしかなかった。まさに相手の性格を熟慮した上のメファイザスの説得術であった。
そもそも乱世では血統より実力が重視されている。メファイザスが国主となることを望む将が多かった事も事実であった。

最終更新:2011年12月04日 23:29