『鹿島茂の書評大全 和物篇』

鹿島茂 『鹿島茂の書評大全 和物篇』 毎日新聞社 2007.8

1998年から毎日新聞、東京人ほかに寄稿した書評から、日本に関係するものを100編選び出して1巻にしたもの。

1.人物を深く知る 伝記
坪内祐三 『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り』 漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代明治の青春を描く群像列伝 県立
砂川幸雄 大倉喜八郎の豪快なる生涯 日本資本主義の父を再評価する 県立 9F 市立 大学旧
アレキサンダー・マッケイ トーマス・グラバー伝 幕末冒険商人の実像に迫る(グラバーと同郷のスコットランド人研究者の手による) 県立 8F人文科学289.3ク 市立
内藤初穂 星の王子の影とかたちと 息子が語る名訳者の子ども心 県立 7階壁書架910.2ナ 市立
×大崎正ニ 遙かなる人間風景 かつて商社マンは侍だった(元大倉商事駐在員)
猪瀬直樹 『ピカレスク』 太宰治伝 太宰の暗部を解明する決定版評伝 県立 8F郷土A910.2タ 市立 大学太宰913.6D49
出口裕弘 太宰治 変身譚 語り手としての太宰の本質(ロマネスク、お伽草子、女生徒など) 県立 8F郷土A910.2タ 市立 大学太宰910.28D49d
猪瀬直樹 マガジン青春譜 大宅壮一と川端康成の野心(雑誌投稿から) 県立 7F日本文学イノ 市立 大学913.6I56
岡本太郎 芸術と青春 批評家、岡本太郎が語る一平とかの子 6FYBオカ 7FBオカ
井上荒野 ひどい感じ 父・井上光晴 人生も小説化した小説家の一生 県立 7階壁書架910.2イ
佐野眞一 カリスマ 中内功とダイエーの戦後 戦後日本社会の欲望を描く 県立 9F 市立 大学335.13Sa66

2.時代と文化を読む 歴史一般
菅野覚明 神道の逆襲 講談社現代新書 日本人にとって神とは何か(神さまはお客さま) 県立 7FS170カ 市立 大学170Ka57
菅野覚明 『よみがえる武士道』 現代から武士道の本質を見る(秀作) 県立 市立 大学156Ka57 存在意義は、殺し合いにより戦いに勝つこと。
21世紀研究会編 色彩の世界地図 文春新書 日本の喪服は白だった(手元にあると便利) 7FS757.3シ
丹野康頼撰 医心方 巻二十八 房内篇 筑摩書房 男女の営みを説く古代中国健康法 県立 9F(禁帯) 市立
氏家幹人 大江戸残酷物語 洋泉社新書 暗部から探る江戸の真実(小さな傑作) 県立
西沢淳男 代官の日常生活 江戸の中間管理職 「お主も悪よのぉ」には訳がある 県立 市立
高橋敏 博徒の幕末維新 アウトローから見た幕末史 ちくま新書 (著作 『清水次郎長と幕末維新』 『東海遊侠伝』の世界 県立) 7FS384.3タ
小田部雄次 華族家の女性たち 女系歴史学から見る上層集団 県立 8F社会科学361.8オ 市立
頭山満 頭山満言志録 日本的英雄の必要条件とは 市立(民間右翼の大物として維新から敗戦に至る時代に重きをなした。夢野久作「頭山満先生」)
奥武則 大衆新聞と国民国家 新聞の拡販競争がもたらしたもの 県立 市立 大学新書庫070.21O54

3.二十世紀を検証する 近・現代史
×中田整一 盗聴 ニ・二六事件 二十枚の録音盤から浮かぶ謎(2.26の叛乱将校などの電話は盗聴・録音され、NHKに保存。)
西澤泰彦 満鉄 満州の巨人 都市計画から浮かぶ満鉄の実像(後藤新平の都市計画の再評価) 9F
佐野眞一 『阿片王』 満州の夜と霧 深い闇に溶ける阿片と女(甘粕正彦が指名した満州の中央銀行総裁) 県立 8F学289.1サ 市立289サ
野村進 『日本領サイパン島の一万日』 南洋開拓にかけた家族のドラマ(サイパンを見ると、日本の現代史が見えてくる) 9F 市立
×山本武利 日本兵捕虜は何をしゃべったか 文春新書 それは占領政策にも生かされた
清瀬一郎 秘録 東京裁判 ポツダム宣言全文を収録(東京裁判で東条英機の主任弁護士の回顧録。ポツダム宣言を読んでおくことが不可欠) 7FB329.6キ 市立
ロバート・D・エルドリッヂ 沖縄問題の起源 若きアメリカ人が解明する沖縄(ルーズベルト大統領の国務省無視が原因の一つ) 大学319.1E45
立花隆 『天皇と東大』 時代を変えた狂信的右翼の系譜
原武史 『鉄道ひとつばなし』 講談社現代新書 鉄道と天皇の不思議な関係 県立(1) 7FS686.2ハ1-3 市立(2,3)
渡辺裕 宝塚歌劇の変容と日本近代 タカラヅカはこうして作られた(阪急の小林一三の考えていた宝塚歌劇団のイメージ) 9F
中村喜和ほか編 異郷に生きるⅡ 来日ロシア人の足跡 忘れてはいけない人たちの記録(「異郷に生きる 来日ロシア人の足跡」の続編)県立(1-5) 8F社会科学334.5イ(4)
宮本又郎 日本の近代11 企業家たちの挑戦 待望久しい人間的経済史 8F人文科学210.6ニ11 大学335.13Mi77
ロバート・ホワイトティング 『東京アンダーワールド』 戦後日米関係の闇が浮き彫りに(六本木戦後盛り場成立史。ピカレスクの秀作) 県立 8F人文科学210.7ホ 市立

4.日本の今を掘り下げる 社会・経済
武田徹 流行人類学クロニクル この上なく貴重な時代の証言集(雑誌への連載 1988-1999) 県立 9F
中谷巖 『痛快!経済学』 働くことへの勇気が湧く(待望久しい経済学入門書) 県立 8F社会科学331ナ1,2 6FY233ナ
小倉昌男 福祉を変える経営 善意と奉仕にビジネス理念を 8F社会369.2オ 市立369オ
佐野眞一 『だれが「本」を殺すのか』 まず疑うべきは版元と編集者 県立 8F024.1サ1,2 市立 大学024.1Sa66.1
黒田信一 インド人 大東京をゆく! 東京こそアジア究極の混沌だ(モンテスキュー「ペルシャ人の手紙」のような社会風刺) 県立 7F旅を楽しむT291.3ク
猪瀬直樹 道路の権力 日本の暗部に横たわる構造(優れた民主主義教育教科書) 県立 8F自然科学514.0イ 市立 大学新書庫514.09I56
福本博文 ワンダーゾーン 自己啓発セミナー主催者の素顔 9F
岡田尊司『脳内汚染』 精神科医が説く現代の麻薬(コンピュータ・ゲームとインターネット(とりわけ、ネット・ゲーム)) 県立 8F493.9オ 市立 テレビゲームで脳内のドーパミンが増加。麻薬や覚醒剤もドーパミン増加。

5.物語世界に酔う 小説
曽野綾子 哀歌 極限の苦悩と悲しみを描く(渾身の力作。ルワンダ大量虐殺事件) 県立 7F日本文学ソノ1,2 市立
渡辺房男 『ゲルマン紙幣一億円』 通貨をめぐる官と民のだまし合い(歴史小説) 県立 7Fワタ 市立 明治政府が偽札排除のため最初の精巧な紙幣をドイツで印刷させたという小説。
野坂昭如 文壇 文壇バーという名の地獄巡り(文学が青春や野心の同義語であった時代) 県立 7階壁書架910.2ノ 市立
丸谷才一 輝く日の宮 再読をうながされる物語(ストーリーの次元の物語と、語りの次元での物語が別構造のため) 8F社会科学361.3ヤ

6.「知」のあり方を考える 思想・言葉・学問
×工藤進 日本語はどこから生まれたか ベスト新書 印欧語との類似説く画期的起源論(極東言語、印欧語同一起源仮説の検証)
宮崎市定 論語の新しい読み方 岩波現代文庫 論理的解釈で聖典を現代的に(宮崎の現代語訳論語が同じ文庫に。その斬新な解釈の根拠に答えるもの) 県立 8F人文科学123.8コ 市立 大学旧
吉本隆明 「私の「戦争論」」(8F社会科学319.8ヨ 7FB319.8ヨ) 「少年」(県立 9F) 「僕なら言うぞ!」(8F社会科学304ヨ) ゆるがない個の思想
吉本隆明 真贋 思想の巨人にブレはなし 県立 7F日本文学ヨシ 市立
内田樹 街場の現代思想 凡人の悩みに答える人生知とは(フランス現代思想を批判的に摂取) 7F日本文学ウチ 市立914.6ウ
浅羽通明 「アナーキズム」 県立 「ナショナリズム」  県立  ちくま新書 思想マニア以外のための思想(久しぶりに良い本)
×板倉聖宣 科学と科学教育の源流 原点は好奇心と見世物的演出(仮説実験授業の提唱者)
浅羽通明 野望としての教養 知のイデオロギーの崩壊後に(教養教育に携わる大学人に一読勧める) 9F 市立
竹内洋 『教養主義の没落』 農村的エートス終焉とともに(刻苦勉励的エートスの崩壊)
×小坂井敏晶 異邦人のまなざし 学問を志すすべての人に(主体の世界観や生き方を変える必要)

7.書物が愛でる 文芸評論・出版文化
向井敏 背たけにあわせて本を読む 絶妙の要約、書評という快楽 9F 大学019.9Mu24
丸谷才一 いろんな色のインクで 至芸の語り口、珠玉の書評集(知的で楽しい読書を愛するひとに) 9F
谷沢永一ほか いま大人に読ませたい本 書評における損得感情(面白くて、ためになる) 県立 9F
林望 恋の歌、恋の物語 日本古典を読む楽しみ 岩波ジュニア新書 エロスは日本古典から学べ(中高生に読ませたい) 県立 6FY29 市立
丸谷才一 闊歩する漱石 論述に隠れた巧みな仕掛け 県立 書庫 市立
荒俣宏 プロレタリア文学はものすごい 平凡社新書 掘り起こされるプロ文の本質(社会性の衣装をかぶせた出来損ないの志賀直哉にすぎない) 7FS910.2ア
三浦雅士 『青春の終焉』 ラディカリズムを総括する(本年屈指の問題作) 県立 8FA910.2ミ 市立 大学910.26Mi67
丸谷才一ほか 女の小説 えも言われぬ快楽に満ちた批評集 7階壁書架902.3マ 市立902マ
谷沢永一 世界の十大小説プラスワン 面白さを批評する 県立 7F書庫9F 市立
鴻巣友季子 明治大正 翻訳ワンダーランド 新潮新書 名作を生み日本語を変えた創意工夫 7FS910.2コ
宮田昇 戦後翻訳風雲録 縁の下の力持ちたちの人間喜劇 県立
工藤幸雄 『ぼくの翻訳人生』 中公新書 翻訳というかくも因果な仕事 7FS801.7ク 市立
西野嘉章 『装釘考』 豊穣たる日本の装丁文化を読む 県立 9F
斎藤美奈子 男性誌探訪 個衆的日本男性が支持するもの 県立
×文藝春秋編 文藝春秋漫画賞の47年 選ぶことは試されること
幸田弘子 朗読の楽しみ 声に出して初めてわかること 県立 9F 市立 大学809.4Ko16

8.アートの裏側を見る 美術・映画]]
高階秀爾ほか 二枚の絵 あらゆる学問に通じる方法論(二枚の名画の隠された意味を読み解く) 県立 9F 市立 大学大型720N75
増田彰久ほか 日本のステンドグラス ニッポン近代が生んだ独自の美 県立 8Fアート751.5マ
矢島新ほか 日本美術の発見者たち 眼の革命家たちによる日本美術史 県立 8Fアート702.1ニ 市立 大学新書庫702.1Y16
×谷川○編 イコノエロティシズム 澁澤龍彦美術論集 奇才による自分探しの美術論
田淵安一 西の眼 東の眼 ある日本人画家のマドレーヌ的記憶(世界的に評価の高い抽象画家) 県立
荒俣宏 『ヨコオ論タダノリ』 畸人が綴る画霊の秘密 県立
福富太郎 描かれた女の謎 アート・キャバレー○集奇談 絵画探偵は女と謎が好き 市立
糸井恵 消えた名画を探して バブルはじけて倉庫会社喜ぶ 9F 市立
中村公彦 『映画美術に賭けた男』 えっ、これもセットなの? 県立 9F
松島利行 『日活ロマンポルノ全史 名作・名優・名監督たち』 活動屋魂が傑作群を生んだ 県立
笠原和夫ほか 昭和の劇 映画脚本家 笠原和夫 脚本家の目を通して見える近代の実像 県立 7階壁書架912.7カ
×笠原和夫 映画はやくざなり 仁義なき戦い誕生の秘密(作劇マニュアル)

9.人生を楽しむ術 エッセイ
夏目漱石ほか 21世紀の日本人へ 廉価を自慢すべき本もある(晶文社シリーズ) 7F日本文学(5人)
×内田百閒 池内紀編 百閒随筆 講談社文芸文庫 百鬼先生の怪随筆を文庫で読む
山本夏彦 「社交界」たいがい 辞書にない真実をついた定義 9F7FBヤマ
山本夏彦 『一寸さきはヤミがいい』(県立 7Fヤマ) 『最後の波の音』(県立 青森 市立) 最高のモラリスト(人間観察家)が遺した名随筆
丸谷才一 思考のレッスン ものを考えることは最高の遊び(グッド・サイエンスの真髄) 県立 7F日本文学マル 大学Ma59914.6
堀江敏幸 おぱらばん 極上の葡萄酒のような味わい 県立 7F日本文学ホリ
四方田犬彦 星とともに走る 拡大を続ける永遠の高校生 9F
四方田犬彦 『ハイスクール1968』 永遠の高校生の高校時代 8F289.1ヨ 大学
斎藤忠徳 一瞬の光、一瞬の闇 東欧1970-1998 カメラと筆の二刀流から生まれた傑作(フォト・エッセイ) 市立
荒俣宏 荒俣宏コレクションⅡ(10巻) 集英社文庫 超弩級の知識とおもしろさの宝庫(5冊は文庫オリジナル) 9F(3巻)
みうらじゅん マイブームの塔 おもろうて、やがて悲しき関西論 9F
みうらじゅん 『LOVE』 miura jun rare tracks 1990‐2003 みうらじゅん 県立 青森 市立914.6ミ 「PEACE」(6FY91ミウ 市立) エロと愛と煩悩の奥深い考察(みうらじゅんの入門書。あえて自分の楽しみのために、書評に取り上げない本もある。みうらじゅんはこの典型)
近藤ようこ 後には脱兎の如し エッセイのおもしろさ、かくありき(漫画家のエッセイ。いしかわじゅんの「漫画の時間」、夏目房之介「マンガの力」、つげ義春・忠男の本など) 県立 7F日本文学コン 市立
水道橋博士 『博士の異常な健康』 レトリカルで科学的なお笑い 6FY745
中村うさぎ 『人生張ってます』 無頼な女たちと語る 赤裸々に語られる危険な女たち 6FYBナカ7FBナカ
中村うさぎ 穴があったら、落っこちたい! 女の自己実現を自ら体験 7FBナカ

2004年の時評文芸
5月
舞城王太郎 パッキャラ魔道(聴覚系。今月の一等賞) 県立 7F日本文学マイ
松井雪子 日曜農園(視覚系) 県立 7F日本文学マツ 市立913.6マツ
絲山秋子 勤労感謝の日(新鋭創作) 県立
吉田修一 ランドマーク 県立 7F日本文学ヨシ 市立913.6ヨシ
6月
十文字実香 狐寝入夢虜(フリーターの彷徨譚) 県立 7F日本文学シユ 市立913.6ジユ
モブ・ノリオ 介護入門(文学界新人賞。フリーターが介護) 県立 9F 市立
安達千夏 遠くからくる光(芥川賞にあと一歩) 県立 7F日本文学アタ
×楠見朋彦 ラジオアクティブ・ラブ
7月
大道珠貴 旬(今月一番の収穫) 県立 7F日本文学タイ
絲山秋子 小田切孝の言い分(舞城王太郎と並んで、芥川賞の最短距離)県立 7F日本文学イト
8月
×宮沢章夫 秋人の不在(今月は不作だが、唯一推奨)
辻原登 枯葉の中の青い炎(野球小説の小傑作) 県立 7F日本文学ツシ 市立913.6ツジ
9月
?モブ・ノリオ ダナウー大学
舞城王太郎 みんな元気。 6FY91マイ7F日本文学マイ7 市立913.6マイ
×浅尾大輔 胸いっぱいの、
×井村恭一 不在の姉
×司修 ピアフの歌のように
10月
岩阪恵子 包丁とぎます 7F日本文学イワ
×堂垣園江 亀を飼う
角田光代 雨をわたる
青木純悟 クレーターのほとりで(今月の秀作)
11月
中島たい子 漢方小説 すばる文学賞
佐藤弘 真空が流れる 新潮新人賞
山崎ナオコーラ 人のセックスを笑うな 文藝賞 
大城立裕 窓
南木佳子士 洗濯と歯磨き
朝倉祐弥 白の咆哮 すばる文学
12月
石丸元章 地下生活者たち
篠原一 シュシュ
阿部和重 グランド・フィナーレ
西村賢太 けがれなき酒のへど 
本谷有希子 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ(傑作)
1月
大江健三郎 むしろ老人の愚行が聞きたい『さようなら、私の本よ!』第一部(今月の第一の注目作)
星野智幸 在日ヲロシヤ人の悲劇
佐藤友哉 子どもたち怒る怒る怒る
矢作俊彦 悲劇週間
2月
絲山秋子 愛なんかいらねー(今月の推奨株)
玄月 美しいさなぎ
3月
宮内勝典 焼身
伊井直行 青猫家族輾転録
佐川光晴 永遠の誓い
4月
町田康 自分の群像
最終更新:2024年03月24日 11:44
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