尿路感染症

2007/11/09 腎結石の落下によるUTI


腎結石(腎盂結石)+UTIで
複雑性尿路感染症と考えて抗菌薬IV治療
→解熱して内服に変更したら再度発熱
①薬剤熱?
②別の原因?
③UTIの再燃??
⇒CT再検査にて
腎結石の落下・尿管結石と閉塞・水腎症になっていた。

最初からこの像であれば病態がはっきりするが
治療経過の途中で偶然起こると
想定していないとなかなか分かりにくい。
複雑性尿路感染症の見守り時には
USやCTの再検査も考慮すること。


=UTI 01 総論

●UTIは奥が深くて難しい!ただしCommonなものであり十分精通しておく必要アリ。
●以下の4要素を整理して臨床的分類をする。
※ただし、小児のUTIは特別であり別に考える。
①どの部分の感染症か?
  • 下部(尿道/膀胱)
  • 上部(腎盂/腎実質)
  • 尿路外(腎周囲)
②尿の流れを阻害する解剖学的問題(BPH/tumor)や異物(catheter/stone)はないか?
③感染成立の場所は? (院内/院外=耐性菌の関与する程度)
④宿主の免疫状態は?
●UTIの臨床分類を
①若い女性の膀胱炎
②女性の再発性膀胱炎
③女性の急性腎盂腎炎
④複雑性尿路感染症
⑤無症候性細菌尿  に分けて考えてみる。(NEJM1993;329:1328-1334)
●UTIの起炎菌は
①大腸菌
②Stapylococcus saprophyticus
③Klebsiella sp.
④Proteus mirabilis 
⑤腸球菌       など
●複雑性UTIでは評価その他臨床判断が困難である。
●UTIは敗血症の原因No1である。
●UTIは発熱、炎症のFocusとして常に鑑別に挙げておく必要がある。
 もちろんリスクファクターや患者背景その他を考慮に入れて
 総合的に判断しなければならない。
※若い男性で特にリスクのない人で発熱の原因に最初にUTIを考える
 のはセンスなし。逆にこの人がUTIを起こしたのならば何らかの
 基礎状態の存在を想定して検索必要。
●単純なことですが重要。
「肉眼的に尿がClearであってもUTIは全然除外できず」
 特にICUでFoleyカテーテル入っているような患者では尿の外観は特に
 問題なくても培養で菌が生える。
⇒ただしそれが臨床的に本当に悪さをしているのかどうかは
 Case by Caseで判断が必要です。


=UTI 02 女性の膀胱炎


●若い女性の膀胱炎
●臨床像・診断
①急性の排尿時痛・頻尿
②有名な危険因子として
  • 性交・殺精子剤の使用
  • 性交後に排尿しない
  • 最近の膀胱炎の既往
③典型的症状と尿中WBC増加
  • 尿培養は必須でない
  • 行えば細菌>10~10
●鑑別診断
①尿道炎
  • クラミジア・淋菌・ヘルペスなど
②膣炎・外陰部の炎症
  • カンジダ・トリコモナスなど でも膀胱炎様の症状が出現しうる。
●起炎菌
①普通のE.coli ②Klebsiella ③Proteus
④S.saprophyticus(CNS)
⑤理論上は腸球菌もありうるがこの群の宿主では考えにくい。
 それまでの抗菌薬投与の結果と考えるほうが自然。
※腐食ブドウ球菌はCNSであるが
 コンタミではなく立派なUTIの起炎菌である。以前はCNSはすべて
 コンタミとして片付けられていた。普通の検査室ではCNSの中から
 腐食ブドウ球菌を同定していない。培養でCNSが検出され起炎菌として
 疑われる場合には、普通のE.coliに対する治療(ST合剤やキノロン)で
 有効なので一緒に治療してしまう。
 日本でどのくらいの頻度があるのかは?ほとんどみたことがない。

●治療
①青木先生はバクタを第1選択。バクタ2錠/分2を3日間
②熱病ではFQ系の薬剤が第1選択。バクタ耐性のE.coliが10-20%あると
 してCPFXやLVFXを3日間。
※これには賛同しかねる。キノロンやST必要?
●特殊な膀胱炎
①糖尿病患者・高齢者の膀胱炎では上記薬剤にて1週間治療する。
 1週間の治療にて再発率が下げられるとされる。
②妊婦の膀胱炎では安全性の問題からβラクタム系を使用。AMPCで1週間治療する。
●女性の再発性膀胱炎
①再発を繰り返す人では、泌尿器粘膜が大腸菌に対して
 親和性が高く人側の要因であると考えられる。
②服薬のコンプライアンスや危険因子の再検討も必要。
③高齢者で再発を繰り返す場合には
 膀胱脱・子宮脱などが原因で排尿障害・残尿などが起こり再発の
 誘引となりうることも検討。
 ※後述の複雑性UTIに近い。
●再発と再感染を区別するようにアルゴリスムにしたがって治療する
①再発
  • 正確には治癒しきらなかった感染の再燃。
  • 前回と同じ菌名・感受性の菌が2週間以内に再び生じる。
⇒尿路の解剖学的異常や治癒していない感染源の検討を行う
②再感染
  • 別の感染が起きたもの
  • 治癒終了後2週間以上たってから起こる。
  • 理論上は違う種類の菌か感受性の異なる菌による感染症ということになるが
 実際はいつも普通のE.coliであることが多い。
●治療
①再発例
  • 普通の膀胱炎に対する治療を2-6週間継続する。
  • 上記の通り解剖学的検討を行う。
②再感染例
  • 性交と関係があれば性交後の排尿の指示と
 バクタ1錠内服1回を行う。
  • 性交と関係なければ再発頻度により予防的持続内服を考慮する。
 具体的には年に3回以上起こすならバクタ1錠を毎日-週3回内服する。
  • 年2回以下ならば症状出るたびに通常の治療を3日間行う。


=UTI 02 膀胱炎の補足

●膀胱炎の診断・鑑別
①典型的症状+尿中WBC増加があれば診断は容易
②尿培養は通常不要だが行なえば菌>10~2から10~5
③腎盂腎炎など上部UTIでも膀胱炎症状は合併しうる 
 ⇒3日の治療では不十分である
●鑑別診断
①尿道炎の合併を考慮・除外すること
  • どちらも尿培養では菌量少ない(<10~2)
  • 尿道炎と膀胱炎が合併していればデータは膀胱炎様となる。
  • クラミジアではグラム染色陰性。
 ただし、グラム染色では10~2-3程度の菌量では見つけられないので
 通常の膀胱炎でもグラム染色陰性のことはありうる。
②尿道炎はSTDを疑わせる重要サイン
  • HIV・梅毒・B型肝炎のチェックを考慮
③クラミジアや淋菌の攻撃対象は尿道よりも子宮頸部である
  • 子宮頸部炎・膣炎のチェックのため婦人科診察を積極的に依頼する
④膣炎や外陰部の炎症でも類似の症状となる
⑤この場合にはあいてはトリコモナスやカンジダなど。
⑥膣炎だけであれば尿中WBC増加がない 
 ⇒膀胱炎疑いで尿中WBC少ないとき
 ⇒膣炎・BVの可能性を考慮
⑦膣炎では頻尿は乏しく排尿時痛も排尿後半から排尿後の
 外陰部の痛みに集中する傾向。
⑧膣分泌物の増加・異常を認める これも感度はどうなのか??
●尿定量培養のカットオフ
①10~5のカットオフは有名であるが
②状況によってはもっと少ない菌量でも診断根拠として良い。
③女性の典型的膀胱炎では尿培10~2程度の量でもそれらしい菌なら有意と考えてよい。
④腎盂腎炎でも10~5に満たないことも。
⑤カテーテルUTIでは10~2でも有意なことも
⑥つまり、臨床状況と、UTIを起こしうる菌が出てきているかによる総合判断をするべきである。


=UTI 03 尿サンプル採取・診断


●UTIの診断において尿の検体を採取して塗沫・沈渣・培養に提出することは重要である。当たり前。
 しかし、どう採取して結果をどう判断するかはいろいろ難しい点があり困難である。勉強する必要有り
●UpToDateにreviewあり。
●そもそも尿や痰の培養で10^5とか量が出る(定量培養)のしくみが
 よくわからない。まさか数えてるわけじゃないだろうに??
⇒希釈系列を作って培養。1/10^5に希釈した検体からも培養されたという意味。
●尿検体の採取法
●培養陽性の定義
①一般的には10^5以上を陽性とする
②しかしすべての状況でそうとは言えず。
③グラム染色では遠心せず1,000培検鏡で1個/視野いれば10^5CFU/mLにおよそ相当。
●膿尿(pyuria)の定義

定量培養のカットオフがある程度示されているのは
UTIにおける尿培養やカテーテル先端の培養くらいであり
その他の培養(喀痰・咽頭など)では定量培養の意義は少ない??


=UTI 04 急性腎盂腎炎

●女性の急性腎盂腎炎
●症状
①膀胱炎様の症状
②高熱・側腹部痛・腰背部痛
③悪心・嘔吐・腹痛など
 消化器症状が前面に出ることがある

●腎盂腎炎のCT
①腎盂腎炎の診断にはCTは通常
 必要ないが、
②CE-CTにて局所的なLDAが
 見られうる。
③好中球の浸潤や組織浮腫による
 虚血のためと考えられる。
④膿瘍形成がなくても2-3ヶ月
 LDAが持続することがある。
⑤血流減少を反映して
 ネフログラムでも血流低下が
 証明されるが、診断的意義は
 乏しく、不要である。
●女性の通常の
 腎盂腎炎でCTなど画像評価を
 するべき時は・・
①適切な抗生剤治療で
 72時間たっても解熱しないとき
②Renal colicがあったり
 単純腹部XPにて尿路の結石が
 疑われる時
③緑膿菌など通常でない起炎菌が
 同定された時
④抗生剤治療終了後、
 同じ菌による再発がすぐおきた時
解剖学的異常や膿瘍形成・
急性細菌性腎炎・
気腫性腎盂腎炎など
重症型をチェックするために
CT評価を行う。

=UTI 05 複雑性尿路感染症

●Complicated UTIとは
  • 尿路の解剖学的・機能的異常、
 代謝性の問題、耐性菌の問題が
 からんだUTIのことである。
①尿路狭窄・閉塞
②排尿障害・残尿
③カテーテル留置中
④DM・肝障害・腎障害など
●このクラスのUTIでは正確な病態の
 究明と強力な治療が要求される。
①病態が解明するまで
 Emperic therapyは最大限強力に
 行う。中途半端はNO!
②治療に抵抗性だったり
 再発性だったりしたときには
 以下のことを確認する。
  • 本当はUTIは改善していないか?
 つまり尿中のWBCや細菌は減少して
 発熱やWBC↑は他に原因がないか?
  • 培養で出た菌は単なる
 Colonizationでは?
(カンジダ・MSSA・腸球菌が
 出た時など)
●診断/治療について
  • このクラスのUTIでは起炎菌も
 幅が広く、感受性もまちまちであり
 培養結果及びLocal factorに
 基づいて診断・治療を行う。
  • GNR以外にMSSA、腸球菌、
 嫌気性菌も原因になりうる。
●MSSA/MRSAが出たとき
  • 尿道カテーテルが入ってない患者で
 尿からブドウ球菌が検出された時は
 全身状態が悪ければMSSAによる
 敗血症を考えて除外する必要あり。
  • 尿にだけ出ており全身状態よければ
 単なる抗生剤による菌交代現象の
 表現であることが多く放置してよい
●腸球菌が出たとき
  • カテーテルが入っていない患者では
 ほとんどの場合菌交代現象による。
  • 重症DM、悪性腫瘍、顆粒球減少+
 腸球菌の敗血症といった状況以外
 尿道カテなしでは腸球菌が真の
 起炎菌であることは少ない。
  • グラム染色の菌量をみて判断を。
●カテーテル関連UTIについて
①予防に有効とされているもの
  • 挿入時清潔操作
  • 閉鎖回路の維持
  • 不要になったらすぐ抜去
  • コンドームカテーテルの使用
②予防に有効か議論のあるもの
  • カテーテルと蓄尿バックを
 あらかじめ結合させておく
  • 蓄尿バック内に防腐剤
  • 抗菌金属のカテーテル使用
  • 特殊例(臟噐移植など)の抗生剤
 投与
  • 蓄尿バックを患者の身体よりも
 低いところに置く。
③予防に無効とされているもの
  • 無症候性細菌尿に対する抗生剤
  • 滅菌水や抗菌薬による膀胱洗浄
  • カテーテルの定期交換
  • 尿道口の定期的消毒
  • 長期間の抗生剤予防投与
●カンジダ尿について
●腸球菌のUTI治療


=UTI 06 無症候性細菌尿

●基本的に無症候性細菌尿
 (asymptomatic bacteriuria)は
 治療しない。
●例外的に治療対象となるのは
①妊婦
②小児(先天奇形に関するもの)
③泌尿器関連の術前予防として
 これらの場合では
 症状がなくても尿中の細菌を
 スクリーニングして、陽性なら
 治療する必要がある。
●単なる高齢者の
 無症候性細菌尿は治療しない。
 重要。
●妊娠に伴う無症候性細菌尿は
 放置するとほぼ全例で症候性
 尿路感染症に進展するので
 全例治療する。
 治療目標は妊娠全経過を通して
 尿培養陰性に保つことである。
  • 妊娠第1/3半期ではルーチンで
 尿検査を行い、細菌尿は
 治療する。
  • 腎盂腎炎や低体重児のリスクが
 減少するらしい。
●DM患者の無症候性細菌尿は
 治療すべきという意見もあったが
 NEJMのスタディでは
 DM女性の無症候性細菌尿を
 治療しても腎盂腎炎などの
 リスクがプラセボと差がなかった。
 NEJM. 2002;347:1576-1583。
●好中球減少症での
 無症候性細菌尿は?

=UTI 07 小児のUTI

●小児のUTIは特殊であり
 成人と別に取り扱う。青木先生の
 本では取り扱っていない。
●小児UTIの特徴
①新生児・乳児ではUTIの症状が
 出にくい。発熱のみが唯一の症状と なりうる。
②乳児期には男児に多く、それ以後は
 女児に多くなる。
③UTI患児の30-50%が何らかの
 尿路奇形を有しているとされる。
 つまりComplicated UTIの割合が
 高い。奇形の半数はVURである。
④急性期治療の後、抗菌薬投与や
 外科的治療による再発予防を
 検討する必要がある。
⑤早期診断と適切な管理がされないと
 逆流性腎症⇒慢性腎不全に至ること がある。
●したがって、小児のUTIにおいて
 尿路系の検査は必須事項である。
①全例にAbdUS施行
②上部UTIの患児にはVCG
③場合によっては腎シンチ・MRI
④腎瘢痕の有無の検索?
⑤小児外科医と連携し手術適応の検討


=UTI 08 特殊な尿路感染症

●まず、男の尿路感染症では
 全例にWorkUpが必要。男がUTI
 を起こすというのは
 何かがおかしい。
  • まずは直腸診による前立腺の
 評価。前立腺炎のチェック。
●若い男性の膀胱炎
①50歳以下の男性の膀胱炎は非常に
 稀であり、同性愛者でないかぎり
 何らかの解剖学的異常
(包茎・前立腺肥大・前立腺炎)
 もしくは
 免疫学的異常(HIVでCD4が200以下
 などを疑う。
②尿路感染を起こしやすいタイプの
 大腸菌(Uropathogenic E.coli)は
 性交渉相手の女性の膣に定着し
 男性の膀胱炎の原因になりうる。
③男性の膀胱炎、尿道炎では必ず
 起炎菌の同定につとめ、通常の
 GNR(膀胱炎の起炎菌)や淋菌、
 クラミジア(尿道炎の原因)Iに
 対する治療が奏効しない場合には
 上記の危険因子について再検討し
 必要に応じて解剖学的検討を行う。
④治療はST合剤+DOXYもしくは
 シプロ+DOXY?
●慢性腎盂腎炎
①通常は、慢性と思っていても
 急性-亜急性の腎盂腎炎が
 再発していることが多い。
②男性では圧倒的に前立腺炎が
 再発の原因である。治療可能な
 原因を探すために最低限USと
 可能ならIVPを施行する。
③アルコール中毒、DMなど末梢神経
 障害により実際より控えめに
 症状・所見が表現されるが
 通常の急性腎盂腎炎と同様だと
 考える専門家もいるらしい。
④感染が繰り返されると慢性の
 間質性腎炎となり非対称性の
 腎瘢痕化を生じる。臨床的には
 尿の濃縮力低下が著名である。
※高血圧性腎症、慢性腎炎では
 対称性に腎の萎縮を認める。


=UTI 09 泌尿器関連感染

●厳密にはUTIとは違うが
 その他の泌尿器科関連感染症に
 ついて
NIHが分類をしている
①急性細菌性前立腺炎
●慢性細菌性前立腺炎
●非細菌性前立腺炎
●前立腺痛


●副睾丸炎

=UTI 10 腎膿瘍・腎周囲膿瘍

●腎膿瘍・腎周囲膿瘍のポイント
①腎膿瘍は症状がinsidousである。
②GNR(腸内細菌)の他に
 S.aureusによる菌血症の部分症状と してあらわれることあり
③腎盂腎炎の診断にて治療開始後
 48-72時間しても解熱しないとき
 には膿瘍の合併を疑うこと。
④1/3の症例では膿瘍が尿排泄路と
 交通しておらず検尿・尿培養が
 正常となる。
⑤尿道カテや泌尿器的手技と
 関連しない患者で尿培から
 S.aureus検出したときには
 菌血症を疑うことは一般的常識。
⑥infected cystでは通常尿培は
 陰性である。
⑦腎膿瘍だけであれば抗生剤投与
 のみで治療できることが多い。
⑧逆に腎周囲膿瘍であれば基本的には
 ドレナージやOpeなど
 外科的Approachが必要である。
 致命率も高い。重症疾患。
⑨腎膿瘍に対しては6-8Weekの長期
 抗生剤投与が必要。OFFしてからも
 再発モニター必要。
⑩Emperic therapyとしては当然
 GNRとS.aureusをカバーする。
  • CTX/PIPC/TMP-SMX/AG/AZT
  • CEZ/VCM
●治療期間?

=UTI 11 感染性結石

●尿路感染症に伴い
 二次的に尿路結石を伴うことあり。
 感染結石という。
●ウレアーゼ産生菌による
 感染が主な原因でウレアーゼにより
 尿素が分解されてアンモニアが生じ
 尿がアルカリ化されて
 リン酸Mg-アンモニア(MAP)結石が
 生じる。尿pHは7.5以上となり
 アンモニアの排泄も増加する。
●MAP結石はレントゲンでうつる。
 層状構造をとり、放置すると急速に
 増大してサンゴ状結石となる。
●ウレアーゼ産生菌としては
①Proteus が最多
②Klebsiella
③Staphylococcusのこともあり。
●結石を排除しないと感染が 
 コントロールつきにくいことが多く
 ESWLやPNL/TULを用いて
 排石を考慮。(Uro科Consult)
※ESWL=Extracorporeal Shock
 Wave Lithotripsy体外衝撃波砕石術
 PNL=Percutaneous Nephroureter
 Lithotripsy経皮的腎尿管砕石術
 TUL=Transurethral Uretero    Lithotripsy経尿道的尿管砕石術

=UTI 12 NIT

●Nitrite test(NIT)
●尿中の亜硝酸塩を検出する。
 E.coliなどの腸内細菌が
 尿中の亜硝酸を還元することで
 亜硝酸塩が生じる。
●細菌尿に対して特異性は高く 
 90%以上であるがすべての細菌が 
 亜硝酸を還元するわけではなく
 感度としては30-80%程度と不十分
※無症候性細菌尿・汚染菌と
 真の起炎菌をNITで区別できるかに
 ついては記載がない。
 やはり尿中WBC及びU/Sを併用して
 また臨床状況をかんがみて判断を
 する必要があるだろう。NIT陽性は
 ある種の細菌がいることを示すのみ
 炎症すなわち
 尿路感染症があることの
 根拠にはならないのでは。

=UTI 13 急性細菌性腎炎

●UpToDate12.2と生坂本より
●腎盂腎炎と腎膿瘍の
 あいのこのような存在?
 Acute focal bacterial nephritis
 急性巣状細菌性腎炎
●通常の腎盂腎炎に比して
 発熱が遷延し抗生剤になかなか
 反応しない。CTやUSにて
 明らかな膿瘍形成ではないが
 びまん性もしくは局所性の
 Mass-like lesionを示す。
●腎盂の感染ではなく
 腎の皮髄境界部の重症型急性感染
 糖尿病やVURなどの尿路異常を
 もつ患者に起こりやすいらしい。
●感染経路は上行性感染が多い。
●腫瘤性病変を呈するため
 腎腫瘍との鑑別が問題となる。
 被膜や内部の液化所見がないことで
 腎膿瘍とは一応区別されるよう。
※ただし臨床的にどう違うのかは
 いまいちよく分からない。
●通常は充分量の抗生剤の
 長期投与で反応するが膿瘍形成に
 進行したり、外科的処置が
 必要となることもある。


=UTI 14 腎移植後のUTI

●かなり特殊な領域だが
 多少知っておいて損はない
●「移植後の感染症」だけで
 1冊の本があるくらいのトピック
●概要
①腎移植後の感染症では
 最多のもの。
②移植後早期(数ヶ月以内)に 
 多い。
③起炎菌が一般UTIとやや異なる。
④治療に関しては一般UTIとほぼ同じ
⑤予防投与によって減少させられる
●リスク因子
①尿管カテーテル
②手術中の腎臓・尿管外傷
③自腎・移植腎における解剖学的異常
(VURや結石・ステント留置など)
④神経因性膀胱(とりわけDM患者)
⑤拒絶反応・免疫抑制剤
●起炎菌
①通常の腸内細菌GNRに加えて
②Enterococcus spp.の頻度が
 高いのが特徴
③Corynebacterium urealyticum
(以前のCorynebacterium groupD2)
 という変わった菌が原因に
 なることが報告されている。
 分離・同定しにくく、
 通常のOral therapyには
 耐性であるので知っておく
 必要がある。
●UTIのタイミング
①腎移植後UTIの罹患率は
 移植後の時期による
②院内発症例の方が重篤になりやすく
 10%に菌血症・90%に
 移植腎感染を起こす
③移植腎の機能不全や
 急性の拒絶反応を誘発しうる。
●臨床症状
①Early UTIの症状は様々である。
②無症状の例から
③発熱・悪寒戦慄・移植腎痛
 ・圧痛まで

●移植後3-6ヶ月以降に起こるUTIは
 通常のUTIと臨床的にはほとんど
 区別ができない。earlyUTIよりも
 予後は良好であると考えられてきた
●が、あるCohort研究ではLateUTIも
 それほど安全ではなく致死率を
 あげる報告がある.
 Am J Kidney Dis2004;44:353


=UTI 15 気腫性腎盂腎炎

UpToDate14.2の記述より
●Emphysematous pyelonephritis
①ガス産生性・壊死性の腎組織および
 腎周囲組織の感染である。
②90%以上が糖尿病の患者である。
 女性の方が数倍多い
(UTIそのものが女性に
 多いからだけなのか
③気腫性腎盂炎
(emphysematous pyelitis)
 気腫性膀胱炎
(emphysemaouts cystitis)が
 続発・もしくは腎盂腎炎を
 伴わずに起こることもありうる。
 やはり糖尿病の患者が大部分を
 占める。
④腎盂炎とはあまりイメージできない 疾患であるが
 gas in the renal pelvis と記載あり
⑤これらの疾患でのガス形成の
 機序ははっきり分かっていない。
⑥起炎菌のガス産生だけでは
 説明がつかないらしい
●臨床症状
①重症腎盂腎炎と通常区別がつかない
②発症は突然のことも
 2-3週間かけて徐々にのことも。
③発熱・悪寒・側腹部痛・腹痛・
 悪心嘔吐などが大部分にみられる
④膿尿・BUNやCrの上昇・WBC増多
  • 高血糖など
⑤気腫性膀胱炎では頻尿・排尿痛
  • 腹痛の他に
 気尿症(pneumaturia)が見られる。
 排尿時にガスが出てくる?
●台湾での報告では
 (Arch intern med2000;160:797)
①96%が糖尿病
②女性が6倍
③平均年齢60歳(37-83歳)
④菌血症が54%
⑤血培からの検出菌のすべてが
 尿培もしくは腎臓からの膿から検出
⑥E.coliが最多(69%)
  • K.pneumoniae(29%)
 ⇒ほとんどすべてということか?
 混合感染?
●診断
①通常単純XPにて腎周囲のガス
②単純XPにて腎実質もしくは周囲に
 85%でガス描出をみる
③XPにてガスを認める場合には
 CTにてその広がりや閉塞機転の 
 チェックを行うべき
④その他は通常のUTIの診断評価と
 同様に行えばよさそうか?
●治療
①以前は腎摘出術もしくは開腹ドレナージに抗菌薬投与を  加える治療が通常であった. ②前出の台湾での報告では  CT所見にてGas-forming UTIを  4つのClassに分けて治療戦略を  立てることを提案している ************************* ・Class1 ガスが集合システム内のみ(腎盂炎のみ) ・Class2 ガスが腎実質内のみで外部へ波及していない
  • Class3A ガスもしくは膿瘍が腎周囲(perinephric)へ波及 ・Class3B ガスもしくは膿瘍がPararenalへ波及
  • Class4
両側性(もしくは片腎患者の)気腫性腎盂腎炎
********************
①Class1-2の患者では
 経皮ドレナージと抗菌薬で
 十分である
②Class3A/3Bであって
 臓器不全を伴わないときには
 最初の治療は経皮ドレナージと
 抗菌薬で開始
③Class3A/3Bかつ臓器不全を
 伴うときには
 抗菌薬投与に加えて速やかに
 腎摘出術を行う
④Class4では両側の経皮的ドレナージ を行う
⑤どのケースでも経皮ドレナージで
 改善しない、
 うまくドレナージできない時には
 腎摘出術を行う
●予後(同文献より)
①致死率は18.8%(9of 48)であった
②年齢・性別・血糖は予後に
 影響しなかった
③当たり前だが診断時に
 臓器不全の兆候
(ショック・DIC・腎不全など)を
 認めた患者で予後が不良     
●疑問点
①混合感染・嫌気性菌の関与は?
②閉塞機序がなくても起こるのか?
 閉塞機序のあるなしと
 gas-forming UTIの関連や頻度は?
③抗菌薬は好気性GNRだけで
 よいのか?
 カルバペネムなど最初から
 投与するべきか?


=UTI 16 ADPKDのUTI

●腎不全と感染症の 
 項目にもあり。
●腎嚢胞への感染症は
 またひとつのトピックである。

=UTI 17 DMとUTI

UpToDate14.2より
●糖尿病患者では
①無症候性細菌尿
②症候性の膀胱炎
③急性腎盂腎炎
④気腫性腎盂腎炎 ⇒別項目あり
⑤乳頭壊死(Papillary necrosis)
⑥カンジダ性UTI
⑦腎周囲膿瘍
すべて、non-DM patientより
頻度が高い
●DM患者の単純性UTIでは
 起炎菌は非DM患者とほぼ等しいが
①K.pneumoniae
②GroupB streptococcus
③C.albicans
 の検出頻度が高い傾向にある 
●DM患者の無症候性細菌尿
(別項目あり)
●カンジダ性UTI(Candidal UTI)
①Candida spp.は無症候性に
 下部尿路に定着しうるが
②時にCandida性の
 症候性UTIもありうる
  • 膀胱炎・腎盂腎炎・腎周囲膿瘍
  • 全身感染症
③定着なのか、
 本当にCandida性UTIなのか
 臨床像などからきちんと鑑別する
 必要がある。
⇒真菌性UTIについてはまた別で
 まとめる・・・
 項目は無限にあるなぁ・・・


=UTI 18 XGPN

●Xanthogranulomatous
 pyelonephritis
「黄色肉芽腫性腎盂腎炎」
最終更新:2007年11月09日 14:08
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