けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

体温計

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mioritsu

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風邪を引いた。久し振りに学校を休んだ。
朝起きて、あからさまな眩暈がして。
そういえば昨夜はやけに冷えてて、嫌な予感がして慌ててパジャマの上に一枚羽織ったんだけど。
時既に遅しってヤツだったらしい。身体が、怠い。
とりあえずフラフラとキッチンに向かい、一応の朝食。いつもの半分も食べられなかった。
「今日は病院行って、休んでなきゃダメね。とりあえず、はい」
ママは私の様子を察知して、体温計を差し出した。
体温計を脇に差し、水を飲んだ。冷たい温度がぼんやりと身体に染み渡った。
脇で鳴った体温計を見ると、38度オーバー。すぐに律に学校休むから先に向かっててほしい、とメールした。返信は返って来なかった。
その代わり、間もなく家に律が走り込んで来た。
「おはようございます!!澪は!?」
律が玄関を勢い良く開けた時、私はフラフラと二階に行こうとしていた所だった。
「‥おはよ」
私はぼんやりした意識で律に声を掛け、ゆっくりと律に歩み寄った。
「澪…風邪‥、か?」
律は息を切らしつつ、心配で死にそうだ、とでも言いたげな顔で聞いてきた。
「うん‥これから病院行って来る‥」
私が力無く答えると
「律ちゃん、おはよう」
ママがキッチンから現れた。
「おはようございます!」
「澪、この通りだから‥今日、休ませるわね」
「はい‥」
「わざわざ来てくれて、ごめんなさいね?」
「いえ…」
律とママが一通り会話を交わした所で
「ゴメンな、律‥」
私は精一杯口を開いた。
「皆にも、伝えといて‥ぅっ!」
と言った所で、咳込んだ。
「澪!」
無理するなよ!と律が声を上げた。
「早く、着替えてらっしゃい?」
「うん‥」
私は呼吸を整え、ママに頷いた。
「じゃあ‥律ちゃん。学校の皆さんによろしくね」
こっちからも学校に連絡しておくから、とママが律に声を掛けた。
「はい‥‥澪。ゆっくり休むんだぞ?」
「うん‥」
「じゃ、行って来ます」
律は私を気遣いながら、玄関から出て行った。
「‥律ちゃん、本当に心配そうだったわね」
「うん‥」
私は、自室に向かった。



午前十一時。
私はママに病院に付き添われて病院に行って、注射を一本打って。
帰宅するなりベッドに倒れ込んだ。モゾモゾと布団に潜り込んだ。
少しして、ママがお粥と水と、処方された薬を持ってきてくれた。
ぼんやりした頭でお粥を食べ、薬を飲んで。
また、ベッドに沈んだ。
ふと携帯に目をやると、メール着信が一件。
律からだった。
皆心配してるって内容と、「私がついててやるから、安心して寝てろ」って内容の文章が簡潔に綴られていた。
ついててやるって、お前は学校だろ‥。
私は力無く心の中で突っ込みつつ。「ありがと」とだけ返信した。今は授業中‥かな。私の恋人は居眠りでもしてないだろうか。
ちょっと心配しつつも。体調の悪さと薬の作用で、すぐ寝に入った。


まだ陽射しが明るい、午後くらい。
ぼんやりした頭で、目を開いた。カーテン越しに照らされた薄暗い平日の部屋が見えた。
いつもなら学校にいる時間。私は、自室のベッドで寝ていた。
体温はいくらか和らいだか、くらい。手が熱くて、身体はまだ怠かった。
食器は私が寝ている間に片付けられ、水と薬と、水分補給用のスポーツドリンク。それと着替えと。
薄暗い部屋の中、目立つ明るい茶髪が視界に入った。

‥ん?

私は目線を茶髪に向けた。
律の、茶髪だ。
「…」
体調が万全なら飛び起きてる所だが。そうは行かなかった。
身体を動かそうと神経を集中させると、手の熱さに再び気付いた。
人肌ぐらいの、熱さ。

律の、手だった。

ぼんやりしながら視界を広げると、律の茶髪が私の目の前に横たわっていて。
律の手が私の手を握っていた。
驚き、目を完全に覚ますと。静かな音が耳に入ってきた、

律の、寝息だった。

律は私の手を握ったまま、床に座り込んで、ベッドに突っ伏して寝ていた。
いつから‥?と考えようとしたが、風邪のせいでちゃんと思考出来なかった。
手汗の具合から、それなりに時間が経っていた事だけ、分かった。

ぎゅ‥

律の手を力無く握ってみたが、律は起きない。
いつもなら授業中に居眠りしてる時間‥かな。
なんでもない事を考えたが、もう、どうでも良かった。
心配して送ってくれたであろう午前中のメールが頭をよぎった。

「私がついててやるから、安心して寝てろ」

気遣って送ってくれたのかと思ったら、ホントに来てた。ついててくれた。
カーテン越しに陽を射す太陽はまだ高い。
律が早退して来てくれた事は、明らかだった。
静かに寝息を立てている律の手を、また握ってみた。
やっぱり、律は起きなかった。

だが手、だけ。反応した。

ぎゅ‥

握り返してきた。
私は、嬉しくなった。

私はふふっ、と布団から息を漏らし。
早退してまで来てくれたであろう律に向かって、呟いた。


「………バカ律」


私は安心してまた、寝に入った。


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