けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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匿名ユーザー

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「プロポーズされたって?」

雑誌を読む手を止め、私は驚きの余り声を上げた。
その素っ頓狂な声を聞いて、私の恋人…澪は少し身体を竦める。

「…正確には、結婚を前提に付き合ってほしい、なんだけどな」

現在、私と澪は27歳。二十代後半だ。
れっきとした社会人だ。
それから、恋人同士という設定付き。
仕事場は違うし、マンションだって違うけど、どちらかの部屋に入り浸っているから、半同棲してるみたいなものだ。

「どんな人なの?」
「ん…社内では、割と人気な人」
「話したことないの?」
「たまに、食堂とかで…」
「イケメン?」
「…なのかな」
「うへー」

て言うけど、私は澪も社内ではかなり人気だっていうこと知ってるぞ。ちくせう…
それでも告白とかされたことは無いらしいけど。
そして今回のこのプロポーズ。

「プロポーズじゃないってば」
「似たようなもんでしょ」
「違うよバカ」

一通り澪をからかってから、本題に入る。

「それで、どうすんの?」
「……」
「一応、澪は私と付き合ってる訳なんだけど」
「一応とか言うなよ」
「何て返事したの?」
「………考えさせて、って」
「……………ん?」

一応(また使っちった)キッパリと断った、みたいな事を言ってくれるかと思ったんだけど。違うの?
…どういうこと?

「…え、迷ってる、の?」
「………」
「み、みお?」
「…この前、私、実家に帰ったよな」
「あぁ…うん、お土産のみかん美味しかったよ」
「その時に、両親に色々言われたんだ」
「色々って?」
「…いい人はいないのか、とかさ」

…つまり、こういうことか。
27歳にもなって、一度も男の影を見せない澪を心配して、もしくは焦りを感じた両親に色々言われたと…
結婚はまだか?…みたいなことを

「孫の顔が見たいって言われたよ」
「まだいい年だろうに…おじさん、おばさん…」

まぁ、心配にもなるだろうなぁ。
一人娘だし、こんな性格だし…
ちゃんといい人見つけられるか、気にするだろう。
…すいません、おじさん、おばさん。
私みたいな娘が独占してました。

「…それで、澪も早く結婚したいって思ったの?」
「………」
「澪は、したいの?」
「…私は…」
「正直に言って」
「…結婚は、したいと思ってた」
「…だろうなぁ」

いつだか忘れたけど、澪が夢を語ってくれたことがあった。

「澪の夢はウェディングドレス着ることだしな」

いつの話だ、と短いツッコミを入れる澪。
いつだったかな。忘れたよ澪。

「…その人のことは好きなの?」
「…まだわかんないよ」
「そっか…」

俯き加減で澪は黙る。
…それじゃさ

「じゃあ、付き合ってみれば?」
「…え」
「とりあえず付き合って、そこから判断すればいいんじゃないの?」
「…りつ」

潮時だな、と私は思った。
私事の関係は公にしていない。同性恋愛なんだし、当然人には言えない。
澪の両親も口を出す所まできたんだ。そろそろごまかせるのも限界だろう。
澪のことは、愛してる。けど、不幸にはしたくない。
決断(大袈裟?)の時がきたんだ。

「どう?澪」
「………うん、わかった」
「よし、決まり!じゃ、私は帰っ…」
「でも、律とは別れたくない」

澪は顔を上げた。今にも崩れそうな顔をしていながら、その台詞にはとても強い力が込められていた。

「…なんて?」
「…律と、別れたくない」
「その人と付き合っていながら、私とも恋人同士のままでいるってこと?」
「ああ」
「何言ってんのかわかってんの?」
「ああ」
「…いや、澪、それは駄目だろ」
「二股するってことだぞ?」
「………」
「相手の人にも悪いし、私や、澪の為にもならない」
「それでも、いい」
「別れてもちゃんと連絡するし、疎遠になったりしないよ。友達として…」
「恋人じゃなきゃ嫌だ」
「みお」
「嫌だよ」

出た、強情澪。
この状態の澪と張り合って、私が折れなかった場合は未だかつてない。
卑怯くせー

「…本当に、いいの?」

おそるそる、といった感じで私は澪に聞く。
それは、澪には禁断の道に進むか否かの確認に聞こえただろう。
まぁ実際そうなんだけど、建て前みたいなもので…
しかし、私の真意は違った。

      • 私、まだ澪の恋人でいいの?---

「うん」

弱々しくも、力強い首肯と共に、澪は言った。

「…わかったよ」
「…ほんとに?」
「澪ちゃんのワガママには勝てないね、どーも」
「…ごめん」
「おう、もっと謝れ」
「ごめんね、律」
「おう…なんか昼ドラに出演してる気分だ」
「だったら私が悪女だ」
「ワイドショーに出演することにならなけりゃいいけど」
「ふふ、なんだよそれ」

言いながら絡め取った指は、とても暖かかった。
澪と一緒なら堕ちていけるって、こう思ってる私は、駄目な奴だ。
その次の日、澪はその人にOKを出したそうだ。



それから2週間がたった。



「でな!この服なんか綺麗だと思うんだけど」
「うん」
「食事行くんだからもっと大人しめでもいいと思うんだけど」
「うん」
「でもあんまり子供っぽいのも恥ずかしいよな?」
「だな」
「あー楽しみだなぁ!なんてったってあの有名ホテルの料理店に行くんだからな!」
「おう」
「ねね、律は何食べたい?私はねー…」
「…なぁ、澪?」
「ん?なんだよ」
「私は行かないんだけど」

そう言ったら、澪はあっと小さく声あげて顔を背けた。錯覚てお前…
そう、澪は(表向きは)彼氏さんに食事に誘われたそうな。
(表面的には)付き合ってる澪としては、断る理由もないわけで。
それを明日の日曜日に控えてる夜の澪の部屋での会話である。
「これでいいや」
「適当かっ」
「だって分かんないんだもん…じゃあ律が決めてよ」
「えー…あ、これなんかどうかな?デニム」
「休日かよ、食事って言ってるだろ」
「んーでも澪は何着ても似合うからなー…」
「………」

ってなに顔赤くして俯いてんだよ。
照れてるのか?お前今年で何歳だよ…
と、その時澪の携帯が鳴った。
画面を見て、ごめんと呟き、キッチンに引っ込んでった。
…あいつか
澪の話によると案外優しくて、上手くいってるらしい。
面白くない…と思う資格は私には無いんだが。
しかしあの店の食事かぁ。気合い入れすぎだろ…
私では連れて行ってあげられない場所だ。まぁ女二人で行くってのもなぁ…
と頭の中で独白を入れていると、澪が戻ってきた。

「例の人ですかい?」
「うん、明日の日程とか」
「そっか、じゃあ後は一人でできるな」
「帰るの?」
「ん?うん」
「泊ってってよ」
「えぇ?でも澪、明日…」
「大丈夫だから…」
「…ほんとワガママ」
「…ごめん」

というわけで、今日は澪の部屋に一泊。
お風呂入って、さっさと床に就くことにした。
お互い抱き合ったままの姿勢で寝る。一緒に寝るときは大体こうだ。
澪のお風呂上がりのシャンプーとかリンスとかの匂いが私の鼻を焼く。
抱きしめていて解ることだがいいボデーしてんなぁ…

「なぁ、律」
私がうとうとし始めたころ、眠ったかと思ってた矢先、澪が私を呼ぶ。

「…なに?」
「今度の日曜は、二人でご飯食べよ」
「おいおい、あんまり御馳走はできないぞー」
「期待してないよ」
「何をー」

暗闇だが、くつくつと澪が笑っているのが解る。
で、そのあとの静寂。

「不安?」
「…ちょっと」
「よし、私が元気の出るおまじないをかけてやろう!ほら、ちゅー!」
「いらない」
「ちゅー…」

私の接吻が空を切った。
それから澪はありがと、と呟いて本当に寝る姿勢に入ったようだ。
そろそろ私も寝ようと、瞼を深く閉じた。


突然だが、私が澪にここまで献身的な理由を語ろう。まぁ大した話では無いんだけど。
大学生の頃だったかな、その時に澪と喧嘩した。原因は…忘れた。
といっても私が一方的に怒ってただけなんだけど。
んで、結局仲直りしたんだけど、そのあとにムギから聞いた。
澪は私に嫌われてしまったと思って、寝込んでしまったらしい。
私の前では気丈に振舞っていたのに。
澪はあまりに悲しむと心や身体に支障をきたすらしい。
それから私は過度に澪を傷つけないように徹した。
む、なし崩し的にとかじゃないからな。ちゃんと愛だよ愛。
それがこんなことになるとは思わなかったけど…

結婚…結婚ねぇ。
私もその辺考慮すべきなんだろうか。
親にはとっくに諦められているだろうし…
澪一筋だったんで、そんな当てもないし…
ていうかそんなことしたら澪がまた寝込む。なんという傍若無人。
…私が澪と結婚すればいいって?
そうだな、それがベストだ。
少なくとも高校時代の私なら臆面もなくそう言ったろうな。
でも、もう27歳なんだ。
そんな夢は、私も澪もとっくに考えないようにしてる。澪といられればいいなって。
いっそのこと、それが簡単に言えるあのころに戻りたい。
そんな20代後半の追想。



澪を見送って(ダジャレじゃない!)から自分の部屋に帰宅して。
風呂に入ってお酒を開け、テレビ見てるけど…暇だ。
今頃澪はディナーの最中かな。
今日は晴れてたからきっといい夜景が見えるよ。
しかし暇だ。こういうとき話をできる暇人といったら…

『心外です、りっちゃん隊員』
「まぁまぁ、独り身同士電話で慰めあおうぜ―」
『ぶー、独り身じゃないもん』
「え?マジ?」
『最近猫を飼いました!』
「梓のことじゃないだろうな…」
『ちなみに夕飯はたくあんでした』
「ムギのことかッ!?」

というわけで唯と電話越しに談笑。
結構久しぶりに話ししたけど唯も変わらないなぁ。お前も27歳なんだぞ?
話をしていると、『独り身と言えば』と切り込んできた。

『澪ちゃんに彼氏ができたって聞いたんだけど』
「…あぁそうだなぁ」
『先越されちゃったねぇりっちゃん』
「全くだ、あの澪に恋人とはな」
『もうちゅーとかしたのかなぁ』
「んなっ…」

んな…んなことがあってたまるか!私ですら澪とキスするのに5年かかったんだぞ?
…まぁ、未だ週一くらいに留まってるけど。
エッチなんか尚更だ。月一だぞ。
澪は恥ずかしがりだから仕方ないけど、もういい年なんだからさ…
私の性欲も考えて!

『一番そんな感じしなかったのにねぇ』
「……なぁ唯」
『うん?』
「唯は、恋人が浮気とか、二股とかすることどう思う?」
『どう思うって?』
「ほら、サイテーとか、ふしだらーとか」
『うーん?…まぁ、ひどいことだと思うよね。』
「……」
『愛してるんなら、ちゃんと愛したらいいのにね。』
「…そーね」
『でも、結局その人も最後にはどちらか選ばなきゃいけないよね』
「…!…」
『何何?りっちゃんの恋人は妻子もちなの?りっちゃん愛人なの?』
「馬鹿言ってんなよ」

あながちハズレてないところが怖い。
と、そろそろいい時間だ。

「じゃ、そろそろ寝るわ」
『はぁーい』

電話口から離れる寸前に唯が「りっちゃん」と私を呼んだ。

「ん?」
『澪ちゃんのこと、私達の分も見ててあげてね』

その言葉は今の私には重過ぎて。
曖昧な返事しかできなくて電話を切った。
その時ちょうど、玄関の鍵を開ける音が聞こえた。



すると、数時間前に見送った時のままの出で立ちのままの澪が入ってきた。

「澪…?」
「ただいま」

はいお土産、と言って袋を渡された。
たこわさが入ってた。
いや確かに酒は進むけど…
高級店行ったんじゃないのかよ

「今日はもう来ないと思ってたんだけど」
「そう?」
「あ、ビールでいい?」
「いや、これ飲もう」

と言ってもう一つの袋からワイン瓶を取り出す。
…うん、やっぱり高級店行ったんだなぁ
いやでもワインにたこわさは合うのか…?
気にしつつ、たこわさを皿に盛りつつ、念のためピーナッツを用意しておく。
澪はコルク抜きでワインを開けてる。
私も澪も詳しくないけど多分、結構上等なワインだろう。
お互いにワインをいれあって、グラスをチンと鳴らす。

「君の瞳に乾杯…」
「ぷっ、なんだそれ」
「ロマンチックを追求する私、かっこよくない?」
「自分を見直してみろ」

軽口をいいながら、一口。
微量であったが、舌を焦がすには十分であった。
美味しいでごわす。

「美味しいな!」
「うん、私も今日飲んで、律と一緒に飲みたかったから奮発しちゃった」
「げ、高かった?」
「気にするなよ」
「さんきゅ…料理美味しかった?」
「うん、スッゴく。店も綺麗でさ、真ん中にでっかい水槽があって魚が泳いでた!初めて見たよ」
「へぇー」
「BGMの人たちもいて、ヴァイオリンとか、凄い雰囲気出てた!」
「どんな店だ…?」
「うん、楽しかった。律とも行きたいな」
「で?男とはどんな話したの?」
「あぁ、振られちゃった」
「そっかぁ。まぁいい男なんて他にいくらでもってなんだって?」

思わずワインを吹き出しそうになった。
おいおい、何さらっと言ってんだこの子は。
たこわさ食べながら言うことじゃないよ澪さん。

「な…なんで?」
「…私が、律のこと好きだからかな」
「はぁ?」
「…あの人は、いろんな話題とかふって話広げたりしてくれてたんだ」
「…うん」
「でも私、まだ慣れなくて、いまいち話に乗れなかったんだ」
「…」
「それで、好きな話していいよ、って言われたんだ」
「…そう」
「…でね、私、親友の話ばっかりしてね」
「…親友」
「あんまり親友の話ばっかりするから、呆れられて」
「…なんでだよ」
「その人と俺とどっちが大切なんだって」
「女々しっ!」
「だから、振られた」

と言って、澪はワインの口にし、美味しいと呟く。
なんでもない、というような顔してる。
私はというと、苛立ってる。

「…勝手な奴」
「いいんだよもう」
「だって交際申し込んだのは向こうからで…!」
「初めに断らなかった私が悪いんだ」
「…」

いまいち納得いかない私に澪は目を伏せる。

「ごめん」
「…なんで謝るの?」
「私、律に辛い思いさせてた」
「…それこそいいよ」
「ワガママしか言ってないし」
「それを聞いてやるのがりっちゃんです」
「律…」
「そもそも付き合えって言ったの私だし。こっちこそごめんな」
「そんな…律は何も」
「ほら、堂々巡りになりそうだぞ」
「…ほんとに、ごめん」

澪は泣き上戸だ。
お酒が入るとちびちび泣き出す。
まぁ、からかうと基本泣いちゃうけど。
んで、今泣いた。

「ごめん…なさい…ヒック」
「うん」
「律ばかり、傷つけて」
「うん」
「律ばっか、苦労かけて」
「おう」
「私には、律しか、いないのに」
「…おー」
「律…好き」
「…うん」
「大好き」
「私も」
「好き…すき」
「…この酔っ払いめ」

澪が近づいてきて、私の隣に落ち着く。

「で?結婚はもういいの?」
「…うん。親には悪いけど…仕方ないかなって」
「それは困る」
「え?」
「それじゃ私の結婚相手がいなくなる」
「り…りつ?」
「澪は私と結婚するんだ」

突然お互い意識しないようにしてたことを引っ張り出し、戸惑う澪。
違うやつに先にプロポーズされて、悔しいんだよぅ。

「ちょっと待ってろ」

そう言って私は髪の毛を数本引き抜く。
それを澪の左の少しずつ丁寧に薬指に巻きつけ、縛っていく。
我が血肉と髪の…結婚指輪の完成だ。
うん、我ながら酷いアイデアだ…私も酔っ払ってる。
もうこのテンションのまま行こう。

「澪、私とけっこ「ちょっとストップ」

私の言葉を手で遮る澪。
あれ…?私、振られる…?
と勝手に動揺する私をよそに、澪も長い綺麗な髪を数本抜いた。
澪の長い髪は長いから、私の薬指に巻きつけるのは割と大変そうだった。
二人で、お互いの髪を巻いた薬指を見て、えへへと笑いあってる。
なんとも奇妙な光景だことで。

「もっかい言うぞ」
「待って」
「なんだよーもー」
「…一緒に言おう」
「…ほんと、変なプロポーズになっちゃうなぁ」
「あ、言っちゃってるぞ、馬鹿律」

こうして、私達の秘密ひいては罪は誰に知られることもなく、ワイドショーになることもなく…。
私達の自分勝手なプロポーズを最後に、あっけなく幕を閉じてしまったのであった。

END


  • 良かったです。読みやすいし構成もしっかりしてた! -- 名無しさん (2011-06-17 00:56:41)
  • すごい・・・いいです。 -- 名無しさん (2011-08-02 21:34:00)
  • きゅんきゅんした -- 名無しさん (2012-02-20 23:44:12)
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