けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

おそろ

最終更新:

mioritsu

- view
だれでも歓迎! 編集

大学生活が始まって少しした頃。私は大学入学と同時期に居酒屋のバイトを始めた。
そのバイト先の居酒屋の休憩室に居た時の事。
「あぁー疲れたー」
勤務を終えた先輩が休憩室に入って来た。
「あ、田井中さんお疲れ」
「お疲れ様でーす」
私は先に上がり、居残ってレシピ表をチェックしていた。
「お、勉強中ね?感心感心」
先輩はテーブルに左手を付き、右手で椅子を引いて座った。
私は、その手の薬指の指環に気付いた。
「綺麗な指環ですね」
「あぁ、ありがと」
「そーいえば、結婚されてましたっけ?」
「いや、彼氏すら居ないけど」
「ごっ…ごめんなさいっ!!」
「くすっ…いいのよ、普通、左手の薬指に指環はめてればパートナーがいるって思うんだから」
「はい……」
先輩は煙草ケースから煙草を取り出すと、火を点けた。
綺麗な指だった。
「じゃあ、何で指環を?」
私は当然の疑問を投げ掛けた。
「コレ?」
「はい」
「ナンパ避けよ」
「へ?」
「ナンパ避け。ナンパしてくる男に「ごめんなさい」って言って左手を振るとね、大概は指環に気付いて申し訳無さそうに退散してくの」
「なるほど~」
私は素直に感心した。
「田井中さん、恋人居るんだっけ?」
「あ、は、はい」
「心配してるかもよ~?」「何がですか?」
「彼女がナンパされてるんじゃないかー、とかさ。実際されるでしょ?」
「ま、まぁ」
確かにされる事は、ある。全て無視、だが。
「かわいいもんねー、田井中さん」
先輩は煙をふぅ、と吐くと
「…今度おねだりしてみたら?指環」
私に提案した。



私の恋人は秋山澪。彼氏じゃなくて彼女。私達は同棲していて、財布の紐は彼女が握っている。
私は少ない小遣いをやりくりする旦那……みたいなもんか。
おねだりなんて持っての他、だ。
まぁ、それでももう子供じゃないんだし貯金ぐらいしよう、と思い澪に内緒でへそくりがあった。

私は先輩からの提案を素直に飲み込み、ナンパ避けの意味も込めてお揃いの指環を買おう、と決心した。




せっかくだし、内緒で買っといて驚かしてやろう、と目論んだ。別に誕生日とかイベント事は無かったけど、プレゼントを貰って悪い気はしないだろう。
私達は幼い頃から長い時間一緒に過ごしているので、互いの趣味・嗜好はほぼ把握している。
指環のサイズも、デートで立ち寄ったシルバーアクセのショップで「はかってみようぜー」とか言って。
澪の全ての指のサイズを測った時の事を憶えているから、完璧だ。


私は大学が終わってからバイトまでの空いた時間で指環を物色した。
都合良く見付かるかな……と正直不安だったが、良いヤツが見付かった。
派手過ぎず、地味過ぎず。コレなら澪も喜ぶな、と即決!都合、サイズ違いで二個セットで購入。金額の方もへそくりでギリ、クリア!!
澪の分だけラッピングして貰った。
ラッピング中、やたらと小っ恥ずかしくて、ドキドキした。


バイトを終えて、アパートへ帰宅。
「ただいまー」
「おかえり」
ちゅっ
晩御飯の支度中だった澪が出迎え、おかえりのキスをくれた。
二人で顔を見合わせ少し照れると、澪は晩御飯の支度に戻った。
「今日はチャーハンかぁ」
「一緒に食べよ?」
「先に済ませてなかったのかー?」
「うん。今日あんまりお腹、空かなかったからさ」
「そっか」
私はリビングのソファにバッグを置き、キッチンで調理中の澪に話し掛けた。
「みおー」
「なにー?」
「指環、欲しくないかー?」
「欲しいねぇ」
「もし、私が指環買ったらどーする?」
「ん~…」
澪は少し考えた。
「……無駄遣いするなって叱る、かな」
「ふーん」
私はそりゃそうか、と納得した。


「ごちそーさまー」
「ご馳走様」
晩御飯を済ませ、二人で後片付け。
私が食器を洗い、澪が拭いて所定の位置に仕舞う。
片付けを済ませた私達はリビングでダラダラ。テレビ見たり、雑誌読んだり、CD聴いたり。
ココで私はソファに置いたバッグから例の指環を私の分だけ取り出して、はめた。
「みーおー」
「ん?」
雑誌を読んでいた澪が私の呼び掛けに振り向いた。
「じゃーん!!」
私は左手を見せ付けた。
「ゆ、指環?」
澪は少し狼狽えた。
「うん!」
「どうしたんだ?ソレ」
「買った!」





「……はぁ」
澪は溜め息をついた。
「さっき聞いたのはコレか…」
呆れ顔の澪。
「無駄遣いするなって叱るって。言っただろ?」
「……買っちゃったんだもん」
「まぁバイトしてるけどさ、私達まだ大学生なんだから。やっぱり無駄遣いとか控えて、ちゃんとやりくりしないと…」
小言を並べ始める澪。
私は口を尖らせつつ、澪の背後に回った。
「律、ちゃんと話を聞きなさい」
私は発言を無視して、後ろから澪の両手を掴んだ。
「何の真似だ?」
「いーから、こっち」
「…もう」
澪はつくづく呆れた、みたいな溜め息をついた。
私はその澪を背後からソファに向かうように促した。
仕方無しに従う澪。
「なんなんだ?一体」
私に従いながらも呆れ声の澪。
ぺたん
私と澪はフローリングの床に座り込む。
ごそごそ
私は澪越しにバッグからラッピングされた指環の箱を取り出した。


「……なに?」
私の手の上に乗った箱を見た澪は、不思議そうな声に変わった。
「…開けてみなよ」
カサカサ
澪は丁寧にラッピングを外し、箱を開けた。
「……」
箱の台座に座った、指環が現れた。
「……なに?これ」
呆気に取られた様子の澪。
私は右手で指環を台座から取り出し

ちゅっ

指環にキスをした。

箱を置き、左手を澪の左手に添えて、指環をはめた。
「……ぴったり」
呆気に取られたままの澪が驚いた。
私は、自分の左手と澪の左手を絡め、薬指を並べた。
「おそろい、だよ」
綺麗な指環が、並んだ。
「………………」
澪は暫く黙った。
澪の鼓動が速くなるのが、背中越しに分かった。

ばっ
澪は振り向いた。
がばっ
澪は、抱き着いてきた。
抱き着く直前、顔が一瞬見えた。

涙目だった。

「無駄遣いするなぁっ!!」
澪は抱き着きながら、私を叱った。
台詞と行動が伴っていなかった。
が、声がやや涙声だった。
「…ごめんなさい」
私は静かに謝り、澪の後ろ髪を撫でた。





「っ……」
澪は少し黙ると、抱き着いた腕を離した。
「……」
やっぱり、涙目だ。
そっ…
私は、左手で澪の頬を撫でた。
すると澪は、私の左手をそっと掴んだ。
「ん?」
「………わたしも、はめる」
澪は少しいじけた様な声で、私の左手から指環を外した。

ちゅっ

澪は指環にキスをして、私の左手の薬指に指環をはめた。
澪は自分と私の左手を並べ、嬉しそうに言った。

「……おそろい」

私はふふっ、と笑った。
澪は恥ずかしそうにてへっ、と笑った。
お互い、頬が赤らんでいた。
そして

ぎゅっ

綺麗な指環をはめた手を握り

ちゅっ

キスをくれた。
とても優しい、笑顔。

私は少し恥ずかしくなり、思わず目を背けた。
「ふふっ…」
澪は少し笑うと

そっ…

左手で、私の頬を撫でた。


私達はひとしきり照れ合い、互いに寄り添いながら雑誌を読み始めた。
「律ー」
「なにー?」
間もなく、澪が話し掛けてきた。
「なんで指環買ったの?」
そういえば、何も言ってなかった。
「あ、ナンパ避け」
「ナンパ避け?」
「うん。バイト先の先輩が教えてくれたんだ」
「ナンパ避けって?」
「もしナンパされても、ごめんなさ~いって左手振ればさ。男も指環見て退散してくんだってさ」
「あ、そゆこと」
「うん」
私は雑誌を置き、横から澪に抱き着いた。
「可愛い澪ちゃんに悪い虫が付かないようにーって思ってさ!」
「……もうっ」
澪は赤面した。
「せっかくだしって思って。おそろにしたんだー」
私は抱き着いた左腕を澪の顔の前に回し、左手をぱっと開いて見せた。
「…高く、なかったのか?」
「ふふーん。へそくり!」
「へそくり?」
「そ。私もへそくりくらい、してたんだぜ?」
「へぇ」
「無駄遣いばっかりしてないよ。もう大学生、大人だしな」
「まぁ、ソレが普通なんだけどな」
「ま、まぁな!」
「でも…」
澪は右手を私の左手に添えた。
「…残念ながら悪い虫、もう付いてるから」
「へ?」
私が目を丸くすると
「ちっちゃくて、騒がしくて、大雑把で……」
澪は左手で私の左手を撫でながら
「……でも、私の事、こーんなに愛してくれてる、わるーい虫がな!」

ちゅっ

キスしてきた。
私の顔は一瞬で赤くなった。
「……」
思わずぼーっとする私。
「くすっ」
澪は私の顔を見て少し笑い、左手で私の頬を撫でた。

綺麗な左手の、綺麗な指環の感触が、新鮮だった。


名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー