けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

病澪JOKER

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匿名ユーザー

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 バレンタインを明日に控えて、律のチョコ作りに私は付き合っていた。
試食して欲しいという誘いだったのだが、
手作りを勧める律の声に押されて私も作る事になった。
 当初は律と一緒に菓子を作る事を楽しんでいた。
だが時が経つにつれ、
懸命にチョコレートを作る律の姿に私の心は乱されていった。
懸命な姿は見惚れる程の魅惑を律に添えるが、
今日に限っては不快の念が湧き上がってくる。
私以外の人に渡すチョコレートに対して懸命になる、
独占欲の強い私にとってそれはあまり好ましい光景とは言い難い。
「随分頑張って作るんだな」
「そりゃ、喜んで欲しいじゃん?
皆には世話になってるしさ」
 律は屈託なく笑った。
対する私は顔を顰めて言う。
「練習もそのくらい真面目だったら助かるんだけどな」
「そのお詫びも込めて、だよ。
特に梓からはしょっちゅう練習練習って言われてるからな」
 律はそう言うと、
スプーンに載せたクリームを差し出してきた。
「どうかな?甘めに仕上がってる?」
 舌にのせた瞬間、上品な甘さが口腔内に広がる。
クリーム一つにさえ、律の料理の腕が際立つ。
「うん、食べやすい甘さだな」
「良かった」
 律は安心したように呟くと、片目を閉じて言葉を続ける。
「梓ってさ、ケーキとか好きじゃん?
だからちょいケーキっぽくして、クリームも添えようって考えたんだ」
 私は複雑な思いだった。
私が行っている事は、
チョコレートの試食を通じて最適な味を提供するサポートだ。
そしてそれは、私以外の人に渡すチョコレートの為だ。
私には自分の行っている事が、まるで敵に塩を送る行為のように感じられる。
「そうか。でも私、チョコレートとか初心者だし、
あまり手の込んだの作れないよ」
 少しだけ、拗ねるような語調になった。
「ん?簡単なのでも充分じゃん?
気持ち込めて作れば、相手は喜んでくれるよ」
 律はそう言ったが、最適なアドバイスとは言い難かった。
今の私の心は、律からチョコレートを貰う相手への妬みに支配されている。
その状態で込められる気持ちなど、害意でしか無い。
私はせめてチョコレートには害意が篭らぬよう、
なるだけ私情を排してチョコレートを作っていく。
「さって次はっと。ムギかなー」
「普段からお菓子貰ってるしな。そのお礼とは感心だよ」
 敢えてこんな言葉を放ったのは、自分を納得させる為でもあった。
普段からお菓子を貰っているムギへの礼は当然の事、
そう自分に言い聞かせる。
律がチョコに込めているのは礼意であって恋情では無い、と。
 だが私の脳裏では、
律とムギが二人っきりで遊んだ日の事がフラッシュバックしていた。
その映像を打ち消すように、大丈夫だと自身に強く言い聞かせる。


「澪ー?どうした?難しい顔して」
 ふと気付くと、律の気遣うような顔が眼前にあった。
私は手を振りながらそれに答える。
「いや、チョコって難しいと思ってさ」
「そっか。まぁ慣れないうちはそんなもんだよ。
それはそうと、これも試食頼むわ」
 私は雑念を頭から追い払って、
律が差し出してきたチョコレートの液体を口に含む。
カカオの苦味が口中を刺激したが、それは決して不快では無かった。
ただ苦いだけのビターチョコレートとは一線を画している。
「ん、苦いけど美味しいよ」
「そっか。これも成功っと。
ムギって結構甘い物持ってくるけど、実は唯とかに合わせてたんだな。
アイツそれなりに苦いのも好きみたいでさ」
「詳しいんだな……」
 律は部員の嗜好を把握しているらしい。
それは好ましい友人関係を形成している事の表れでもあるのだが、
翻せば私以外の人間に対する親近も表している。
「まーな。お次は唯だ。
あいつ、甘いもん好きなんだよなー」
 律は楽しそうに──
否、幸せそうに笑った。
「……確かにあいつの甘い物への執着は凄いけど、笑う程面白いか?」
 対する私の胸中は穏やかではない。
その事を表すように、語調がやや刺々しくなった。
「いや、面白くて笑ったんじゃなくってさ。
ほら、あいつ美味しそうに食べてくれるじゃん?幸せそうにさ。
あんな無邪気に喜んでもらえると、こっちまで幸せになるよ。
あの顔想像しただけで、私もついにやけちゃうし」
 私だけが律を幸せにできる、流石にそこまでは思い上がっていない。
それでも律の話は、私の心に深刻な一撃を加えていた。
作った菓子を唯が幸せそうに食べる姿を見ると、
律は自分も幸せになると言った。
それは唯の幸せと律の幸せがリンクしているという事だ。
まるで幸福を共有する夫婦のように。
「唯は食い意地が張ってるからな」
 唯への嫉みが毒となって私の口から漏れ出る。
嫉妬心は時として友人にすら牙を剥く。
きっと私は、「友人と恋人、どちらを取りますか?」という
二つの高価値が鬩ぎ合うジレンマに難なく答えられる人間だろう。
律を取ります、と。
実際に友人である唯に対して、激しく滾る嫉妬を向けているのだ。
「ははっ、言えてるなそれ。
食い意地の張った唯には、いっぱい作ってあげないとな」
 律は私の言葉に毒を感じ取らなかったのか、朗らかに笑った。
そして、クリームをスプーンに載せて差し出してきた。
「試食、頼むわ。結構甘くなってると思うけど」
 梓のクリームを試食した時と重なる光景に、指摘したい事を思いつく。
けれどスプーンを差し出してくる律の仕草を無下にしない為にも、
指摘は試食した後で行うべきだろう。
唯に対するクリームが作られた今となっては、どうせ遅い指摘なのだ。
 だから今は黙って差し出されたスプーンを咥え込んで、
舌を絡ませクリームを舐め取った。
途端、濃密な甘さに舌が蕩けた。
これが唯の為に作られたもので無かったのならば、
この甘さに多幸すら感じた事だろう。


「どう、かな?」
 これ程の腕を持ちながら、訊ねる律の瞳には不安の色が含まれている。
「うん、かなり甘く仕上がってるよ」
「甘過ぎて気持ち悪いとか無い?」
「ああ、全然そんな事無いよ」
「良かった」
 律は目を瞑り胸に両手を重ねて、安堵の息を漏らした。
その仕草に試食が一段落付いた事を感じ取り、
私は先程指摘しようと思っていた事を口にする。
「でもさ、何でクリームをもう一度作ったんだ?
梓のチョコ作ってた時のクリーム、あれを使い回せば楽だったのに」
「いや、味の好みって別れるからさ。
甘さだけじゃなく、クリームの口当たりとかでも。
だから単純に砂糖増せばいいって話でも無いんだよね。
特に唯はふわふわしたヤツが好きだし」
 私が思っていた以上に、律は唯の嗜好に詳しいらしい。
そして、その唯の為ならば労をすら厭わないらしい。
確かに唯と律は仲が良い。
普段から漫才じみた掛け合いを楽しみ合っている二人だ。
 だからこそ私は、
唯へ向けたチョコレートの質に拘る律に不審を抱く。
もしかしたら私を裏切って唯と恋仲になっているのかもしれない、
という不審だ。
 不審が猜疑心を呼び、私を疑心暗鬼へと誘う。
戯れあう唯と律の日常光景の一つ一つが、
恋仲である事の証左となって私の脳裏に再生される。
律に対して唯が呼称するりっちゃん隊長とは恋人の隠語ではないのか、
と。
練習よりもティータイムを重視する姿勢も
二人語り合う時間が欲しいからではなないのか、
と。
「澪ー?どうした?暗い顔して。
手も止まってるけど」
 追い詰められた私の心を救うように染み渡る律の声が、
脳裏を巡る譫妄じみた映像の幕を下ろした。
私が猜疑に苛まれ追い詰められた原因は律にもあるのだけれど、
心配そうな瞳を向けるその顔を見ただけで全て許してしまった。
やはり私は律に心底惚れているのだと、改めて確信する。
 苦しみはまだ心に蟠っているけれど。
憎しみも消えずに燻っている。
ただ、矛先を変えただけだ。
律と唯から、唯のみへと。
否、唯だけじゃない。梓もムギも嫉みの対象だ。
「いや、ちょっと考え事してただけだよ」
 そんな嫉妬心は律の手前、おくびにも出さない。
嫌悪の念を感じ取られる事は避けねばならない。
律が私と唯達を天秤に掛け、もし唯達へと秤を傾かせてしまったら。
それが怖いのだ。
「そ?ならいーけど。
そろそろ疲れてきたかもしんないけど、後少しで終わるから
もうちょっとだけ付き合ってよ」
 もうすぐ日付すら変わろうとしているのに、
律は更に付き合って欲しいと頼んできた。
けれども私は快諾を返す。
「ああ、とことんまで付き合うよ」
 きっと次こそ、私の番だろう。
その期待があったから。


「んじゃ、いちごの分だな」
 激烈な衝撃が私を見舞い、冒嫉が胸中で沸々と滾る。
期待が覆された事だけでは無く、
対象がいちごであるという点も私を嬲った。
若王子いちご、
彼女は律から「お姫様みたい」という言葉で形容された事のある少女だった。
その件もあり、私はいちごに対して快い感情を抱いていなかった。
「いちご、ね。軽音部のメンバーじゃないんだな」
「まー、クラスメイトだし」
「でも、クラスメイト全員に配るワケでも無いんだろ?
いちごとはいつの間に仲良くなったんだ?」
「学園祭辺りからかな?」
 即ち「お姫様みたい」という発言の辺りに一致する時期という訳だ。
あのお世辞を真に受けて慕われているとでも勘違いしたいちごが、
律に付き纏って仲良く振舞ったという事か。
挙句、あろう事かバレンタインチョコまで要求したのだろう。
その時、疑心が再び擡げて私を揺さぶった。
果たして本当に勘違いなのだろうか?
そして、チョコレートはいちごからの要求なのだろうか?
 私は勇を鼓して、律に問いかける。
「いちごから催促受けたのか?」
 律は首を振った。
「いんや、一応好みは聞いたけどね。
仲良いから友チョコってノリで自発的に渡すんだよ」
「そうか」
 私の胸中は穏やかではない。
友チョコという言葉も決して額面通りには受け取れなかった。
仲良い、という言葉の方に対して心が過剰に反応してしまっているのだ。
 影響は最早心に留まらず、
胃を苛む疼痛という形で身体面にまで及んでいる。
そして、表情にまで及びそうになっていた。
「ちょっとトイレ借りるね」
 般若の如き形相を律の前で浮かべる訳にもいかない。
憎しみを向けるべきは唯やいちごといった面々であって、律では無い。
だから私は適当な理由を付けて、キッチンを後にする。
背後から「ほーい」という律の声が聴こえた。
私の心境とは対極を為す、楽しそうな声だ。
 私は便座に腰掛けると、胃を抑えて蹲った。
そして、思う存分顔を歪めて唯やいちご達へ向けた憎悪を滾らせる。
律が居ない環境下では、もう繕う必要も無い。
「梓、ムギ、唯、いちご……。
私の律を誑かすな……」
 低い声で彼女達の名を呼んで、虚空を睨みつけてやる。
どの存在も確かに魅力的かもしれない。
けれど、律の相手としては相応しくない。
間違った相手を選んで律が道を踏み外さないようにしなければならない。
私が排除してあげなければ。
暗い衝動が心に擡げて、私を闇へと誘う。
そしてその誘いを敢えて断ろうとは思えなかった。
私が闇へと落ちる代わりに律に光を届けられるならば、いくらでも汚れてやる。


 それにどうせ、律が私以外を選んだ時には正気を保てないのだ。
気の狂った私はきっと、律の選んだ相手に対して衝動のまま行為するだろう。
その確信があるからこそ、律は私以外が相手では幸福になれないと断言できる。
 まるでトランプのジョーカーだ。
ルール次第で、災厄としても切り札としても作用しうる。
律に課せられたルールは私を選ぶこと。
それを守ってくれれば、律を幸福で満たす切り札となろう。
他人に課せられたルールは、律に近づかないこと。
抵触すれば災厄として作用してやる。
 暗い決意を胸に漲らせ、私はお手洗いを出た。
時刻はもう0時を回っている。
もう、私のチョコレートを作る時間なんて無いのかもしれない。
それでもこんな時間まで付き合うのは、律が好きだから。
けれど付き合っている内容は他の女に渡すチョコ作りのサポートだ。
まるで自分が道化師のように思えてくる。
敵のチョコの品質確保の為に夜中まで付き合っているのだから。
それが道化でなくて一体何だと言うのだろう。
そういえば、ジョーカーは道化師も意味していた。
そう考えると、道化だって私にお似合の役柄なのかもしれない。
でも道化の時間ももうすぐ終わる。
それが終われば災厄として、ジョーカーの役割を務めよう。
梓、ムギ、唯、いちご──覚悟はいいか?
 キッチンに戻ると、朗らかな律の笑顔に出迎えられる。
「おー、澪しゃんお戻りですか。
これ、試食頼むわ」
「いいよ」
 今は道化師でも。
「味はどう?」
 訊ねてくる律の顔は何処か嬉しそうだった。
「うん、美味しいよ」
 素直な感想を伝えてやる。
確かに美味しい。
この美味しさが翻って、これを貰ういちごを妬んでしまうくらいに。
「良かった。そうだ、澪もチョコ作ってたじゃん?
1個試食させてよ」
「どうぞ?」
 味に自信は無かったが、それでも律は
「美味しいよ」
と言ってくれた。
その顔に嬉しそうな笑顔を漲らせながら。
この笑顔は誰にも渡さない。絶対に。
 もっとその笑顔に浸っていたかったけれど、
律はすぐに背を返してドライフルーツをチョコレートで
コーティングする作業に移ってしまった。
律の笑顔をいちごに盗られたような感覚が私を襲う。
実際、今作っているのはいちごのチョコレートなのだから。
 私の焦燥など他所に、律は手際よく作業をこなしてゆく。
コーティングする際に溶けたチョコレートが律の手に付着するが、
構う事無く素早い動作で作業は続けられた。
「よし、後は冷やせばいちごや唯達のチョコは完成だな」
 その作業を終えた律は、満足気に呟いた。
「お疲れ様」
 この労いの言葉は、律だけではなく自分にも向けられている。
道化師の役割お疲れ様、という意味を込めて。
ジョーカーはいよいよ、災厄となって唯達へと牙を向ける。
心に篭って排除を訴える闇に、いよいよ意識も行為も預けよう。
そして律に近づく輩を──


「みーおっ」
 その時、唐突な律の声で私は我に返った。
「ん?」
「あのさ、私が澪のチョコを試食した時、もう0時回ってたよな?
澪が私の作ったいちご向けのチョコ試食した時も、0時回ってたよな?
つまりね……」
 律は一端言葉を切ると、
頬を染めて上目で私を見上げながら言葉を続けた。
「バレンタインデーの初チョコは、私は澪から確かに貰ったよ?
澪もさ、私からのチョコが初めてって事だよ?
あ、勿論ちゃんとしたチョコも今から作るよ?
でもさ……試食って形でも初めてのチョコは、
私達同士で食べたかったし食べて欲しかったからさ」
 私は弾かれたように律を見詰めた。
その律は申し訳無さそうな表情へと転じて、更に言葉を紡ぐ。
「ごめんな?こんな時間まで付き合わせちゃって。
必要以上に時間掛けたのも、
どうしても14日始まった段階で試食して貰いたかったからなんだ。
他の子から貰ったチョコを澪が真っ先に食べるかもしれない、
そう思うと居ても立っても居られなくなって。
私の我侭に付き合ってくれて、ありがとな。
もう帰ってもいいよ。後はさ、澪のチョコだけだから」
 律の声を聞きながら、
私は心に巣食っていた闇が浄化されていく事を感じていた。
唯達に嫉妬する必要など無かったのだ。
私は律から特別扱いを受けていたのだから。
初めてを貰う、という破格の扱いを。
 唯達に対する嫉妬心が消え失せ、胃を苛む疼痛も消えた。
代わりに、律に対する更に貪欲な感情が芽生える。
「いや、最後まで付き合うよ。
そっちのチョコもその場で頂く。
できたてが一番美味しいしな。
ところで律。私の好きな味は分かってるか?」
「ん?澪も甘いの好きだろ?
でも苦味もちょい混ぜて、ティラミス作ろうかと思ってたんだけど。
リクあるなら応えるよ?」
「やっぱり分かってなかったな?
私に帰ってもいいと言った時点で、分かって無い事は明白だけどね。
律、私が一番好きな味はね」
 私は律の手を取り自分の唇へと近づける。
そしてその指先に舌を絡めて、
未だ付着しているチョコレートを舐め取った。
「この味だよ」
 途端、律の頬を彩っていた朱が表情全体へと伝播した。
「み、澪っ。それ、いちごと同じチョコって意味じゃないよな?
えっと、つまり……」


 言いよどむ律が可愛らしくて、私は含み笑いを漏らす。
「律は本当に可愛いな」
「おまっ。お前だってもっと恥ずかしがれよなー。
何つーか、照れるのは普段はお前の役割じゃんかー。
いや、もう普段って時間でも無いけど」
 律は時計を見ながら言った。
「ああ、深夜だな」
「あのさ、澪。シンデレラあるじゃん?」
「あるけど、唐突にどうした?」
「いや……元は灰被りっつー冴えない貧乏娘だったのに、
王子様の后になったの思い出してさ。
それが……私の今の状況と被ってさ。
私みたいな冴えない女選んでくれるって事だろ?
いや、私をシンデレラに喩える事自体おこがましいけど。
そんな可愛くないし」
「可愛いよ、律は。卑下するな。
私の方こそ、選んでくれてありがとう」
 律は暫く黙っていた後、意を決したような調子で言葉を放つ。
「私のシンデレラ気取りを許してくれるなら、教えてよ澪。
幼い頃から気になってる事。
あの童話、0時を回って魔法が解けて舞踏会を去っていったけど……。
あの時シンデレラが逃げ切れずに、
王子様に捕まっていたらどうなっていたんだろうな?
それを、教えてよ」
「いいよ、お姫様」
 私は律を抱き抱えた。
右腕で律の両膝を支え、左腕で背中を支えて。
「律の部屋でいいな?」
「いいよ。あ、でもチョコ持ってく。
バレンタインだし、チョコレートも必要だし。
あ、私、無駄毛とか生えてないから、
チョコが毛に絡んで食べにくいとか無いから安心してよ」
「それはご褒美だな」
 私に抱えられたまま、
律は湯煎されたチョコレートが入ったボウルを大事そうに抱えた。
「みーお」
「ん?」
「今晩限りじゃなくてさ、ずうっと一緒に居ようね」
 腕の中で、律は何時に無く甘えた調子で言った。
その声調と今晩限りという言葉に、律の不安が表れている。
だから私は安心させるよう力強く告げる。
「当たり前だ」
 律は安心したように、はにかみ笑いを零した。
安心しているのは私とて同様だ。
律が私を想ってくれている確証があるのなら、
私はもう誰かに暗い嫉妬の情を向けずに済む。
少なくとも破壊的な衝動に駆られずに済む。
 そしてその確証は、
律が私を特別扱いしてくれた事で得られていた。
「ありがとな、律」
 気付けば、もう律の部屋まで辿り着いていた。
両手が塞がっている私の代わりに、
律が器用に扉を開いてくれた。
「ん?何のお礼?」
「私を助けてくれた事」
「私、何かしたっけ?」
「ああ、したよ」
「何を?」
「私の」
 私は律をベッドに下ろすと、髪を優しく撫でながら言葉を続けた。
「闇を浄化」


<FIN>


  • 無駄毛のとこで笑ってしまったw -- 名無しさん (2011-03-27 10:47:30)
  • いいわぁ... てか無駄毛てww -- 名無しさん (2011-11-03 11:52:55)
  • おい無駄毛で雰囲気ぶちこわしwww -- 名無しさん (2012-04-06 23:59:59)
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