けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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今日は少しだけ風が強い。
 深夜の部屋には、ごとごとと窓が風に揺れる音が響いている。
(……明日は雪が降るかもしれないんだっけ)
 昼間に、お天気お姉さんがにっこりとテンプレートな笑みを浮かべてそう言っていた気がする。
 この部屋の冷え込み方を思えば、そんな予報も納得できるというものだ。

(……にしても)
 ようやく温まってきたベッドの中で、小さく呟いた。
 視界に入るのは律の小さな背中。ふたりの間には、微妙な距離。
 壁際が落ち着くとかなんとかで、律はベッドに入るやいなやころころと転がって私から離れていってしまったのだ。
 ……律のやつ、一緒に寝ようなんて自分から言ってきたくせに。
 ひとりごちてため息をつく。
「……ばか律」
 そんなに離れてたら寂しいだろ、ばか。
「……澪ちゃん、聞こえてるんですけど」
「なっ」
 予想もしなかった反応に、びくりと体が震える。

「ね、寝たふりしてたのか」
「違うって。風がうるさくて目ぇ覚めたの」
 律は私に背中を向けたままでそう言うと、ぽりぽりと後頭部を掻く。
「そしたらいきなりバカ呼ばわりと来たもんだ」
「ご、ごめん」
 確かにあまりに理不尽だったか……。
 私が小さく謝ると、律は別にいーよ、と笑って返してくれる。
 学校ではあまり聞くことの出来ない、律の落ち着いた声。
 私はそれが大好きだった。

「……ねー、律」
「うん?」
「もっと近く来て」
「…………」
 律は私の言葉にほんの少しの間を置いて、やがてくるりと寝返りを打った。
 そして長い前髪の下から私を見て、そのまま体をくねらせてすぐ近く……それこそ息のかかる距離までやってきてくれる。
「ね、抱きしめてもいい」
「ん」
 そっけない返事を待ってから、律の体を抱き寄せる。
 ついさっきまで夢の中にいたからなのか、律の体はまるで赤ん坊のように温かかった。



 と、そんな律の体温を楽しんでいると、
「なんかさ、澪って変わったよな」
「変わった? どこが」
「なんつーか……素直になった」
「……まるで今まで素直じゃなかったみたいな言い方だな」
 まあ……確かに素直な方ではなかったけど。
 そんなことを思いながら苦笑していると、律が「だって」と続ける。 
「前は『近くに来て』なんて絶対口には出さなかったじゃん。物欲しげにこっちじーっと見てるだけで」
「そんなこと……」
 なくは、ないか。相変わらずな自分にやれやれと呆れる。

「そういうの、いや?」
「なわけないだろ。そーじゃなくて、嬉しいなって。へへ、愛されてるなーと思ってさ」
「…………」
「あ、赤くなった」
 ぷにょ、とほっぺをつつかれて余計に赤面してしまった私を見て、律はけらけらと笑う。
 しょ、しょうがないだろ。
 いきなりそんなこと言われて赤くならない人なんて、いるはずがないじゃないか。多分。

「ありがと、澪」
「なに、急に」
「そういうの言ってくれるのって、あたしだから、なんだよな」
「……ん」
「……誰にでも言ってたりしないよな? ファンクラブの子とか」
「当たり前だ」
 ごち、と一発げんこつをお見舞いして、私は律を抱きしめる力を強めた。
「こんなの、律にしか言わない」
 決まってるだろ。私がこうしたいと思うのは、律だけ。唯一の相手なんだから。

「へへ、よせやいよせやい。照れるだろー」
 律は冗談めいた口調でそう言うと、私の胸元をトコトコと叩いてこう続けた。
「でも、ありがと」
「別にお礼なんて言わなくていいよ」
「んー、まあこれに限ったことじゃなくてさ。いつかちゃんと言おうと思ってて」
 律のその言葉に私は首を捻る。
「ちゃんとって……何を」
「だーかーら、ありがと、って」
「?」
「だーもう、鈍いな! いつもいろいろありがとっつってんの!」
 半ばやけになったようにして言うと、律の腕が私の背中に回される。
 胸に顔を埋められて律のその表情は見えなかったけれど、ちょろりと覗いた耳が真っ赤になっている。
 もしかしなくても……ものすっごく照れてる。そう思ったら、思わず頬が緩んでしまった。

「律」
「なに」
「こっち見て」
「いや」
「律の顔、見たいな」
「素直に言ったってこればっかりはイ・ヤ・だ!」
「律とキスしたいのに」
 ぴくり、と腕の中の律が震える。
 やがて、律はもそもそと顔を上げると、
「……そういうのズルイ、澪」
 そう言って真っ赤な頬のままでそっと目を閉じた。



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