けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

SS178

最終更新:

mioritsu

- view
だれでも歓迎! 編集

さて、ここにココアの入ったマグカップがある。
今私は、慣れない左手でそれを持って、プルプル震えつつ頑張って飲んでみたところだ。
向い合って座っている澪は、外を眺めていて私の方を見ていない。
まぁ、それを見計らって飲んだわけだけど。
持っていたカップをテーブルに置き、澪に声をかける。

「このココアうまいよ、澪も飲んでみ」

出来る限りさり気無く。下心を読まれないように、慎重に。

「そうなのか?じゃあ、ちょっともらおうかな」

澪がこちらを向き、テーブルに置かれたカップに左手を伸ばす。
それを食い入るように凝視する私。
澪の手が止まり、訝しげな顔をしてこっちをみてくる。

「何?」
「え、いや。何も」
「なんかそんな見られてると、飲みづらいっていうか」

なんということだ、これじゃあ何か有りますって言ってるみたいなもんじゃないか。
いかんいかん。

「あっははは、ごめんごめん!ま、気にすんな!」

そう言ってさっきの澪と同じように外を眺める。
顔には冷や汗。
変に思われてやいないだろうか、大丈夫かな。頭の中はそれでいっぱい。
澪にバレないように小さく深呼吸をして、澪の方を向く。

澪が、ココアを飲んだ。
作戦成功、と喜ぼうとした私の目に、とんでもないものが映った。

なんと澪は右手でココアを飲んでるじゃあないか。
どういうことだよ、澪は左利きだろ?何で急にこのタイミングで右手で飲むのさ。
あれか、もしかして私が飲んでるところ見てたのか?……え、それってつまり拒否されたってことだよな。

「あ、美味しい」

グルグルと頭の中に負の感情がにじみ出てる私を余所に、澪は少し頬を染めながらそういった。
そうかそうか、そんなに美味しかったか。このやろう!
せっかくさ、せっかく頑張ったんだぞ。私だってそう言うの結構やりたいって思う方でさ!
あぁもう!ばかみお!

火山の噴火、怒りの爆発。
私は澪に抗議した。

「あー、もう!なんで、右手で飲んでんだよ!」
「……え?」

急に怒りを顕にした私に何事かと目を瞬かせる澪。かわいいけど、ゆるさーん!

「そりゃあさ、間接キスなんて今更だよ!アイス食べあったりしてるしな!
でもさ、やっぱりこういうのってイイなとか思ったりするわけじゃん。
だからこう、さりげなーく私が頑張って左手で飲んだというのに、お前は!
そんなに嫌か!嫌なのかちくしょー!」

早口でまくし立てるように言い終わってから、気づく。
やばい、何言っちゃってんだ私。

「……」
「……」

暫く沈黙。
あんまりに恥ずかしいから澪の方は見れずに俯く私。
何時もならおちゃらけて冗談にしてるとこだろ、私。なんで今やらないんだ。はやく、なんか言わないと。


「……律」
「なに」

沈黙を破ったのは澪の方だった。

「お前、左手で飲んでたの?」
「だからそう言って……」

言いかけて思い出す。
あぁそうだった。澪は私が左手で飲んでるところを見ていない。

そして、その状態で澪は右手でココアを飲んだ。
それはつまり、澪も私に内緒で間接キスを目論んでいたってことになる。
互いの考えがちょうど重なったのにすれ違う不思議。何これ。馬鹿みたいじゃん。

「……っふ」
「あははは」

どちらからとも無く笑う。これはもう、笑うしか無いだろ。
こんな偶然、滅多にないって。

暫く笑い合ったあと、澪をからかってやることにする。

「しっかし、澪が間接キスなんてなぁ」
「う、うっさい、律だって」
「いやいやぁ私はキスでもいいんですのよ?」

そう。私がわざわざ間接キスで我慢するはめになったのは、他でもない澪がキスを恥ずかしがって拒否するから。
どう仕様も無い私の欲求をそういう形で逃がすという考えだったのだ。
我ながら酷い。だけど、仕方ないってもんでしょ。うん。

「あの、えっと……その、な」

それなんだけど……と言いながら両手で服をぎゅっと握りながら口ごもる澪。
少し俯きながら、顔は真っ赤になっている。
これは澪が言いたいことがあるんだけど、恥ずかしくて言い出せないときのお決まりの仕草。
見慣れてるけど、慣れない。……だって、かわいいんだ。

「どした?」

こういう時は、出来る限り優しく訊ねやる。もちろん、催促は厳禁。
澪が言い出すまで、待つ。そう、待てと言われて健気に待つ犬のごとく。

「は、恥ずかしいんだけど。その……私もしたいな、とか……思って」

最後の方は、もう蚊の鳴くような声になっていた。
でも、ちゃんと私に届いてる。澪が言ってくれたこと。
こういう風に言うのだって澪には結構ハードル高かったはずだ。
それを私のために。……そう思ったらニヤニヤが止まらない。

「へへへ」
「な、なんだよ」

抑えきれずに笑ってしまった私に不満そうに頬をふくらませる澪。
こんな表情見れるのも私だけなんだなあ、とか思ってまたニヤける。へへへ。

もうだめ、嬉しすぎて抑えきれそうにない。

「んじゃ、してもいい?」
「えぇ?!……こ、ここでか?」

にんまりと肯定の意を示すかのように微笑んで返す。

「こ、ここでは……ちょっと、流石に、なんていうか」

アタフタと慌てながら言う澪。

「ここでしちゃいますよん。あったりまえでしょー」

そう言いながら、マグカップを何時も通り右手で持つ。
そして、澪が口をつけたであろうその場所に、ちゅっとワザと音をたてて口付けココアを飲む。

ぽかんとした顔をしてソレを眺める澪に見えるようにカップの縁をちょんちょんと示す。
そしていたずらっぽい笑みを浮かべつつ口パクで『間接キス』といってみせる。

漸く理解したのか澪はボンッと音をたててゆでダコみたいに真っ赤に染まる。
ただでさえ赤かったのに更に赤くなっちゃったよ、ははは。

「なっ……なっ……おまっ……」

口をパクパクとさせつつうまく言葉にできていない澪が面白い。
頭の中もうパンクしてんだろーなー。
余裕の欠片もないその様子が可愛くて、私は追い打ちをかけるように茶化す。

「あれれー?どうしたのかなぁ。私は普通にココア飲んだだけなのにー」
「……い、今のは普通じゃなかった!」
「やだ、澪ちゃんやーらしー」
「~~~っ!!」

ポカリと一発、頭に鈍い痛み。
はい、調子乗りました。……ごめんなさい。

あ、でも。

「ちゃんとしたのは、家でな?」
「ば、ばかっ!」


おわる。


名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー