けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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澪「ベース? 助っ人?」
律「マキに頼まれちゃって」
澪「ラブクライシスの? アヤって子はどうしたの?」
律「違う違う、別のバンド。なんつったっけ…」
今日は土用の丑の日。夕飯のうな丼を二人でつついていた時だった。
澪「ちょ、ちょっとまってよ。急にそんな」
律「そのバンドのベース、交通事故で利き腕折っちゃったんだって」
彼女もおはしを止めてこちらを見た。
律「8月にライブがあるから急だけどさ」
澪「辞退できないのか?」
律「ポスターもチケットも刷っちゃったんだって。それにこちらの都合だけでって言う事もあるんじゃないかな。学園祭の時の唯みたいな、さ」
律「ライブってさ、バンド組んでる者からしたら最高のイベントじゃん。って言うかこのためにやってるようなもんだし。何とか力になってやりたいなって」
なんて言っていいのかわからなくて、私はとりあえず鰻をかぶりついた。たまの豪勢な食事だからゆっくり味わおうとしていたけど、頭の中はいっぱいだった。
でも、これからのことを考えるといい機会なのかもしれない。こちらも助けてもらえるかもしれないし、参考になることも多いはずだ。
澪「いつなの?」
律「8月21日」
澪「…律」
律「私からも、頼む」


「クローバーの姫子。ヴォーカル」
「ギターのエリ!」
「サイドギターのイチゴ」
エリ「イチゴはヴォーカルも出来るよ」
次の日曜日、町から少し離れたファミレスで私たちは会った。
マキ「放課後ティータイムの秋山澪ちゃん。ヴォーカルもすっごいうまいよ」
澪「い、いえ、今回はベースに専念を……」
よかった、ガールズで。私達より年上だそうだ。
姫子「本当にありがとう。すっごく助かる」
エリ「ドラムはね、他から応援が来るから」
イチゴ「これCD」
な、なんか、みんなすごい慣れてる。私ほとんど話せてない。
姫子「4曲。とにかく時間がないからさ。来週の日曜日にスタジオ予約してあるから、それまでにできるだけコピーして欲しい」
正直会うまではどうやって逃げ出そうって思ってたけど、気迫に圧倒されていつの間にか気持ちが落ち着いていた。
澪「あの、一生懸命がんばります」
エリ「ありがとう」


ムギ「曲調は私たちよりロックね」
唯「声、かっこいいね」
律「うーん、うまいな」
ムギのマンションの一室。この部屋は完全防音になっているから、今はここが私達の練習場所になってる。もらったCDを早速みんなで聞いてみた。
澪「ドラムもいないって言ってたぞ」
律「私は澪を映す係だから」
ムギ「なんか新鮮ね。他のバンドの音源聞くの」
唯「デスデビルのギター、難しかったなー」
2周したところでティータイムにすることにした。
律「私らよりうまい」
ムギ「やっぱりライブこなしてる人は音楽にも緊張感があるね」
唯「プロいね」
澪「私達も負けないように練習するぞ」
来年梓が加入してから本格的に始動する予定だ。
でも、メリハリをつけるために私達も来月、4人でライブをすることにしていた。
律「そっちの練習はいいのかよ」
澪「今日は放課後ティータイムでいたいんだ」
唯「よーし負けないよ!」
ムギ「うん!」


エリ「ちょっとテンポ合わないね」
一度通して出た、最初の言葉だった。
ドラムは今日いないからメトロノームを使ったんだけど、自分のパートを引くだけで精一杯だった。
姫子「でもすごいよ、澪。たった一週間でこれだけ弾けるんだから」
うっ。結構音飛ばしたんだけど。
もう一時間以上ぶっ通しで練習してる。
イチゴ「エリ、少し走ってた。…ううん、全部澪のペースにあわせてやってみよう」
澪「えっ!? ちょっと」
姫子「そうだな」
そんな……私の実力不足で……。
イチゴ「澪はうまいよ。自信持って」
声を出せなくなった私に、今日初めて声をかけてくれた。
姫子「時間がとにかくないからさ。今のメンバーでベストを出せる状態まで引っ張っていかないと。さ、もう一回」
エリ「アカネの前で恥ずかしいとこ見せらんないよ。じゃあ…いくよっ!」


律「今日はもうやめとくか」
たった3曲やったところで律のドラムが止まった。
澪「待って! 私できるから!」
ムギ「まあまあ澪ちゃん。お茶にしましょ」
キーボードを離れてキッチンに入ってしまう。
ライブ本番まで二週間を切っていた。
私は焦っていた。足手まといになりたくなくて、寝る間も惜しんでクローバーの曲をコピーしていた。でも、うまくいかなくて、自分のバンドでさえミスを連発していた。
唯の手に引かれて私もテーブルに座った。ムギの入れてくれた紅茶の湯気が火照った顔に当たって、涙がこぼれた。
律「いくよっ!」
突然律のドラムが始まった。顔をあげると唯もムギも持ち場に立って歌いだした。
澪「フレバー…」
クローバーの曲だった。唯とムギが歌って、早いリズムのそれを律のドラムが支えて。サビに届くと三人のアイコンタクトで一斉に笑って歌いだす。
聞きほれてた。知らなかった。気付かなかった。こんなにいい曲だったんだ。
必死に自分のパートとリズムを追うことしか考えられなくていつの間にか、何も聞こえなくなっていた。
唯「澪ちゃん、私たちも手伝うよ」
ムギ「仲間でしょ? 頼って」
律「頼んどいて、任せっきりにするわけないだろ」
涙が止まらなかった。
四人で演奏して気付いた。
今まで当たり前だと思っていた、律のドラム。こんなに頼りになるんだな。背中から響くバスとスネアのリズムが心強くて、頼もしくて。


エリ「アカネのところに寄っていこうよ」
いつかのファミレスで夕飯を4人で食べていた。
エリ「澪を紹介したいんだ」
澪「事故にあったベースの人ですね」
姫子「あさってのライブに来てくれるんだ」
郊外のアパートの三階だった
アカネ「こんばんわ」
優しそうな目をした人だった。右腕をギブスで固定して包帯を指の先までぐるぐる巻きにしている。
エリ「助っ人の澪ちゃん!」
アカネ「ゴメン、自分達のバンドそっちのけにさせちゃって」
澪「いえ」
壁に立掛けられた青いベース…だったものを見つけた。ブリッジが真っ二つになってる。
アカネ「変わり身になってくれたって思ってる」
エリ「治ったらみんなで新しいの買いに行こうよ」
イチゴ「エリ」
姫子「楽しみにしててよ、ライブ」
アカネ「うん。最前列にいるから。…じゃ、ちょっといいかな」
エリ「澪、ちょっと外すね?」
澪「えっ?」
面食らう私を置いて三人は部屋から出てった。
アカネ「私がね、みんなにお願いしたの」
扉が完全に閉まるのを待って彼女は口を開いた。
アカネ「気付いてると思うけど、もうベース弾けないんだ」
指先まで真っ白い包帯に包まれた右腕を持ち上げてみせた。
アカネ「指が二本ないんだ。みんなにも言ってないけど、聞いてもこない。やさしいよね」
アカネ「でもね、腕が治ったら死ぬ気でドラム練習する。私の居場所はあそこだから」
澪「その気持ち、よくわかります」
アカネ「でね、お願いがあるの」
澪「はい?」
アカネ「聞かせてくれないかな、ベース」


ラブクライシスの次だった。
姫子「フレバー!!」
姫子の声で一斉に照明が爆発する、と、同時に私のテンションも一気に上がってアカネさんからもらったピックで必死にかき鳴らす。恥ずかしくて前は見れないけど、みんなの声が全身に反響して、沸騰する。
いける、いける! 一体感? まるで溶け合うような心地よさ。
やめられないよね?

姫子「打ち上げ、出れないんだって?」
澪「ごめんなさい。どうしてもこの後、外せない用事があるんです」
イチゴ「ライブ絶対に声かけてね。その時、一緒に打ち上げしよう」
澪「うん!」
アカネ「最高だったよ、みんな。無理してでも出たかったよ」
エリ「こういう場面ならメンバーに誘うとこなのかな~?」
澪「ダメです。クローバーは四つ葉ですよ。姫さん、ベースやりませんか?」
姫子「え?」
澪「私でよかったらいつでも教えに行きますんで、それじゃ」
簡単な挨拶を済ませ、楽屋を足早に後にする。裏口を出たところで律が待っていた。
律「お疲れさま…おいっ、澪っ!?」
律を見た途端緊張が解けて、彼女に倒れこんだ。
澪「りつ~…」
律「うんうん、ここにいるよ」
澪「…唯たちは?」
律「梓たちと先に行ったよ」
澪「誕生日、おめでとう」
少し間をおいて強く、抱きしめてくれた。
澪「律」
十九歳最初のキス。
律「…プレゼント?」
澪「部屋にあるよ。帰ろう。律の飯が食べたい」
彼女は軽く笑って私の手を取った。
律「お帰り、澪」


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