「私に手紙?」
滅多に来ることの無い私宛の手紙、誰かと不思議に思いながら差出人を確認すると相手は……
「澪が結婚?!」
_______
_____
__
_____
__
大学を卒業してからは滅多に澪とは連絡をとらなくなった
というより澪が私を避け続けていたのだ。それまではまるで家族の様に一緒だったのに……
それぞれの人生というものがあるのはわかるし、子供みたいにいつまでも一緒に遊ぶわけにもいかない。しかし別に全く会わなくなる必要だってないだろう?
そう思った私は熱心に澪に連絡を取り続けたが返事は空しいものだった
まぁ私は自分でも少し子供っぽいところがあるのを自覚しているし、いい加減愛想を尽かされたってことかと勝手に納得をしていたけど
いや納得なんてものじゃなくて、澪のいない生活に慣れるにはだいぶ時間がかかった
「っていうか澪に嫌われたショックで長い間何もせずに引きこもってたな…」
大学卒業からの数年間を思い出し苦笑いしてしまう
そんな澪から急に連絡がきたと思ったら……
_______
_____
__
_____
__
「はぁ……澪もついに結婚か……」
別にいつかはこうなると覚悟はしていたが実際に前にしてみるとなかなか寂しいものがある
「結婚式のお知らせねぇ」
私は顔を出していいのだろうか?まぁ、来てほしくなかったらそもそも手紙なんて出さないだろうけど……いやでも社交辞令ってのも……あ、澪も綺麗になったなぁ……
なんてくだらない思考を、プリントされた写真と文章を眺めながら巡らせていると
「あれ……なんだこりゃ」
プリントされた文字とは別に、はがきの隅の方に書きなぐられた手書きの文字を発見した
「日にちと……これは……」
______
____
__
____
__
私たちの人生のピークともいえるのだろうか。輝いていた高校時代によく利用していた喫茶店を前にしてノスタルジーな気持ちに浸る
「はぁ……あの頃は、まだ澪と楽しくやっていたよなぁ…」
私の勘違いじゃなければこの時間にここってことなんだけどなぁ
店の中をガラスからのぞいてもまだ澪はいないみたいだけど……
「りつ」
「!!」
急に後ろから声をかけられてびっくりしてしまうと同時に胸が高鳴っていく
この懐かしい声。口の中が急に乾きだして、喉のあたりに熱いものがこみ上げてくる
ゆっくりと振り返るとそこには…
「みお……」
「久しぶりだな、りつ」
「みお!今までどうして……」
「ここじゃ寒いし、とりあえず中に入ろう?」
私の言葉をさえぎるようにして澪はそういい、店内の入って行った
もう5年ぶりりだろうか?久しぶりに見た澪は相変わらず、いや、ますます魅力的な女性になっていた
20代も後半に入ろうというのに、相変わらず綺麗な肌、髪、そして愛らしい顔をしていた
幼馴染の私でさえ、見つめられれば思わず顔をそらしてしまうくらいに
澪についていき、店内の奥の方のテーブル席に座った
ここの喫茶店は昔とかわらず落ち着いた雰囲気で、学校帰りの高校生達で今も賑わっていることだろう
茶色や黒のシックな色で〆られた店内はいるものをおちつかせ、また背伸びしたがりのマセガキどもに昔から人気だった
今は平日の早い時間なので店内は閑散としているが、しかし人混みが苦手な澪にとって、これは狙い通りの事だったのかもしれない
_______
____
__
____
__
運ばれてきたコーヒーを2,3口すすり、冬風に切りつけられていた体が落ち着いた頃、私はしゃべり始めた
「今日は来てくれてありがとう。りつ」
「……」
「大学卒業以来、りつにはひどいことしちゃったから。もう会えないと思ってた」
当然のことだ。私はそれまで長い事付き合ってた親友を突然突き放し、拒絶した
今日の待ち合わせは駄目はもともとでしたことだったが、来てくれた律には感謝してもしきれない
「……いつだって行くよ」
「え?」
「みおが私の事を呼んだら、いつだって行くよ」
「りつ……」
うつむきながらそう言ってくれた律に思わず涙がこぼれそうになってしまったけど、なんとか我慢して話を続ける
「結婚するんだって?」
「うん……そうなんだけど……」
「けど?」
「……」
言葉を詰まらせる私をせかすでもなく、じっと、ただ待ち続けてるりつに感謝する
昔からそうだ。私の事を私以上に知っていて、私の困ってる時にいつでも助けてくれる
私の親友で、私の……初恋の人
数年ぶりに会う律は、昔と違って少し落ち着いた雰囲気がかっこいい大人の女性になっていた
けど、それでも律は律で一緒にいるだけで私に安心を与えた
_______
_____
__
_____
__
口を詰まらせた澪に、質問を変えて言葉を投げかける
「じゃあ、質問を変えるよ。なんで私の事避け続けたの?嫌いになっちゃった?」
「りつを嫌いになるなんてありえないよ」
「じゃあなんで?!私がどんなにさみしい思いをしたか……」
そういいながら澪を見てはっとしてしまう
「………りっ……りつが好きだからっ…」
「りつが大好きだからっ…」
涙を流しながらそう私に訴えた澪を、やさしく抱きしめ。落ち着くまで頭を撫でてやった
………全く、店内に人がいなくてよかった
- ないと、 -- バッジョ (2011-01-11 03:46:52)