けいおん!澪×律スレ @ ウィキ
SS31
降りしきる雨が校庭に染み込む音と匂いを感じながら、
澪は観音開きの片側だけが閉じられた、生徒通用口のガラス扉に寄りかかる。
冷たいガラスには、赤字で大きく『締切』と書かれた貼り紙。
そのガラスに、触れている背中や肘をじわじわ冷やされる。
下校時間をとうに過ぎ、他の生徒の姿は見当たらない。テスト対策に図書室で勉強をしていたら、
気づいた時には外は大雨。すっかり帰るタイミングを失ってしまった。
おまけに、朝の天気予報は確認した筈なのに、肝心の傘を忘れて来ていた。
やっぱり自分は、律の言うとおりどこか天然なのかもしれない、などと自嘲しながら雨が上がるのを待つ。
この天気の中、カッターシャツにベスト姿ではさすがに寒い、澪は自分の体を抱き締めるように、腕を組んだ。
そして曇天の空を見上げる。
この季節ならまだ明るい筈の時間だが、低く黒い雲に覆われ太陽の輝きは見えない。
薄暗闇の学校に、自分1人。
改めて意識すると、寒さ以外の理由で身体が震える。
澪は観音開きの片側だけが閉じられた、生徒通用口のガラス扉に寄りかかる。
冷たいガラスには、赤字で大きく『締切』と書かれた貼り紙。
そのガラスに、触れている背中や肘をじわじわ冷やされる。
下校時間をとうに過ぎ、他の生徒の姿は見当たらない。テスト対策に図書室で勉強をしていたら、
気づいた時には外は大雨。すっかり帰るタイミングを失ってしまった。
おまけに、朝の天気予報は確認した筈なのに、肝心の傘を忘れて来ていた。
やっぱり自分は、律の言うとおりどこか天然なのかもしれない、などと自嘲しながら雨が上がるのを待つ。
この天気の中、カッターシャツにベスト姿ではさすがに寒い、澪は自分の体を抱き締めるように、腕を組んだ。
そして曇天の空を見上げる。
この季節ならまだ明るい筈の時間だが、低く黒い雲に覆われ太陽の輝きは見えない。
薄暗闇の学校に、自分1人。
改めて意識すると、寒さ以外の理由で身体が震える。
「早く止まないかな」
それを紛らわすように、あえて独り言を言ってみる。
しかし、一向に雨は止む気配を見せない。
澪は、ガラス扉に寄りかかる前にした確認をもう一度試みる。
やはりスクールバッグの中から折り畳み傘が見つかるような事は無かった。
ふう、と溜め息。そして再び雲を睨みながら空を見上げ、
澪は、ガラス扉に寄りかかる前にした確認をもう一度試みる。
やはりスクールバッグの中から折り畳み傘が見つかるような事は無かった。
ふう、と溜め息。そして再び雲を睨みながら空を見上げ、
「雲の向こうは、いつも晴れてるのにな……」
羨ましそうに、それ以上に寂しそうに呟く。
視線は空に送ったまま、澪はふとあるメロディーを思い浮かべていた。それが、雨音に混じって幻聴として聴こえる。
去年、まだ軽音部が4人だった時に、初めて録音した思い出の曲だ。
今の気持ちにはぴったりかなと考えながら目をとじる。
そしてそのメロディーに従って鼻歌を歌い始めた。
去年、まだ軽音部が4人だった時に、初めて録音した思い出の曲だ。
今の気持ちにはぴったりかなと考えながら目をとじる。
そしてそのメロディーに従って鼻歌を歌い始めた。
翼をください
誰もいないのを良いことに、他人にも聴こえる程度に高い音を奏でる。いよいよサビに差し掛かろうという所で、
ぷあっ
不意に音が響いた。
目を開き、その音がした方へ振り向く。
目を開き、その音がした方へ振り向く。
自分の左隣、開かれた方の扉を挟んだ向こう側の壁に、ハーモニカを構えた律が、同じように寄りかかっていた。
「律!?いつのまに……」
「続けてよ」
「続けてよ」
澪の顔を見ないまま、その言葉を遮る律。
「続けるって、さっきのか?あれはほんの暇つぶしで……」
「良いから、ほらほら」
「良いから、ほらほら」
何が良いんだ、と首を傾げつつ、周りを見回す。2人以外に人影は無い。
「……じゃあ、最初から」
「ん、分かった」
「ん、分かった」
律はハーモニカに唇を触れさせると、丁寧に前奏から始める。
校庭へと視線を移し、もう一度その目をとじた澪は、
今度は鼻歌ではなく、その歌声を響かせる。
生徒通用口の前で、2人だけの演奏会。
雨音にかき消され2人が奏でるメロディーは他の誰にも届かない。
今度は鼻歌ではなく、その歌声を響かせる。
生徒通用口の前で、2人だけの演奏会。
雨音にかき消され2人が奏でるメロディーは他の誰にも届かない。
結局澪は、最後まで歌いきった。
それに少し遅れて伴奏を終えた律が、ハーモニカを持ったまま拍手。
それに少し遅れて伴奏を終えた律が、ハーモニカを持ったまま拍手。
「やっぱり、澪は凄いな」
「何だよ、急に」
「だってさ、ほら」
「何だよ、急に」
「だってさ、ほら」
律の言葉に、目を開ける澪。
濡れた校庭に、濡れた街並みに、幾本かの光がさしていた。
あれだけ降っていた雨は、五分足らずの間にすっかり上がったようだった。
濡れた校庭に、濡れた街並みに、幾本かの光がさしていた。
あれだけ降っていた雨は、五分足らずの間にすっかり上がったようだった。
「澪が歌うだけで、空だって泣くのをやめちゃうんだからさ」
「なんだか、律の柄じゃないな」
「なんだか、律の柄じゃないな」
澪は口元を手で覆ったまま笑う。
本当は、律が来たから晴れたんだと思う、なんて言ってみたかったのだが、どうしても言葉には出来なかった。
気恥ずかしさを誤魔化す為に笑い続ける。
本当は、律が来たから晴れたんだと思う、なんて言ってみたかったのだが、どうしても言葉には出来なかった。
気恥ずかしさを誤魔化す為に笑い続ける。
「な、なんだよー?あたしそんなに変な事言ったか」
あまり律の機嫌を損ねない内に、澪は涙を拭って笑いを収める。
「っごめんごめん。律にしてはさ、なんか感傷的だなって」
「雨のせいだ、雨の」
「雨のせいだ、雨の」
そう言ってそっぽを向いた律の耳が、みるみる赤くなっていく。
澪も、律を視界から外す。明るくなり始めた空に顔を向けた。吹き付ける微風は、まだ雨の香りが混ざる。
「でも、どうしたんだよ律?唯達と帰ったんじゃなかったのか?」
「そう、なんだけどさ、なんか忘れ物した気がして……」
「戻って来たのか?」
「うん」
「それで、結局何を忘れてたんだ?」
そう聞いたが、律からなかなか返事が来ない。澪が顔を向けると、そっぽを向いたままの律が、ボソリと一言。
「……澪」
「へ?」
理解できないまま固まる澪と、律の目が合う。
「澪、傘忘れてたなぁって」
「傘?……あ、ああ、傘ね」
一瞬変な勘違いをした自分の頭を恨む澪。表情には出さずに、言葉を続ける。
「それでわざわざ、傘、持ってきてくれたのか?」
「……うん。いらないお節介だったけどな」
白い歯を見せながら、律も空を見る。
「ううん、嬉しいよ。ありがとう、律」
「おぉ。澪にしては素直じゃん」
「あ、雨のせいだ、雨の」
今度は澪がそっぽを向くが、
「もう止んでるって」
「ああ、そうだったな」
「そう、なんだけどさ、なんか忘れ物した気がして……」
「戻って来たのか?」
「うん」
「それで、結局何を忘れてたんだ?」
そう聞いたが、律からなかなか返事が来ない。澪が顔を向けると、そっぽを向いたままの律が、ボソリと一言。
「……澪」
「へ?」
理解できないまま固まる澪と、律の目が合う。
「澪、傘忘れてたなぁって」
「傘?……あ、ああ、傘ね」
一瞬変な勘違いをした自分の頭を恨む澪。表情には出さずに、言葉を続ける。
「それでわざわざ、傘、持ってきてくれたのか?」
「……うん。いらないお節介だったけどな」
白い歯を見せながら、律も空を見る。
「ううん、嬉しいよ。ありがとう、律」
「おぉ。澪にしては素直じゃん」
「あ、雨のせいだ、雨の」
今度は澪がそっぽを向くが、
「もう止んでるって」
「ああ、そうだったな」
長くは続かず、2人は笑顔を向けあう。
雲の流れが速い。先程まで空を覆っていた雨雲は、細く千切られながら夕焼けの空に消えて行った。
その空を見上げたまま、2人は言葉を交わす。
その空を見上げたまま、2人は言葉を交わす。
「澪。雨、止んだけど。帰らなくて良いの?」
「律は?」
「家はほら、緩いから」
「じゃあ、もう少しこのまま。良いか?」
「……わかった、つき合うよ」
「ありがとう、律」
「雨のせい?」
「違うよ。お礼、言いたかったんだ。色々とね」
「律は?」
「家はほら、緩いから」
「じゃあ、もう少しこのまま。良いか?」
「……わかった、つき合うよ」
「ありがとう、律」
「雨のせい?」
「違うよ。お礼、言いたかったんだ。色々とね」
夕日で朱色に染められた校庭に、ハーモニカの音色が響く。
澪は空を見ながら、その音に聞き入っていた。体は、もう震えない。
それでも、
澪は空を見ながら、その音に聞き入っていた。体は、もう震えない。
それでも、
「雨も、悪くないかな」
また、独り言を呟いてみた。
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