投稿日:2010/11/22(月) 19:43:14
『今日は11月22日! いい夫婦の日でーす!』
テレビをつけると、アナウンサーはそんな事を言っていた。
……いい夫婦、か。
私は振り返って、晩御飯の後片付けをしている律を見た。
結婚もしてないし、女同士。でも律の姿は、どこからどう見てもお嫁さんであった。
愛らしい横顔を覗かせている律をまじまじと見つめる私。気付かない律。
私は少し恥ずかしくなって、テレビに向き直った。
番組に、結婚五年の若い夫婦が出ていた。
結婚もしてないし、女同士。でも律の姿は、どこからどう見てもお嫁さんであった。
愛らしい横顔を覗かせている律をまじまじと見つめる私。気付かない律。
私は少し恥ずかしくなって、テレビに向き直った。
番組に、結婚五年の若い夫婦が出ていた。
『結婚されて五年ですか』
『そうなんですよー』
『どうですか、奥さん』
『もう毎日幸せです』
『そうなんですよー』
『どうですか、奥さん』
『もう毎日幸せです』
画面の下部に映されているテロップには、夫婦の名前が書かれてあった。
年齢は、旦那さんが24歳、奥さんが23歳だった。
年齢は、旦那さんが24歳、奥さんが23歳だった。
五年……ということは、二人が19、18の時に結婚したのかな。
それを考えると、私はどうしようもないような悔しさと、ちょっとの寂しさが浮かんできた。
それを考えると、私はどうしようもないような悔しさと、ちょっとの寂しさが浮かんできた。
――律だって、19なのに。私だって、18なのに。
なのに。テレビの二人のように、結婚なんできないんだ。できやしないんだ。
私だって、結婚何年って自慢したいよ。幸せですって、言いたいよ。
それなのに、女同士だからって――私は、私たちは。
夫婦だって、名乗れないんだ。
気持ちは夫婦なのに、恋人なのに――。
なのに。テレビの二人のように、結婚なんできないんだ。できやしないんだ。
私だって、結婚何年って自慢したいよ。幸せですって、言いたいよ。
それなのに、女同士だからって――私は、私たちは。
夫婦だって、名乗れないんだ。
気持ちは夫婦なのに、恋人なのに――。
五年だなんて、呆れる。
私たちは、9年だ。夫婦じゃないけど、もう好き合って9年なんだぞ。
悔しくもあってけど、私はテレビの夫婦に誇って見せた。
私たちは、9年だ。夫婦じゃないけど、もう好き合って9年なんだぞ。
悔しくもあってけど、私はテレビの夫婦に誇って見せた。
その時、後ろから声がした。
「澪ー」
「何?」
「ケーキ食べようぜ」
「はあ? なんでケーキなんだよ」
「今テレビでやってんじゃん。今日、いい夫婦の日だろ?」
「何?」
「ケーキ食べようぜ」
「はあ? なんでケーキなんだよ」
「今テレビでやってんじゃん。今日、いい夫婦の日だろ?」
――……!
「……わ、私たち、夫婦じゃないのに?」
「何言ってんだよ。そりゃ、正式な夫婦じゃないけど……」
「何言ってんだよ。そりゃ、正式な夫婦じゃないけど……」
律は冷蔵庫から丸いケーキを取り出した。語呂合わせの記念日にしちゃでかすぎる。
それを運びながら、律は白い歯を見せてさらに笑った。
それを運びながら、律は白い歯を見せてさらに笑った。
「でも、私にとって澪はお嫁さんだからなー」
「って、おい」
「それとも澪は、嫌なのか?」
「……馬鹿律。私の気持ち、知ってるくせに」
「だろ? 気持ちは夫婦だし、唯たちもよく言ってるじゃん。『りっちゃん達は夫婦だし』って」
「って、おい」
「それとも澪は、嫌なのか?」
「……馬鹿律。私の気持ち、知ってるくせに」
「だろ? 気持ちは夫婦だし、唯たちもよく言ってるじゃん。『りっちゃん達は夫婦だし』って」
唯たちは私たちを、よく『夫婦』だとからかった。『恋人』だとも、『カップル』だともからかった。
それを否定していた私たちだけど、実は嬉しかったんだ。
そうだ。
悔しくなんかない。
だって私と律は、いい夫婦なんだから。
それを否定していた私たちだけど、実は嬉しかったんだ。
そうだ。
悔しくなんかない。
だって私と律は、いい夫婦なんだから。
「だからさ、記念に食おうぜ」
テーブルに置いたケーキ。私の隣に座る律。
ケーキの真ん中のチョコレートには――。
ケーキの真ん中のチョコレートには――。
「……律、わざわざこれ書いてもらうように言ったのか?」
「悪いか? すっげーいいだろ」
「いいけど……これを書いてくださいって言うのはちょっと恥ずかしかっただろ」
「結婚されてるんですか、と言われた」
「で?」
「してますって言っておいたよ」
「捏造すんなよ」
「私と澪が夫婦なのは嘘だと思ってんの?」
「……思ってるわけないだろ」
「悪いか? すっげーいいだろ」
「いいけど……これを書いてくださいって言うのはちょっと恥ずかしかっただろ」
「結婚されてるんですか、と言われた」
「で?」
「してますって言っておいたよ」
「捏造すんなよ」
「私と澪が夫婦なのは嘘だと思ってんの?」
「……思ってるわけないだろ」
私と律は、笑った。
表面的には夫婦じゃなくても、私と律は夫婦なんだから。
それに、結婚してるかしていないかで、私たちの気持ちは図れやしない。
幼馴染で、親友で、恋人で、カップルで、夫婦。
それでいいよ。
律と一緒なら。
表面的には夫婦じゃなくても、私と律は夫婦なんだから。
それに、結婚してるかしていないかで、私たちの気持ちは図れやしない。
幼馴染で、親友で、恋人で、カップルで、夫婦。
それでいいよ。
律と一緒なら。
「それじゃあ、これからもよろしくな澪」
「……うん、ありがとう律」
「……うん、ありがとう律」
いただきます。
分け合ったチョコレートには、私と律のありったけの想いが詰まってた。
『律&澪 夫婦円満! おしどり夫婦!』――。
~~おまけ~~
澪「律ー、さっき私は律のお嫁さんって言ったたけど」
律「なんだよ?」
澪「そんなのずるい! 私だって律の旦那さんになりたい!」
律「はあ? どう考えても澪はお嫁さんじゃん」
澪「律だって、可愛いし! 家事だって完璧だし、お嫁さんじゃないか」
律「わ、私がお嫁さんなんて……おかしーし」
澪「おかしくねーし! いやむしろそうあるべき」
律「落ち着け。いやあ、でもやっぱりさ、私男っぽいじゃん?」
澪「どこかだよ。律は誰よりも女の子らしいの、私知ってるんだぞ」
律「で、でもさあ」
澪「でもじゃないよ。それで、旦那になって、律をいじめてやる」
律「お前ベッドの中じゃいつも私いじめてんじゃん。旦那も嫁もないぞ」
澪「そ、それは……律が可愛すぎるのが悪いんだよ。いちいち可愛い声で喘ぐから」
律「し、仕方ないだろ……。とにかく、私が旦那で澪が嫁!」
澪「私が旦那で律がお嫁さん!」
律「澪が嫁!」
澪「律が嫁!」
律「なんだよ?」
澪「そんなのずるい! 私だって律の旦那さんになりたい!」
律「はあ? どう考えても澪はお嫁さんじゃん」
澪「律だって、可愛いし! 家事だって完璧だし、お嫁さんじゃないか」
律「わ、私がお嫁さんなんて……おかしーし」
澪「おかしくねーし! いやむしろそうあるべき」
律「落ち着け。いやあ、でもやっぱりさ、私男っぽいじゃん?」
澪「どこかだよ。律は誰よりも女の子らしいの、私知ってるんだぞ」
律「で、でもさあ」
澪「でもじゃないよ。それで、旦那になって、律をいじめてやる」
律「お前ベッドの中じゃいつも私いじめてんじゃん。旦那も嫁もないぞ」
澪「そ、それは……律が可愛すぎるのが悪いんだよ。いちいち可愛い声で喘ぐから」
律「し、仕方ないだろ……。とにかく、私が旦那で澪が嫁!」
澪「私が旦那で律がお嫁さん!」
律「澪が嫁!」
澪「律が嫁!」
唯「夫婦すぎるね」
梓「オランダ行きの飛行機がアップを始めました」
紬「打倒! 女同士で結婚できないこの国!」
梓「オランダ行きの飛行機がアップを始めました」
紬「打倒! 女同士で結婚できないこの国!」