けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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匿名ユーザー

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投稿日:2010/11/14(日) 23:14:29

饅頭怖いという落語をご存知だろうか。
かいつまんで言うと、『饅頭が怖い』と言いふらすことで自分に嫌がらせをしようとする人達から大好きな饅頭をせしめる話だ。

そんな話もあったな、とたまたま読んでいた本を眺めながら私は考えていました。
すると突然ひらめいたのです。


えー、その前にまず私自身の話を少々。

私は現在高校生という身分であり、そんな私には一人の幼なじみがいます。
名を田井中律。
カチューシャがトレードマークの笑顔はじける元気いっぱい、そしてたまらなくキュートな女の子です。

彼女の魅力は語り尽くすことができません。
僅かばかりの例を挙げるとするなら、まず自分のことより他人が喜ぶことを優先するようなとってもいい子であるということ。
おちゃらけて自分のことを美少女なんて言ってても、まぁ本当に美少女なんですが、人から褒められると「そんなことはない」などと謙遜をしてしまう謙虚な女の子であるということ。
先程トレードマークと言ったカチューシャは実は彼女を悪い虫からすこしでも守るためのものであり、外すとそこらのモデルではたちうちできない程の美貌を呈してしまうということ。
「細かいことは苦手だ」などと言いながら、料理や裁縫など微妙なさじ加減や繊細さがが要求される家事を見事にこなしてしまう家庭的な乙女であるということ。
そうそう乙女。
実は彼女は私の所属する部活の中でも、いや学校全体の中でも一番と言っていい程乙女なんです。

そんな彼女に幼い頃から接している私が惹かれるのは時間の問題でした。

小学校高学年の時です。
彼女といると胸が高鳴り、彼女が他の子と仲良くしているのを見ると胸がずきずきしてとても嫌な気持ちになることに気づきました。

中学生の時です。
周りの子たちが恋愛に興味を持ち出したことで教室などでは自然とそういう会話が増えていました。
そんな中で私も男の子に呼び出される機会が何度かありましたが、私にとってその子たちは怖いものでしかなく、そんな怯える私を慰めてくれるのはいつも彼女でした。
そして明るい性格の彼女は男女共に人気があり、ある日男の子から告白されている彼女の姿を偶然目にした時は涙が止まりませんでした。
彼女は結局断ったようですがその時私は気づいたのです。
私は彼女に恋していると。

そして現在に至ります。


彼女とは現在唯一無二の親友です。
でも私はもう我慢したくありません。
彼女が部活の仲間と過剰ともとれるスキンシップを交えて戯れる姿も、水面下で結成された彼女のファンクラブの隊員たちの眼差しも、ただ私の心を痛め付けるだけなのです。
でもそれさえも、彼女との関係を親友以上のものとすることで容認していけるような気がするのです。


ここで本題に戻ります。
彼女との関係を親友以上の、つまり、こ、ここ恋人にするためには、彼女をより私に近づけなければなりません。
そこで先程のひらめきです。
彼女は私にいたずらをしたり、からかったりということをよくしてきます。
無論そこには悪意などなく、私もそれを甘んじているのですが、そこに着目したのです。
怖いものが苦手な私にホラーものをちょいちょいあてがってくる彼女。
ならば私が「律怖い」と言えば彼女は私にべったりとひっついてくれるのではないでしょうか。
そうなれば後は頑張れる気がします。
善は急げ。
早速明日実行に移したいと思います。


―――――
―――――


律「みーお、ほらこれプレゼント♪」

澪「ん…きゃあああ!!」


そう言って彼女が差し出してきたのはおもちゃの蛇。
…はっきり言って本当に怖かったけど、ここで私の頭の中に一つの考えが浮かびました。

計画を実行するなら今しかない、と。

そこで私は早速それを実行します。


澪「いやぁぁぁぁ!」

律「ご、ごめんごめん、そこまで驚くとは思って」スッ

澪「ひぃっ!こ、来ないで!」ビクッ

律「…え?」

唯「? 澪ちゃん、どうしたの?」

澪「怖いよ…!律も怖い!」

律「…!!!」

紬「み、澪ちゃん、りっちゃんはふざけただけで」

澪「でも律はいつも私を怖がらせる!!そんな律は怖いよ!!!」


これで大丈夫なはず…?


律「ご、ごめん…なさい」ダッ

梓「あっ、律先輩!」


あれ、律…?


…結局その日彼女は部室へ戻っては来ませんでした。
私は彼女の置いていった荷物を届けようとしたのですが、気をつかわれて他の友人が届けてくれることになりました。

失敗、しちゃったな…。

明日私はきっちりと彼女に事情を話し、小細工なしにアタックしようと決めました。
でもそれがそんなに甘くないということは私はその時知りませんでした。


―――――
―――――


翌朝、いつも彼女と待ち合わせている場所に彼女は来ませんでした。
誤解を解くまでは仕方ないのかな、そう思い、私は一人で学校へ向かいました。

今日あったらきっちり話そう。
そして真っ正面からぶつかろう。

そう思うと、なんだかいつもより重い足も少しはましになりました。

そして私は教室に着きました。
彼女の席に目をやると、彼女は既に来ていました。
でもいつもの元気はないようで、突っ伏したまま動く気配がありません。
私は勇気を出して声をかけます。


澪「り、律。あの」

律「澪…?おはよう。…ごめんな?」

澪「う、ううん。それで、あの…」


沈黙が続きます。
私が続く言葉を紡ぐだけでいいはずなのに、私にはそれができませんでした。
幼なじみだからこそ分かるのです。

彼女の雰囲気が、私を受け入れてくれていない。

そのうち予鈴が鳴り、私は何も言えないまま席に戻りました。
こんなことは初めてでした。


―――――
―――――


彼女との会話がないまま、部活の時間になりました。
始め少し雰囲気はぎくしゃくしていたけれど、彼女が必死に場の空気を和ませようとしてくれて、さらにそれに友人たちがうまく乗っかってくれたおかげで、さほど苦しいものではありませんでした。
しかし、彼女との会話はやはりほとんどありませんでした。
だから私は、少しでも会話の糸口を探します。


澪「あ、り、律。そこのカップ、ちょっと取ってくれないか?」

律「え? あ、…このカップでいい?」


瞬間、目が合います。
彼女と目が合うのも久しぶりで、私に声をかけられた途端に元気のなくなってしまった彼女を見ると、私は自分が本当にとんでもないことを言ってしまったんだなと今更に気づき、自然と涙ぐんでしまいました。


澪「あ、うん。…ありがと」

律「…ん。…無理しなくていいよ」


私の目に浮かんだ涙が彼女にさらなる誤解を与えてしまったのでしょうか。
そう言って暗い笑顔をみせて私から視線を外す彼女を見ていると、もう以前のように恋人はおろか親友でさえもいられないのではないかと思えてきました。
そして私はそれ以上、彼女に言葉をかけることができませんでした。


―――――
―――――


部活が終了し、帰り道。
そこには彼女と二人きりになる道があります。
そしてそれはおそらく、現在の状況において二人きりで話すことのできる唯一の機会。
もう私にはここしかなかったのです。
なかったのですが…私には何も言えませんでした。
こんなに暗い彼女の姿は見たことがありませんでした。
言葉もなく、俯き加減で、足だけは動いて。
そして別れ際…


律「じゃあ…」

澪「あ、律…うん、あの」

律「…うん?」

澪「い、…いつも通りが、いいよ」

律「あ…えっと、うん。…うん」

澪「…じゃあね。明日、朝もちゃんと来てね」

律「…わかった。それじゃあな、澪」


声が震えていたのは自分でも分かりました。
しかし少しだけ、元気を取り戻したように見えた彼女をみると、そんなことはどうでもよくなりました。


―――――
―――――


そして次の日。
彼女は珍しく私よりも早く、私を待っていてくれていました。
嬉しくなって小走りで駆け寄り、あいさつを交わします。
でもやはりぎこちなさは残っていて、そんな中でも少しずつ今までへと戻っていこうと会話を続けます。
そしてその日、部活が終わる頃にはすっかりいつも通りになっていました。
…多分、他人からみれば。

再び二人きりの帰り道になり、それから別れた彼女の後ろ姿を眺めて思うことは一つでした。

今までの関係に戻れる日は本当に来るのかな…?


―――――
―――――


あの日の帰り道に抱いた疑問はもっともなものだったようで。
あれから一週間以上過ぎて私と彼女との関係ははたから見ると完璧に修復したようでも、実際は今までになかった壁を隔てたものでした。

私は彼女に遠慮されている。

彼女と歩き、彼女と話し、彼女と笑う。
その度にそんな現実が私に突き付けられました。
気のおけない唯一の人。
そんな関係は無くなってしまい、多分もう本当の意味で親友ではないんだろうなと、私は思わざるを得なかったのです。

そんな日々の中で、私の中ではついに何かが崩れ去ってしまいました。


―――――
―――――


律「今日はいっぱい練習したなー。さすがに疲れた…」

澪「うん…」

律「でも、ま、新曲もなんとかなりそうだし」

澪「うん…」

律「…澪?」

澪「………」

律「どした?疲れちゃったか?もう別れ道…」

澪「………」グスッ

律「え…?」

澪「……り、つ」ポロポロ

澪「りつ、りつ、りつ…!」ギュッ

律「ど、どうしたんだよ澪…」

澪「りつ…ぇぐっ、りつ、りつぅ…!」ギュウウ

律「………」

律「ほら、送ってってやるから」ポンポン

澪「っぁ、…ぅぁあ」ボロボロ


―――――
―――――


律「…ほら、着いたぞ」

澪「…ぇぐ、う、う、ん…」グズッ

律「………」

律「じゃあ私は帰るから…」

澪「! …ぁ、ま、待って…」グスッ

澪「お願い、だから、一緒に、いて」グスッ

律「え…? …ん、わかった」


―――――
―――――


律「澪の部屋も久しぶりだなー。…っていってもそれどころじゃない、か」チラッ

澪「………」グスッ

律「…なぁ、その…なんで泣いてるんだ?」

澪「………」

律「理由だけでもきかせてくれるとありがたいんだけど…」

澪「…お願い、りつ」グスッ

律「うん…?」

澪「嫌、いに、なら、ない、で…!」ポロポロ

律「え、な、なんで急にそんなこと」

澪「だって、だって…!りつ、私に、遠慮してばっかりで…!」グスッ

律「…! それは…」

澪「ごめ、ん…ほんとは、ぇぐっ、私のせいって分かってるのに…!」

律「………」

澪「…嘘、だから…!」グスッ

律「え…?」

澪「りつが、こわい、なんて思っ、たことなんて、ない、から…!」グスッ

律「! …じゃあ、…なんでそんなこと言ったんだよ…」

澪「…それは…」

律「…本気で…ショックだったんだからな」グスッ

澪「ぁ…ご、ごめん、なさい…、ごめんな、さい…!」ボロボロ

律「………」スン

律「…とりあえず落ち着いてくれよ、な?」ギュッ

澪「…ぅん」コクコク


―――――
―――――


律「落ち着いたか?」

澪「うん…ありがとう律」

律「話せるか?」

澪「うん、あのね…」

律「………」

澪「り、律にあんなこと言ったのは…」

律「うん」

澪「ほんとは、律に、もっと、構ってもらいたくて…」

律「…? えっと、どうしてそうなるんだ…?」

澪「『饅頭怖い』」

律「…!」

澪「そうすれば、普段私をからかってくる律なら私をもっと構ってくれるかもって…」

律「………」

澪「…でもごめん、律があんな風になっちゃうとは思わなくて」ポロポロ

律「ぁ…」

澪「最低だな、私。律は私が本当に嫌がることは絶対しないのに。ちゃんと私のこと考えてくれてるのに、それを…」ボロボロ

律「みお…」ギュッ

澪「ごめん、ごめんな律…!」ボロボロ

律「もういいから…気にしてないから」ギュウ

澪「ううん。…ちゃんと、最後まで、言わなきゃ、だめだよ」グスッ

澪「………」スゥ

澪「…あのね、りつ、私が、こんなことしようと思ったのは」

律「うん…」

澪「私がりつのこと、一人の女の子として…」








そうして私はついに想いを伝えたのです。
結果?
まぁいいじゃありませんか。
日記なんて、自分が少しでも忘れそうなことだけ書き留めていればいいんです。
…私は絶対忘れないと思いますから。


じゃあ日記、おしまい。




―――――――
―――――
――






澪「………」パタン

律「…ん…ぅ…。…みおー?」

澪「あ、ごめん律、起こしちゃったか?」

律「ううん…。何してたの…?」

澪「日記、書いてたんだよ」

律「へぇ…どんなこと書いたの?」

澪「…分かってるくせに」

律「あ…あはは…」

澪「んっ…もう遅いし、私ももう寝るかな…」

律「あ…ちょっと詰めなきゃ…」ムクッ

パサッ

律「あ…」

澪「!」

律「わ、私も服、着なきゃ」

ガシッ

澪「明日が休日でよかったよ…」

律「え、さっきもうさんざ…んむぅ」

澪「律が悪いんだからな」



おわり



  • よいオチ!笑 -- 名無しさん (2012-10-28 20:14:55)
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