けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

短編153

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mioritsu

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投稿日:2010/10/19(火) 00:13:47

 あたしは澪の出してくれた救急箱から消毒液を取り出して、傷口に振りかけた。
 しゅわしゅわ。痛い。ものすごい染みて泣きそうだ。
「……っ」
「律!? 大丈夫、痛い?」
「へい……き……だぞ!」
 自分に言い聞かせるようにして脛を伝う消毒液を拭き取る。
 怪我なんて小学校卒業してから滅多にしてなかったけど、こんなに痛かったんだな。
 ……もう一回消毒液かけるの、怖いな。でもまだ傷口汚れてるし。

「……私、やる」
「え?」
 傷口とにらめっこしていた顔をあげると、いつの間にか澪がこちらを向いていた。
 相変わらず青い顔のままで、ピンセットを手にしている。
「消毒するぞ、律」
「澪しゃん、平気なの……?」
「へいき……だ……よ!」
「ちょっ、いててて、ピンセット、ささってる! ちゃんと傷口見て!」
 顔を背けたまま、えいや、と突き出されたピンセットが傷口をえぐった。
 ……ほんとに泣きそうなんだけど。

「澪、やっぱり……」
 自分でやるからいいよ、と言おうとして、あたしは口を閉じた。
 澪、今度はちゃんとあたしの傷口しっかり見て手当てしてくれてる。
 顔、青い。変な汗書いてる。目に涙浮かんでる。手、震えてる。
「澪、大丈夫か……? あんまり無理しなくても」
「痛いのは律の方だろ……だっ、だから、私が手当てしてあげるの」
「…………ありがと」

 澪は震える手で不器用に血を拭き取ると、大きめの絆創膏を傷口にぺたんと貼りつけた。
 最後の最後で気が緩んだのか、ちょっと位置がずれているけど、そんなのは別に気にしないよ。
 だって澪が手当てしてくれたんだから。
「澪のおかげで治った!」
「ばか」
「ほんとだよ! もう痛くない!」
「ほんと?」
「うん。あと澪が痛いの痛いのとんでけって言ってチューしてくれたら完璧」
「……」
 赤い顔で「ばか」ともう一度言われたけれど、澪の表情を見る限りはまんざらでもなさそうだ。

「言って欲しいなー」
「……一回だけだからな」
「うんうん!」
「……」
「早くぅ」
「わ、分かってる! いっ、いっ、痛いの痛いの、飛んで――」
 言いながら澪があたしの足を見て、言葉を止めた。
 はみ出した傷口からまた血が流れ出していた。
「……………………」
 ぱたん。
「おわっ」

 本日三度目の白目を公開した澪が、意識を失いあたしに向かって倒れてきた。
 肩にもたれかかってきた澪をなんとか抱き支えて、そのままあたしは笑う。
「……せっかくいいところだったのに」
 でもね、ドキドキさせてもらったからね。
 それに、澪、いっぱい頑張ってくれたからね。
 まあ、これで良しとしよう。
「ありがとね、澪」
 意識を失ったままの澪をぎゅっと抱きしめると、なんだか本当に怪我が治ったような気がした。
 ああ、でもさっきの続きは後でちゃんとしてもらおう。そこだけは譲れない。


おわり



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