けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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だれでも歓迎! 編集
投稿日:2010/06/27(日) 13:21:36

いつも一緒に居た。
隣に居ることが当たり前だった。すぐに何処かへ行ってしまうけど、必ず私の元へと
戻ってくると思っていた。
人見知りが激しくて、恥かしがり屋な私に声をかけ、受け入れ支えてくれた。
色々なことも教えてくれた。そして、音楽のことも。

ずっと一緒。
そう思ってたのに。



「りっちゃーん!」
「おう唯ー!なんだなんだー!?」
「見て見てこれー!」

相変わらず朝っぱらからテンションの高い唯、そして律。
私は教室の隅、窓に映る律の笑顔を見てまた泣きそうになった。

昨日律から届いた一通のメール。

『ごめん、これからしばらく距離をおこう』

冗談だとは思えなかった。いつもは多用する顔文字、絵文字が一つも使われていなかったし、
何より律が冗談でそんなことを言うなんて思えなかった。私はメールを返さなかった。

いや、返せなかった。

それまで考えていた歌詞が、突然思いつかなくなった。思い浮かぶのは律のことばかりで。

「澪ちゃん?」
後ろから声を掛けられ、私は飛び上がりそうになった。振り向くと心配そうなムギの顔。
「あ、ムギ。えっと、おはよ」
「おはよう。ねえ、どうしたの?」
「どうしたの、って何が?」
「いつもはりっちゃんと一緒に居るじゃない。けど、今日一人だったからどうしたのかなって」
私は咄嗟に目を逸らした。何て言えばいいのかわからない。中々返答しない私にムギは
首を傾げたが、すぐに何かを悟ったらしく、話題を変えた。

「そうだ、新しい詞、できた?」
「うん、それがまだ……。何も浮かんでこなくて。ごめんなムギ」
「謝ることはないわよ。そういう日もあるもの」
優しく笑ってくれたムギに小さく笑い返すと、チャイムが鳴った。

いつもは長く感じる授業が今日はやけに短く感じた。
昼休みも律は私を避けるように他の子のところへ渡り歩いていて、中々話しかけられなかった。

放課後、部室へ行くとやっぱり律の姿はなかった。
「あ、澪ちゃーん!」
唯が嬉しそうに言って手を振る。私は鞄を置くと、いつもの定位置に座った。前の席に律の
姿がないだけで、ガランと感じる。

「はい、澪ちゃん」

ムギが温かいお茶を淹れて私の前に置いてくれる。梓はきょろきょろと周りを見回し
「律先輩、来てませんね」と言って私を見た。私はその視線を避けるようにムギの淹れてくれた熱いお茶を一口飲んだ。
「あ、そういえばねー、今日、りっちゃんあんまり元気なかったよねー、また風邪かなあ」
「え!?大丈夫なんですか、律先輩!?」
「いや、あずにゃん、私に言われても……」

“元気なかった”

何でだよ、それはこっちだバカ律。何であんなこと言い出したお前が元気ないんだよ。
何で。
『しばらく距離をおこう』って言われたのに。何でこんなに律のことが心配なんだ。
何で。
何でこんなに、律のことしか頭に浮かばないんだ。

私は無言で立ち上がった。

「澪先輩?」
「ごめん、ちょっと行って来る」
私は鞄、そしてベースを肩にかけると部室を出て走り出した。唯の声が追いかけてきた。
「行くってどこに!?」

バカ律のとこに!

*

階段を下りて校舎の外へ。息を切らして辺りを見回すと、見慣れた後姿は何処にも無い。
校門を出て、律の家へと急ぐ。自分でもなんでこんなに急いでいるのかわからない。
会ったって何を話せばいいのかわかんないし、律が聞いてくれるかどうかもわからない。
なのに、私はやっぱり律に会いたくて。たった一日、律と話していないだけでこんなにも。

遠くの方で律の後姿を見つけた。私は走った。途中、何度も転びそうになりながらも。

「り、律……っ!」

やっとの思いで数歩の距離まで追いついた。私は思い切って呼んでみた。
律が驚いたように立ち止まり、振り向いた。

「みお……」

私が息を切らしているのを見ると、律は一歩、また一歩と近付いてきた。
距離が縮まる。律に見上げられると、ふいに心臓が心地よいリズムを刻みだす。

「律、私……」
「ごめん」

私が何か言おうと口を開くと、それを待っていたかのように律が言った。俯いていて表情は
わからないけど、震えてる。それでも律は必死に言葉を紡ぎだした。

「ごめん、最近おかしいんだ。何するにも澪のことしか頭に浮かばなくてさ。おかげで
ドラムの練習に力入んないわ、勉強に集中できないわ……。
まあ、勉強に集中できないのはいつものことだけど」

へへっと笑って一旦言葉を切る律。私は黙ってそれを聞くことしかできなくて。

「あのな、澪」
「ん」
「昨日送ったメールはだからその……、別に澪が嫌いになったとか、そういうことじゃなくって……。あー、もう……、澪のことが好きだから……!」

突然「好き」といわれて私は固まった。律は真っ赤な顔で私を見上げてきた。私の頬も次第に熱くなっていく。
もう、本当にどうすればいいのかわからない。頭が熱くて、何も考えられなくなった。

「み、澪!?」

私は泣いていた。多分、嬉しくて。多分、律が私と同じ気持ちでいてくれていたことが。
律は困ったような表情になると、精一杯背伸びして私の頭を撫でてくれた。

あったかい、あったかい、律の手。幼い頃から知ってる、大好きな手。やっぱり、何も変わっていない。そして私も。やっぱりずっと、律のことが。

「……、だよ」
「え?」
「律のこと、好き、だよ。だからずっと、これからもずっと一緒に……」

律は私に眩しい笑顔を向けると頷いた。

「当たり前だろ。ずーっと一緒だ、澪!」
「……ん」




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