けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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投稿日:2010/05/30(日) 23:53:10

澪が入院した。
たしかに昨日、なんだか熱っぽいとか話してて、だから代わりにベースを持って帰ったんだ。
でも、そのやり取りの後で急に入院するなんて話になるとは思いもしない。
澪の携帯に電話したら澪のお母さんが出て、「りっちゃんには言っておこうと思って」
と言って、概ねの説明をしてくれたのだ。
大事じゃないから、と言ってはいたが私からしたら澪が入院という事実だけで
冷静を保てなくなる理由には十分だった。
とにかく澪の声が聞きたい。
澪が苦しんでるなら傍にいたい。
でも現実はそんなに上手くはいかなくて、いくら幼なじみで親友で恋人でも、
学生で、まだ子どもの私には澪の助けになるすべがない。
今すぐ私が駆け付けたって、きっと周りの迷惑になるだけなんだろう。
夜中になっても眠れず、ふと軽音部のことを思い出した。
メールで言うことでもないしな…。とりあえず、みんなには朝話そう。
『話があるので学校来たら部室に集合』

学校ではできるだけ落ち着いてるように振る舞った。
私がテンパってちゃ、みんな余計混乱する。

澪のお母さんからは、『もう落ち着いてるから心配ない』と連絡が入り、
その報告で私自身だいぶ安心できた。
みんなとお見舞いに行き、それからはとにかく普段通り過りだった。
澪がいなくても意外と普段の生活は続けられるもんなんだな…。
私の傍にはいつも澪がいたのに。なんか変な感じ。
部活の練習中、澪がいない放課後ティータイムはなんだかアンバランスだった。
悲しいことに、ベースの澪がいない分リズムキープに必死になった私は、普段よりしっかり刻めていたと思う。
これで澪のベースがあれば完璧なのに。

そして、入院の連絡を受けてからちょうど1週間。
朝起きると、携帯が新着メールを知らせている。
送り主は澪だった。
『今日退院。
お見舞い来てくれてありがとな。学校は明日から行くよ。』
たったこれだけの文章なのに、一日楽しく過ごせそうなぐらい私の心は舞い上がる。
「今日退院だってさ。学校は明日から来るって」
「ほんとう!?澪ちゃん元気になったんだね!」
唯は自分のことのように喜んでいる。そんな唯を見て、自然と顔が綻んだ。
「よかったですね、律先輩」
不意に梓が言う。
まるで私の考えてることがわかってるみたい梓が言うから、咄嗟に繕うことができない。
「なっ、なんで私に言うんだよ!澪に言ってやれよ」
ごまかすように紅茶を飲み干して、熱くなった頬を隠した。

翌日、1週間ぶりに澪と一緒に学校への道のりを歩く。
何も言わなくても澪はいつもの場所で私を待っていて、それがたまらなく嬉しかった。
「退院おめでと」
「うん、ありがとう」
それでも、いつもより口数は少ない。
澪がいなかった1週間。その間の気持ちをどう伝えらればいいのかわからない。
結局たいした話もせずに、授業も終わり気付けば放課後。

今日はてっきり練習はないと思っていたのだが、澪の要望で合わせることになった。
澪も楽器を触りたくて仕方がなかったらしい。
スティックを鳴らしてカウント。
澪がベースをはじく。
5人揃った演奏に鳥肌が立つ。
澪のベースラインが戻ってきて、やっと本来の放課後ティータイムになれた。
途中走りまくったのは楽しかったからということで、許せ…みんな。

*

みんなが帰り支度をする中でも、澪はベースを離さない。
多分、まだ帰るつもりはないんだろうな。
「私も澪と帰るから、悪いけど先帰ってていいよ」
そう言って、部室に残る。
みんなが帰ってからしばらくの間、澪はベースを弾いていて、私はただそれを眺めていた。
ある程度は満足したのか、澪がベースを下ろす。
私に背を向けて立ったまま澪は言った。
「私、入院してるとき律に一番会いたかった」
ドクン、と大きく心臓が鳴った。
私も、と言いたくて、でも上手く声にならなくて、そのまま澪にしがみ付いた。
思考より先に体が動いて、とにかく1週間分の足りない何かを埋めるように、首に回す腕に力を込める。
「律…」
澪はそんな私の頭を優しく撫でた。
さっきから涙がとまらなくて、やっぱり上手く声が出ない。
なんとか息を整える。
「グズっ心配したんだぞ…」
「うん…。ごめん」
一度言葉にすると止まらなかった。
「入院なんて、心配で死ぬかと思った…!」
「ごめんな」
澪はただ謝る。気持ちをぶつけるだけの私を受け入れるように、優しい声で。
「律、不安にさせてごめん。もう大丈夫だから」
「…知ってるよ」
澪の体温を感じて、声を聞いて、やっと気持ちも涙も落ち着いた。
「もう離れないから」
そう言って、澪も私を抱きしめた。
澪のほうが辛かったはずなのに、いつだってこうだ。
ぶつけるばかりの私を受けとめてくれる。
だから、こんなときだって私は、素直になれなくて。
「ばかみお」
いつも悪態をついてしまうんだ。
首に回していた腕を上に移動させると、そのまま澪の頭を引き寄せた。
離れていた分を埋めるように、何度も唇を合わせる。
「っん…、律苦しい」
はあ、と吐息が漏れて唇が離れる。

「だって…、まだ澪が足りない」
そう言って、再びくちづけた。



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